樹形図(じゅけいず)とは、起こり得る場合を木の枝のように分岐させて、一つ残らず書き出すための図です。「枝分かれしていく図の名前」を探しているなら、算数・数学ではこの樹形図、生物では系統樹、データ分析ではデンドログラムが答えになります。頭の中だけで数えると起こりやすい「落ち(数え漏れ)」と「重なり(重複)」を、線を引くだけで防げるのが樹形図の役目です。この記事では、実際の樹形図を描きながら、書き方のコツ、場合の数の例題、くじ引きの確率、二次元の表との使い分け、公式(nPr・nCr)へ切り替える境界までを、文部科学省の学習指導要領解説のページ番号を添えて確認します。
まとめ
- 樹形図は「落ちや重なりなく全部を書き出す」ための図。読み方はじゅけいず、英語では tree diagram。樹状図・樹木図・枝図と書かれることもある
- 書き方の核心は観点を固定すること。先頭を1つに決めて枝を伸ばし、残りは同じ形の繰り返しとして掛け算で数える
- 書き始める前に末端の本数を掛け算で見積もる。硬貨3回なら2×2×2=8本、4人の並び方なら4×3×2×1=24本と分かれば、紙面の割り振りで失敗しない
- 2つのものの組み合わせだけなら二次元の表、3段階以上または条件が途中で変わるなら樹形図
- 枝が段ごとに減る=順列、減らない=重複順列。顔ぶれだけを問うなら組み合わせで、4チームの対戦は 4C2 の6通り
- くじ引きは先に引いても後に引いても当たる確率は同じ。5本中2本が当たりなら、どちらも 2/5 になることを樹形図で確かめられる
- 全部で数十通りを超えたら樹形図は書き切らない。公式か、「少なくとも」の問題なら余事象に切り替える
樹形図の意味と読み方、英語表記「tree diagram」
樹形図は「じゅけいず」と読みます。英語では tree diagram で、根から枝が分かれていく形が木に似ていることが名前の由来です。なお「樹形(じゅけい)」だけなら別の言葉で、精選版 日本国語大辞典は「根・幹・枝・葉などから形成される樹木の外形」と説明しています。造園や園芸で木の姿を指すときの語で、数学の図とは関係がありません。
樹形図は3つの部品でできています。出発点となる根(ルート)、選択肢が分かれる節点(ノード)、節点どうしをつなぐ枝(エッジ)です。根から末端まで枝をたどった1本の経路が、1つのパターンに対応します。したがって末端の枝の本数を数えれば、それが場合の数になります。
小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 算数編は、順序よく整理して調べることを「思いつくままに列挙していたのでは落ちや重なりが生じるような順序や組み合わせなどの事象について,規則に従って正しく並べたり,整理して見やすくしたりして,誤りなく全ての場合を明らかにすること」と説明しています(p.313)。樹形図は、この「規則に従って正しく並べる」を線として目に見える形にしたものです。
小学校学習指導要領解説 算数編には、PDF全406ページを通して「樹形図」という語が一度も出てきません。第6学年の内容は「起こり得る場合を順序よく整理するための図や表などの用い方を知ること」(p.312)で、記述は一貫して「図や表」です。「樹形図」が名前として現れるのは、中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 数学編 p.124 の確率の記述からです。小学校では名前のないまま描いていた図が、中学校で「樹形図」と呼ばれるようになります。
樹状図・ツリー図・系統樹との呼び分けと使われる分野
枝分かれする図には似た呼び名が複数あります。どれも「木の形の図」ですが、慣用的に使われる分野が違います。
| 呼び名 | 主に使われる分野 | 指しているもの |
|---|---|---|
| 樹形図 | 算数・数学、統計 | 場合の数、確率。dendrogram の訳語でもある |
| 樹状図 | 数学、統計 | 樹形図とほぼ同義 |
| ツリー図 | ビジネス、IT | 階層構造、課題の分解 |
| 木(グラフ理論) | 離散数学、情報科学 | 閉路を持たないつながったグラフ |
