ハードトゥゲット(ハード・トゥ・ゲット・テクニック)は、わざと手に入りにくい存在を演じて相手の関心を引く駆け引きです。恋愛指南では「簡単になびかない人ほど魅力的」と説明されますが、1973年の代表的な心理学研究では、最初の5つの実験で「手に入りにくい相手ほど魅力的」という仮説を支持する結果が得られませんでした。
この記事では、代表的な研究でどんな相手が好まれたのか、2023年のレビューまでの研究が示す効果の条件と限界、日本の営業マニュアルで使われる「あなただけは特別」という別の意味、好き避けやロミオとジュリエット効果との違いを、論文の記述に沿って整理します。
まとめ:ハードトゥゲットが効く条件と逆効果になる条件
- Walsterら(1973年)の実験6では、誰に対しても手に入りにくい相手は、自分にだけ手に入りやすい相手より評価が低くなりました。好まれたのは自分には手に入りやすく、他の人には手に入りにくい相手です。
- 誰にでも恋愛的な関心を示す人は好かれにくく、スピードデーティングの分析では「全員に恋愛的な関心を示す度合い」と「好かれる度合い」の相関が r=-.41 でした(Eastwickら、2007年)。
- 冷たくする効果は相手の状態で反転します。すでに関係を進めたいと思っている相手には「欲しい気持ち」を高めますが、好意そのものは下げます。関心の薄い相手には、欲しい気持ちも好意も下げます(Daiら、2014年)。
- 2023年に18本の研究をまとめたレビューも、相手が感じる不確実さと難しさが適切な水準にある場合に、効果が生じる可能性を示しています(Hazelら、2023年)。
- 実務での使い方は「冷たくする」ではなく「あなたには特別に時間を割いている」と伝わる選び方を見せることです。ここで紹介した研究結果だけでは、無視や既読スルーを続ける方法が有効だとは判断できません。
ハードトゥゲットの意味と、原典が区別した2種類の「手に入りにくさ」
恋愛心理学での定義:関心がないように見せる配偶戦略
ハードトゥゲット(hard to get)は英語の「手に入れにくい」で、play hard to get は「気のないふりをする」「簡単にはなびかないふりをする」という日常表現です。心理学では、この振る舞いが本当に相手の魅力評価を上げるのかという問いとして扱われてきました。
Jonason と Li(2013年)は、ハードトゥゲットを「表向きは関心がないように見せて、相手にもっと自分を求めさせる配偶戦略」と定義しています。ポイントは、本心では関心があるのに関心がないように見せる点です。本当に関心がない場合や、緊張で避けてしまう場合はハードトゥゲットに当たりません。
日本の営業マニュアルでの用法:「あなただけは特別」と伝える説得法
日本語の営業・説得術の解説では、同じ名前がほぼ逆向きの意味になります。起業支援サイトのドリームゲートは営業テクニックのマニュアルで、ハード・トゥ・ゲット・テクニックを「私にとって、あなたは特別な存在だ」「あなたにだけは使ってほしい」と相手の自己重要感を刺激し、好意や信頼を得る説得方法と説明し、対人迎合法(イングラチェーション)に当たるとしています。活用例として「手に入れにくいものを、あなただけに提供します」という提案、タイムセール、限定品、特別会員制度が挙がります。通信教育のアイ・イーシーの教材『ビジネス心理学』も、ハード・トゥ・ゲットを「『あなただけ』と喜ばせて成約に導く心理テクニック」として扱い、特別に思われたいという「重要感」を満たす方法と説明しています。
恋愛の用法は「相手から見て手に入りにくい自分」を演出し、営業の用法は「他の人には出さないものを相手にだけ出す」特別扱いを演出します。冷たくするか特別扱いするかで、行動は正反対です。
この2つをつなぐのが、次の表にある原典の区別です。Walster らは、手に入りにくさを「自分にとって」と「他の人にとって」の2つに分けて考えました。営業の「あなただけ」は、他の人には手に入りにくく自分には手に入りやすい、という表の1行目と同じ形をしています。
原典が区別した「自分にとって」と「他の人にとって」の手に入りにくさ
| 相手のタイプ | 自分にとって | 他の人にとって | 1973年実験6での評価 |
|---|---|---|---|
| 選択的に手に入りにくい | 手に入りやすい | 手に入りにくい | 最も好まれた |
| 一様に手に入りにくい | 手に入りにくい | 手に入りにくい | 選択的な相手より低い |
