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SQS・SNS・SESとは?それぞれの役割を整理しよう【AWSメッセージングサービス3種を徹底解説】

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SQS・SNS・SESとは?それぞれの役割を整理しよう【AWSメッセージングサービス3種を徹底解説】

AWSにはさまざまなクラウドサービスがありますが、その中でもSQSSNSSESはメッセージ通信や通知に関わる重要なサービスです。それぞれ名称は似ていますが提供する機能と役割は大きく異なります。本記事ではこれら3つのサービスについて、基本的な仕組みと特徴、違いや使い分け方を詳しく解説します。まずはメッセージングサービスが必要とされる背景を確認し、続いてAWSが提供する3サービスの概要と役割を整理していきましょう。

メッセージングサービスが必要とされる背景と目的:非同期・疎結合によるシステム連携の重要性

現代の分散システムやマイクロサービスでは、異なるコンポーネント間で効率的にデータをやり取りする必要があります。直接サーバー同士が同期的に通信していると、片方の処理遅延や障害がもう一方に波及しシステム全体の安定性を損ねてしまいます。そこで非同期通信によるメッセージングサービスが重要になります。非同期メッセージングを利用すれば、一旦メッセージを蓄積しておき受信側が後で処理できるため、送信側と受信側を疎結合に保つことができます。例えばWebアプリからの要求を即座に受け付けて処理キューに投入し、バックエンドで順次処理することで、フロント側はバックエンド処理完了を待たずに応答できるようになります。こうした仕組みによりシステム全体の柔軟性と耐障害性が向上し、高負荷時の負荷分散や一部コンポーネント障害時の影響局限が可能となるのです。

AWSが提供する3つのメッセージ関連サービス(SQS・SNS・SES)を整理:各サービスの全体像を掴む

AWSにはメッセージングや通知に関するサービスがいくつかありますが、代表的なものが次の3つです。それぞれ用途が異なるため、まずは概要を押さえましょう。

  • Amazon SQS(Simple Queue Service):メッセージキューサービス。アプリケーション間のメッセージを一時的に蓄積し、非同期処理を実現します。
  • Amazon SNS(Simple Notification Service):通知配信サービス。トピックを介して一つのメッセージを複数の受信先にプッシュ型で送信できます。
  • Amazon SES(Simple Email Service):Eメール送信サービス。大量のメールをプログラムから効率的かつ安価に送信でき、メール配信に特化した機能を備えます。

いずれもフルマネージドサービスであり、サーバー管理不要で高いスケーラビリティと可用性を持つ点は共通しています。しかし、メッセージの届け方や対象、想定ユースケースが異なるため、適材適所で使い分けることが肝要です。

SQS・SNS・SESそれぞれの基本的な役割の違いを比較して解説(送信方式や利用シーンの違い)

SQS・SNS・SESの大きな違いは「何を、どう届けるか」です。Amazon SQSはメッセージを一時的に保持し受信側が自ら取りに行く「プル型」のキューとして機能し、主にシステム内部の非同期処理に用います。一方、Amazon SNSはトピック経由で複数の受信者に同時配信する「プッシュ型」通知サービスで、リアルタイムなイベント通知やアラート配信が得意です。そしてAmazon SESは電子メールという特定のチャネルにフォーカスしたサービスで、SMTPやAPIを通じてコンテンツ豊富なメールを大量配信する用途に特化しています。このように、SQSはシステム内部の処理キュー、SNSは多方面への通知ハブ、SESはメール送信エンジンというように役割が明確に分かれています。次章以降でそれぞれのサービスの詳細と特徴を見ていきましょう。

Amazon SNS(Simple Notification Service)の概要と特徴:複数宛先へのプッシュ通知サービス

まずはAmazon SNSについて詳しく見ていきます。SNSは名前の通り「通知」サービスであり、一つのメッセージを複数の宛先に配信する仕組みを提供します。アプリケーション間だけでなくモバイル端末やメールアドレスなど様々な受信者に対し、送信側から能動的にメッセージを届けることができるのが特徴です。

