海外向けのリスティング広告は、日本のGoogle広告アカウントからでも対象地域を国単位で指定すれば配信できます。ただし国内と同じ感覚で始めると、言語の合わせ方、時差、国ごとの検索エンジンの違い、遷移先のページの4か所でつまずきます。この記事では、海外リスティング広告で国内配信と設定が変わる点を、Google広告ヘルプの記載と国別の検索シェアの実データで整理しました。2026年9月に検索キャンペーンの言語設定が廃止された後の言語の合わせ方、韓国や中国でGoogle以外の媒体を足す判断、現地の検索語で組むキーワード、多言語LPと計測の準備まで扱います。
まとめ:海外リスティング広告は国・言語・受け皿の順に決めて小さく始める
最初に決めるのは配信する国です。国が決まれば、その国でどの検索エンジンが使われているか、どの言語で検索されるか、問い合わせを受ける時間帯がいつかが連動して決まります。韓国ならNaverが検索の4割強を占め、中国本土ではGoogleのシェアが1%台です。Google広告だけで足りる国かどうかは、ここで分かれます。
言語の扱いは2026年9月に変わりました。検索キャンペーンではキャンペーン単位の言語設定が削除され、広告の言語をもとに自動でマッチングされます。言語ごとに広告文とLPを分けて用意することが、そのまま言語の指定になります。
遷移先が日本語サイトしかない会社は、広告より先に現地語のLPを作るべきです。広告費を払って集めた海外の検索者を日本語ページに送っても、問い合わせにはつながりません。配信は1〜2か国から始め、国別にコンバージョンを計測できる状態で検証してから国を増やします。
海外リスティング広告が国内配信と違う点:地域・言語・時差の設定差
キーワードの選び方や入札の仕組みといった基本は国内と同じです。基本の整理はリスティング広告の仕組み・費用・運用の始め方に譲り、ここでは海外向けで設定が変わる3つの項目を扱います。
対象地域を「所在地」と「所在地やインタレスト」のどちらで絞るかの判断基準
Google広告ヘルプの「広告の対象地域を設定する」によると、対象地域は国全体、国内の地域や都市、1km以上の半径などで指定できます。そのうえで、誰に広告を出すかを決める選択肢は、次の2つです。「所在地やインタレスト」は対象地域にいる人に加えてその地域に関心を示した人にも届く広い設定で、ヘルプでは検索キャンペーンでのおすすめとされています。「所在地」は対象地域に実際にいる人だけに絞る設定です。
海外向けでは、この違いが成果を左右します。米国向けの英語広告を「所在地やインタレスト」で出すと、米国に関心を持つ日本国内の検索者にも表示されることがあります。現地に配送や営業の拠点がなく、対応できるのが現地にいる顧客だけなら、選ぶ設定は「所在地」です。訪日客向けの予約や、海外在住者が日本の商品を調べる商材のように「関心」も見込み客になる場合に限って広い設定を使います。
日本から自分で検索して広告が出ないのは、地域設定の結果として正常な場合があります。確認の仕方はリスティング広告が表示されない原因の切り分けで、広告プレビューと診断ツールを使う手順として整理しています。
2026年9月に検索キャンペーンの言語設定が廃止された後の言語の合わせ方
以前は、キャンペーンごとに「英語」「中国語(繁体)」のようにターゲット言語を指定していました。Google広告ヘルプの「ターゲット言語について」では、2026年9月から検索キャンペーンでキャンペーン単位のターゲット言語の設定が削除され、広告の言語を基準に検索広告が自動でマッチングされると案内しています。ユーザーの検索語句の言語と一致する広告が優先されます。
P-MAXキャンペーンでも、検索ネットワーク部分には言語設定が適用されなくなりました。YouTubeやディスプレイなど他のチャネルには引き続き適用され、ショッピング広告は言語設定の影響を受けません。ヘルプは広告主側の対応は不要としています。
実務での意味ははっきりしています。言語の指定は、管理画面の設定ではなく広告文そのもので行うものになりました。英語圏とスペイン語圏に出すなら、広告グループかキャンペーンを言語ごとに分け、広告文も遷移先のLPもその言語でそろえます。英語の広告文に日本語のLPをつなぐ構成は、この変更後はとくに避けるべきです。
タイムゾーンは作成後に変えられないため国ごとにアカウントを分ける条件