| 一様に手に入りやすい | 手に入りやすい | 手に入りやすい | 選択的な相手より低い |
| 情報なし | 不明 | 不明 | 選択的な相手より低い |
恋愛指南でいうハードトゥゲットは表の2行目(誰にでも冷たい)を指すことが多いのですが、研究で支持されたのは1行目です。恋愛でも、通説より営業マニュアルの「あなただけ」に近い形のほうが研究の結果と合っています。
1973年の研究:5実験での仮説不支持と実験6の選択的な好意
原典は Elaine Walster、G. William Walster、Jane Piliavin、Lynn Schmidt による論文「Playing hard to get: Understanding an elusive phenomenon」(Journal of Personality and Social Psychology 26巻1号、113-121ページ)です。表題の elusive phenomenon は「捉えどころのない現象」という意味で、仮説を支持する結果がなかなか得られなかった経緯をそのまま表しています。
同じ Walster 夫妻は Ellen Berscheid と共に、1971年にも10代を対象にした2つの実験で、手に入りにくい人のほうが社会的に望ましいと見なされるかを調べています(The Journal of Experimental Education 39巻3号、73-77ページ)。この仮説は確認されず、結果は予測と逆でした。
著者らは「手に入りにくい女性は、関係を急ぐ女性より魅力的な相手だ」という言い伝えを確かめるため、5つの実験を行いました。5つとも、手に入りにくい相手のほうが高く評価されるという結果は出ませんでした。
夏期講座に通う男子大学生71人を対象にした6つ目の実験で、著者らは女性の魅力を決める要素を「その女性が被験者本人にとってどれだけ手に入りにくいか」と「他の男性にとってどれだけ手に入りにくいか」の2つに分けました。そのうえで、被験者には手に入りやすく他の男性には手に入りにくい女性が、一様に手に入りにくい女性・一様に手に入りやすい女性・情報のない女性のいずれよりも好まれると予測し、この仮説は強く支持されました。
後の研究者もこの経緯を前提にしています。Wright と Contrada(1986年)は論文の中で、選り好みの効果が「これまでの研究では得られていなかった」手続きで再検証すると書いており、Eastwick と Finkel も選択的な好意を扱った実験室研究として「Walster et al., 1973, Study 6」を名指ししています。自分にだけ手に入りやすい相手が好まれるという主張の根拠は、原典の6番目の実験です。
その後の研究で分かった、効く条件と逆効果になる条件
選択性の程度と魅力評価(Wright と Contrada、1986年)
Wright と Contrada は Journal of Social and Personal Relationships(3巻2号、131-148ページ)で、デートの相手を中程度に選ぶと思われている人は、まったく選ばない人とも極端に選ぶ人とも比べて魅力的に見られると予測しました。3つの実験でこの予測が支持され、効果は男性の対象者にも女性の対象者にも見られ、実際のデートの場面でも確認されています。
「誰でもいいわけではない、でも近寄れないほどではない」という位置が最も評価されるということです。極端に選り好みする演出は、1973年の「一様に手に入りにくい相手」と同じ扱いになります。
恋愛的な好意の選択性と相互評価(Eastwick ら、2007年)
Eastwick、Finkel、Mochon、Ariely は Psychological Science(18巻4号、317-319ページ)で、大学生156人が7回のセッションで異性9〜13人と4分ずつ話したスピードデーティングのデータを分析しました。参加者どうしが互いに評価し合うので、好意を向ける側と向けられる側の両方を測れます。恋愛以外の好意では、人を好きになりやすい人ほど相手からも好かれる傾向があり、Eastwick と Finkel は Kenny(1994年)の集計を引いて、この相関が初対面どうしでも平均 r=.43 と紹介しています。