Amazon SNSの仕組みと基本コンセプト:トピックを介したPub/Subモデルの採用

SNSはPub/Subモデル(Publish/Subscribeモデル)を採用したサービスです。まず「トピック」と呼ばれる論理的なチャネルを作成し、メッセージの送信側(パブリッシャー)がそのトピックにメッセージを投稿します。投稿されたメッセージはトピックに登録されたすべての受信側(サブスクライバー)へと配信されます。パブリッシャーは誰に配信するかを個別には意識せずトピックに対して送信し、SNSがトピックに紐づく各サブスクライバーへ自動で転送するイメージです。このようにトピックを介することで、一つのメッセージを複数の異なる受信者に同時配送できるファンアウト(一斉配信)を実現しています。またSNSはプッシュ型配信のため、サブスクライバー側は特にポーリング等をせずともリアルタイムに通知を受け取れる点も重要なコンセプトです。

Amazon SNSの主な機能と特徴:複数プロトコルへのプッシュ配信と柔軟な通知設定

SNS最大の特徴は、一つのトピックに対して様々な種類のエンドポイント(受信手段)をサブスクライブできることです。例えばサブスクライバーとしてEメールアドレス、SMS(携帯電話テキストメッセージ)、HTTP/HTTPSエンドポイント(Webhook)、さらには他のAWSサービスであるLambda関数やSQSキューなどを登録できます。パブリッシャーがトピックにメッセージを送信すると、SNSはそれを各種プロトコルに合わせてフォーマットし、登録された全エンドポイントへプッシュ配信します。

このマルチプロトコル対応により、同じメッセージを例えば「メール+スマホ通知+システム内部キュー」に同時送信するといったことも容易です。またSNSではトピック毎に配信制御が可能で、例えば重要度に応じて異なるトピックに分けたり、サブスクライバーごとにメッセージフィルタリングルールを設定して必要な通知のみ受け取れるメッセージフィルター機能も提供されています。さらに完全マネージドサービスとして高いスループットと可用性を持ち、1秒間に非常に多くのメッセージを配信できます。これらの柔軟な機能により、SNSはリアルタイム通知基盤として多様なシナリオで活用されています。

Amazon SNSのユースケース:リアルタイム通知やファンアウト配信の活用例

SNSは「一つのイベントを複数の受信者へ即座に通知したい」場面で力を発揮します。その代表的なユースケースの一つがシステムのアラート通知です。例えばAWSの監視サービスであるCloudWatchアラームと組み合わせて、異常検知時にSNS経由で運用担当者へEメールやSMS通知を送るといった使い方が一般的です。またアプリケーションイベントのファンアウトにも利用されます。あるマイクロサービスでイベント(例:ユーザー登録完了)が発生した際、SNSトピックにそのイベント情報を発行することで、関連する複数のサービス(例:歓迎メール送信サービス、分析ログ記録サービス等)を同時に起動させることができます。モバイルアプリへのプッシュ通知配信も重要な用途です。SNSは各種モバイルプラットフォーム(iOS/Androidなど)向けプッシュ通知サービスとも連携でき、1つのAPI呼び出しで多数のユーザー端末に通知を送れます。このようにSNSは様々なチャネルへの同報通知・ブロードキャストに優れたサービスと言えるでしょう。

Amazon SES(Simple Email Service)の概要と特徴:大規模メール送信に対応するAWSのメールサービス

次に、Amazon SESについて見てみましょう。SESはその名の通り電子メール(Email)の送信に特化したサービスです。アプリケーションから大量のメールを送信する必要がある場合に、信頼性が高くコスト効率の良い手段を提供してくれます。従来はメール送信サーバーの自前構築や外部メールサービスの利用が必要でしたが、SESを使えばAWS上でメール送信機能を完結でき、開発者はメール送信インフラの詳細を意識することなく組み込むことができます。

Amazon SESの主な機能と特徴:大量メール送信・バウンス処理・オープントラッキングなど

SESは高スループットなメール配信エンジンとして設計されており、1秒間に大量のメールを発信できます(送信レートや1日の送信通数には初期上限がありますが、リクエストにより引き上げ可能です)。大量送信において重要な配信到達率の向上にも配慮されており、送信ドメイン認証(SPFやDKIM設定)やIPアドレスのウォームアップなどの仕組みを備えてユーザーのメールが迷惑メール扱いされにくいよう支援します。

またSESは単にメールを送るだけでなく、メール特有のさまざまな付加機能を提供します。例えば送信したメールが受信者側で届けられなかった場合のバウンス(不達)や受信拒否(コンプレイント)のフィードバックを記録・通知する機能があります。これにより送信リストの品質管理や再送制御が可能です。さらにメールのオープン率やクリック率のトラッキング機能もオプションで利用でき、マーケティングメールの効果測定に役立ちます。メール本文についてもテキストメールだけでなくHTMLメールや添付ファイル付きメールを送ることが可能で、AWS SDKを使えばテンプレートに差し込みデータを適用して動的に内容を生成することもできます。