Google広告のタイムゾーン設定についてのヘルプでは、通常の広告配信中アカウントのタイムゾーンは変更できず、変えるには新しいアカウントを作る必要があるとしています。MCCアカウントで変更できるのは一度だけで、東方向への変更に限られます。
日本時間で作ったアカウントで米国東部に配信すると、広告のスケジュール設定やレポートの日付の区切りが日本時間のままになります。現地の営業時間だけに配信したい場合、時差を毎回換算して設定することになり、夏時間の切り替わりでずれが生じます。配信を1〜2か国で試すうちは既存アカウントで換算して運用し、特定の国の広告費が国内と並ぶ規模になった段階で、その国のタイムゾーンで別アカウントを作るのが現実的な線引きです。
配信する国ごとに選ぶ検索広告の媒体:Google以外を併用すべき市場
国内ではGoogle広告とYahoo!広告の2つで検索広告の大半を押さえられますが、海外では国によって検索エンジンの顔ぶれが違います。媒体を決める前に、配信国の検索シェアを確かめます。
StatCounterの韓国の検索エンジンシェアでは、2026年9月時点でGoogleが47.97%、Naverが43.06%、Bingが4.83%です。Googleが首位ではあるものの、Naverとの差は5ポイントほどしかありません。
Google広告だけで韓国に配信すると、検索の4割強を占めるNaverの利用者には広告が届きません。韓国で問い合わせを本格的に集めるなら、Naverの検索広告を併用する前提で予算を組みます。一方、まず需要の有無を見たいだけなら、Google広告で数週間配信して検索語句と反応を確かめ、手応えがあってからNaverを足す順番でも遅くはありません。
中国本土はBaiduが首位でGoogleが1%台の市場という前提で考える
StatCounterの中国の検索エンジンシェアでは、2026年9月時点でBaiduが46.65%、Bingが21.76%、Haosouが12.26%で、Googleは1.46%にとどまります。中国本土の検索者を狙う場合、Google広告の設計はほぼ通用しません。
Baiduへの出稿条件や申し込みの経路は、Google広告とは別の媒体として改めて確かめる必要があり、Google広告の管理画面で国を追加するだけでは届きません。中国本土向けは、広告の運用より前に、中国語のサイトをどこでホスティングし、現地から問題なく表示されるかという受け皿側の確認が先です。台湾や香港は事情が別で、配信国ごとにシェアを確かめてから媒体を決めます。
Microsoft Advertisingの追加判断:187市場対応とBing比率
Microsoftの公式ブログ「Tap into 187 markets with Microsoft Advertising」によると、Microsoft Advertisingの配信市場は2022年1月からの約18か月で34から187に広がりました(2023年6月の発表時点)。同じ記事では、Google広告のキャンペーンを取り込むインポート機能も案内されています。
BtoBで欧米に配信する場合、Bingを足す価値があるかはシェアの数字だけで決めず、Google広告で成果の出たキャンペーンを取り込んで少額で比べるのが確実です。インポート機能があるため、追加の作業は広告文の作り直しではなく予算と計測の設定が中心になります。
翻訳ではなく現地の検索語で組む海外向けキーワードと広告文の作り方
海外配信で成果が出ない原因として多いのが、日本語のキーワードと広告文をそのまま訳して出稿することです。国内のキーワード設計の手順はリスティング広告のキーワードの選び方とマッチタイプ・除外キーワードで整理しており、海外向けではそこに次の作業が加わります。
日本語キーワードの直訳が外れる理由と現地の検索語を拾う3つの手順
日本で「受託開発」と検索する人が使う言葉は、英語圏では「software development company」「custom software development」など、業種や地域によって言い方が分かれます。直訳した語句が現地でほとんど検索されていない、あるいは別の意味で使われていることは珍しくありません。
- キーワードプランナーで対象の国と言語を指定し、直訳した語句と関連語句の月間検索数を比べる
- 現地の競合企業のサイトとLPで、製品やサービスがどの言葉で呼ばれているかを確かめる
- 配信開始後の検索語句レポートで、実際に表示された語句から追加と除外を決める
