Docker AI Agentは、コンテナ開発の作業を読み取って原因を突き止め、承認を得たうえで実際にコマンドを実行するDocker公式のAIエージェントです。2025年にベータとして登場した当初の呼称が「Docker AI Agent」で、現在はGordon(ゴードン)という正式名に変わり、2026年5月19日にDocker Desktop 4.74で一般提供(GA)へ到達しました。この記事では、Gordonの有効化条件、docker aiコマンドを含む4つの使い方、無料枠とGordon Plusの料金、GA版で加わった永続メモリやMCP連携までを、公式情報にもとづいて整理します。
まとめ:Docker AI Agent(Gordon)の要点
- 正体:旧称「Docker AI Agent」=現在のGordon。Docker Desktopに内蔵され、ローカルでコンテナ操作を代行するAIエージェント。
- 提供状況:2026年5月19日にGA。利用にはDocker Desktop 4.74以降とDockerアカウントへのサインインが必要。
- 使い方:ターミナルの
docker ai、Docker Desktopの専用タブ、Docker Hub・docs.docker.comの各ページのアイコン、の4か所から呼び出せる。 - 料金:Dockerアカウントがあれば無料枠で利用可(数時間ごとにリセット)。上限を超える場合はGordon Plus(月20ドル)などの追加プラン。
- 安全性:シェルコマンド・ファイル変更・Docker操作はすべて実行前に承認を求める。権限はセッション単位。
Docker AI Agent(Gordon)の正体と従来ツールとの違い
Gordonは、実行中のコンテナ・イメージ・ボリューム・ネットワークといった自分の環境をあらかじめ把握したうえで動くエージェントです。ログやDockerfileを読み、失敗の原因を追跡し、修正案を提示し、ユーザーの承認後にコマンドを実行します。単なるチャット型の質問応答ではなく、環境を見て手を動かす点が従来のドキュメント検索やFAQと異なります。
「Docker AI Agent」から「Gordon」への改称とGAまでの経緯
この機能は2025年初頭に「Docker AI Agent」の名でベータ公開され、当時はDocker Desktop 4.38に統合されていました。その後、正式名称がGordonに定まり、2026年5月19日にDocker Desktop 4.74以降で一般提供が開始されました。したがって「Docker AI Agent」で検索してたどり着く実体は、現在のGordonと同一です。旧バージョンの解説に残る「ベータ版」「4.38」という記述は、GA後の現状とは一致しません。
Gordonができること
Gordonが担う作業は、開発のインナーループ(手元での修正・作成・最適化)に集中しています。代表的な用途は次のとおりです。
- デバッグ:「コンテナがすぐ終了する」と伝えると、ログを読んで環境変数の欠落・不適切なベースイメージ・誤ったボリュームマウントなど実際の原因まで遡る。
- コンテナ化:「このアプリをコンテナ化してPostgres付きの開発環境を作って」と指示すると、コードを読んでDockerfileを起草し、docker-composeの構成まで組み立てる。
- 最適化:「このDockerfileを最適化して」に対し、マルチステージビルドの提案、キャッシュが効くようレイヤーを並べ替え、より軽量なベースイメージへの置き換えを行う。
- 環境の把握:「動いているコンテナを見せて」「Dockerはディスクをどれくらい使っている?」といった状態確認に、環境を前提に即答する。
有効化する条件と手順(個人・組織)
Gordonの有効化は、個人利用と組織(Business)利用で扱いが分かれます。
個人利用(サインインで既定有効)
前提はDocker Desktop 4.74以降と、Dockerアカウントへのサインインの2点です。サインイン済みのユーザーには既定で有効化されているため、Docker Desktopを4.74以降に更新してログインすれば、追加の設定なしで使い始められます。クレジットカードの登録も不要です。
Business組織での有効化(管理者設定)
Businessサブスクリプションの組織では、管理者がSettings Management(設定管理)で「Enable Gordon」を「Enabled」または「Always enabled」に設定して展開します。組織単位での有効化にはDockerサポートへの連絡が必要な場合があります。会社の管理端末でGordonのタブが出ない場合は、この組織ポリシー側の設定を確認します。
Docker AI Agent(Gordon)の使い方:4つの接点
Gordonは同じエージェントを異なる場所から呼び出せます。文脈(開いているリポジトリや手元のディレクトリ)を引き継ぐため、どこから使っても同じ知識が働きます。
ターミナルから使う(docker aiコマンド)
もっとも手数が少ないのがCLIです。任意のディレクトリで次を実行すると、ターミナル内のTUI(テキストUI)が開きます。
docker ai
質問を入力し、Gordonが提案したアクションに対してyで承認すると実行されます。エディタやターミナルから離れずに、その場でデバッグや最適化を回せます。
Docker Desktop・Docker Hub・docsから使う
残る3つの接点はGUIです。Docker DesktopにはGordon専用のタブがあり、コンテナ一覧で起動に失敗したコンテナからワンクリックでGordonを開けます。Docker Hubの各リポジトリページではGordonアイコンからイメージ・タグ・メタデータについて質問でき、docs.docker.comの各ページではGordonアイコンからDockerに関する疑問をその場で尋ねられます。
承認モデルとセキュリティ設計