SESは他のAWSサービスとも統合可能です。例えばメール送信結果のログをS3バケットに保存したり、バウンス通知をSNSトピックに発行して別システムで処理したり、あるいは受信メールをトリガーにLambda関数を実行するといった連携も設定できます。こうした豊富な機能セットにより、SESは単なるSMTPサーバー以上の高度なメール配信プラットフォームとして機能します。

Amazon SESのユースケース:トランザクションメールやマーケティングメールでの活用

SESはアプリケーションから送信される様々な種類のメールで活躍します。代表的なのはユーザー向けのトランザクションメールです。例えばユーザー登録時の確認メール、パスワードリセットメール、注文確認や発送通知メールなど、アプリケーションが自動送信するメールはSESの典型的なユースケースです。従来、これらの機能を実装するには自前でSMTPサーバーを立てたり外部メール送信サービスを契約する必要がありましたが、SESを利用すればAWSリソース内で一貫してメール送信処理を実装できます。

またマーケティング用途の大量メール配信にもSESは適しています。ニュースレターやプロモーションメールを何万通と一斉配信する場合でも、SESならば高いスループットで対応可能です。開封率・クリック率などのトラッキング情報も取得できるため、マーケティングキャンペーンの効果測定にも役立ちます。ただし大量メール送信では受信者の許諾を得たリストを使う、配信停止用リンクを設けるなどのメール配信ベストプラクティスを遵守する必要があります。SESは適切に利用すれば大規模メール配信を低コストで実現できる強力なサービスと言えるでしょう。

Amazon SQS(Simple Queue Service)の概要と仕組み:非同期処理を支える完全マネージドキューサービス

最後にAmazon SQSについて詳しく見ていきます。SQSはメッセージを一時的に蓄えて順番に取り出す「キュー」を提供するサービスです。プロデューサー(送信側)とコンシューマー(受信側)の間にキューを置くことで、送受信を時間的に分離して非同期化し、システム間のデカップリング(疎結合化)を実現します。完全マネージド型のサービスのためインフラ管理不要で、高負荷時でもメッセージを安定的に処理できる信頼性の高いキュー基盤です。

Amazon SQSの仕組み:メッセージキューによる非同期処理とポーリング

SQSではまず送信側のアプリケーションがメッセージをキューに投入(エンキュー)します。メッセージは耐久性の高いストレージに保存され、安全に保管されます。受信側のアプリケーションは必要なタイミングでキューからメッセージを取得(デキュー)して処理を行います。このように受信側が自ら取りに行く形態をポーリングと呼びます。SQSではコンシューマーは定期的にキューをチェックし、新しいメッセージがあれば取得して処理し、無ければ待機するといった動作をします。

一度取得されたメッセージは処理中に他のコンシューマーに取られないよう一定時間キュー上で見えなくなります(可視性タイムアウト)。処理が完了すればコンシューマーがメッセージを削除し、処理失敗やタイムアウトした場合は再び見える状態に戻るため、他のコンシューマーが再処理を試みます。これにより少なくとも一度は確実に処理される少なくとも一度配信(at-least-once delivery)の保証がされています。結果として、送信側はメッセージを投げっぱなしにでき、受信側は処理可能なタイミングで取り出せるため、両者が直接連携している場合に比べシステム全体の柔軟性と耐障害性が飛躍的に向上します。

Amazon SQSの特徴:標準キューとFIFOキュー、高い可用性とスケーラビリティ

SQSには用途に応じて2種類のキュータイプが用意されています。一つはデフォルトの標準キューで、もう一つがFIFOキュー(First-In-First-Out)です。標準キューは最大スループットを重視したモードで、メッセージの順序は厳密には保証されず(ベストエフォート順序)、まれに重複メッセージが配信される可能性があります。その代わり1秒間に非常に大量のメッセージを処理できます。一方FIFOキューはメッセージを送信順に一度だけ配信することを保証するモードで、順序性や重複排除が要求される場合に使います。ただしFIFOでは1秒あたりの取引(TPS)上限が標準キューより低く、スループットと引き換えに順序保証を提供する形です。