| デンドログラム | 統計、データ分析 | 階層的クラスタリングの結合過程 |
| 系統樹 | 生物学 | 生物の進化の道筋 |
| 決定木 | 機械学習 | 条件分岐で予測・分類するモデル |
数学の文脈では、「樹形図」と「樹状図」のどちらで調べても同じ図に行き着きます。「樹木図」「枝図」も同じ図を指し、「樹上図」「樹図」は検索で見かける書き誤り・略記です。
区別が要るのは残りです。系統樹は、枝の長さに遺伝的な変化量や年代の意味を持たせて描かれることがあります(分岐の順序だけを示し、枝の長さに意味を持たせない分岐図=クラドグラムも系統樹の一種です)。場合の数の樹形図では枝の長さに意味はなく、本数だけを見ます。デンドログラムは似ているデータどうしを順に併合していく過程を描いた図で、読み取るのは「どの高さで切るか」です。詳しくはデンドログラムの見方とクラスタ数の決め方で扱っています。ビジネスで課題を分解していくツリー図は、ロジックツリーの例題と解答が分解の手順を扱います。
高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 数学編 理数編は、理数数学特論の離散グラフの項で「木とは,樹形図のような閉路を持たないつながった有限の離散グラフのことである」と書いています(p.171)。ファイルシステムのディレクトリや決定木が「ツリー」と呼ばれるのも、この意味の木だからです。頂点と辺の基礎からはグラフ理論の入門記事で確認できます。
樹形図の書き方と、紙面で破綻させないコツ
書き方の3ステップ:起点・段ごとの枝・観点の固定
- 起点を左端(または上)に置く。ここが根になります。
- 段ごとに、その時点で選べる選択肢の数だけ枝を伸ばす。1段目を書き終えてから2段目へ進み、段を混ぜません。
- 観点を1つ固定して、そこから枝を伸ばす。全パターンを同時に相手にせず、先頭を1つに決めて残りだけを考えます。
難しいのは3つ目です。小学校学習指導要領解説 算数編は「観点を決めるとは,あるものを固定して考えるなどのことである」と定義し、大中小3種類のコインを例に挙げています(p.314)。大コインを表に固定すれば、あとは中と小の出方だけを考えればよく、4通りに絞られます。大が裏の側も同じ形なので、全体は8通りです。固定して1つ分を数え、同じ形が何回繰り返されるかを掛ける。これが樹形図を短時間で書き切るためのコツです。同解説は、表を〇、裏を×として位置で表し(〇〇×)と書けば済む、という省略も示しています(p.314)。枝の脇に書く文字が短いほど、段が深くなっても紙面が破綻しません。
書く前に掛け算で見積もる末端の本数
樹形図が乱雑になる原因の多くは、最初の枝を広げすぎて後半の書き込みスペースが足りなくなることです。防ぐには、書き始める前に「何段に分かれるか」と「末端が何本になるか」を計算しておきます。
| 問題 | 段数 | 末端の本数 |
|---|---|---|
| 硬貨を3回投げる | 3段 | 2×2×2=8本 |
| 4人が一列に並ぶ | 4段 | 4×3×2×1=24本 |
| さいころを2回振る | 2段 | 6×6=36本 |
| 5本のくじを2人が順に引く | 2段 | 5×4=20本 |
末端の本数が分かれば、紙の縦方向を何行に割ればよいかが決まります。末端が8本なら8行、24本なら24行が要ります。1枚に収まらなければ、次の方法で分けます。36本のように多いときは、そもそも樹形図ではなく二次元の表を選ぶべき合図です(後述)。
長い樹形図の最初の枝ごとの分割
末端が20本を超えるような図は、1枚に全部を描かず、最初の枝ごとに小さな樹形図を分けて並べます。4人の並び方なら、先頭がAの図(6本)を1つ描き、先頭がB・C・Dの図は「同じ形が3つ」として省略してかまいません。
場合の数の例題3問:4人の並び方・3桁の整数・総当たり対戦
ここからは実際に樹形図を描きます。例題1と例題3は小学校学習指導要領解説 算数編 p.313 が挙げている題材、例題2は「使ったら減る」条件を確かめるための追加問題です。
例題1:A・B・C・Dの4人が一列に並ぶ並び方(24通り)