Gordonは既定で「承認優先(Approval First)」で動きます。シェルコマンド・ファイル変更・Docker操作はいずれも実行前に内容が表示され、ユーザーが許可して初めて動きます。許可はセッション単位で、セッションを閉じると権限はリセットされます。個々のアクションを都度承認するほか、そのセッションのあいだだけ全アクションを許可することも選べます。信頼できる定型作業では自動承認(auto-approve)を有効にできますが、既定は都度承認です。実行基盤はSOC 2 Type 2・ISO 27001に対応しています。
永続メモリと組み込みツールセット
GA版で加わった目玉が永続メモリです。あわせて、Gordonが標準で持つツール群と、外部ツールを足すMCP連携を押さえておくと、どこまで自動でこなせるかの見通しが立ちます。
永続メモリ(セッションをまたぐ記憶)
永続メモリにより、Gordonはプロジェクトの文脈や過去に行った修正をセッションをまたいで記憶します。ローカルのデータベースに事実を保存・参照し、好みや「すでに試したこと」を積み上げるため、使い込むほど提案が一般的なDockerのベストプラクティスから、その環境固有の具体的な内容へと寄っていきます。
標準ツールセットとMCPによる拡張
Gordonにはfilesystem(ファイル操作)、shell(コマンド実行)、think(思考の作業領域)、todo(作業リスト)、memory(記憶)という組み込みツールセットが備わります。さらにDockerのMCP Toolkitを通じて、コンテナイメージとして提供される検証済みMCPサーバー(300以上)を接続でき、Gordonが扱える外部ツールを増やせます。MCPサーバーの管理・実行の手順はDocker MCP Toolkitの使い方、複数MCPをまとめて中継する仕組みはDocker MCP Gatewayの記事で詳しく扱っています。
cagentとの違い:既製エージェントか、自作フレームワークか
Gordonと混同しやすいのがcagent(docker-agent)です。両者はDocker製ですが役割が異なります。Gordonは、あらかじめ用意された「Dockerを使いこなすための既製エージェント」で、手元のデバッグ・作成・最適化を対象にDocker Desktop内でローカルに動きます。一方cagentは、自分でエージェントを組み立てるためのオープンソースのフレームワーク兼ランタイムです。
| 観点 | Gordon | cagent |
|---|---|---|
| 位置づけ | 既製のDocker用AIエージェント | エージェントを作る枠組み・実行環境 |
| 提供形態 | Docker Desktop内蔵 | オープンソース/Docker CLIプラグイン |
| 定義方法 | 設定不要(そのまま使う) | YAMLで宣言的に定義 |
| 代表コマンド | docker ai |
docker agent run / docker agent new |
| 基盤 | cagent上に構築 | ―(Gordonの土台) |
cagentはdocker agent new(またはcagent new)で、作りたい内容を説明するだけでエージェントのYAML定義を生成できます。Gordonは「Dockerを使う自分」を助ける道具、cagentは「自分のエージェントを作る」道具、と用途で選び分けるのが基本です。逆に言えば、CIで無人実行したい・独自のオーケストレーションで複数エージェントを連携させたい場合はGordonでは向かず、cagent側で組む対象になります。複数エージェントを協調させる設計思想はマルチエージェントの記事も参考になります。
料金プラン:無料枠とGordon Plus
Gordonは、Dockerアカウントがあれば無料枠で使えます。セットアップもクレジットカードも不要で、無料枠は日常的な利用を賄い、上限は数時間ごとにリセットされます。上限に頻繁に届くヘビーユーザー向けには、無料枠の2倍の容量となるGordon Plus(月20ドル)があり、単体プランでは無料枠の2倍〜20倍まで容量を選べます。まず無料で試し、上限に当たるようなら追加プランを検討する流れが現実的です。
| プラン | 容量の目安 | 料金 |
|---|---|---|
| 無料(Dockerアカウント付帯) | 日常利用向け・数時間ごとにリセット | 0円 |
| Gordon Plus | 無料枠の約2倍 | 月20ドル |
| 単体プラン(上位) | 無料枠の2〜20倍 | 容量に応じて変動 |
料金や上限は改定されることがあるため、契約前に必ず公式の料金ページで最新の条件を確認してください。
よくある質問
Docker AI Agentは無料で使えますか?
Dockerアカウントがあれば無料枠で使えます。無料枠は数時間ごとにリセットされ、日常的な利用を賄います。上限に頻繁に届く場合はGordon Plus(月20ドル)などの追加プランで容量を増やせます。
Docker AI Agentを呼び出すコマンドは何ですか?
docker aiです。任意のディレクトリで実行するとターミナル内にTUIが開き、質問の入力とアクションの承認(y)を行えます。GUIならDocker Desktopの専用タブからも使えます。
Docker AI AgentとGordonは別物ですか?
同じものです。「Docker AI Agent」はベータ時代の呼称で、現在の正式名称がGordonです。2026年5月19日にDocker Desktop 4.74でGAしています。
どのバージョンのDocker Desktopが必要ですか?
Docker Desktop 4.74以降が必要です。サインイン済みの個人ユーザーには既定で有効化されているため、更新してログインすればそのまま使えます。
Gordonとcagentはどう違いますか?
Gordonは既製のDocker用AIエージェントで、Docker Desktopに内蔵されデバッグや最適化を代行します。cagentは自分でエージェントを組み立てるためのオープンソースのフレームワークで、YAMLで定義してdocker agent runなどで動かします。GordonはこのcagentのうえにDocker公式が作ったエージェントです。