リスティング広告の改善は、広告文を書き換える前に「いくらまでなら1件の問い合わせに払えるか」を決めるところから始まります。基準がないまま数値を眺めても、どの打ち手が効いたのかを判定できないからです。この記事では、受注単価から許容できる獲得単価を逆算する戦略設計、広告ランクの仕組みから決める改善の順番、アカウント構造・検索語句・広告文とアセット・入札目標・ランディングページ(LP)の直し方、改善策を検証する方法を、Google広告ヘルプの記載をもとに整理しました。高単価のBtoB商材で改善の良し悪しを判定する基準と、改善より先に見送るべき場面も示します。
まとめ:リスティング広告の改善手順と戦略設計・判定基準の結論
改善の起点は戦略です。受注単価と粗利、問い合わせから受注までの歩留まりを使って、広告に払える獲得単価の上限を先に決めます。指名検索と一般検索は目的も単価も違うため、予算と評価を分けて管理してください。
打ち手の順番は、広告の掲載を決める広告ランクの仕組みから導けます。計測の確認、検索語句の除外、広告文とアセットの充実、入札目標の見直し、LPの改善の順に進めると、前の工程の数値を次の判断材料にできるためです。アカウント構造は細かく分けすぎず、自動入札が学習できるだけのコンバージョンを1つのキャンペーンに集めます。
広告の有効性や推奨事項のスコアは、改善の手がかりにはなりますが、オークションの評価には使われません。スコアを上げることを目的にせず、変更はカスタムテストで元のキャンペーンと比べて確かめます。高単価のBtoBでは問い合わせ単価ではなく商談単価で判定し、検索数が少なすぎる商材や計測が問い合わせで止まっている状態では、広告の改善より先に別の手当てを優先するのが妥当です。
改善の前に決めるリスティング広告の戦略と許容できる獲得単価の逆算
「成果が出ない」という判断には、何と比べて出ていないのかという基準が要ります。リスティング広告の戦略とは、この基準と、どの検索にどれだけ予算を割くかを先に決めておくことです。仕組みや費用の全体像はリスティング広告の仕組みと費用・運用の始め方で解説しています。
受注単価と粗利率、商談化率から許容獲得単価を求める計算の手順
許容できる獲得単価は、受注1件あたりの粗利から逆算します。例として、受注単価300万円・粗利率40%・粗利のうち広告に回せる割合30%の商材を考えると、受注1件に使える広告費は36万円です。
次に、問い合わせから受注までの歩留まりを掛けます。問い合わせの40%が商談になり、商談の25%が受注するなら、問い合わせ1件あたりの許容額は36万円×0.4×0.25で3万6千円です。この金額を超える獲得単価は、件数が出ていても採算が合いません。
逆に、獲得単価が2万円でも受注につながる問い合わせがなければ、それは改善ではなく悪化です。計算に使った歩留まりは月ごとに実績で更新します。指標の関係を木の形で整理する方法はKGI・KPIの設定方法とKPIツリーの使い分けが参考になります。
指名検索と一般検索、比較語と課題語で予算と評価を分ける配分設計
社名やサービス名で検索する指名検索は、すでに自社を知っている人の検索です。獲得単価は一般検索より低く出やすく、一般検索と同じキャンペーンに混ぜると平均値が下がり、一般検索の不振が見えなくなります。指名と一般はキャンペーンを分けて、それぞれの基準で評価してください。
一般検索の中でも、「会計システム 開発 費用」のような比較語と、「請求書 処理 手間」のような課題語では、問い合わせまでの距離が違います。比較語には予算の多くを割き、課題語は少額で反応を見る、という濃淡を最初に決めておくと、改善の段階で迷いが減ります。
成果が出ないリスティング広告で手を付ける順番と広告ランクの仕組み
打ち手は数多くありますが、同時に複数を変えると、どれが効いたのかが分からなくなります。順番を決める根拠になるのが、広告の掲載を決める広告ランクです。
入札単価と品質、アセットの見込み効果など広告ランクの公式要素
Google広告ヘルプ「広告ランク: 定義」は、広告ランクの算出要素として、入札単価、広告とランディングページの品質、広告ランクの下限値、オークションの競争力、検索した背景(所在地・デバイス・検索時刻・検索語句の性質など)、同じページに表示される他の広告や検索結果、アセットなど広告フォーマットの見込み効果を挙げています。
この中で広告主が直接動かせるのは、入札単価、広告とLPの品質、アセットの3つです。入札単価だけを上げて順位を買う改善は、クリック単価をそのまま押し上げます。先に広告とLPの品質、アセットに手を入れ、それでも足りない分を入札で補う順が、費用を増やさずに済む進め方です。