いずれのキューでも、メッセージは複数のアベイラビリティゾーンに冗長的に保存され耐久性が確保されています。また需要に応じて内部で自動スケーリングするため、トラフィックが急増してもキューが処理しきれなくなる心配はほとんどありません。AWSによって裏側のインフラは管理され、高い可用性が維持されるため、利用者は単にキューを作成して利用するだけでメッセージング基盤を得ることができます。セキュリティ面でもIAMによるアクセス制御やキュー自体の暗号化、VPCエンドポイント経由での安全なメッセージ送受信など、エンタープライズ用途に耐える機能が備わっています。総じてSQSは「スケーラブルで信頼性の高いメッセージキュー」を手軽に利用できるサービスと言えるでしょう。

Amazon SQSのユースケース:非同期ジョブ処理やシステム間の疎結合化

SQSはバックエンド処理を非同期化しシステムを疎結合にする場面で幅広く活用されています。典型的なユースケースの一つが高負荷な処理のバッファリングです。例えばユーザーからのリクエストを一旦SQSキューに入れ、順番にワーカー(EC2インスタンスやLambda関数など)が取り出して処理することで、突発的な大量リクエストによるシステム過負荷を緩和できます。フロントエンドとバックエンドをキュー越しに繋ぐことで、処理が追いつかない場合でもリクエストをキューに貯めておき、後続処理を滑らかにできます。

また、マイクロサービス間の連携にもSQSは有効です。異なるサービス同士が直接API連携する代わりに、SQSを介してメッセージを受け渡すことでサービス間の独立性を高められます。一つのサービスがダウンしてもメッセージはキューに留まり、復旧後に処理再開できるため、システム全体の耐障害性が向上します。さらに処理の再試行(リトライ)制御も組み込みでサポートされており、一定回数処理に失敗したメッセージを別キュー(デッドレターキュー)に隔離するといったパターンも簡単に実装できます。こうした特性から、決済処理や注文受付など失敗できない処理のキューイング、ログ収集やバッチ処理のワークキューなど、様々なバックエンド処理でSQSは欠かせない存在となっています。

パブリッシャー/サブスクライバー/トピックの関係を解説:SNSの配信モデルにおける役割と流れを理解しよう

ここではSNSの基本概念である「パブリッシャー/サブスクライバー/トピック」という3つの用語について整理します。SNSを含むPub/Sub型のメッセージングサービスでは、これらの要素が相互に連携してメッセージ配信を実現しています。それぞれの意味と役割を理解しておきましょう。

パブリッシャー(Publisher)とは:SNSでメッセージをトピックに送信する役割

パブリッシャーとはSNSにおける「送信者」に該当します。パブリッシャーはメッセージの発行元であり、特定のトピックに対してメッセージを公開(パブリッシュ)します。例えばECサイトの注文管理システムが「注文完了」トピックのパブリッシャーとなり、注文確定のイベントをメッセージとして送信する、といった形です。パブリッシャー自身は誰が受信するかを意識せず、あくまでトピックに対してメッセージを送る点がポイントです。

サブスクライバー(Subscriber)とは:SNSから配信されたメッセージを受信する側

サブスクライバーとはSNSで配信されるメッセージの「受信者」です。サブスクライバーは特定のトピックに対して購読登録しておき、トピック経由でメッセージが配信されるとそのメッセージを受け取ります。受信手段は様々で、メールアドレスや電話番号(SMS)、ウェブのエンドポイント、別のAWSサービス(SQSやLambda)などがサブスクライバーとして登録可能です。先の例で言えば、注文完了トピックのサブスクライバーとして「顧客への確認メール送信プロセス」や「在庫更新システム」が登録されていれば、注文管理システムが投稿したメッセージをそれぞれ受け取り処理することになります。

トピック(Topic)とは:複数サブスクライバーを束ねるSNSの論理的なチャンネル

トピックとはSNSにおけるメッセージ中継用の論理チャネルです。簡単に言えば「パブリッシャーとサブスクライバーを仲介する場」にあたります。あるトピックには複数のサブスクライバーを紐付けることができ、パブリッシャーはそのトピック宛てにメッセージを1回送信するだけで、トピックに登録された全サブスクライバーへ通知が行き渡ります。先の例では「注文完了」というトピックがそれに該当し、このトピックが注文確認メール送信プロセスや在庫システムへの配信を取り持ちます。トピックごとに目的やテーマを決めておくことで、通知の分類とグループ化が可能になります。トピックはSNSの中心的な概念であり、パブリッシャーとサブスクライバーはこのトピックを介して間接的に繋がっているわけです。

