ポストインプレッション効果とは、広告を見たもののその場ではクリックしなかった人が、後日ブランド名で検索したり、ブックマークや別の広告から来訪したりして、購入や問い合わせに至る効果のことです。クリックを経由しないため、クリック数やクリック後の成果だけを見ていると、ディスプレイ広告や動画広告の働きを小さく見積もります。反対に、管理画面のビュースルーコンバージョン(VTC)をそのまま「ポストインプレッション効果」と呼ぶと、広告がなくても買っていた人まで広告の手柄に数えてしまいます。この記事では、ポストインプレッション効果の意味とポストクリックとの違い、効果の大きさを測る3つの方法、そしてVTCの数字と本当の効果がずれる理由を、Google広告・Meta広告の公式資料と広告効果の実験研究をもとに整理します。
まとめ:ポストインプレッション効果の意味と測り方の要点
- ポストインプレッション効果は「広告の表示(インプレッション)の後に、クリックを介さずに起きる行動変化」です。クリック後の成果はポストクリックと呼んで区別します。
- 測り方は3つあります。媒体のビュースルーコンバージョン(表示後の成果件数)、ブランドリフト・サーチリフト調査(認知や検索の伸び)、コンバージョンリフトなどの対照実験(広告がなかった場合との差)です。
- ビュースルーコンバージョンは「広告を見た人の成果」であって「広告が生んだ成果」ではありません。因果効果の大きさを確かめるには、広告を見せない対照群を設ける無作為化比較試験が有力です。実験以外の推定では、因果関係を識別するための仮定と限界を確認する必要があります。
- Google広告のVTCは既定で表示から1日、Meta広告のAPI既定値は「クリック後7日・表示後1日」です。計測期間を延ばすほど件数は増えますが、効果が増えたわけではありません。
- 予算判断に使うなら、まずVTCで傾向を見て、金額の大きい配信だけコンバージョンリフトで増分を確かめる、という順番が現実的です。
ポストインプレッション効果の意味とポストクリックとの違い
ポストインプレッション(post-impression)は「インプレッションの後」という意味で、広告が画面に表示されたあとに起きる出来事を指します。ポストインプレッション効果は、そのうちクリックを経由しない行動の変化です。たとえば、ニュースサイトで見かけた家電のバナーをその場では閉じ、3日後に商品名で検索して購入した、という流れがこれにあたります。
媒体の管理画面では、非クリック接触後の成果を把握する指標としてビュースルーコンバージョン(view-through conversion)があります。Google広告のヘルプは、[ビュースルー コンバージョン]列を「広告を見たものの操作をしなかったユーザーが、その後サイトを訪れて達成したコンバージョンの回数」と定義しています。日本語の記事で「ポストインプレッション」と「ビュースルー」がほぼ同じ意味で使われるのはこのためですが、前者は効果という概念、後者は媒体が数える件数という違いがあります。なお、Google広告の動画では、一定の視聴条件を満たした後の成果を数えるエンゲージビューコンバージョン(EVC)もあるため、非クリックの成果がすべてVTCになるわけではありません。
ポストクリックとの違い(起点・計測・指標)
ポストクリックは「クリックの後」に起きる成果で、広告をクリックしてサイトに来た人が購入や問い合わせに至った件数を指します。管理画面ではクリックスルーコンバージョン(CTC)として数えられ、多くの媒体で標準の[コンバージョン]列に入ります。
| 項目 | ポストインプレッション | ポストクリック |
|---|---|---|
| 起点 | 広告の表示 | 広告のクリック |
| 来訪経路 | 検索・直接訪問・別の広告など | 広告からの遷移 |
| 媒体の指標 | ビュースルーコンバージョン | クリックスルーコンバージョン |
| Google広告の既定の計測期間 | 表示から1日 | クリックから30日 |
| Google広告の[コンバージョン]列 | 原則含まれない | 含まれる |
Google広告では、ビュースルーコンバージョンは原則として[ビュースルー コンバージョン]列と[すべてのコンバージョン]列にだけ入るレポート専用の数字です。例外は、実店舗の目標に基づくP-MAX、アプリ、デマンド ジェネレーションの各キャンペーンです。クリック後の成果の数え方と計測期間はクリックスルーコンバージョン(CTC)の解説にまとめています。