先頭をAに固定します。2番目にBが来れば3番目はCかDのどちらか、というように枝を伸ばすと、次の図になります。
1番目 2番目 3番目 4番目
A +-- B +-- C --- D
| +-- D --- C
+-- C +-- B --- D
| +-- D --- B
+-- D +-- B --- C
+-- C --- B
末端の枝は6本です。先頭に立てるのはA・B・C・Dの4人で、誰を先頭にしても同じ形の枝が6本ずつ生えます。したがって 6 × 4 = 24通りです。小学校学習指導要領解説 算数編 p.313 も、この4人の並び方について「起こり得る場合を図にかいて調べると24通りであることが分かる」と示しています。
例題2:1・2・3のカードを並べて作る3桁の整数(6通り)
カードは3枚しかなく、一度使った数字は残りません。
百の位 十の位 一の位 結果
1 +-- 2 --- 3 123
+-- 3 --- 2 132
2 +-- 1 --- 3 213
+-- 3 --- 1 231
3 +-- 1 --- 2 312
+-- 2 --- 1 321
末端は6本、つまり6通りです。枝の本数が3本・2本・1本と1つずつ減っている点に注目してください。この「減り方」が、次章の順列と重複順列の分かれ目になります。
例題3:4チームの総当たり戦の組み合わせ(6通り)
A・B・C・Dの4チームが総当たりで対戦するとき、「AとBの試合」と「BとAの試合」は同じ1試合です。Aを含む試合をすべて書き、次にAを除いてBを含む試合を書く、という順に観点を固定します。
A +-- B A対B
+-- C A対C
+-- D A対D
B +-- C B対C
+-- D B対D
C --- D C対D
6通りです。一度使ったチームを左側から外していくので、B対Aのような重複が構造的に現れません。
枝が減る樹形図と減らない樹形図:順列と組み合わせ、重複順列の見分け方
段が進むほど枝が細くなる図と、最後まで太いままの図があります。これは書き方の違いではなく、問題の条件そのものの違いです。
例題2は、使ったカードが手元から消えるので枝が 3 → 2 → 1 と減りました。これが順列です。引いたカードを毎回戻すなら、どの段でも選択肢は3つのまま減りません。これが重複順列です。百の位が1のときだけ描くと次のようになります。
百の位 十の位 一の位
1 +-- 1 +-- 1
| +-- 2
| +-- 3
+-- 2 +-- 1
| +-- 2
| +-- 3
+-- 3 +-- 1
+-- 2
+-- 3
百の位が1のときだけで9通りあり、百の位は3通り選べるので 9 × 3 = 27通りです。例題2の6通りと比べると、条件が1つ変わるだけで答えが4倍以上になります。「同じものを繰り返し使ってよいか」を問題文で最初に確認してから枝を書き始めてください。
順列と組み合わせの違いも樹形図の上で見えます。順列は「A→B」と「B→A」を別々に数え、組み合わせは同じ1つとして数えます。4チームから2チームを選ぶ場面なら、順番まで区別すれば 4 × 3 = 12通り、区別しなければその半分の6通り(例題3)です。例題1が24通りだったのは4人全員を並べたためで、選ぶ個数が変われば総数も変わります。問題文が順番・順位・席順を問うていれば順列、代表者やペアの顔ぶれだけを問うていれば組み合わせです。
確率の求め方と、樹形図・二次元の表の使い分け基準
樹形図で全パターンを書き出して確率を求める手順
確率は「起こり得る場合の総数」が分かって初めて計算できます。硬貨を2枚投げる場合を書き出します。
1枚目 2枚目 結果
表 +-- 表 (表, 表)
+-- 裏 (表, 裏)
裏 +-- 表 (裏, 表)
+-- 裏 (裏, 裏)
末端は4本で、どれが起こることも同様に確からしいと考えられます。2枚とも表になるのは1通りなので、確率は 1/4 です。中学校学習指導要領解説 数学編 p.124 は同じ例を挙げ、確率が 1/4 であることは「2個の硬貨を4回投げると,そのうちの1回は必ず二つとも表が出るという確定的なことを意味するものではない」と注意しています。