SNSとSESの違いと使い分け:AWS通知サービスとメールサービスの違いと使い分け方を徹底解説

ここではSNSとSESの違いにフォーカスします。同じAWSのサービスであり、どちらもメッセージを送る機能を持つため一見似ていますが、その目的と得意分野は大きく異なります。特に「メールを送れる」という点で混同しがちですが、SNS経由のメール送信とSESによるメール送信には明確な違いがあります。以下、対応チャネルやメッセージ内容、ユースケースなどの観点から両者を比較し、どう使い分けるべきかを解説します。

対応するチャネルの違い:SNSはマルチチャネル通知、SESはEメール専用サービス

配信先のチャネルにまず大きな違いがあります。SNSは前述のようにEメールを含む複数のチャネルに対応したマルチチャネル通知サービスです。メール以外にSMSやプッシュ通知、Webhook、他のAWSサービスなど様々な宛先に一斉にメッセージを届けることができます。一方のSESはEメール専用のサービスです。SES自体はメール以外の経路には送信できません。言い換えると、「メール以外の方法でも通知したい」という場合はSES単体では対応できず、SNSのようなマルチチャネルサービスが必要になります。逆に「送信手段はEメールだけでよい」というケースでは、SESの専門性が強みとなります。

メッセージ内容と配信方法の違い:SNSは短文通知、SESはHTMLメールや添付ファイルも送信可能

次にメッセージの内容や送信方法の違いです。SNS経由で送信できるメール内容はシンプルなテキスト通知に限られます。例えばAWSコンソールからSNSトピックにメールアドレスをサブスクライブし通知を送る場合、タイトルと短い本文テキスト程度の簡易なメールが送信されます。細かなレイアウトや画像添付などはできず、あくまで簡易通知用途です。またSNSでは送信元アドレスはAWS側で管理されユーザーが変更できない(通常は「no-reply」的なアドレスになる)ため、受信者から見ると送信元のドメインコントロールもできません。

これに対しSESは本格的なメール配信サービスなので、HTMLメールでリッチな本文を作成したり、PDFなどの添付ファイルを付けて送ることが可能です。送信元アドレスも自社のドメインに設定でき(事前にドメイン所有の検証が必要)、ユーザーに届くメールの差出人を自由にカスタマイズできます。メール送信方法も、後述するようにSMTPインターフェースやAPI経由で柔軟に指定でき、メールの件名・本文・Cc/Bcc・添付ファイルなどあらゆる要素をプログラムから制御できます。総じて、SNSは「シンプルメッセージを手軽に通知する」ためのもの、SESは「コンテンツの自由度が高いメールを確実に届ける」ためのものと言えるでしょう。

ユースケースの違い:複数チャネルへのアラート通知(SNS)と大量ユーザーへのメール配信(SES)

想定されるユースケースも両者で大きく異なります。SNSはシステム間や対多数向けのリアルタイム通知に適しています。一つのイベントを起点に様々な経路でアラートや更新情報を発信したい場合にSNSが有効です。例えばサーバ障害発生時に運用管理者へメールとSMSでアラート発報しつつ、同時に自動復旧処理のLambda関数を起動するといったように、SNSなら単一のイベントをトリガーに複数のアクションを並行して実行できます。

一方、SESは主にエンドユーザー向けのメール配信で力を発揮します。ウェブサービスの会員全員にニュースレターを送る、ECサイトの顧客に一斉キャンペーンメールを送信するといった大量メール配信のケースではSES一択です。またユーザーごとに内容が異なるトランザクションメール(注文ごとの確認メール等)を大量に捌く場合も、SESの高いスループットとメール専用機能が役立ちます。要するに、「多様なチャンネルに同じ通知を広く届けたい」ならSNS、「メールというチャネルで内容込みのメッセージを確実に届けたい」ならSESが適しています。

SNSとSESの使い分けポイント:通知の目的や規模に応じたサービス選択指針

では実際にSNSとSESのどちらを使うべきか判断する際のポイントをまとめます。まず通知の内容と目的を確認しましょう。簡易なテキスト通知で十分か、リッチなメール内容が必要かで選択肢が変わります。前者であればSNSを使って他のチャネルとまとめて配信する方法が手軽です。後者、つまりメール本文のカスタマイズや高度な配信管理が必要であれば迷わずSESを使うべきです。また通知対象の数や規模も判断材料です。単発的なイベント通知であればSNSで様々な経路に拡散できますが、不特定多数のユーザーに定期的にメール送信するようなケースではSESの送信最適化機能が欠かせません。

