類似性の法則とは、自分と態度や価値観が似ている相手に好意を抱きやすくなる心理の傾向です。「共通点が多いと好きになる」のは研究でも確かめられています。ただし原典が示したのは共通点の数ではなく、似ている点と食い違う点の比率でした。さらに313研究をまとめたメタ分析では、既存の関係を調べた研究に限ると、実際に似ていることと好意の関連は有意になりませんでした。この記事では、原典の実験と式、関連が弱まる条件、恋愛と仕事での線引きを、出典を添えて整理します。
まとめ:類似性の法則の要点
態度の類似と好意の関連は多くの研究で確かめられています。ただし共通点の数で決まるわけではなく、関係の段階や場面によって関連の強さが変わります。
| 論点 | 要点 | 出典 |
|---|---|---|
| 定義 | 態度の類似が好意を高める | Byrne, 1961 |
| 効く量 | 共通点の数ではなく比率 | Byrne & Nelson, 1965 |
| 重要度の差 | 条件付きで重要な話題の一致が約3倍 | Byrne & Griffitt, 1973 |
| 限界1 | 既存の関係では実際の類似が非有意 | Montoya et al., 2008 |
| 限界2 | 関係が長くても類似は増えず | Bahns et al., 2017 |
| 恋愛の初対面 | 予測したのは知覚された類似 | Tidwell et al., 2013 |
| 口コミ | 似ていない投稿者は説得力が落ちる | Naylor et al., 2011 |
| 対立説 | 反発仮説/欲求の相補性 | Rosenbaum, 1986/Winch, 1958 |
| 仕事での扱い | 面接・チーム編成では抑える側 | 本記事の見解 |
類似性の法則の定義と、原典が示した「比率」の考え方
類似性の法則は、社会心理学では類似性‐魅力仮説(similarity-attraction hypothesis)として研究されてきました。中心にいるのが米国の心理学者ドン・バーン(Donn Byrne)です。バーンは1960年代から、態度がどれだけ似ていると相手をどれだけ好きになるかを、実験室で数値として測る方法を確立しました。
架空の回答者を使ったByrne(1961)の実験
手続きはこうです。まず参加者に、政治や宗教などさまざまな話題への態度を答えてもらいます。後日、「別の参加者が書いたもの」として態度尺度の記入済み用紙を渡し、その人物への好感度を評定させます。渡された用紙はまったく架空のもので、参加者自身の回答に合わせて似た内容にも違う内容にも作り分けられていました(門田幸太郎・平本毅「対人認知における類似性と非類似性について」『立命館産業社会論集』第40巻第3号、2004年)。
結果は明快で、用紙の態度が自分の態度に近いほど、参加者はその人物を好意的に評価しました。相手の見た目も声も会話もない、紙の上の態度だけで好意が動いたわけです。この手続きは架空の他者を使うことから bogus stranger 法と呼ばれ、以後の対人魅力研究の標準になりました。日本心理学会の心理学ミュージアム「類は友を呼ぶ?――類似性と好意の関係――」は、回答の一致率を100%・67%・50%・33%に作り分けた同型の手続きを図解しています。
Byrne & Nelson(1965)の直線関数と、分母に入る「食い違い」
バーンとネルソンが1965年に発表した論文の題名は「Attraction as a linear function of proportion of positive reinforcements(好意は正の強化の割合の一次関数である)」でした(Journal of Personality and Social Psychology, 1(6), 659-663)。好意は、似た態度の個数ではなく、提示された態度全体に占める似た態度の割合の直線関数だという主張です。
バーンとグリフィットが1973年の総説で示した定式化は、正の強化の重み付き総和を、正と負の強化の重み付き総和で割った値の一次関数、というものでした(Byrne, D., & Griffitt, W. “Interpersonal Attraction,” 『Annual Review of Psychology』, 24, 317-336, 1973, p.329)。分母に負の側、つまり食い違った態度が入ります。同総説はこの直線関数が、小学4年生から高齢者まで、また日本・インド・メキシコの学生でも成り立つことを報告しています。
