シリウスディシジョンズ(SiriusDecisions)は、2001年に米国で設立されたBtoB専門の調査・助言会社です。マーケティング・営業・製品部門の業務プロセスを標準化するモデルを提供し、リードの段階を定義した「デマンドウォーターフォール」の提唱元として知られています。2018年11月に米調査会社Forrester(フォレスター)が買収を発表し、現在は独立した会社として存在しません。この記事では、会社の基本情報、買収からブランド統合までの時系列、デマンドウォーターフォール4版の違いを一次資料で整理し、日本語の資料に出てくる「シリウスディシジョンズのモデル」をどう読み替えればよいかまで解説します。
まとめ
- シリウスディシジョンズは2001年設立、本社は米コネチカット州ウィルトン。共同創業者はJohn Neeson(ジョン・ニーソン)とRich Eldh(リッチ・エルド)で、2人とも共同CEOを務めました。
- Forresterが2018年11月27日に2億4,500万ドル(現金)での買収を発表し、2019年1月3日に完了しました。
- 2021年8月に提供が始まった「Forrester Decisions」へ調査サービスの契約が順次移され(2023年1月以降、新規顧客の大半はForrester Decisionsのみ)、イベントもForrester B2B Summitへ移りました。
- デマンドウォーターフォールは2006年の初代、2012年の再設計版、2017年のDemand Unit Waterfall、2021年のB2B Revenue Waterfallと4回形を変え、管理の単位は個人リードから購買グループ、さらに既存顧客を含む商談機会へ移っています。
- 日本語の解説が「シリウスディシジョンズのモデル」と書くときは、多くが初代か2012年版のリード単位のモデルです。いま最新の資料を探すならForrester名義で探す必要があります。
シリウスディシジョンズの会社概要と事業領域
ForresterのプレスリリースはSiriusDecisionsを「BtoBの調査・助言会社」と説明しています。対象はBtoB企業のマーケティング、営業、製品管理の3部門で、各部門の業務の進め方とその測り方を、調査に基づくモデルとベンチマークで示すのが事業の中身でした。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 社名 | SiriusDecisions, Inc. |
| 設立 | 2001年 |
| 共同創業者 | John Neeson、Rich Eldh(両名とも共同CEO) |
| 本社 | 米コネチカット州ウィルトン |
| 拠点 | オースティン、ロンドン、サンフランシスコ、シンガポール、トロント、ウォルサム |
| 対象部門 | BtoBのマーケティング・営業・製品 |
| 買収時の売上寄与見込み | 約1億ドル(2019年、Forrester試算) |
買収発表のプレスリリースでは、John Neesonが「cofounder and co-CEO」、Rich Eldhも同じ肩書きで発言しています。買収契約書(米SECへの提出書類)での正式な氏名はJohn J. NeesonとRichard E. Eldh, Jr.です。
「The Sirius Way」と呼ばれた業務標準
Forresterは買収発表で、BtoB企業のCMOが「The Sirius Way」で業務を回しており、それがハイテクや先端製造業で標準になったと書いています。戦略を描くForresterに対し、SiriusDecisionsは「マーケティング・営業・製品のオペレーションの最適化」を担う、という役割分担です。デマンドウォーターフォールのような段階定義と、その段階ごとの転換率を他社と比べるベンチマークが、この「オペレーション側」の中核でした。
Forresterによる買収とブランド統合の時系列
買収発表からForrester Decisionsの提供開始(2021年8月)までは約2年9か月、新規顧客への販売がほぼForrester Decisionsだけになった2023年1月までは約4年かかっています。SiriusDecisionsの名前が一度に消えたわけではないため、資料の日付で「どちらの名義の時期か」を判断できるよう、節目を表にまとめます。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2001年 | SiriusDecisions設立 |
| 2018年11月27日 | Forresterが2億4,500万ドルでの買収合意を発表 |
| 2019年1月3日 | 買収完了 |
| 2020年3月13日 | SiriusDecisions Summit 2020のオンライン開催(5月4日開始)を発表 |
| 2021年5月3日 | Forrester Decisions(15の調査サービス)を発表 |
| 2021年5月4日 | B2B Summit North AmericaでB2B Revenue Waterfallを公開 |