実際のシステムでは両者を組み合わせて使うこともあります。例えばアプリケーションからはSNSで通知を発行し、重要なメールについてはSNSの受信側でLambdaを起動してSES経由で内容豊富なメールを送信するといったパターンも可能です。最終的には「通知をどのような形で届けたいのか」「メール特有の機能が必要か」といった観点で、SNSとSESを適切に使い分けることが大切です。

SQSとSNSの連携でできること:キューとトピックを組み合わせて実現できるアーキテクチャと活用例を解説

SQSとSNSは対比されることも多いですが、実は連携させて使うことでより強力なメッセージング基盤を構築できます。SNSの即時通知性とSQSの蓄積・再送性を組み合わせることで、一つのイベントを複数システムが非同期に処理するような高度なアーキテクチャが実現可能です。ここではSNSとSQSを連携させる方法と、そのメリット、具体的な活用シーンについて説明します。

SNSトピックからSQSキューへの連携方法:サブスクライバーとしてキューを登録

SNSとSQSを連携する基本方法は、「SQSキューをSNSトピックのサブスクライバーにする」ことです。具体的にはSNS側でトピックの配信先(エンドポイント)としてSQSキューを登録します。これにより、あるトピックにメッセージが投稿されるとSNSは指定されたSQSキューにそのメッセージを自動で送り込みます。SQSキューはSNSからpush配信されたメッセージを受け取る一種の受信者(サブスクライバー)として機能するわけです。

設定自体も難しくありません。AWSマネジメントコンソールやAWS CLIでSNSトピックに対し「エンドポイントの種類:SQS」としてキューのARNを指定し購読登録するだけです。以降、そのトピックでパブリッシュされたメッセージは即座にSQSキューに蓄積されます。なお、SNSからキューへ渡されるメッセージはJSON形式のラップされた内容になるため、キュー側で受け取るLambdaなどでは必要に応じてメッセージ本文をパースして利用します(オプションでRawメッセージ配信設定を有効にすればラップせず本文のみ転送可能です)。

SQSとSNSを連携するメリット:非同期処理による複数コンシューマーへの同時メッセージ配信

SNS×SQS連携により得られる最大のメリットは「一度のメッセージ送信で複数の消費者に非同期に処理させられる」点です。SNS単独でもトピックで複数サブスクライバーに配信できますが、各サブスクライバーがオンラインで即処理できるとは限りません。SQSキュー経由にすれば、受信側は自分のペースで処理できるのでシステム全体の耐久性が向上します。例えば一つのイベントを3つの異なるマイクロサービスで処理したい場合、SNSトピックに3つのSQSキューを購読させておけば、イベント発生時に3つのキューに同じメッセージが投入されます。各サービスは自分の担当するキューからメッセージを取得して並行して処理を進められます。あるキューの処理が遅れても他のキューには影響せず、それぞれ非同期に完了します。さらにキューを挟むことで万一消費者側がダウンしていてもメッセージは失われず蓄積されるため、後から確実に処理可能です。このようにSNSの同報性とSQSのバッファリング性を組み合わせることで、柔軟かつ信頼性の高い並行処理が可能になります。

SQSとSNSの連携ユースケース:ファンアウトパターンで同一メッセージを複数システムで処理

SNSとSQSの連携は、典型的なファンアウトパターンの実現手段として用いられます。一例を挙げると、ユーザーがアプリに画像をアップロードしたイベントを考えてみます。このイベントをSNSトピックに送信し、サブスクライバーとして3つのSQSキュー(それぞれ画像サムネイル生成、ウイルススキャン、通知メール送信の担当)を登録しておきます。ユーザーの画像アップロードという一つのメッセージがSNS経由で3本のキューにコピーされ、各処理用のバックエンドが非同期にその画像を取り出して処理を開始します。これによりアップロードごとにサムネイル作成・ウイルスチェック・メール通知が並行して進み、処理時間の短縮とコードの独立性確保が両立できます。

この他にも、決済完了イベントを複数の業務システム(請求書発行、在庫更新、ポイント加算など)に伝達する場合にSNS+SQS連携が有効です。一度のイベント発生で関連する全てのシステムに確実に情報を届け、各システムは自分のペースで処理できます。SNSとSQSを組み合わせることで、このような疎結合で拡張性の高いイベント駆動型アーキテクチャをAWS上で容易に構築できるのです。