クリックせずに成果が生まれる経路
広告を見た人がクリックしないまま成果に至る道筋は、大きく3つあります。どの経路が多いかで、後述する測り方の選び方が変わります。
- 指名検索:広告で覚えたブランド名や商品名をあとで検索し、検索結果から来訪する。
- 直接訪問:URLの入力、ブックマーク、アプリの起動など、参照元のない来訪。
- 別の接点経由:SNSの投稿、メールマガジン、店頭など、別のチャネルで再び接触して行動する。
このうちサイトのコンバージョンにつながる部分はビュースルーコンバージョンで一部を拾えますが、サイトのコンバージョン計測だけでは、指名検索の増加そのものや店頭での購入は拾えません。ただし、Google広告では利用条件を満たす店舗販売計測で、店頭購入のビュースルーコンバージョンも報告できます。検索の伸びはサーチリフト調査、認知や好意度の変化はブランドリフト調査の守備範囲です。
ポストインプレッション効果を測る3つの方法
ポストインプレッション効果を「どれだけあったか」で言うには、何と比べるかを決める必要があります。3つの方法は、比べる相手と答えられる問いが違います。
| 方法 | 比べる相手 | わかること | 手間・費用 |
|---|---|---|---|
| ビュースルーコンバージョン | 比較なし | 表示後に帰属された成果件数 | 設定のみ |
| ブランドリフト・サーチリフト | 広告を見なかった人 | 認知・検索の増分 | 媒体の最低予算あり |
| コンバージョンリフト | 広告を見なかった人 | 成果の増分・増分単価 | 対照群の確保が必要 |
3つは代替関係ではなく、粒度の違う道具です。日々の運用ではVTCを見て、配信の継続や拡大を決める節目でリフト測定を入れる、という組み合わせが基本になります。
ビュースルーコンバージョン(媒体の管理画面)
最も手軽なのが、媒体の管理画面に出るビュースルーコンバージョンです。Google広告では、ディスプレイ広告と動画広告のVTCは「コンバージョンにつながった最後のインプレッション」に関連付けられ、同じ広告主の他の広告を操作したユーザーの成果は自動で除外されます。計測期間は新規作成時に変更しなければ1日で、ヘルプには「計測期間が長いほど、記録されるビュースルー コンバージョン数は多くなります」と明記されています。
Meta広告では、Marketing API(v25.0)のリファレンスによると、action_attribution_windows の既定値(default)が「クリック後7日」と「表示後1日」の組み合わせです。複数媒体が同じ購入をそれぞれ自媒体の広告に帰属させる場合があるため、VTCの単純合算には重複計上の恐れがあります。計測期間をそろえるだけでは、この重複は解消しません。媒体別の計測期間や計上されない条件はビュースルーコンバージョン(VTC)の解説で詳しく扱っています。
注意点がもう1つあります。Google広告は、サイト間のCookieを許可しないブラウザからのVTCをレポートできません。Safariのように既定でサードパーティCookieを遮るブラウザの利用者が多い商材では、広告表示後のコンバージョンの一部がVTCに計上されません。
ブランドリフト・サーチリフト調査の測定対象と利用条件
ブランドリフト調査は、広告を見たユーザーと、広告の表示対象だったが見なかったユーザーにアンケートを出し、広告想起・認知度・比較検討などの回答差を測ります。Google広告では、オークションで購入したインストリーム広告とバンパー広告が対象で、利用にはGoogleのアカウント担当者が必要です。サーチリフト調査はアンケートを使わず、広告を見たあとにブランドや商品の検索がどれだけ増えたかを測ります。どちらも比較対象を持つため、VTCと違って増分を示せます。
ただし測れるのは態度や検索までで、売上やコンバージョンの増分は出ません。認知目的の動画広告や新商品の発売時のように、すぐに購入に結びつかない配信の評価に向いています。媒体ごとの最低予算や設問設計はブランドリフト調査の解説を参照してください。
コンバージョンリフト(対照実験)