| 2021年8月 | Forrester Decisionsの提供開始 |
| 2023年1月1日 | 新規顧客の大半はForrester Decisionsのみに |
| 2024年12月末 | 契約額の約80%がForrester Decisions |
2020年までは「SiriusDecisions Summit」の名前でイベントが開かれ、2021年の新モデル公開は「B2B Summit North America」の場でした。このため、2019年より前の資料はSiriusDecisions名義、2019〜2020年は「Forrester SiriusDecisions」の併記、2021年5月以降の新モデルはForrester名義と見るのが目安です。
買収の狙い:市場規模200億ドルから400億ドルへ
Forresterは買収の効果として、戦略領域で約200億ドルだった自社の対象市場が、オペレーション領域を加えて約400億ドルへほぼ倍増すると説明しました。具体策として挙げたのは、両社顧客への相互販売、Forresterの営業網による欧州・中東・アフリカ(EMEA)とアジア太平洋(APAC)への展開、SiriusDecisionsのモデルをIT部門や顧客体験(CX)部門へ広げること、金融・小売・医療などの業種へ広げることの4点です。資金は手元資金と、JPMorgan Chase Bankなどによる最大1億7,500万ドルの借入でまかなうとしています。
SiriusDecisions Summitの規模と名称の変化
2020年3月の発表で、ForresterはオースティンのSiriusDecisions Summitを「Forrester最大のイベント」と書き、顧客・パートナー・スポンサー・社員を合わせて4,000人超としています。新型コロナウイルスの影響でこの年はオンライン開催に切り替え、Forresterは売上が700万〜900万ドル減ると見積もりました。翌2021年からは「B2B Summit」の名前で開かれています。
Forrester Decisionsへの統合で残ったもの
2021年5月3日のForrester Decisions発表文は、新サービスが「SiriusDecisionsの買収で得たフレームワーク、モデル、方法論」をForresterの調査と組み合わせたものだと明記しています。SiriusDecisionsの名前は表看板から外れましたが、モデルはForresterの有料サービスの中で改訂が続いています。発表文が例に挙げたモデルの1つが、後述するForrester B2B Revenue Waterfallです。
移行は段階的でした。Forresterの年次報告書(Form 10-K)は2022年度まで、主な契約型調査サービスをForrester Decisions、Forrester Research、SiriusDecisions Researchの3本立てで記載しています。2024年12月末時点では契約額の約80%がForrester Decisionsに移り、旧来の調査サービスは約8%残っていました。
デマンドウォーターフォール4版の違いと管理単位の移り変わり
シリウスディシジョンズの名前を最も広めたのがデマンドウォーターフォールです。版ごとに「何を1件として数えるか」が変わっており、同じ名前で別物を指している資料が混在しています。
| 版 | 公開 | 数える単位 | 主な変更 |
|---|---|---|---|
| Demand Waterfall | 2006年 | 個人のリード | 問い合わせ→MQL→SAL→SQL→受注 |
| Rearchitected Demand Waterfall | 2012年 | 個人のリード | マーケティング認定段階の細分化 |
| Demand Unit Waterfall | 2017年 | 購買グループ | デマンドユニットの導入 |
| B2B Revenue Waterfall | 2021年 | 購買グループに紐づく商談機会 | 既存顧客の商談を追加 |
初代は、マーケティングが集めた問い合わせのうち基準を満たしたものをMQL(マーケティング認定リード)として営業へ渡し、営業が受け入れ(SAL)、見極めて(SQL)受注へ進める5段階でした。2012年版は、このうちマーケティングが認定する部分に段階を足して粒度を上げました。スコアの閾値に達したリードを置くAQL(Automation Qualified Lead)や、テレマーケティング部隊が受け入れ・認定するTAL・TQLがその例で、営業自身が生み出した需要も別に追えるようにしています。各段階の定義と転換率の測り方はデマンドウォーターフォールの基本構造と各ステージの解説で扱います。
2017年のDemand Unit Waterfall:個人から購買グループへ
