96 人が閲覧(直近 30 日) ビジネス理論・用語

As Is / To Beとは?意味と分析フレームワークの手順、Before/Afterとの違い

As Is / To Beとは?意味と分析フレームワークの手順、Before/Afterとの違い

As Is(アズイズ)は「現状」、To Be(トゥービー)は「あるべき姿」を指し、両者を同じ物差しで並べて、その差(ギャップ)を取り組むべき課題として取り出す考え方です。As-Is/To-Be、AsIs/ToBeとも書きます。経営計画から業務改善、システムの要件定義、個人の目標設定まで同じ型で使えます。

この記事では、意味とBefore/Afterとの違いを押さえたうえで、分析の手順、どちらを先に書くか、ギャップを取りこぼさない出し方、そのまま使えるテンプレートまでを順に解説します。TOGAFやBABOK、デジタル庁のガイドラインで同じ考え方がどう呼ばれているかも整理しました。

まとめ:As Is / To Beの意味と使い方の要点

  • 意味:As Is=現状、To Be=あるべき姿。差分のギャップが課題になります。日本語では「現状とあるべき姿」と言い換えられます。
  • Before/Afterとの違い:Before/Afterは施策の前後を並べる事後の比較です。As Is / To Beはこれから埋める差を決めるための事前の比較です。
  • 書く順番は目的で変える:目標や戦略を決めるならTo Beから、既存業務やシステムを作り替えるならAs Isから書きます。
  • ギャップは3区分で出す:数値の差だけでなく、残すもの・新しく要るもの・なくすものに分けると、見落としが表に出ます。
  • 最後は測り直す:施策の後にAs Isを同じ指標で測り直し、ギャップが縮んだかを確かめます。

As Is / To Beの意味と似た言葉との違い

As Is=現状、To Be=あるべき姿、差分=ギャップ

As Isは「今そうなっている姿」、To Beは「一定の期限までにそうなっていたい姿」です。肝心なのは、2つを同じ項目・同じ単位で書くことにあります。As Isを「月の問い合わせ件数120件」と書いたなら、To Beも「月の問い合わせ件数200件(2027年3月末)」と書きます。そろっていれば、差の「80件」がそのまま課題の大きさになります。

課題は、この差を行動の言葉に直したものです。「問い合わせが少ない」は現状の感想で、課題ではありません。「月の問い合わせを80件増やす」と書いて初めて、打ち手を比べられるようになります。

英語の「as is」は「現状のまま」という意味

ビジネス用語を離れると、英語の as is は「手を加えず、そのままの状態で」という意味の成句です。契約やソフトウェアのライセンスでは「現状有姿(保証なし)」の意味で使われます。たとえばMITライセンスの免責条項は THE SOFTWARE IS PROVIDED “AS IS”, WITHOUT WARRANTY OF ANY KIND で始まり、ソフトウェアを無保証のまま提供すると定めています。

フレームワークとしてのAs Isも「手を加える前の姿」という点は同じですが、To Beと対にして使うのが前提です。契約書やライセンスの「as is」を「現状分析」と訳すと意味を取り違えます。

Before/Afterとの違いは「比べる時点」

混同されやすいのがBefore/Afterです。どちらも2つの状態を並べますが、比べる時点と目的が違います。

観点 As Is / To Be Before / After
使う時点 施策を決める前 施策を実行した後
右側の中身 まだ実現していない目標 実際に起きた結果
答える問い 何をどれだけ変えるべきか 何がどれだけ変わったか
主な成果物 課題一覧と実行計画 効果測定の報告

2つは対立するものではなく、順につながります。As Is / To Beで計画を立て、実行後にBefore/Afterで効果を確かめ、その結果が次のAs Isになります。

Can Be(実現できる姿)との違いと期限の添え方

日本の実務では、To Beと並べて「Can Be(実現できる姿)」を置くことがあります。To Beが理想から引いた目標なのに対し、Can Beは予算・人員・期間の制約を踏まえて届く水準です。TOGAFやBABOKのような規格に定義がある語ではないので、社内で使うなら「今期のCan Be、3年後のTo Be」のように期限を添えて意味をそろえておくと混乱しません。

規格・公的文書でのAs Is / To Beの呼び名

As Is / To Beはコンサルティングの現場でよく使われる言い方ですが、同じ構造はエンタープライズアーキテクチャやビジネスアナリシスの標準、国のガイドラインにも組み込まれています。英語の資料や公的な調達仕様書では別の語で書かれていることが多いため、対応を押さえておくと読み替えに困りません。