SESでのメール送信の仕組み(SMTPとAPI利用)を解説:SMTPサーバー経由とAPI呼び出し2種類の送信方法を比較解説

ここではAmazon SESを使ってメールを送信する方法について、その代表的な2つのアプローチであるSMTP経由とAPI経由を説明します。SESはメールサービスなので当然送信手段がありますが、従来のメールサーバー的な使い方も、新しいクラウドAPI的な使い方も可能です。それぞれの仕組みを理解し、シーンに応じた使い分けができるようにしましょう。

SMTP経由でのメール送信:メールサーバーとしてAmazon SESを利用する方法

一つ目の方法は、SESを従来型のSMTPメールサーバーとして利用するやり方です。Amazon SESはSMTPエンドポイント(ホスト名とポート)を提供しており、ユーザーはSMTP認証用のユーザー名・パスワード(これはAWS認証情報に基づき発行します)を取得して、自分のメールクライアントやシステムからSMTPサーバーとしてSESに接続できます。例えばメール送信機能を持つ既存のアプリケーション(WordPressなど)のSMTP設定にSESのエンドポイントと資格情報を指定すれば、そのアプリはSES経由でメールを飛ばすようになります。

SMTP経由の利点は、既存システムとの互換性が高いことです。SMTPは標準的なメール送信プロトコルであり、多くのプログラミング言語やソフトウェアがSMTP送信機能をサポートしています。それらを修正することなく送信先サーバーをSESに切り替えるだけで、高信頼なメール配信基盤に乗せ替えられるわけです。注意点として、SESのSMTPサーバーを利用するにはAWSアカウントでSESの利用開始手続きと送り元メールアドレス/ドメインの検証が必要です。また初期状態ではSandbox(テスト環境)にあり送信先が制限されていますが、本運用にあたってはSandbox解除申請を行い制限を外す必要があります。

API経由でのメール送信:AWS SDKやCLIを用いてプログラムから送信する方法

二つ目の方法は、AWSのAPIを直接呼び出してメールを送信するやり方です。AWSは各種言語向けにSDKを提供しており、SESについてもSendEmailやSendRawEmailといったAPIが用意されています。開発者はこれらを自分のアプリケーションコードから呼び出すことで、メールを送信できます。例えばAWS SDK for JavaであればSendEmailリクエストに宛先や件名・本文を設定して実行するだけでメール送信が完了します。同様にAWS CLIを用いてターミナルからコマンド一つでメールを送ることも可能です。

API経由の利点は、AWSの他のサービスやアプリケーションロジックと緊密に統合できる点です。プログラム内で条件に応じてメール内容を生成し、そのままSES APIを叩いて送信するといった流れをシームレスに実装できます。また送信結果(メッセージIDやステータス)もAPIレスポンスで得られるため、アプリ側でトラッキングしやすいというメリットもあります。AWS Lambda関数や他のサーバーレス環境から直接SES APIを呼び出すこともでき、イベントドリブンなメール送信(例:特定のトリガー発生時に自動メール送信)も柔軟に構築できます。

SMTP方式とAPI方式の違い:既存システムとの互換性と送信制御の柔軟性

SMTP経由とAPI経由、それぞれの特徴をまとめると、既存資産の活用柔軟な統合かという違いになります。既にメール送信機能がSMTPベースで組まれているシステムの場合、SMTP方式でSESに繋ぐのが最も手軽でしょう。コード変更を最小限に抑えつつ、バックエンドだけSESの高信頼な配送に置き換えられます。一方、新規に開発するシステムやAWS上で完結するアプリケーションでは、API方式を使う方が細かな制御が利きます。メールの送信トリガーや頻度をアプリ側で自由に扱えますし、送信処理自体も非同期でキューイングしたりリトライ制御を組み込んだりといった高度なロジックを実装しやすくなります。

またAWSのサービス間連携という観点でも違いがあります。SMTP方式では基本的にSESは外部のメールサーバーとして動作するだけですが、API方式であればSESと他のAWSサービスを組み合わせたワークフローを構築しやすくなります。例えばAWS Step FunctionsからSES APIを呼ぶ、CloudWatchイベントでLambdaを起動してSES送信する、といった具合です。総じて、既存の仕組みに組み込みたいならSMTP、新規開発やAWSネイティブ環境ならAPI、と覚えておくとよいでしょう。