計測・検索語句・広告文・入札・LPの順に直す理由と週次と月次の分担
最初に確かめるのは計測です。コンバージョンが正しく記録されていなければ、以降の判断がすべて誤ります。表示・クリック・成約のどの段階で止まっているかの切り分け方はリスティング広告の効果の測り方と評価を始める時期で扱っているので、ここでは切り分けた後の打ち手を順に示します。
| 打ち手 | 見直す頻度 | 主に効く段階 |
|---|---|---|
| 検索語句の確認と除外 | 週1回 | 表示の質・クリック |
| 広告文とアセットの差し替え | 2〜4週に1回 | クリック率 |
| 入札戦略と目標値の変更 | 月1回まで | 獲得単価・件数 |
| アカウント構造の組み直し | 四半期に1回 | 学習データの量 |
| LPとフォームの改修 | テスト単位 | コンバージョン率 |
頻度に差をつけるのは、入札戦略や構造を変えると自動入札の学習がやり直しになるからです。検索語句の除外は学習への影響が小さいため、週単位で回して問題ありません。
アカウント構造の改善でキャンペーンと広告グループを組み直す基準
成果が出ないアカウントでよく見るのは、キーワードごとに広告グループを細かく分け、数十のグループに少しずつ予算が散っている状態です。構造の改善は、分ける理由がある単位だけを残す作業になります。
キャンペーンを分ける条件を予算・地域・入札目標の違いだけに絞る判断
Google広告では、予算・配信地域・入札戦略がキャンペーン単位で設定されます。したがってキャンペーンを分けてよいのは、この3つのどれかを変えたいときです。指名と一般で予算を分けたい、東京と大阪で目標の獲得単価を変えたい、といった理由があれば分けます。
「商品カテゴリごとに管理しやすいから」という理由だけで分けると、各キャンペーンのコンバージョンが少なくなり、自動入札の精度が落ちます。管理のしやすさはラベルや命名規則で補い、キャンペーンの数は設定を変える必要のある数にとどめてください。
細かく分けた広告グループを統合して自動入札に学習データを集める
Google広告ヘルプ「目標アクション単価」入札戦略については、目標値を評価する際に過去30日間の実績を確認し、少なくとも30件のコンバージョンを含めるよう勧めています。月のコンバージョンが30件に届かないキャンペーンを複数抱えている場合は、統合を検討する段階です。
広告グループは、同じ広告文とLPで答えられる検索語句のまとまりを1単位にします。「経費精算 システム」と「経費精算システム 比較」は同じLPで答えられるため、別グループにする理由がありません。キーワードの括り方とマッチタイプの選び方はリスティング広告のキーワードとマッチタイプ・除外の設計手順で詳しく解説しています。
検索語句レポートと広告文・アセットで表示とクリックの質を上げる手順
構造が整ったら、どの検索に広告が出ているか、出た広告がクリックされるかを直します。ここは週単位で回せる、効果の見えやすい領域です。
検索語句レポートで無駄な表示を見つけ除外キーワードに回す週次作業
Google広告ヘルプ「検索語句レポートについて」によると、このレポートでは実際の検索で広告が表示された語句と、その掲載結果を確認できます。登録したキーワードではなく、利用者が入力した語句そのものが見える点が要です。
週1回、クリックがあるのにコンバージョンがない語句を抽出し、自社と無関係な語句は除外キーワードに登録します。受託開発の会社なら「求人」「無料」「自作」を含む語句が典型です。ただし同じヘルプは、検索数が十分でない語句はプライバシー保護の基準でレポートから除かれる場合があると説明しています。レポートに出ない費用があることを前提に、除外は語句単位ではなく「無料」のような語単位で登録すると取りこぼしが減ります。
見出し15個と説明文4個の枠を埋め広告の有効性を診断に使う方法
レスポンシブ検索広告は、登録した見出しと説明文を組み合わせて表示する形式です。Google広告ヘルプ「レスポンシブ検索広告に関する広告の有効性について」では、見出しは15個、説明文は4個まで登録でき、広告の有効性は「未完了」「低い」「平均的」「高い」「非常に高い」の5段階で示されます。
同じページに、広告の有効性は広告ランク・品質スコア・オークションの決定には使われないと書かれています。「非常に高い」にすること自体は目的になりません。評価とあわせて管理画面に出る改善の提案を手がかりに、価格・納期・実績・対応範囲など切り口の違う見出しを増やすのが正しい使い方です。見出しの位置を固定するピン留めは、組み合わせの数を減らすため、薬機法表記などの必須文言に限ってください。