この式に沿うと、共通点の数だけでは好意を説明できません。全項目の重みが同じだとすると、共通点を10個見つけても、同時に食い違いが20個表に出れば、比率は3分の1です。日本語の学術レビューも「類似性とは、類似した態度項目の絶対数ではなく、その比率が重要であることも指摘されてきた」と、Kaplan & Anderson(1973)とByrne & Nelson(1965)を挙げて明記しています(門田・平本, 2004)。共通点が増えれば比率も上がりますが、同じ場面で表に出る食い違いも比率を左右します。共通点の数だけを数える見方では、この食い違いの側が抜け落ちます。
比率モデルそのものの追試ではありませんが、態度の類似と好意の関連は近年の研究でも確認されています。態度の強さと交流の意向の関係を調べた2020年の論文では、4研究・計428名を統合したミニ・メタ分析で、対象者と態度が似ているほど好意が強いという結果が得られました(Philipp-Muller, A., et al. 『Frontiers in Psychology』, 11, 1919, 2020)。
類似性の原理・同類性原理・類似性バイアスの呼び分け
同じ現象が分野ごとに違う名前で呼ばれるため、検索すると別物のように見えます。
- 類似性の法則/類似性の原理/類似性‐魅力仮説:社会心理学で、態度の類似が対人魅力を高めるという命題を指します。実質的に同じものです。
- 同類性原理(ホモフィリー):社会学・ネットワーク分析の用語で、似た属性の人どうしがつながりやすいという集団レベルの規則性を指します。個人の好意ではなく、できあがった人間関係の分布を説明する言葉です。
- 類似性バイアス:判断の歪みとして名指すときの呼び方です。採用面接や人事評価で、自分に似た相手を無自覚に高く評価してしまう現象を問題視する文脈で使われます。
なお「類似の法則」で検索するとゲシュタルト心理学の群化の法則(似た形や色をひとまとまりに見る知覚の法則)が混ざります。こちらは対人関係の話ではなく、視覚のまとまり方の話です。
「類似」「類似点」「相似」「近似」の違いと、共通点の反対語
言葉としての「類似」は、デジタル大辞泉で「互いに共通点があること。似かようこと」と定義されています(コトバンク「類似」)。「類似点」はその似かよっている部分そのものを指す名詞です。類似性の法則でいう類似性は、この「似かよっている度合い」のことです。
近い言葉でも、相似と近似は守備範囲が違います。相似は「形や性質が互いによく似ていること」のほかに「一つの図形を拡大または縮小した関係にあること」という幾何学の意味を持ち、生物学では起源の違う器官が機能のために似た形になる現象も指します(コトバンク「相似」)。近似は「非常に似通っていること」に加え、「ある数値に非常に近いこと」を表し、近似値・近似計算のように数量に使われます(コトバンク「近似」)。対人関係の話で使うのは「類似」のほうです。
「共通点」の反対語は「相違点」で、似ていない部分を指します。
似ていると好意が生まれる理由
バーンの説明の中心にあるのは合意的妥当性(consensual validation)という考え方です。人には自分の態度が妥当かどうかを確かめたいという動機、イフェクタンス動機(effectance motive)があります。自分の考えと同じ態度を持つ他者が現れると、その考えに妥当性のお墨付きが与えられます。だから態度の似た相手に魅力を感じる、という筋道です(門田・平本, 2004)。
認知の側面からは、認知的流暢性による説明も提案されています。自分の枠組みに近い情報は処理が楽で、処理が楽な対象は評価が上がりやすいという知見を、似た相手への好意に当てはめた考え方です。こちらは仮説的な説明で、バーンの合意的妥当性ほど直接には検証されていません。
重要な話題の一致の重み:条件付きで約3倍
一致すればどれでも同じ効果、ではありません。バーンとグリフィットの総説は、重要な話題での一致が、重要でない話題での一致に比べておよそ3倍の相対的な効果を持つと報告しています(Byrne & Griffitt, 1973)。ただし条件が3つ付いています。一致度が0でも1でもない中間の水準にあること、態度項目の重要度がばらついていること、そして重要な項目と重要でない項目のどちらで一致しどちらで食い違うかが体系的に分かれていることです。この3つがそろわない場面では、どの話題で一致したかは好意の差としてあまり表れません。
日常に当てはめると、天気やコンビニの新商品の好みのように相手が重く見ていない話題の一致は、好意への寄与が小さいと考えられます。重みを持ちやすいのは、仕事の進め方やお金の使い方、家族との距離感のように、相手が重要と考えている軸での一致です。何を重要と感じるかは人によって違う点には注意が要ります。
表面的な類似より、価値観などの心理的な類似