各サービスのユースケース比較(使いどころまとめ):SNS・SQS・SESそれぞれに適したシーンを徹底解説

ここまで見てきた内容を踏まえ、SQS・SNS・SESの「使いどころ」をまとめます。それぞれのサービスが最も威力を発揮するユースケースを整理すると以下の通りです。

  • Amazon SQS: プロセス間の非同期連携が必要なケース。例えばWebアプリとバッチ処理を疎結合にする、スパイク的な負荷をキューで吸収してバックエンド処理を安定させる、高信頼が求められる処理をキューイングして確実に実行する、など。
  • Amazon SNS: あるイベントをトリガーに複数のターゲットへ同時通知したいケース。例えばシステム監視アラートをメール・SMS・Slack(Webhook)へ一斉送信する、ユーザー向けのお知らせをメールとプッシュ通知の両方で配信する、マイクロサービスのイベントを他のサービス群にブロードキャストする、など。
  • Amazon SES: アプリケーションから大量のメールを送りたいケース。ユーザー登録メールやパスワードリセットメール、購入確認などのトランザクションメールを自動送信する、大規模なニュースレターやマーケティングメールを配信するといった用途で、メール特有の機能(コンテンツカスタマイズ、開封追跡、バウンス処理など)が必要な場合。

要約すると、SQSは内部処理の非同期化SNSは多方面への通知SESはメール配信に適していると言えるでしょう。設計しようとしている仕組みがどのシナリオに当てはまるかを考えることで、使うべきサービスがおのずと見えてきます。

SNS・SQS・SESの選び方【どれを使うべきか】:用途に応じたサービス選定のポイントを詳しく解説

最後に、実際にプロジェクトで「SNSとSQSとSESのうちどれを使うべきか?」と判断する際のポイントを整理します。以下に典型的な選択基準の例を示します。

複数システム・ユーザーに同時通知したい場合はSNSを選択(一斉通知に最適)

シナリオとして、ひとつのイベントをきっかけに複数のシステムや多数のユーザーへ通知を届けたい場合はSNSの利用が最適です。SNSなら単一のメッセージ送信でEメール・SMS・アプリ通知・他システムのキューなどへ一斉にメッセージを届けられます。例えば「在庫切れ発生」というイベントで管理者にメール通知しつつ、自動発注システムも起動するといった並行処理が簡単に実現できます。複数チャネルへの同報が必要な場面ではSNSを選びましょう。

非同期処理でシステム間を疎結合にしたい場合はSQSを選択(バックエンド処理の安定化)

システム間の結合度を下げて耐障害性を高めたい、バックエンド処理を非同期にしてフロントの応答を速くしたい、といった要件にはSQSが適しています。SQSのキューを挟むことで送受信を切り離せるため、一方が遅延・停止しても他方に影響が及びません。例えばWebサービスでユーザーの操作受付は即応答し、実際の処理はキュー経由で後で行うことでUXを損ねずに済みます。また再試行や順序制御が必要な処理でも、SQSなら仕組みを簡単に組み込めます。内部処理の非同期化にはSQSを選びましょう。

大量のEメールを安価に確実に送りたい場合はSESを選択(メール配信に特化)

ユーザーへのメール送信が主目的である場合、特に通数が多かったりメール内容のカスタマイズが必要な場合はSESを使うべきです。SESなら1通あたりのコストが低く、クラウドのスケーラビリティで大量メールも送れます。たとえば数万件規模の会員へのお知らせメール送信も、SESであればインフラ増強なしに一斉配信可能です。また送信ドメイン認証や配信結果のフィードバックによって到達率も高く維持できます。メールを扱うシステムでは迷わずSESを検討しましょう。

なお、現実のアプリケーションではこれらのサービスを組み合わせて使うケースも多々あります。SNSで受信したイベントを一部はそのまま通知し、同時にSQSに流してバッチ処理を行う、さらに必要に応じてSESでメールを送信するといった具合に、長所を組み合わせることで柔軟なシステム設計が可能です。それぞれのサービスの得意分野を理解し、要件に応じて最適なもの(あるいは複数)を選定することが大切です。今回整理したポイントを参考に、自身のプロジェクトでSQSSNSSESを上手に使い分け、効率的で拡張性の高いアーキテクチャを実現してみてください。

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