恋愛の場面では向きが逆でした。特定の相手に向けた好意はその相手から返される傾向がありましたが(r=.14)、参加者全員に好意を示す人ほど相手から好かれませんでした(r=-.41)。この負の相関は、「この人は今日の参加者の何%にイエスと言うと思うか」という評価、つまり選り好みしない人に見えるかどうかが一部を説明する可能性が示されましたが、媒介効果の検定は p=.065 で、5%水準では有意ではありませんでした。著者らは、恋愛では関係の最初の数分から「自分は特別だと感じたい」欲求が働いているのではないかと推測しています。
相手の好意の不確実性と魅力評価(Whitchurch ら 2011年、Birnbaum ら 2018年)
Whitchurch、Wilson、Gilbert は Psychological Science(22巻2号、172-175ページ)で、バージニア大学の女子学部生47人に男子学生4人の Facebook プロフィールを見せ、その男性たちが自分をどう評価したかを伝えました。条件は「とても好いている」「平均程度に好いている」「どちらか分からない」の3つです。
前の2条件を比べると、好いてくれる男性のほうが魅力的に評価され、好意の返報性どおりの結果でした。一方で、どちらか分からない条件の参加者は、とても好いていると伝えられた参加者よりも強く男性に惹かれていました。分からない条件では、男性について考えた頻度の自己評価が最も高くなりました。ただし、媒介分析の間接効果の95%信頼区間はゼロを含み、思考頻度が魅力評価を媒介したという証拠は暫定的です。
この結果は「相手を不安にさせればよい」という意味ではありません。実験の男性たちは少なくとも平均程度には好意を持っていると伝えられており、嫌われている可能性は条件に入っていません。
関連して、Birnbaum、Reis らは6つの研究で、関係の不確実性と相手の性的魅力との関係を調べています(Computers in Human Behavior、2018年)。研究1〜4では、参加者がオンラインで交流した相手(実験協力者)が恋愛的な意図をはっきり示すか曖昧にするかを操作しました。関係の不確かさが相手の性的な魅力を下げたのは、相手が自分に関心がないと受け取られたときだけでした。恋愛的な関心をはっきり示すことは、相手の意図への確信を高め、性的な魅力を上げていました。著者らは、先の見えない関係に気持ちを投資しないよう、自分を守るために欲求が抑えられると解釈しています。ただし、この研究は、関心が伝わっていれば曖昧さが魅力を高めると示したわけではありません。
心理的コミットメントによる「欲しい」と「好き」の違い(Dai ら、2014年)
Dai、Dong、Jia は Journal of Experimental Psychology: General(143巻2号、521-526ページ)で、ハードトゥゲットの効果を「欲しい(wanting:動機)」と「好き(liking:感情)」に分けて測りました。論文は冒頭で、ハードトゥゲットが有効だという言い伝えは、それまでの研究でほとんど支持されてこなかったと書いています。
2つの研究の結果、相手がすでにその人との関係を進めたいと心理的にコミットしている場合、ハードトゥゲットは「欲しい」を高める一方で「好き」を下げました。コミットしていない場合は「欲しい」も「好き」も下がりました。
実務上の結論ははっきりしています。関係を進めようと心理的にコミットしていない相手には、手に入りにくく振る舞うことが逆効果になりました。関心を持っている相手でも好感が下がったため、本記事では長く続く関係づくりの手段として勧めません。ただし、Daiらが測定したのは実験時の反応であり、関係が続く期間ではありません。
18本の研究のレビューと「ほどよい不確実さ」(Hazel ら、2023年)
Hazel、Barker、Pronin は Journal of Sex Research(60巻3号、368-383ページ)で、ハードトゥゲットを「関心があるか分からないように見える、または気を引くのが難しく見える」振る舞いと定義し、恋愛や性的な関係の結果との関係を調べた研究を4つの文献データベースから集めました。対象になったのは18本です。レビューは、相手が感じる不確実さと難しさが適切な水準にある場合に、ハードトゥゲットが効く可能性を示しています。