類似の中身にも差があります。出身地や持ち物のような表面的な類似より、信念や価値観といった心理的な類似のほうが重要だという指摘が繰り返しなされてきました(Rokeach, 1968; Insko, Nacoste, & Moe, 1983/門田・平本, 2004)。「同じ大学」「同じ県の出身」を探し当てて盛り上がるのは会話のきっかけとしては機能しますが、好意の土台としては弱いほうに属します。
類似性の法則の限界を示す3つの研究
類似性の法則は無条件に成り立つ法則ではありません。関係の段階、類似が生じる経路、反対説の3つの観点から、関連が弱まる条件が調べられています。
既存の関係における実際の類似性:Montoyaらのメタ分析
2008年、モントーヤらは313件の実験・調査から460の効果量を集めてメタ分析を行いました(Montoya, R. M., Horton, R. S., & Kirchner, J. “Is actual similarity necessary for attraction?” 『Journal of Social and Personal Relationships』, 25(6), 889-922, 2008)。この分析は、類似性を実際の類似性(双方の回答や測定値を突き合わせた一致度)と知覚された類似性(本人が「似ている」と感じている度合い)に分けたところに価値があります。
全体では実際の類似性が r=.47、知覚された類似性が r=.39 で、どちらも大きく有意でした。問題は関係の段階で分けたときです。
| 関係の段階 | 実際の類似性 | 知覚された類似性 |
|---|---|---|
| 相互作用なし(紙面・写真のみ) | 効果あり | 効果あり |
| 短時間の相互作用 | 効果あり(ただし減衰) | 効果あり |
| 既存の関係 | 有意でない | 効果あり |
実際の類似性と好意の関連は、相互作用のない研究で最も強く、短時間の相互作用の研究では弱まり、既存の関係を調べた研究では有意になりませんでした。一方、知覚された類似性は、既存の関係でも好意との関連を保っていました。なお、これは段階ごとに別々の研究群を比べた結果で、同じ二人を追跡して関連が消える過程を測ったものではありません。
「一緒にいるうちに似てくる」の検証:Bahnsらの1,523組
仲の良い二人が似ているのを見ると、長く一緒にいたから似てきたのだと考えたくなります。バーンズらは2017年、この因果の向きを正面から検証しました(Bahns, A. J., Crandall, C. S., Gillath, O., & Preacher, K. J. 『Journal of Personality and Social Psychology』, 112(2), 329-355)。
一緒にいる二人組をその場で呼び止めて両者に回答してもらう手法(free-range dyad harvest)で、11標本・1,523組を集め、性格特性・態度・価値観・余暇活動・飲酒や薬物使用を比較しています。ペア内の類似は、測定した変数の86%で統計的に有意でした。
決め手は次の分析です。似てきたのが影響によるものなら、親しさや親密さ、関係の長さ、その話題について話し合った量が増えるほど類似度も上がるはずです。実際には、親しさ(closeness)、関係の長さ、話題についての話し合いのいずれも類似度に効果を持ちませんでした。より深い親密さ(intimacy)にはごく小さな効果があり、はっきりした効果が見られたのは、その態度を二人がどれだけ重要と考えているかの共有でした。追加の縦断研究でも、大教室で初めて話した相手とのペアは偶然の水準を超えて似てはおらず、初回の後も関わりが続いたペア(全体の23%)には有意な類似が見られました。
著者らの結論は、類似は主に選択(ニッチ構築)によって生じており、関係の初期に最も重要で、その後の関係の発展に対する重要性は薄れていく、というものです。互いに影響し合って似ていく過程がまったく無いとまでは言っていませんが、この研究で見る限り、似た者どうしである主な理由は、最初に似た相手を選んでいることにあります。
反発仮説と相補性:「正反対が惹かれ合う」の出どころ
類似性の法則そのものへの反論も出ています。ローゼンバウムは1986年、似ているから惹かれるのではなく、似ていないから遠ざかるのだという反発仮説を提出しました(Rosenbaum, M. E. “The repulsion hypothesis: On the nondevelopment of relationships,” 『Journal of Personality and Social Psychology』, 51(6), 1156-1166)。実験で観察されてきた差は、類似条件で好意が上がったのではなく、非類似条件で好意が下がったことの反映ではないか、という指摘です。その後の研究はこの仮説に部分的な支持と反証の両方を出しており、決着済みの問題ではありません。