成果の増分まで測るのがコンバージョンリフトです。Google広告のコンバージョンリフト測定は、オーディエンスを「広告を見たユーザー(トリートメント グループ)」と「広告を見なかったユーザー(コントロール グループ)」に分け、両グループのコンバージョン数の差を広告による増分とします。ユーザーに基づく方式と地域に基づく方式があり、地域に基づく方式はオフラインのデータも扱えます。
結果は増分コンバージョン数のほか、増分1件あたりの費用であるiCPA(アクション増分単価)や、費用あたりの収益の増分であるiROASで返ってきます。コンバージョンリフトが測るのは、クリック経由も含む対象キャンペーン全体の増分です。VTCを含めたCPAとiCPAを比べるだけでは、クリックを介さない成果のうち広告が生んだ割合は算出できません。なお、Google広告ではアカウントによって利用できない場合があり、利用にはGoogleのアカウント担当者への問い合わせが必要です。ジオリフトやMMMとの比較はインクリメンタリティの解説にまとめています。
VTCの数字をポストインプレッション効果と呼べない理由
VTCは「広告を見たものの操作しなかったユーザーが、その後に達成し、媒体の帰属条件を満たしたコンバージョンの件数」です。その人たちが広告を見なかったら成果を出さなかったのかは、VTCからはわかりません。広告は購入しそうな人に向けて配信されるので、見た人の成果が多いのは広告の効果だけでなく、もともとの購入しやすさを反映しています。
Facebookの試験4における購入率と増分の差
この差を実データで示したのが、Brett Gordon氏らの研究「A Comparison of Approaches to Advertising Measurement」(Marketing Science 第38巻2号、2019年)です。Facebookで行われた米国の広告リフト試験15件(ユーザー×試験で5億件、インプレッション16億件)を使い、無作為化比較試験(RCT)の結果と、実験をしない一般的な測り方の結果を比べています。
2016年公開の白書版で詳しく説明されている試験4(図4)では、広告を見た人の購入率は0.104%でした。RCTの対照群から推定した「同じ人たちが広告を見なかった場合の購入率」は0.059%で、広告による増分は0.045ポイント、リフトは77%です。つまり、広告を見た人の購入のうち半分強(0.059÷0.104)は広告がなくても起きていた計算になります。表示後の成果をすべて数えるVTCのような指標は、この0.104%の側を見ていることになります。
同じ試験で、実験群の中だけで「見た人と見なかった人」の購入率を比べると、見なかった人の購入率は0.020%しかなく、リフトは416%と、RCTの77%の5倍以上に膨らみました。年齢と性別をそろえた推定値は221%、豊富な行動情報を含む傾向スコアマッチングでは102%でした。ただし、白書の図7では、この102%とRCTの77%との差は統計的に有意とは示されていません。論文の結論は、こうした観察的な方法では、多くの場合に実験と同じ結果を再現できないというものです。
増分測定に必要なサンプル規模と推定の不確実性
RCTなら正確に測れる、というほど話は単純でもありません。Randall Lewis氏とJustin Rao氏の論文「The Unfavorable Economics of Measuring the Returns to Advertising」(The Quarterly Journal of Economics 第130巻4号、2015年)は、米国の小売・証券会社による25件の大規模な実験(広告費の合計280万ドル)を分析し、投資収益率の信頼区間の幅が中央値で100ポイントを超えたと報告しています。個人の売上のばらつきが広告費に比べて大きいため、意味のある結論を得るには1,000万人週を超える規模が必要になることもあるとしています。
この論文は、広告がターゲティングされることによる選択バイアスが、広く使われている観察的手法にとって致命的な問題だとも指摘しています。小さな予算でリフト測定をして「有意差なし」と出ても、効果がないとは言い切れない点は押さえておく必要があります。
ゴースト広告による対照群の設計と測定費用の削減
実験の費用を下げる方法として、Garrett Johnson氏らは「ゴースト広告」という手法を提案しました(Journal of Marketing Research 第54巻6号、2017年)。対照群のユーザーにも広告配信システムの判定だけを走らせ、「実験群にいたら広告が出ていたはずの人」を記録して比べる方法です。対照群に公共広告などを出して費用を払う方式と比べ、少なくとも1桁少ない費用で同じ精度の測定ができるとしています。