くじ引きの樹形図:先に引くか後に引くかで確率は変わるか
中学校学習指導要領解説 数学編 p.130 は、「5本のうち2本の当たりくじが入っているくじを2人の生徒が引くとき,引く順番によって当たりやすさに違いがあるか」という問題を挙げ、樹形図で場合の数を求めて確かめる活動を示しています。当たりを当1・当2、はずれを外1〜外3と区別すると、1人目の引き方が5通り、2人目は残りの4通りなので、全部で20通りです。
- 1人目が当たる:1人目が当1か当2(2通り)× 2人目は残り4本のどれか(4通り)=8通り
- 2人目が当たる:1人目が当たり(2通り)× 2人目が残りの当たり(1通り)=2通り、1人目がはずれ(3通り)× 2人目が当たり(2通り)=6通りで、合計8通り
どちらも 8/20 = 2/5 です。先に引いても後に引いても当たりやすさは変わらず、くじ引きは公平だと説明できます。
20本の枝を全部描くかわりに、枝に確率を書き込んで掛け合わせる描き方もあります。イングランドの公的教材 Oak National Academy は、2段階の試行の結果の確率を「各段階の結果の確率の積」として求めると説明しています。英語圏で probability tree と呼ばれる形です。
1人目 2人目 その経路の確率
当 2/5 +-- 当 1/4 2/5 x 1/4 = 2/20
+-- 外 3/4 2/5 x 3/4 = 6/20
外 3/5 +-- 当 2/4 3/5 x 2/4 = 6/20
+-- 外 2/4 3/5 x 2/4 = 6/20
2人目が当たる経路は1行目と3行目で、2/20 + 6/20 = 8/20 = 2/5 と、数え上げと同じ値になります。中学校では本数を区別して数える方法、高等学校の数学Aでは条件付き確率として枝の確率を掛ける方法を学びます(高校解説 p.94)。同解説 p.130 は発展として「4本のうち2本の当たりくじが入っているくじを3人の生徒で引くとき」も挙げており、この場合も何番目に引いても確率は 1/2 です(全24通りを数えると、各人の当たりは12通りずつ)。
二次元の表に切り替える判断基準
中学校学習指導要領解説 数学編は、確率を求める場面で「樹形図や二次元の表などを利用して」と、2つの道具を並記しています(p.124)。
| 条件 | 向いている道具 | 典型例 |
|---|---|---|
| 2つのものを組み合わせるだけ | 二次元の表 | 大小2個のさいころ(36通り) |
| 2つの値の和・積などを問う | 二次元の表 | 和が7・積が偶数を同じ表で読む |
| 3段階以上に分かれる | 樹形図 | 硬貨を3回投げる |
| 段ごとに選択肢が変わる | 樹形図 | くじを引いて戻さない |
大小2個のさいころなら、縦6行×横6列の表に36マスを描けば全パターンが並びます。和が7になるマスは斜め一列に6個並ぶので、確率は 6/36 = 1/6 です。同じ表で「積が偶数になるのは何通りか」も読み取れます。これを樹形図で描くと枝が36本になります。さいころ2個のように各段の選択肢が多い2つのものを樹形図で描くのは、道具の選択ミスです。逆に、くじ引きのように1人目の結果で2人目の条件が変わる問題は、表では表しにくく、樹形図の出番です。身近な確率の例としては、ソシャゲのガチャの排出率と天井の仕組みや、直感が外れる例として知られるモンティ・ホール問題も、同じ数え上げで説明できます。
樹形図を使わない判断:公式・余事象・プログラムへの切り替え
10人が一列に並ぶ場合の数は3,628,800通りで、書き出せるものではありません。数十通りを超えたら樹形図は書き切らない。そこが別の方法に切り替える境界です。
nPr・nCrの公式は樹形図の要約
高等学校学習指導要領解説 数学編 理数編は、数学Aの「場合の数と確率」について「具体的な事象に関する場合の数を樹形図や表に整理して調べる方法を考察することを通して,順列・組合せの総数の求め方の公式を導く」と述べています(p.93)。公式は樹形図の代わりではなく、樹形図から導かれる要約という位置づけです。同解説 p.92 は、この単元の用語・記号として「nPr,nCr,階乗,n!,排反」を挙げています。この記事の例題は、公式の値と次のように一致します。