「正反対が惹かれ合う」という言い回しの学術的な出どころは、ウィンチの欲求の相補性です。ウィンチらが1954年に論文で提示し(Winch, R. F., Ktsanes, T., & Ktsanes, V. 『American Sociological Review』, 19(3))、1958年の著書『Mate Selection』にまとめました。既婚カップルを対象に、支配欲求の高い人には同じく高い人よりも低い人のほうが関係が成立しやすいとしました。相補的とされる欲求の組み合わせには、支配と自立、求護と養護、顕示と恭順、攻撃と屈従、責任と養護などが挙げられています(Wagner, 1975/門田・平本, 2004)。
ただし、相補性仮説は類似性‐魅力仮説ほどには実証的な支持を集めていません。恋愛相談で「正反対のほうがうまくいく」と言うときは、この差を承知したうえで話すべきです。
恋愛で類似性が働く場面と、働かない場面
恋愛文脈では、類似性の法則が研究の裏づけより広く当てはめられがちです。実際の出会いの場で測った研究を中心に、線が引ける3点を挙げます。
スピードデーティングでの実際の類似と知覚された類似
紙の上の架空の相手ではなく、対面の出会いで確かめた研究があります。ティドウェルらの研究では、大学生187名(女性93名・平均19.6歳)が計8回開催されたスピードデーティングのいずれか1回に参加し、1人あたり約12人の異性と4分ずつ話しました。実際の類似(事前の質問紙で測った一致)と知覚された類似(各デートの直後に尋ねた「似ていると思うか」)を同時に分析したところ、恋愛的な好意を有意に予測したのは知覚された類似だけで、実際の類似は予測しませんでした(Tidwell, N. D., Eastwick, P. W., & Finkel, E. J. 『Personal Relationships』, 20(2), 199-215, 2013)。同じ論文は、知覚された類似も「全体として似ている」と尋ねた場合より、個別の特性ごとに尋ねた場合のほうがはるかに弱い予測因になると報告しています。
2023年には、より大きな標本で性格の類似が検証されました。18〜28歳の異性愛の独身者397名による940組の実際のスピードデートで、ビッグファイブ(5因子性格)の実際の類似も、相手の性格をどう見たかに基づく類似も、初対面の恋愛的魅力とは関連しませんでした(Humberg, S., et al. 『Personality Science』, 4, e7551, 2023)。
2つを合わせると、恋愛の初対面で好意と結びついていたのは性格の細かな一致ではなく、「この人とは全体として似ている」という感触のほうでした。性格の一致度で相手を絞り込む方法は、少なくとも初対面の惹かれやすさについては、これらの研究からは支持されません。
自分に似た顔の合成画像への評価:信頼と魅力の食い違い
自分に似た顔への反応は、文脈で符号が変わります。デブリューンは参加者本人の顔を合成した画像を使い、自己類似の顔が信頼ゲームで相手を信頼する頻度を上げることを示しました(DeBruine, L. M. “Facial resemblance enhances trust,” 『Proceedings of the Royal Society B』, 269(1498), 1307-1312, 2002)。
続く2005年の研究では、同じ操作を魅力の評定に対して行っています。自己類似の顔は信頼できると判断された一方、魅力への効果はそれよりはっきり小さく、短期的な関係を想定した文脈では自己類似が魅力をむしろ下げました。長期的な関係を想定した文脈では効果がありませんでした(DeBruine, L. M. “Trustworthy but not lust-worthy,” 『Proceedings of the Royal Society B』, 272(1566), 919-922, 2005)。著者は、顔の類似が血縁の手がかりとして働き、協力には有利に、性的魅力には不利に作用すると解釈しています。
「顔が似ている人を好きになる」は、安心感や信頼のことを指しているなら研究と整合します。性的な魅力のことを指しているなら、少なくとも短期的な文脈では逆向きです。
拒絶不安の強い人の好意のサイン:シグナル増幅バイアス