文書 現状(As Is) あるべき姿(To Be) 差の扱い
TOGAF 9.2(The Open Group) Baseline Architecture Target Architecture Gap Analysis(第23章)
BABOK Guide v3(IIBA) 6.1 Analyze Current State 6.2 Define Future State 6.4 Define Change Strategy
DS-100(デジタル庁) 現状の把握と分析 業務要件の定義 既存業務との差異の把握
DX推進指標(経済産業省) 自社の取組の現状 あるべき姿 あるべき姿と現状とのギャップ

BABOKの戦略分析(Strategy Analysis)は、現状分析(6.1)と将来像の定義(6.2)の後、移行戦略の決定(6.4)の前に「6.3 Assess Risks(リスク評価)」を挟む構成です。To Beを描いてすぐ打ち手に飛ぶのではなく、移行の途中と移行後に起こりうる悪影響を先に洗うという順序は、社内でAs Is / To Beを回すときにもそのまま使えます。

デジタル庁の「デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン(DS-100)」は、2026年6月12日決定の版でも、業務要件の定義について「既存の業務がある場合は、定義する業務要件と既存実施している業務との差異が、明確に把握できるよう留意するものとする」と定めています。行政のシステム調達では、As IsとTo Beの差を把握できるようにすることが、業務要件定義のルールとして定められているということです。

経済産業省の「DX推進指標」は2019年7月に策定された自己診断の指標で、目的を、経営者や社内の関係者が「あるべき姿と現状とのギャップ」などについて認識を共有し、必要なアクションを取るための気付きを得ることと説明しています。2026年2月13日にはデジタルガバナンス・コード3.0に合わせて設問と成熟度レベルが改訂され、同年9月18日から提出はWebフォームに移りました。DXの文脈で「あるべき姿」と言われたら、この指標の成熟度レベルがTo Beの物差しとして使えます。

As Is / To Be分析の手順:テーマ設定から測り直しまで6ステップ

ステップ1:テーマ・範囲・期限の決定

最初に「何について」「どこまで」「いつまでに」を1文で決めます。「営業部門の新規リード獲得を、2027年3月末までに」のように対象と期限が入っていれば十分です。範囲が「会社全体」のように広すぎると、As Isの調査だけで数か月かかり、分析が止まります。

ステップ2:To Beの指標と状態の定義

To Beは、測れる指標(定量)と、指標だけでは表せない状態(定性)の組で書きます。「月間リード200件」は指標、「営業担当が見込み度の高い順に架電できている」は状態です。指標にはKPIの考え方をそのまま使えます。数年先の全社目標から逆算する場合は、中期経営計画の数値目標をTo Beの上位目標として置きます。

ステップ3:To Beと同じ軸でのAs Is測定

To Beで使った指標と状態を、そのまま現状について測ります。軸がずれると差が出せません。業務やシステムが対象なら、DS-100が「現状の把握と分析」として挙げる6項目(利用者、業務、データ、既存の情報システム、情報システムの運用、関連調査)が、抜けを点検するチェックリストの目安になります(DS-100自身は「例えば」として挙げています)。業務の把握には、範囲・業務フロー・業務量・実施体制・実施時期・実施場所まで含めるよう書かれています。

市場や競合を含めた外部環境を現状に入れる場合は、3C分析やSWOT分析の結果をAs Isの欄に持ち込むと、主観で書くのを防げます。

ステップ4:ギャップの課題化と原因の掘り下げ

項目ごとに差を出し、「リードを月80件増やす」のように動詞で終わる課題文にします。そのうえで、差が生まれている原因を1段掘ります。リードが少ない原因が「流入が少ない」のか「フォームで離脱している」のかで、打ち手はまったく変わるからです。原因の掘り下げにはなぜなぜ分析が向いています。

ステップ5:打ち手の優先順位付けと実行計画

1つの課題に複数の打ち手を出し、効果の大きさと実行の難しさの2軸で並べます。効果が大きく難しくないものから着手し、担当者と期限を決めます。ここで、BABOKがリスク評価を挟むのと同じく、打ち手を実行したときに悪化しうる指標(問い合わせは増えたが成約率が落ちる、など)を1つずつ書き添えておくと、後で判断を誤りにくくなります。

ステップ6:実行後のAs Is再測定

期限が来たら、ステップ3と同じ指標でAs Isを測り直します。縮んだギャップと残ったギャップを比べ、残った分が次のサイクルの課題です。月次や四半期で回す定常的な改善ならPDCAサイクルに、状況が数週間単位で変わりTo Be自体を書き換える必要がある場面ならOODAループにつなげます。

To BeとAs Isを書く順番:目的別の判断基準

「To Beから先に書く」よう勧める解説が目立ちますが、これは目標や戦略を決める場面の話です。業務やシステムを作り替える場面では、As Isから書くほうが安全です。