同論文はオンライン小売のリターゲティング配信にこの手法を適用し、広告によってサイト訪問が17.2%、購入が10.5%増えたと報告しています。リターゲティングに効果がないわけではなく、VTCの件数と実際の増分は大きさが違う、というのが正確な理解です。Google広告のコンバージョンリフトも、広告を見たグループと見なかったグループを比べるという同じ考え方に立っています。
ポストインプレッション効果を評価に入れるかの判断基準
ポストインプレッション効果は確かに存在しますが、VTCの件数をそのまま評価に足すと、広告の働きを高く見積もりがちです。どこまで評価に入れるかは、配信の目的と、リフト測定で裏付けられるかで決めます。
| 状況 | VTCの扱い |
|---|---|
| 認知目的のディスプレイ・動画 | 参考値としてCTCと分けて報告 |
| リターゲティング配信 | 評価に足さない |
| 複数媒体の成果を合算するとき | 足さない(重複するため) |
| リフト測定で増分を確認済み | iCPAを評価軸にする |
リターゲティングを「足さない」側に置くのは、配信先が自社サイトをすでに訪れた人だからです。もともと購入に近い人に広告を出すため、広告を見た人の成果は多く出やすく、購入意向による選択バイアスに注意が必要な配信です。広告接触者の成果件数だけでは増分を判断できません。リターゲティングの効果の測り方はリターゲティング広告の解説でも扱っています。
避けたいのは、VTCを含めたCPAが下がったことを理由に予算を増やし、サイト全体の売上は動かないまま広告費だけが膨らむ、という失敗です。VTCとCTCの比率、計測期間を変えた場合の件数差、指名検索や直接流入の推移は、評価を見直すきっかけになります。ただし、これらだけで広告の増分が小さいとは判断できません。こうした変化が見えた配信で増額を検討するときは、先にコンバージョンリフトで増分を確かめるべきです。
ポストインプレッション効果を評価に入れる価値があるのは、クリックがほとんど出ないが認知や検索の増加が期待できる配信、つまり新商品の告知や動画広告です。こうした配信は、VTCよりもブランドリフト調査やサーチリフト調査の増分で評価するほうが、目的と指標が合います。
よくある質問
ポストインプレッション効果とは簡単に言うと何ですか?
広告を見た人が、その場ではクリックせず、あとで検索や直接訪問から購入や問い合わせをする効果です。クリック数には表れないため、ディスプレイ広告や動画広告の価値を評価するときに問題になります。
ポストクリックとは何ですか?
広告をクリックしてサイトに来た人が、その後に購入や問い合わせに至ることです。媒体の管理画面ではクリックスルーコンバージョンとして数えられ、Google広告では既定でクリックから30日以内の成果が対象になります。
ポストインプレッションとビュースルーコンバージョンは同じ意味ですか?
近い意味で使われますが、同じではありません。ポストインプレッション効果は広告が行動を変えた効果という概念で、ビュースルーコンバージョンは媒体が「表示後に成果を出した件数」として数える指標です。VTCには広告がなくても成果を出した人が含まれるため、効果そのものより大きく出やすい数字です。
検索広告(リスティング広告)にもポストインプレッション効果はありますか?
検索結果で広告を見ただけの人が、あとで別の経路から購入することはありえます。ただし、Google広告のヘルプでビュースルーの定義が示されているのはディスプレイ ネットワーク広告と動画広告(およびアプリ関連のキャンペーン)で、検索広告の表示だけの効果を確かめたい場合は、地域に基づくコンバージョンリフトのような対照実験が必要です。
ブランドリフト調査でポストインプレッション効果はわかりますか?
広告を見た人と見なかった人の回答差から、広告想起・認知度・比較検討といった態度の増分はわかります。一方で、購入やコンバージョンの増分はわかりません。また、通常のブランドリフト調査はクリックした人も含むため、非クリック接触だけの効果を分離した結果ではありません。成果まで知りたいときはコンバージョンリフトを組み合わせます。