| 例題 | 樹形図の結果 | 対応する公式 | 計算 |
|---|---|---|---|
| 4人が一列に並ぶ | 24通り | 4P4 = 4! | 4×3×2×1 = 24 |
| 1・2・3で3桁の整数 | 6通り | 3P3 = 3! | 3×2×1 = 6 |
| 4チームの総当たり | 6通り | 4C2 | (4×3)÷(2×1) = 6 |
| 1・2・3を戻して3回 | 27通り | 重複順列 | 3の3乗 = 27 |
公式を覚えるより先に、小さい数で樹形図を描いて答えを出し、公式の値と突き合わせてください。数が合わなければ、問題の条件を読み違えています。
「少なくとも1回」の確率と余事象
「硬貨を3回投げて、少なくとも1回は表が出る確率」は、樹形図を8本描いて表を含む枝を数えれば 7/8 です。ただし、表を含む枝を数えるより、表が1回も出ない枝(裏・裏・裏の1本)を数えて全体から引くほうが速く、数え漏れもありません。1 − 1/8 = 7/8 です。高等学校学習指導要領解説 数学編 理数編は、数学Aで扱う確率の法則として「事象Aの余事象の確率」を挙げています(p.94)。問題文に「少なくとも」「1回以上」とあれば、樹形図で全部を数える前に余事象を疑ってください。
Python itertools による樹形図の数え上げと検算
手で描いた樹形図の本数が合っているかは、プログラムでも確かめられます。Python 標準ライブラリの itertools は、樹形図の3つの型をそのまま関数として持っています。枝が減る順列は permutations、減らない重複順列は product、顔ぶれだけの組み合わせは combinationsです。次のコードは、この記事の例題とくじ引きを数え上げたものです。
from itertools import permutations, combinations, product
print(len(list(permutations("ABCD")))) # 4人の並び方
print(len(list(permutations("123")))) # 3桁の整数
print(len(list(combinations("ABCD", 2)))) # 総当たり戦
print(len(list(product("123", repeat=3)))) # 戻して3回
kuji = ["当1", "当2", "外1", "外2", "外3"]
pairs = list(permutations(kuji, 2)) # 1人目と2人目の引き方
second_win = [p for p in pairs if p[1].startswith("当")]
print(len(pairs), len(second_win))
Python 3.9 で実行すると、出力は次のとおりです。
24
6
6
27
20 8
4つの例題の答えと、くじ引きの「全20通りのうち2人目が当たるのは8通り」が、手で数えた結果と一致します。
学習指導要領での樹形図の位置づけと次期改訂(2026年10月時点)
ここまで引用した学習指導要領は、小中学校が平成29年告示、高等学校が平成30年告示の現行版です。次期改訂については、中央教育審議会の教育課程部会が2026年10月5日に次期学習指導要領等に向けた審議まとめを公表しました。高等学校数学では、選択科目の数学A・B・Cを一つの新科目に統合して学習内容を「場合の数と確率」などに整理すること、必履修の数学Ⅰに「場合の数と確率」などの基礎を実社会の場面から学ぶ「社会を読み解く数学」を新設することが示されています(同まとめ p.166・p.171)。文部科学省は2026年10月6日から11月5日まで、この審議まとめへのパブリック・コメントを実施しており、答申はその後になります。次期学習指導要領は令和10年度(2028年度)以降に順次実施される予定です。小学校の数え上げから高校の公式へ、という樹形図の系統は変わりませんが、高校で習う科目名は今後変わる見込みです。