サイトリンクや電話番号のアセットを追加し広告ランクを底上げする
広告ランクの要素に「アセットなど広告フォーマットの見込み効果」が含まれる以上、アセットの追加は入札単価を上げずに広告ランクを上げる手段になります。サイトリンクで「料金」「導入事例」「お問い合わせ」のページへ直接誘導し、電話番号のアセットで電話からの問い合わせを受けられるようにします。
アセットは登録しても毎回表示されるわけではありません。表示されたときにクリック率が上がるかどうかを、アセットのレポートで2〜4週間ごとに確かめます。
入札戦略と目標値を見直してクリック単価と獲得単価を整える改善
入札の改善は効果が大きい反面、変更のたびに学習がやり直しになります。月1回までの頻度で、根拠のある変更だけを行います。
目標アクション単価を下げすぎると件数が減る仕組みと目標値の決め方
目標アクション単価は、過去のデータとオークション時のデバイスや地域などのシグナルから、広告が表示されるたびに入札単価を自動で決める戦略です。前出のヘルプは、目標額が低すぎるとコンバージョンにつながるクリックを逃し、合計のコンバージョン数が減る可能性があると明記しています。
獲得単価を下げたいからといって、実績が5万円のキャンペーンに目標3万円を入れると、配信量が絞られて件数が落ちます。目標値は実績に近い値から始め、件数が維持されているのを確かめてから下げていくのが安全です。上限は、戦略の章で逆算した許容獲得単価に置きます。
クリック後に成約しない場合のLP改善とフォーム項目を見直す順番
クリック率が十分なのに問い合わせが増えない場合、広告ではなくLPに原因があります。検索語句と見出しが約束した内容が、LPのファーストビューで確認できるかを最初に見てください。「費用」で検索した人には料金の目安、「比較」で検索した人には比較表が要ります。
次にフォームの項目数です。初回の問い合わせで予算・導入時期・社員数まで必須にしていると、検討初期の見込み客が離脱します。コンバージョン率の業界別の目安と改善の優先順位はCVR(コンバージョン率)の計算式と改善の優先順位で、LPのどこから手を付けるかはLPOで最初に触る要素と検証の順序で解説しています。
広告の改善策を検証するカスタムテストと推奨事項のスコアの扱い方
改善策は、効いたかどうかを確かめて初めて改善になります。前後比較だけでは季節や競合の動きと区別できないため、同じ期間に比べる仕組みを使います。
カスタムテストで元のキャンペーンと50%ずつ配信を分け変更を検証
Google広告ヘルプ「カスタムテストを設定する」によると、カスタムテストは元のキャンペーンのトラフィックと予算を分け合い、変更を加えたテスト側と成果を比べる機能です。割合は50%が推奨され、利用者をどちらか一方に割り当てるCookieベースの分割が推奨されています。1つのキャンペーンに5つまでテストを予定できますが、同時に実施できるのは1つです。
入札戦略の変更、LPの差し替え、広告文の訴求の変更など、成果への影響が大きい変更ほどテストで確かめる価値があります。テスト中に元のキャンペーンを触ると結果の分析が難しくなるとヘルプにもあるため、期間中は両方とも変更を止めます。必要な期間とサンプル数の考え方はABテストの必要サンプル数と検証期間を参考にしてください。
推奨事項のスコアは品質スコアに使われず採否は自社基準で決める理由
管理画面には、推奨事項を適用するとどれだけ成果が見込めるかを0〜100%で示すスコア(英語名 optimization score)が表示されます。Google広告ヘルプのスコアの解説ページは、このスコアが有効な検索・ディスプレイ・P-MAXなどのキャンペーンに表示され、品質スコアには使われないと説明しています。
スコアを100%に近づけても、広告の掲載が有利になるわけではありません。推奨事項は1件ずつ、戦略の章で決めた許容獲得単価と配分に照らして採否を決めます。予算の引き上げやキーワードの追加の提案を、獲得単価の基準を確かめずにまとめて適用するのは避けてください。
受託開発のような高単価BtoBでリスティング広告を改善する判断基準
ここからは一般論ではなく、システム開発やWebサイト制作のように単価が数百万円以上で、検討に数か月かかる商材に絞った判断を示します。
問い合わせ単価ではなく商談単価で改善の良し悪しを判定する理由
高単価のBtoBでは、問い合わせ1件の価値が大きくばらつきます。広告文を「無料相談」中心に変えて獲得単価が3万円から1万5千円に下がっても、増えたのが情報収集だけの相談なら、商談単価はむしろ上がる結果になるのです。問い合わせ単価で改善を判定すると、成約しにくい問い合わせを安く集める方向へ運用が寄っていきます。