3つ目の検索語句レポートが最も確かな情報源です。最初からキーワードを作り込みすぎず、フレーズ一致を中心に少数の語句で始め、レポートを見て広げます。現地語のネイティブに検索語句レポートを読んでもらうと、意図の違う語句を早く除外できます。
広告文と遷移先の言語を一致させないと配信が絞られる仕組みと確認
前述のとおり、2026年9月以降の検索キャンペーンは広告の言語をもとに検索者とマッチングされます。広告文を英語で書けば英語で検索する人に、繁体字で書けば繁体字で検索する人に優先して出る仕組みです。言語の混在した広告文や、見出しだけ現地語で説明文が日本語といった広告は、どの言語の検索にも中途半端にしか合いません。
広告文は翻訳者に任せきりにせず、広告の文字数制限の中で現地の言い回しになっているかを確認します。通貨の表記、価格の単位、問い合わせ可能な時間帯(現地時間)を広告文やアセットに入れると、海外の検索者が「自分向けの広告か」を判断しやすくなります。
海外向け広告の受け皿になる多言語LPとサイト側で準備する項目
海外リスティング広告の成果は、広告の設定よりも遷移先のページで決まる部分が大きくなります。国内向けのサイトに英語のページを1枚足しただけでは、問い合わせまで進まないことが多いためです。
広告の遷移先に必要な現地語のLP・問い合わせフォーム・連絡手段の要件
遷移先のLPには、広告文と同じ言語の本文に加えて、現地の検索者が問い合わせ前に確かめる情報が要ります。BtoBなら、対応できる言語と時間帯、現地での導入実績や取引条件、見積もりの通貨です。ECなら送料、配送日数、返品条件、使える決済手段が判断材料になります。
見落としやすいのが問い合わせフォームです。フォームの項目名だけ英語にしても、電話番号の入力欄が日本の形式を前提にしている、都道府県の選択欄が残っている、自動返信メールが日本語のまま、といった不備があると送信の途中で離脱されます。多言語ページの作り方と費用の目安は多言語サイト制作の進め方・費用相場と言語・URL設計の判断基準で整理しています。
多言語サイトのURL設計とhreflangを広告開始前に整えておく理由
広告の遷移先は、広告専用のLPでも既存サイトの言語別ページでもかまいません。既存サイトを使う場合は、言語ごとのURL(サブディレクトリやサブドメイン)とhreflangの設定を広告開始前に整えておきます。広告で流入した検索者がサイト内を回遊したとき、別の言語のページに飛ばされるのを防げるためです。
広告を止めた後に自然検索で同じ国から流入を得たいなら、なおさら先に整えておく価値があります。hreflangの書き方と検証の手順はhreflangの書き方・3つの実装方法と多言語サイトSEO対策の検証手順で解説しています。
海外からのコンバージョンを国別に計測するためのタグと時差の扱い
複数の国に配信するなら、コンバージョンを国別に分けて見られることが前提です。Google広告のレポートは地域別に分けて確認できますが、問い合わせフォームの送信をコンバージョンとして計測していなければ、どの国の広告が成果を生んだかは分かりません。言語別のLPごとに送信完了ページを分けるか、フォームの送信イベントに言語の情報を持たせておくと集計が楽になります。
集計の数字を読む際には、時差にも注意が必要です。日本時間のアカウントで米国に配信すると、現地の夕方の問い合わせが日本時間の翌日の数字として集計されます。日別の数字を現地の曜日と照らして読むときは、このずれを前提にします。計測の設計全体はリスティング広告の効果の測り方と判断基準を参照してください。
海外リスティング広告を始めるべき企業と見送るべき企業の判断基準
海外向けの広告は、出稿の手続き自体は国内と変わらないため、始めるだけなら簡単です。成果が出るかどうかを分けるのは、配信の前に受け皿と体制が用意できているかです。
海外配信を小さく始める場合の配信国の数と予算配分、検証期間の決め方
最初の配信国として絞り込む目安は、1〜2か国です。複数の国に少額ずつ配ると、どの国もクリック数が少なすぎて、検索語句や問い合わせの傾向を読めないまま予算が尽きます。候補国が多いときは、キーワードプランナーで国別の検索数と入札単価の目安を比べ、既存の取引や問い合わせ実績がある国を優先します。
検証期間は、国内でコンバージョンが安定するまでにかかった期間を目安に、少なくとも数週間から1か月はとります。この間に見るのは問い合わせの件数よりも、検索語句レポートに出る語句が狙いどおりか、問い合わせの送り主が対象の国と業種かです。ここが合っていれば、件数は予算と入札で調整できます。