樹形図でよくある間違い4つと、指導要領が挙げる典型ミス
樹形図の失敗の多くは、線の引き方より数え方の前提で起きます。代表的なものを4つ挙げます。
- 同じ結果を1つにまとめてしまう:中学校学習指導要領解説が「起こりやすい」と注意している誤りです(後述)。
- 枝の書き漏れ:ある段で選択肢を1つ落とすと、その先の枝がまるごと消えます。書く前に見積もった末端の本数と照らし合わせれば気づけます。
- 順列と組み合わせの取り違え:順番を問わない問題を順列で数えると、答えは本来の r! 倍になります(2個選ぶなら2倍、3個選ぶなら6倍)。
- 条件の反映漏れ:「同じ数字は使えない」「0は先頭に置けない」といった条件は、枝を伸ばす段階で反映します。書き終えてから消す方式は消し忘れを生みます。
1つ目について、中学校学習指導要領解説 数学編 p.124 は、2枚の硬貨の出方を(表,表)(表,裏)(裏,裏)の3通りと考え、2枚とも表になる確率を 1/3 と答える誤りを挙げています。実際には(表,裏)と(裏,表)は別の場合なので全4通りで、正しい確率は 1/4 です。「見た目が同じ結果」と「起こり方が同じ」は別物です。2枚の硬貨に区別がなくても、数えるときは1枚目と2枚目を区別してください。
樹形図の作図ツール:draw.io・Mermaid・紙の使い分け
学習目的なら紙とペンで十分です。作図ツールが要るのは、他人に配る・繰り返し更新する・版管理したい、のいずれかに当てはまるときです。
無料で使えるものとしては draw.io(diagrams.net) が確実です。公式サイトはブラウザ版を「Free forever • No sign-up required」と案内しており、登録なしで使えます。共同編集やクラウド保存を前提にするなら Canva、Lucidchart、XMind といった選択肢もありますが、無料枠の範囲は提供元の都合で変わるため、利用前に公式の料金ページで確認してください。
ドキュメントに埋め込むなら、テキストで書いて図を生成する Mermaid が管理しやすい方法です。差分がテキストとして残るため、Git で履歴を追えます。書き方はMermaid記法でフローチャートやシーケンス図を作る手順にまとめました。
よくある質問(FAQ)
樹形図とは何ですか?読み方は?
起こり得る場合を、木の枝のように分岐させて漏れなく書き出す図です。読み方は「じゅけいず」、英語では tree diagram です。根から枝をたどった1本の経路が1つのパターンに対応し、末端の枝の本数がそのまま場合の数になります。
樹形図と二次元の表はどう使い分けますか?
2つのものを組み合わせるだけなら二次元の表、3段階以上に分かれるか、段ごとに選択肢が変わるなら樹形図です。大小2個のさいころは表なら36マスで済みますが、樹形図では枝が36本になります。逆に、くじを引いて戻さない場合のように条件が途中で変わる問題は、樹形図のほうが整理しやすくなります。
樹形図は何年生で習いますか?
小学校第6学年の算数で、起こり得る場合を図や表を使って落ちや重なりなく調べる方法を学びます。ただし小学校学習指導要領解説には「樹形図」という語は出てきません。名前として登場するのは中学校第2学年の確率で、樹形図や二次元の表を使って確率を求めます。高等学校の数学Aでは nPr・nCr・階乗を扱い、樹形図から公式を導きます。
樹形図を使わずに場合の数や確率を求められますか?
求められます。順列なら nPr、組み合わせなら nCr、毎回すべての選択肢が使える重複順列なら選択肢の数の累乗で計算できます。「少なくとも1回」を問う確率なら、余事象を使って1から引くほうが速く確実です。ただし条件を読み違えると公式の選択を誤るため、小さい数で樹形図を描いて答えを確かめる順序をおすすめします。
樹形図と樹状図・系統樹はどう違いますか?
樹形図と樹状図は、数学の場合の数では同じ意味で使われる言葉です。系統樹は生物の進化の道筋を表す図で、枝の長さに変化量や年代の意味を持たせることがある点が違います。デンドログラムや決定木との違いは、本文の呼び分け表にまとめています。