目標・戦略を決めるならTo Beが先です。現状の数字を先に見ると、それを少し伸ばした値が目標になりやすく、「前年比5%増」のような現状の延長しか出てきません。売上目標、事業ビジョン、キャリアの目標のように、どこまで伸ばすかを決めること自体が目的なら、制約を外してTo Beを先に描きます。

既存業務やシステムを作り替えるならAs Isが先です。DS-100のサービス・業務企画も「現状の把握と分析」から始まり、「課題整理」「企画案作成」と進む順序で書かれています。サービス設計12箇条の2番目も「事実を詳細に把握する」です。業務改善でTo Beを先に描くと、理想の業務フローには載らない例外処理(月末だけ発生する手作業、特定の取引先だけの紙の請求書など)が抜け落ち、新しい仕組みの稼働後に「前はできていた作業ができない」という事態になります。業務の作り替えを外部委託と組み合わせる場合の考え方はBPOとBPRの違いの記事で整理しています。

迷ったときの判断基準は1つです。変えたくない既存の仕組みが大きいならAs Isから、ゼロから決める部分が大きいならTo Beから書きます。

ギャップを維持・新規・廃止の3区分で出す方法

ギャップを「To BeからAs Isを引いた数値の差」だけで捉えると、数値にならない変化を取りこぼします。TOGAF 9.2のGap Analysisは、ギャップを items that have been deliberately omitted, accidentally left out, or not yet defined(意図して外したもの、うっかり抜け落ちたもの、まだ定義していないもの)を浮かび上がらせることを技法の前提とし、次の手順で洗い出します。

  1. 縦軸に現状(Baseline)の構成要素、横軸にあるべき姿(Target)の構成要素を並べた表を作る
  2. 縦軸の最後に「New(新規)」の行、横軸の最後に「Eliminated(廃止)」の列を足す
  3. 両方にある要素は交点に「Included(維持)」と書く
  4. 現状にしかない要素は「廃止」の列に置き、意図した廃止か、うっかり抜け落ちたのかを1つずつ確かめる
  5. あるべき姿にしかない要素は「新規」の行に置き、作るか調達するかを決める

手順4が要です。現状にあってあるべき姿に描かれていない要素を1つずつ突き合わせることで、上の章で触れた例外処理の抜け落ちが表に出ます。経費精算の業務を例にすると、次のようになります(説明のための架空の例です)。

要素 As Is To Be 区分
上長の承認 紙に押印 ワークフロー上で承認 維持(手段のみ変更)
紙の申請書 あり なし 廃止(意図的)
経理の手入力 あり なし 廃止(意図的)
会計システムへの自動連携 なし あり 新規
定期券区間の二重請求チェック 経理が目視 記載なし 廃止(抜け落ち)

最後の行が、数値の差からは見えないギャップです。To Beの業務フローに描かれていないだけで、実際には必要な確認作業でした。「廃止」の列に置いた要素は、意図して外したのか、描き忘れたのかを必ず確かめます。TOGAFも、廃止の列と新規の行に入ったものはすべてギャップであり、正しく廃止されたと説明するか、復活させる・開発または調達するかのどちらかに決めるよう求めています。

TOGAFは業務領域のギャップの発生源として、人(多能工化の教育など)、プロセス、ツール、情報、測定、財務、設備の7つを挙げています。ギャップ一覧を作り終えたら、この7つの観点で抜けがないかを見直すと、ツール導入の話ばかりで教育や測定方法の変更が抜けている、といった偏りに気づけます。

As Is / To Beのテンプレート:書き方と記入例

表計算ソフトでもスライドでも、列を次の6つにすれば形が決まります。1行に1つの観点を書き、As IsとTo Beは同じ単位で埋めます。

観点 As Is(現状) To Be(期限) ギャップ 課題 担当・期限
月間リード数 120件 200件(2027年3月) 80件 リードを月80件増やす マーケ・3月末
フォーム完了率 1.2% 2.0%(2026年12月) 0.8pt 入力項目を減らす Web担当・12月末
架電の順序 受付順 見込み度の高い順(2026年11月) 基準がない 見込み度の基準を作る 営業・11月末

表の数値は記入例として置いた架空の値です。書くときの注意は3つです。As Isの欄には「リードが足りない」のような評価を書かず、測った事実だけを書きます。To Beの欄には「もっと増やす」のような形容詞を書かず、数値か観察できる状態を書きます。定性的な観点(3行目)でも、ギャップ欄には「何がないのか」を具体的に書きます。

スライドで見せる場合は、左にAs Is、右にTo Be、中央に矢印とギャップを置く横並びの構成が一般的です。ただしスライドは項目が3〜4個に限られるため、分析そのものは上の表で行い、スライドは結論の共有に使うと情報が欠けません。