共通点を探して相手に合わせる行動をとっても、相手が気づいていないことがあります。ヴォラウアーらは4つの研究でシグナル増幅バイアスを示しました。拒絶されることへの不安が強い人ほど、自分のアプローチが相手に伝えている好意の量を過大に見積もる、という偏りです(Vorauer, J. D., Cameron, J. J., Holmes, J. G., & Pearce, D. G. “Invisible overtures: Fears of rejection and the signal amplification bias,” 『Journal of Personality and Social Psychology』, 84(4), 793-812, 2003)。
この偏りは、慢性的な愛着不安として測っても、過去の拒絶経験を思い出させて誘発しても同じように現れました。媒介分析からは、拒絶不安の強い人が「相手は自分の遠慮を差し引いて解釈してくれるはずだ」と誤って想定していることが示唆されています。控えめに共通点を示すやり方は、本人の感覚ほど伝わっていないと考えたほうが安全です。
仕事で使うときの線引き
ビジネス記事は類似性の法則を営業テクニックとして紹介しますが、採用・チーム編成のように判断の公正さや質が問われる場面では、類似性は活用より抑制の対象です。場面ごとに扱いを分けます。
採用面接と人事評価での類似性バイアスの抑制
採用面接と人事評価では、類似性は活用対象ではなく排除すべきバイアスです。出身校や趣味のような職務に無関係な共通点を理由に候補者を高く評価すれば、それは職務適性の判断ではなく類似性バイアスの発現です。メタ分析では、実際の類似性と好意の関連は短時間の相互作用の研究でも有意でした。面接は初対面の短い対話なので、この関連が働く条件にかかります。対策として本記事が勧めるのは、構造化面接で評価軸と質問を事前に固定し、複数名で独立に採点し、職務に無関係な一致を評価根拠に書かせない運用です。「話が合った」は評価コメントとして成立しません。評価者側の歪みの全体像は人事評価エラーとは?11種類の具体例と原因・防ぎ方、評価者訓練の研究データで整理しています。
米国VCの共同投資:親近性で組んだ相手と投資の成否
チーム編成では、何が似ているかで結果が分かれた研究があります。ゴンパーズらは米国のベンチャーキャピタリストの共同投資を分析し、同じ大学の出身、同じ民族的背景、同じ前職といった親近性で相手を選んで組んだ共同投資は、投資が成功する確率が大きく下がることを示しました。一方、トップ大学の学位のような能力に基づく特徴で組んだ場合は成績が上がっていました。著者らは、この差は案件選びの悪さではなく、投資後の意思決定の質の低さによるものと分析しています(Gompers, P. A., Mukharlyamov, V., & Xuan, Y. “The cost of friendship,” 『Journal of Financial Economics』, 119(3), 626-644, 2016)。
米国VCという特定の場面の分析ですが、同じ類似でも能力に関わる類似と親近性による類似で結果が逆向きだった点は示唆的です。チームを組むときは能力の補完を基準にし、出身や経歴の一致は会話のきっかけにとどめる、というのが本記事の線引きです。
商談と既存顧客への当てはめ方
商談や顧客対応そのものを検証した研究ではないため、ここからは前述の結果を当てはめた見方です。初期接触で重みを持ちやすいのは、趣味や出身地より、意思決定の進め方や失敗の許容度のように相手が重要と考えている論点での一致です(条件付きで約3倍という前述の結果)。比率の式では食い違いが分母にだけ入るので、無理に共通点を作りに行って食い違いが表に出れば、比率はかえって下がります。関係ができた後の顧客については、メタ分析で好意と関連していたのが知覚された類似性だったことから、属性の一致を示す資料を足すことに大きな期待は置けません。
オンラインレビューの投稿者の類似と説得力
マーケティングの記事は「導入事例や一般人の声は類似性で効く」と勧めます。消費者向けレビューの実験は、これを条件付きで支持します。ネイラーらはオンラインレビューの実験で、投稿者の属性が分からないとき、読み手は投稿者を自分と似た好みの人だと推測し、似た投稿者のレビューと同程度に説得されることを示しました。これは商品と投稿者が1つずつ示される条件の結果で、複数の商品と投稿者が並ぶ条件では、属性不明の投稿者が似た投稿者よりわずかに不利になる場合もありました。説得力が下がったのは、投稿者が自分と似ていないと分かったときでした(Naylor, R. W., Lamberton, C. P., & Norton, D. A. “Seeing ourselves in others,” 『Journal of Marketing Research』, 48(3), 617-631, 2011)。