効果を左右する変数として、追う側がその相手にどれだけコミットしているか、追う側が不確実さをどれだけ嫌うか、追う側と追われる側の性別と愛着スタイルが挙げられています。責任著者はPsyPost の取材に、簡単すぎる人も難しすぎる人も、ほどよく難しく、関心をほどよく不確かに見せる人より魅力が低く見られると説明しています。同じ取材で、回避型の愛着の人と女性はハードトゥゲットを使うことに肯定的で、不安型の愛着の人と男性はハードトゥゲットの相手を追いやすいとも述べています。
1973年から2014年までの個別の結果とも矛盾しません。評価が上がるのは「誰にでも手が届くわけではないが、関心が無いとも見えない」位置で、冷たさを強めるほど効くわけではありません。
恋愛でハードトゥゲットを使うときの線引き
研究結果を合わせると、恋愛で使える形は「冷たくする」より「選んでいることを見せる」に近くなります。優先度の高い順に並べます。
- 相手の関心を先に確かめる:Dai らの結果では、コミットしていない相手にはどちらの評価も下がります。連絡がほぼ一方通行の段階では使わないのが原則です。
- 相手には特別に時間を割き、それ以外には選り好みしていると伝わるようにする:1973年の実験6と Eastwick らの結果が支えるのはこの形です。Eastwickらの研究で評価の低さと関連していたのは、多くの相手に恋愛的な好意を持つ傾向であり、誰にでも親切にすることではありません。
- 選り好みは中程度に留める:Wright と Contrada の結果では、極端に選ぶ人は選ばない人と同様に評価が下がりました。
- 返信を遅らせる、誘いを断るといった「冷たさの演出」を続けない:好感を下げる方向に働くことが Dai らの結果から読み取れます。
やってはいけないのは、関心を持ってくれたばかりの相手に既読スルーや予定の嘘で「忙しい人」を演じることです。相手に関心がないと受け取られるおそれがあるため、本記事では勧めません。ただし、既読スルーや予定の嘘の効果を、ここで紹介した研究が直接検証したわけではありません。
ハードトゥゲットを使うのはどんな人か:Jonason と Li の4つの研究
Jonason と Li(European Journal of Personality 27巻5号、458-469ページ)は、アメリカの4つの大学で集めたデータで、ハードトゥゲットを「デート市場の需要と供給」のモデルに位置づけて調べました。
| 研究 | 人数 | 調べたこと |
|---|---|---|
| 研究1a・1b | 100人・491人 | どんな行動がハードトゥゲットに当たるか、男女がどれくらい使うか |
| 研究2 | 290人 | ハードトゥゲットを使う理由と、それに関わる性格特性 |
| 研究3 | 270人 | 相手の出会いの頻度を操作し、交際や性的関係への意欲を測定 |
| 研究4 | 425人 | 同じ操作で、相手に使ってよいお金と時間を測定 |
研究1bで最も多く報告された行動は「自信があるように振る舞う」と「他の人と話す」でした。冷たくするより、他にも選択肢がある人に見せる行動が中心だということです。男女で差が出た行動は多くが女性のほうが多く、女性は「自分から電話しない」「あまり話さない」「忙しくしている」を多く報告していました。
研究3と4では、見込みの相手が知り合ったばかりの人とデートする頻度を、「しない」「ときどき」「よくする」の3段階で提示しました。つまり、ここでの手に入りにくさは冷たい態度ではなく、知り合ったばかりの人とのデートにどれだけ応じるか(利用可能性)として扱われています。著者らは、見かけの利用可能性が配偶の力学で果たす役割を、性の経済学のモデルで説明しています。
好き避け・ロミオとジュリエット効果・カリギュラ効果との違い
「手に入らないほど欲しくなる」を説明する言葉は複数あり、混同されがちです。違いは「誰が」「何のために」手に入りにくくしているかにあります。
| 用語 | 手に入りにくさを作るのは | 意図 |
|---|---|---|
| ハードトゥゲット | 本人 | あり(関心を引くため) |
| 好き避け | 本人 | なし(照れ・緊張で避けてしまう) |
| ロミオとジュリエット効果 | 親や周囲の反対 | 本人の意図ではない |
| カリギュラ効果 | 禁止・制限 | 本人の意図ではない |
| 希少性の原理 | 数量や機会の少なさ | 意図的な限定・自然な不足の両方 |
好き避けは、好意があるのに緊張や照れで相手を避けてしまう振る舞いで、本人に駆け引きの意図がない点がハードトゥゲットと違います。ただし相手から見た行動は似ているので、関心の薄い相手には同じく「脈がない」と受け取られます。