シーン別のAs Is / To Beの軸と指標の置き方

型は同じでも、シーンによってAs IsとTo Beに置く指標は変わります。代表的なシーンと、軸の置き方の例です。

シーン As Isの測り方の例 To Beの書き方の例
経営・事業計画 売上・利益率の実績 中期計画の数値目標
マーケティング 流入数・CV率・顧客単価 期末のKPI目標値
業務改善 業務フローと処理時間 新しい業務フローと処理時間
システム要件定義 現行業務・現行システム 業務要件・機能要件
人材育成 スキル評価の現状点 役割に求める到達点
個人のキャリア 今の職務と保有スキル 3年後の職務と必要スキル

人材育成や個人のキャリアのように数値にしにくいテーマでも、「顧客折衝を1人で担当できる」のように観察できる行動で書けば、As Isとの差を判定できます。

As Is / To Be分析がうまくいかない場面と対処

型が単純なぶん、崩れ方にも決まったパターンがあります。次のどれかに当てはまったら、表を書き直します。

  • As Isに課題を書いている:「人手が足りない」は現状ではなく解釈です。「担当者2名で月300件を処理」と事実で書き直します。
  • To Beが形容詞で終わっている:「効率的な業務」では差が測れません。処理時間や件数、観察できる状態に置き換えます。
  • As IsとTo Beの軸がずれている:As Isは件数、To Beは満足度、のように単位が違うと、ギャップが計算できません。
  • 「廃止」の検証を飛ばしている:To Beに描かれていない現行作業を確かめないまま進めると、稼働後に必要な作業が消えます。
  • 関係者が表を見ていない:To Beを一部の人だけで決めると、実行する部署が目標に納得していないまま計画が動きます。

そもそもAs Is / To Beを使うべきでない場面もあります。障害対応のように原因がわからないまま起きている問題は、あるべき姿は「正常に動く」で自明なので、ギャップを並べても前に進みません。原因分析を先に行います。また、市場や競合の動きが速く、To Beが数週間で古くなる状況では、時間をかけて精緻な表を作るより、観察と判断を短い周期で繰り返すほうが合っています。

よくある質問(As Is / To Be)

As Is / To Beを日本語で言い換えると?

「現状とあるべき姿」「現状と理想」と言い換えるのが一般的です。経済産業省のDX推進指標も「あるべき姿と現状とのギャップ」という言い方をしています。英語の資料では、current state と future state、baseline と target という対で書かれることも多くあります。

AS ISとはどういう意味ですか?

英語の as is は「そのままの状態で」という意味です。ビジネスのフレームワークでは「現状」を指し、To Be(あるべき姿)と対にして使います。契約書やソフトウェアのライセンスで使われる「AS IS」は「現状有姿・無保証」の意味で、フレームワークの用法とは別物です。

As IsとTo Beはどちらが先ですか?

目的によります。目標や戦略を決める場面では、現状に引きずられて目標が小さくならないようTo Beから先に書きます。既存の業務やシステムを作り替える場面では、例外処理などを取りこぼさないようAs Isから先に把握します。

As-IsとTo-Beの差分とは?

同じ項目について、あるべき姿と現状の差を取ったものです。数値の項目なら引き算で出し、「月80件増やす」のような課題文に直します。数値にならない項目は、現状にあってあるべき姿にないもの(廃止)と、あるべき姿にあって現状にないもの(新規)に分けて洗い出します。

As Is / To Beとギャップ分析は同じものですか?

ギャップ分析は、As Is / To Beの手順のうち「差を出して課題にする」部分を指して使われることが多い呼び名です。As Is / To Beはテーマ設定から実行後の測り直しまでを含む一連の流れで、ギャップ分析はその中の1工程にあたります。TOGAFでは、ギャップ分析は設計中のアーキテクチャを検証する技法として位置づけられています。

関連記事

お気に入りに入れた記事の一覧

この記事は以下の記事からリンクされています

資料請求

今日のトレンド記事 直近 24 時間で、いつもより多く読まれている記事

  1. 2026.10.23 テックブログ Renta!不正アクセスでサービス停止:再開未定の現状と運営側の停止判断・証拠保全・段階的再開
  2. 2026.07.09 テックブログ Muse Imageとは?Metaの画像生成AIの使い方・API料金(1枚0.01ドル)と日本での提供状況【2026年10月】
  3. 2026.10.22 テックブログ Tomcatのバージョン一覧とサポート期限【2026年10月】最新版11.0.27、9.0系は2027年3月末終了・9.1系は2030年末まで
  4. 2026.10.24 テックブログ ブラストメール不正アクセス:配信先288件の漏えいと利用企業の報告・通知の手順
  5. 2025.12.10 コラム 今の50代は何世代?バブル世代・団塊ジュニア・氷河期の境目と特徴

RELATED POSTS 関連記事

目次