判定に使う指標は、広告費を商談化した件数で割って算出する商談単価です。商談化の記録をGoogle広告へ戻すオフラインコンバージョンの仕組みは、効果測定の記事のコンバージョン計測の章で整理しています。商談を成果として入札に学習させれば、自動入札も商談につながる検索語句を優先するようになります。
改善を続けても伸びない場面と広告以外へ予算を移す見送りの条件
次のどれかに当てはまる場合、広告の改善を続けても成果は伸びにくく、予算や工数を別の手当てに移すべきです。
- 狙う語句の月間検索数が合計でも数十回程度で、30日で30件のコンバージョンが見込めない
- 問い合わせ後の商談化と受注が記録されておらず、どの検索語句が受注に結びついたか分からない
- LPが会社トップページしかなく、検索語句ごとに答えるページを用意できない
1つ目はSEO記事や紹介など検索数に依存しない経路を、2つ目は問い合わせ管理と商談記録の整備を、3つ目はLPの制作を先に進めます。広告の管理画面の中だけで解決しない問題に、入札や広告文の調整で応えようとしないことです。
改善を社内で回すか外部と組むかを分ける作業範囲と担当体制の目安
検索語句の除外や広告文の差し替えは、管理画面の操作で完結します。一方で、オフラインコンバージョンの連携、LPの改修、フォームの作り直しは、サイトやシステムの開発作業です。改善が後者に及ぶほど、マーケティング担当者だけでは回りにくくなります。広告運用の業務範囲と内製・外注の分け方は広告運用の仕事内容と内製と外注の判断基準で整理しています。
運用だけを外部に任せる場合の費用と選び方はWeb広告の運用代行の費用相場と選び方を参照してください。広告の改善とLP・計測の設計をまとめて見直したい場合は、一創のWebマーケティング戦略の支援で、許容獲得単価の設計から改善の進め方まで相談を受け付けています。
運用担当者向けのリスティング広告の改善と戦略設計に関するよくある質問
リスティング広告の改善について、運用中の担当者から出やすい質問に答えます。
リスティング広告の改善は何から始めればよいですか?
最初にコンバージョン計測が正しく動いているかを確かめ、そのうえで許容できる獲得単価を決めます。受注単価・粗利率・広告に回せる割合・問い合わせから受注までの歩留まりを掛け合わせると、1件に払える上限を算出できる仕組みです。基準が決まったら、検索語句レポートで無関係な語句を除外する作業から手を付けると、学習への影響が小さく、効果も数週間で見えます。
リスティング広告の改善はどのくらいの頻度で行うべきですか?
打ち手によって頻度を変えます。検索語句の確認と除外は週1回、広告文とアセットの差し替えは2〜4週に1回、入札戦略や目標値の変更は月1回まで、アカウント構造の組み直しは四半期に1回が目安です。入札や構造を頻繁に変えると自動入札の学習がそのたびにやり直しになり、成果が安定しません。変更した日と内容は記録しておき、数値の変化と照らし合わせてください。
クリック率が低いときはどう改善すればよいですか?
まず検索語句レポートで、意図と合わない語句に広告が出ていないかを確かめます。無関係な表示が多ければ、広告文を直す前に除外で表示の質を上げるのが先です。そのうえで、見出しを15個まで登録して価格・実績・納期など切り口の違う訴求を増やし、サイトリンクなどのアセットを追加します。アセットは広告ランクの要素にも含まれるため、入札単価を上げずに掲載を改善する手段になります。
広告の有効性を「非常に高い」にすれば成果は上がりますか?
直接は上がりません。Google広告ヘルプは、広告の有効性が広告ランク・品質スコア・オークションの決定には使われないと説明しています。広告の有効性は、広告の作成や編集のときに改善点を見つけるためのフィードバックです。評価を上げるために似た見出しを並べても意味はなく、検索した人が知りたい情報を切り口別に用意できているかを確かめる道具として使ってください。
リスティング広告の戦略はどう立てればよいですか?
戦略は、いくらまで払えるかと、どの検索に予算を割くかの2つを決めることです。前者を求める方法は、受注単価と粗利、商談化率から許容獲得単価を逆算することです。後者は、指名検索と一般検索、比較語と課題語でキャンペーンを分け、問い合わせに近い比較語に予算の多くを配分します。キーワードの選び方はキーワードの記事、予算配分と費用の考え方は運用と費用の記事で詳しく扱っています。
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