受け皿が日本語サイトだけなら広告より先に多言語LPを作るべき理由
現地語のLPが無い状態で海外に広告を出すのは見送るべきです。広告の言語と遷移先の言語がずれると、2026年9月以降の言語マッチングの仕組みとも合わず、クリックされても内容が読めない検索者に広告費を払うことになります。英語圏だけを試す場合でも、英語のLP1枚と英語で受け付けられる問い合わせフォームは配信前にそろえます。
逆に、すでに英語サイトや多言語サイトがあり、自然検索で海外からの流入が少しでもある会社は、そのページを遷移先にして早めに試す価値があります。自然検索で流入している語句は、そのまま広告のキーワードとして使える候補です。英語サイトや多言語LPの制作から相談したい場合は、英語サイト制作・多言語サイト制作のサービスで進め方を紹介しています。
海外向け広告を社内で運用する範囲と制作会社・代理店に任せる範囲の線引き
国内でGoogle広告を社内運用している会社なら、英語圏向けの検索広告は社内で運用できます。設定の差は地域・言語・タイムゾーンの3点に集約されるためです。外に任せるべきなのは、社内に読める人がいない言語の広告文と検索語句の判断、NaverやBaiduなど社内に運用経験の無い媒体、現地語のLPと問い合わせフォームの制作です。
運用を代理店に任せる場合の費用の内訳と判断の基準はリスティング広告の運用と費用の内訳・運用代行の判断基準で整理しています。海外向けでは、運用の手数料に加えて、広告文の翻訳と現地語のチェックの費用がどこに含まれるかを見積もりの段階で確かめます。
海外リスティング広告の配信設定・費用・運用体制についてよくある質問
海外向けのリスティング広告を検討する際によく寄せられる質問に答えます。
海外向けの広告は日本で作ったGoogle広告アカウントから出せますか?
出せます。対象地域の設定で配信したい国を指定すれば、日本で作ったアカウントからでも海外の検索者に広告を表示できます。注意したいのはタイムゾーンで、通常のアカウントでは作成後に変更できません。広告のスケジュールやレポートの日付は日本時間のままになるため、現地の営業時間に合わせて配信するときは時差を換算して設定します。特定の国の広告費が大きくなってきたら、その国のタイムゾーンで別のアカウントを作るのが管理しやすい形です。
海外リスティング広告の費用はどのくらいかかりますか?
クリック単価は国、言語、業種、競合の数で大きく変わるため、一律の相場はありません。配信前に、キーワードプランナーで対象の国と言語を指定して入札単価の目安を確かめるのが確実です。最初は1〜2か国に絞り、数週間から1か月の検証に必要なクリック数を確保できる予算を組みます。代理店に任せる場合は、運用手数料のほかに広告文の翻訳や現地語チェックの費用が別にかかるかを見積もりで確認してください。
2026年9月以降、Google広告の言語設定はどうすればよいですか?
検索キャンペーンでは、キャンペーン単位のターゲット言語の設定が2026年9月から削除されました。Google広告ヘルプによると、広告の言語を基準に自動でマッチングされ、検索語句の言語と一致する広告が優先されます。広告主側の対応は不要とされていますが、言語の指定は広告文で行うことになったため、言語ごとに広告グループかキャンペーンを分け、広告文とLPの言語をそろえておくと意図どおりに配信されます。
英語圏に配信するなら英語のLPを1枚作れば足りますか?
需要を確かめる最初の段階なら、英語のLP1枚と英語で受け付けられる問い合わせフォームがあれば始められます。ただし、フォームの項目や自動返信メールが日本語のままだと、送信途中の離脱につながる原因です。配信を続けて国や言語を増やす段階では、言語ごとのURL設計やhreflangを含めて多言語サイトとして整えておくと、広告を止めた後も自然検索からの流入を受けられます。
海外の広告運用は社内と代理店のどちらに任せるべきですか?
国内でGoogle広告を社内運用できているなら、英語圏向けの検索広告は社内で回せます。地域・言語・タイムゾーンの設定差を押さえれば、運用の手順は国内と変わりません。社内で読めない言語の広告文と検索語句の判断、NaverやBaiduなど運用経験の無い媒体、現地語のLP制作は、外部に任せたほうが早く確実です。どこまでを任せるかは、言語と媒体の2つの軸で切り分けると決めやすくなります。
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