この実験は消費者向け商品のレビューを扱ったもので、BtoBの導入事例は検証していません。含意を引くなら、投稿者の属性は想定する読み手と重なるときに書き添え、明らかに重ならない属性は前面に出さないほうが安全です。なお、この効果は読み手が投稿者を自分に似ていると推測することで生じており、態度の一致比率を操作したバーンの実験とは仕組みが別です。
似た人に囲まれた職場で起きる「偽の合意効果」
似た者どうしで固まった環境にいると、自分の考えは多数派だという感覚が強まります。これは合意性の過大視(false consensus effect)として1977年に報告された現象です(Ross, L., Greene, D., & House, P. 『Journal of Experimental Social Psychology』, 13(3), 279-301)。人は自分の選択や信念がどれくらい一般的かを見積もるとき、自分の立場に引きずられて過大に見積もります。原典の実験と対策はフォールス・コンセンサス効果(偽の合意効果)とは?原典研究・具体例・対策で扱っています。
類似性の法則で似た人ばかりが周囲に残ると、この偏りは強まりやすくなります。職場では、身近な数人が賛成しているから社内の大勢も賛成だろうと見積もったり、顧客の反応を自分たちの好みで読んだりする形で表に出ます。似た人が集まった場では、賛成の多さを全体の傾向と読み替えず、立場の違う人の意見を別に集める必要があります。
よくある質問
類似性の法則とは何ですか?
態度や価値観が似ている相手ほど好意を持たれやすい、という社会心理学の知見です。ドン・バーンが1960年代に実験室で測定可能にし、好意は似た態度の個数ではなく、提示された態度全体に占める似た態度の比率の一次関数になるとされました(Byrne & Nelson, 1965)。
共通点が多いと好きになるのは本当ですか?
会う前から短時間の相互作用までの段階では、研究で関連が確かめられています。ただし効くのは共通点の数ではなく、似ている点と食い違う点の比率で、条件がそろえば重要な話題の一致ほど重みが大きくなります(Byrne & Griffitt, 1973)。既存の関係を調べた研究では、実際の共通点より「似ていると感じているか」のほうに好意との関連が認められました(Montoya et al., 2008)。
似た者同士はうまくいかないというのは本当ですか?
研究は「うまくいかない」までは言っていません。示されているのは、既存の関係を調べた研究では実際の類似性と好意の関連が有意にならないことと(Montoya et al., 2008)、関係の長さや親しさが類似度を押し上げないことです(Bahns et al., 2017)。類似は関係の初期に最も重要で、その後の発展に対する重要性は薄れていく、というのが後者の著者らの結論です。
類似性の法則と相補性の法則の違いは何ですか?
類似性の法則は、態度や価値観が似ている相手に惹かれるという説です。相補性の法則(欲求の相補性)は、支配欲求の高い人には低い人が合うといった、異なる欲求どうしが補い合う相手に惹かれるという説で、ウィンチらが1954年に論文で提示し、1958年の著書にまとめました。実証的な支持は類似性のほうが厚く、相補性仮説の支持は限られています。類似が引きつけるのではなく非類似が遠ざけるのだとする反発仮説(Rosenbaum, 1986)も、類似性の法則への対立説に数えられます。
「類は友を呼ぶ」は心理学的に正しいですか?
似た者どうしがつながる傾向を表す言葉としては、研究の裏づけがあります。社会学ではこの傾向を同類性原理(ホモフィリー)と呼びます。一緒にいるところを呼び止めた二人組1,523組を調べた研究では、測定変数の86%でペア内の類似が有意でした。同じ研究で、関係の長さや話し合いの量は類似度に効いておらず、類似は主に最初に似た相手を選ぶことによって生じるという解釈が支持されています(Bahns et al., 2017)。
好きな人と同じ行動をしてしまうのはなぜですか?
相手の仕草や話し方が自然に写る現象は、類似性の法則そのものというより模倣(ミラーリング)として研究されています。好意がある相手ほど模倣が起きやすく、模倣された側の好感度も上がります。仕組みと逆効果になる条件はミラーリング効果とは?真似してくる人・LINEで真似される心理と逆効果を心理学の実験で解説で扱っています。