2017年5月17日、ラスベガスで開かれたSiriusDecisions Summitで発表された版です。数える単位を個人のリードから「デマンドユニット」、つまり特定のニーズに対処するために組織内で編成された購買グループに切り替えました。買い手・ニーズ・ソリューションの3つが合致して初めてデマンドユニットが成立する、という定義です。段階はTarget Demand、Active Demand、Engaged Demand、Prioritized Demand、Qualified Demand、Pipeline、Closed/Wonの7つです。資料請求した1人をMQLと数える運用は、この版で段階名から外れました。問い合わせは引き続き数えますが、どのデマンドユニットに紐づくかで数える形に変わっています。MQLとSQLの境目がこの転換でどう変わったかはMQLとSQLの違いとは?認定部門・SALを挟む引き渡し設計で詳しく説明しています。
2021年のB2B Revenue Waterfall:既存顧客の商談を含める
Forrester名義になって最初の大きな改訂です。発表文は「旧称SiriusDecisions Demand Unit Waterfall」と明記しており、改称と拡張の版と読むのが正確です。追加点は、更新(renewal)・クロスセル・アップセルを商談機会のタイプとして加えたことで、新規開拓だけを流していたモデルに既存顧客の売上を載せました。段階は、狙う企業・商談(Targeted Accounts/Targeted Opportunities)から、Detected、Engaged、Prioritized、Qualified、Pipelineを経てWonに至り、受注した案件は維持・アップセルの機会として上流へ戻る循環になっています。購買グループ単位への転換は2017年の版で済んでおり、2021年の変更ではありません。
デマンドウォーターフォール以外のSiriusDecisions由来モデル
SiriusDecisionsはウォーターフォール以外にも、マーケティング・営業・製品の各部門向けにモデルを持っていました。Forresterのブログ(2019〜2020年の記事)で名前が確認できる主なモデルは次のとおりです。
| モデル名 | 対象部門 | 扱う内容 |
|---|---|---|
| B2B Buying Decision Process Framework | マーケティング | 買い手の購買判断の段階 |
| Buyer Persona Framework | マーケティング | 買い手像の定義 |
| Product Marketing and Management (PMM) Model | 製品 | 製品マーケティングと製品管理の役割 |
| Messaging Nautilus | 製品・マーケティング | メッセージの組み立て |
| Sales Enablement Range of Responsibilities Model | 営業 | 営業支援部門の担当範囲 |
Forresterのブログでは、このほかContent Model、Campaign Framework、Metrics Spectrumなども名前が確認できます。PMMモデルは2010年から提供されていたとされ、デマンドウォーターフォールと並んで古くからある看板モデルです。
Messaging Nautilus:メッセージ設計の4つのモデル
製品の価値をどう言語化するかを段階的に組み立てるモデルで、2014年5月22日、オーランドで開かれたSiriusDecisions Summitで発表されました。2019年10月のForresterブログ記事(現在も掲載)では「SiriusDecisions Messaging Nautilus」の名前で紹介されています。対象別に、企業ブランド(Corporate Brand)、購買プロセス(Buyer’s Journey)、営業プロセス(Sales Process)、顧客ライフサイクル(Customer Lifecycle)の4種類があり、後ろの2つは契約顧客だけが閲覧できます。購買前から購入後まで、局面ごとに別のメッセージを用意するという考え方です。
Forresterの調査領域に引き継がれた3部門の区分
Forresterのサイトは、BtoB向けの調査をDemand & ABM、Portfolio & Product、Revenue Operations & Enablementの3つに分けています。需要創出、製品マーケティング、営業の実行支援という区分は、SiriusDecisionsが扱っていたマーケティング・製品・営業の3部門におおむね対応します。ABM(アカウントベースドマーケティング)の進め方はABMの3類型と進め方、営業とマーケティングのデータ管理の分担はSalesOps/MOpsの役割の違いで扱っています。
日本の実務でシリウスディシジョンズのモデルを使うときの判断
日本語で読める資料の多くは、初代か2012年版のリード単位のウォーターフォールを「シリウスディシジョンズのモデル」として紹介しています。それ自体は誤りではありません。ただ、提唱元はその後2回モデルを作り替えているため、どの版を使うかは自社の売り方で決める必要があります。