周囲の反対で恋が燃え上がるという説は、1972年の研究に由来するロミオとジュリエット効果と、その追試の結果で扱っています。禁止されるほど気になる心理はカリギュラ効果の由来と研究論文、商品や機会の少なさが価値を上げる仕組みは経済学と心理学から見た希少性の原理が詳しく扱っています。
営業・マーケティングに持ち込むときの線引き
営業では、前述の営業マニュアルのような「この条件はあなたにだけ」という特別扱いの形と、「すぐに契約を急がない」という売り渋りの形の両方がハードトゥゲットとして紹介されます。ここで挙げた恋愛研究は、割引や商談の効果を直接検証していません。営業への応用仮説としては、前者の「誰にでも同じ割引を出していない」と伝わる選択的な提示が原典の実験6に近く、「売り渋る」「連絡を遅らせる」は Dai らの結果と同じく、まだ関心の薄い見込み客の好感を下げる側に働くと考えるのが自然です。
数量限定・期間限定の表示は、事実と違えば景品表示法の有利誤認表示(第5条第2号)に当たるおそれがあります。「あなただけ」「残りわずか」を演出として使うなら、実際にその条件であることが前提です。限定表示の効果を検証したメタ分析や景品表示法の条文は、希少性の原理の記事でまとめています。
よくある質問
あえて冷たくするハードトゥゲットは本当に効果がありますか?
誰に対しても冷たくする形では、効果を示した研究はほぼありません。1973年の原典は5回の実験で通説を支持できず、効果が確認されたのは自分にだけ手が届く相手(実験6)でした。Dai ら(2014年)では、関係を進めようと心理的にコミットしている相手でも「欲しい」は上がる一方で「好き」は下がりました。Birnbaum ら(2018年)では、関係の不確かさが性的な魅力を下げたのは、相手に関心がないと受け取られたときでした。本記事では、好感を損ねる駆け引きを長く続く関係づくりの手段として勧めません。
好き避けとハードトゥゲットの違いは何ですか?
違いは意図の有無です。ハードトゥゲットは相手の関心を引くために、わざと手に入りにくく振る舞う駆け引きです。好き避けは好意があるのに照れや緊張で避けてしまう振る舞いで、本人に駆け引きの意図はありません。ただ、相手から見える行動は似ています。Dai らの研究では関心の薄い相手に手に入りにくさを見せると好意も欲しい気持ちも下がったので、好き避けも関係の初期には誤解されやすいと考えられます。
LINEの返信をわざと遅らせるのはハードトゥゲットになりますか?
関心を引く目的で返信を遅らせるなら、ハードトゥゲットに当たります。ただし、Dai らの実験はLINEの返信時間を直接検証したものではなく、返信を遅らせれば必ず好感が下がるとは言えません。その実験では、関係を進めたいとまだ思っていない相手に対しては、手に入りにくく振る舞うと「欲しい」も「好き」も下がりました。すでに関心を持っている相手でも「好き」は下がります。関心を引きたいなら、返信を遅らせるより、その相手のために時間を作っていることが伝わる行動のほうが研究結果と合っています。
ハードトゥゲットは男性にも女性にも効きますか?
1973年の原典は男性が女性を評価する実験でしたが、Wright と Contrada(1986年)は、選り好みが中程度の人が好まれる効果を男性の対象者と女性の対象者の両方で確認しており、実際のデートの場面でも効果が出ています。2023年に18本の研究をまとめた Hazel らのレビューは、追う側と追われる側の性別と愛着スタイルを、効果を左右する変数に挙げています。ただし、性別と選択性、相手の関心のどれがより強く結果を左右するかは、ここで挙げた結果だけでは比較できません。
ハード・トゥ・ゲット・テクニックが利用する欲求は何ですか?
日本語の解説では承認欲求や希少性で説明されることが多いのですが、研究側の説明は少し違います。Eastwick と Finkel は、選り好みする相手の好意に価値を感じる理由として「関係の中で自分は特別だと感じたい欲求」を推測しています。Dai らは「欲しい(動機)」と「好き(感情)」を区別し、関係を進めようと心理的にコミットしている場合に限り、ハードトゥゲットが前者を高める一方で後者を下げると報告しました。Jonason と Li は、配偶相手としての見かけの利用可能性の問題として扱っています。