リード単位の旧版で足りる条件
1件の商談に関わる買い手が実質1人で、単価が低く件数の多い商材なら、2006年版の5段階で十分です。問い合わせからMQL、SALへの転換率を月次で見るだけでも、どこで取りこぼしているかは分かります。HubSpotのライフサイクルステージにもMQLとSQLが既定の段階として用意されています(基準に応じた自動更新はワークフロー=Professional以上で設定、それ以外は手動更新)。リードの選別基準の作り方はリードクオリフィケーションの選別基準の作り方を参照してください。
購買グループ単位へ移るべき条件と失敗パターン
Forresterの2021年の購買調査では、合議型の購買の95%が2部門以上・3人以上で行われていました。情報システム部門と利用部門、購買部門がそろって決める商材で、1人の資料請求をMQLとして数え続けると、同じ会社の別担当者が別のMQLとして重複し、商談数の見込みが実態より膨らみます。
避けたいのは、KPIをMQL件数のまま据え置き、看板だけ「購買グループ単位」に掛け替えるやり方です。数える単位を変えないかぎり、マーケティングは件数を、営業は商談を追う構図が残ります。Forresterの導入ガイドの紹介ページも、学ぶ内容の最初に「MQLを超える」(Move beyond marketing-qualified leads)を挙げています。移るなら、評価指標を「購買グループ単位の商談機会の数と転換率」に置き換えるところから始めてください。
最新資料の探し方:Forrester名義と契約者限定の範囲
2021年5月以降の新しいモデルや資料は基本的にForrester名義です(旧SiriusDecisions Researchの契約は2023年ごろまで並行していました)。B2B Revenue Waterfallの導入ガイドはForresterのサイトで登録(氏名・業務用メールアドレス等)すれば入手できますが、モデルの詳細やベンチマークの多くはForrester Decisionsの契約者向けです。無料で読める範囲で版の違いを押さえ、自社の段階定義は社内の営業データから作るのが現実的な進め方です。需要創出全体の設計はデマンドジェネレーションの3工程も参考になります。
よくある質問
シリウスディシジョンズは今も会社として存在しますか?
独立した会社としては存在しません。2018年11月27日にForresterが2億4,500万ドル(現金)での買収を発表し、2019年1月3日に完了しました。その後、2021年8月に提供が始まったForrester Decisionsへ両社の調査サービスの契約が順次移され、2023年1月1日以降は新規顧客の大半にForrester Decisionsだけが提供されています。デマンドウォーターフォールなどのモデルは、Forresterの有料サービスの中で改訂が続いています。
sirius decisions の読み方と正しい英語表記は?
読みは「シリウスディシジョンズ」、正式な英語表記は単語の間を空けない「SiriusDecisions」です。検索では「sirius decisions」と分けて入力されることが多いものの、Forrester自身の資料では一貫して「SiriusDecisions」と表記されています。英語の一次資料を探すときは、つなげた表記で検索すると旧イベントやモデルの資料が見つかりやすくなります。
シリウスディシジョンズの創業者は誰ですか?
John Neeson(ジョン・ニーソン)とRich Eldh(リッチ・エルド)の2人です。Forresterの買収発表では、2人とも共同創業者兼共同CEOとしてコメントを寄せています。設立は2001年で、本社は米コネチカット州ウィルトンにありました。買収契約書での正式な氏名はJohn J. NeesonとRichard E. Eldh, Jr.です。
デマンドウォーターフォールの最新版は何ですか?
2021年5月4日にForresterが公開したB2B Revenue Waterfallです。発表文は旧称をSiriusDecisions Demand Unit Waterfallと明記しています。購買グループを単位とする考え方は2017年版から引き継ぎ、更新・クロスセル・アップセルといった既存顧客の商談を新たに加えました。各段階の詳しい中身はデマンドウォーターフォールの基本構造と各ステージの解説で扱っています。
SiriusDecisions Summitは今も開催されていますか?
SiriusDecisions Summitの名前では開かれていません。2020年はオンライン開催に切り替わり、2021年からはForresterのB2B Summitとして開催されています。2020年3月の発表では、オースティンでのSummitはForrester最大のイベントで、顧客・パートナー・スポンサー・社員を合わせて4,000人超とされていました。過去の講演資料を探すときは、開催年で名称が違う点に注意してください。