「サードパーティCookieはいつ廃止されるのか」「対策は何から始めればよいのか」。2026年10月時点の答えは、Chromeでは廃止されず、SafariとFirefoxではすでに従来どおりには使えない、です。GoogleはChromeでの廃止を2024年7月に取り下げ、2025年4月には選択画面の導入も見送りました。代替として用意したPrivacy Sandboxも、2025年10月に主要技術の終了を発表しています。この記事では、ブラウザごとの現状と、サードパーティCookieが使えないときに止まる機能・止まらない機能、自社への影響の確かめ方、対策の着手順を整理します。
まとめ:サードパーティCookie廃止と対策の要点
- Chromeは廃止しない:2025年4月22日、Googleは現行の「ユーザーが設定で選ぶ」方式を維持し、新しい選択画面も出さないと発表した。シークレットモードでは既定でブロックされる。
- SafariとFirefoxは対策済みの前提で動いている:Safariは2020年3月から既定でブロック、Firefoxは2022年6月から既定でサイトごとにCookieを区画化している。
- Privacy Sandboxへの乗り換えは選択肢から消えた:Topics・Protected Audience・Attribution Reportingなど10技術が終了対象。存続はCHIPS・FedCM・Private State Tokens。
- 影響を受けるのはサイト横断のCookieに依存する機能:リターゲティングのリスト化、ビュースルーコンバージョン、サイト横断のフリークエンシーキャップ、埋め込みやSSO。自社サイト上のコンバージョン計測はファーストパーティCookieで動く。
- 着手順:影響の確認→計測の欠落を埋める→ファーストパーティデータの整備→配信手法の見直し。外部送信規律と個人情報保護法への対応は並行して進める。
サードパーティCookie廃止の現状:2026年10月時点のブラウザ別の扱い
「廃止されたかどうか」はブラウザによって答えが違います。さらに、SafariとFirefoxでも扱いは同じではありません。Safariは送信そのものを止め、Firefoxは送信は許したうえで、Cookieを表示中のサイトごとに分けて保存します(トラッカーに分類されたドメインのCookieは強化型トラッキング防止機能で別途ブロックします)。どちらの場合も、別のサイトをまたいで同じ利用者を識別する用途には使えません。
| ブラウザ | 既定の扱い | 開始時期 |
|---|---|---|
| Chrome(通常) | 許可(利用者が設定でブロック可) | 2025年4月に維持を表明 |
| Chrome(シークレット) | ブロック | 現行の既定 |
| Safari | ブロック(ITP) | 2020年3月(Safari 13.1) |
| Firefox | サイトごとに区画化(Total Cookie Protection) | 2022年6月 |
| Edge | 追跡防止「バランス」でトラッカーを制限 | 現行の既定 |
Safariについては、WebKitが2020年3月の発表で「Cookies for cross-site resources are now blocked by default across the board」と書いています(WebKit Blog)。ただしSafari 26.2からは、Partitioned属性を付けた区画化Cookie(CHIPS)は使えます。FirefoxのTotal Cookie Protectionは、Cookieを作成されたサイトに閉じ込める仕組みで、訪問するサイトごとに別の「cookie jar」を用意します。「Firefoxもブロックしている」と書く解説が多いものの、仕組みは遮断ではなく分離です。Edgeの既定「バランス」は、トラッカーとして分類されたドメインのうち、利用者が関わりを持っていないサイトのものについてCookieやストレージへのアクセスを止める方式で、サードパーティCookie全般を止めるものではありません(Microsoft Learn)。サードパーティCookieの定義や送信条件そのものはサードパーティCookieとは?仕組みとブラウザ別の扱いを解説【2026年最新】で、Safariの制限の詳細はITPとは?Safariの制限仕様と広告計測への影響・対策【2026年最新】で扱っています。
Chromeの廃止計画が撤回されるまでの経緯と理由
Chromeでの廃止は、2020年1月の発表から2025年4月の維持表明まで、期限が繰り返し先送りされてきました。対策を検討するときに古い記事の日付を見分けられるよう、公式発表の日付で並べます。
| 日付 | Googleの発表内容 |
|---|---|
| 2020年1月14日 | 2年以内にChromeでの廃止を目指すと表明 |
| 2021年6月24日 | 2023年後半へ延期 |
| 2022年7月27日 | 2024年後半へ延期 |
| 2024年1月4日 | 利用者の1%で制限のテストを開始 |
| 2024年7月22日 | 廃止をやめ、利用者の選択に委ねる方針へ転換 |
| 2025年4月22日 | 現行方式の維持と、新しい選択画面の見送りを発表 |
| 2025年10月17日 | Privacy Sandboxの10技術の終了を発表 |
廃止が計画された理由
出発点は、サイトをまたいだ行動追跡への批判です。Chromiumブログの2020年1月の発表は、プライバシーを守る代替技術で広告の需要を満たしたうえで、サードパーティCookieを「obsolete(不要)」にするという計画でした。SafariとFirefoxが先に制限を入れていたこと、欧州のGDPRなど規制が強まっていたことも背景にあります。
撤回に至った理由(Googleの説明)
2025年4月のGoogleの発表は、サードパーティCookieの扱いを変えることについて関係者の見解が分かれていること、2022年に英国の競争・市場庁(CMA)と情報コミッショナー事務局(ICO)との正式な協議に入って以降、プライバシー強化技術の普及や各国の規制が大きく変わったことを理由に挙げています。そのうえで、利用者がChromeのプライバシーとセキュリティ設定で選ぶ現行方式を維持すると結論づけました。
Privacy Sandboxの終了で変わった代替技術の前提
数年前の対策記事では、「Chromeの廃止に備えてTopics APIやProtected Audience APIへ移行する」が定番でした。この前提は2025年10月17日のPrivacy Sandboxの更新告知で崩れています。Googleは採用が低調だったことを理由に、次の技術を終了するとしました。
- Attribution Reporting API(ChromeとAndroid)
- IP Protection
- On-Device Personalization
- Private Aggregation(Shared Storageを含む)
- Protected Audience(ChromeとAndroid)
- Protected App Signals
- Related Website Sets(requestStorageAccessForとRelated Website Partitionを含む)
- SelectURL
- SDK Runtime
- Topics(ChromeとAndroid)
残るのは、Cookieを区画化するCHIPS、ログイン連携を扱うFedCM、不正対策のPrivate State Tokensです。埋め込みコンテンツがCookieへのアクセスを利用者に求めるStorage Access API(Chrome 119以降で既定対応)も継続し、終了対象はRelated Website Setsに付随するrequestStorageAccessForだけです。CHIPSとFedCMは他のブラウザも対応していると告知は書いています。計測については、Chrome独自のAttribution Reportingをやめ、W3CのPrivate Advertising Technology Working Groupで相互運用できる標準を議論する方向に移りました。IP Protectionは2025年4月の時点では「2025年第3四半期にシークレットモードで開始予定」とされていましたが、同じ年の10月に終了対象へ入っています。ブラウザ発の新技術は、発表から半年で予定が変わることがあるという実例です。
サードパーティCookieが使えないと止まる機能と止まらない機能
影響を受けるのは「サイトをまたいで同じブラウザを識別する」機能です。自社サイトの中で完結する計測は、ファーストパーティCookieで動きます。ここを区別しないと、必要のない対策に予算を使うことになります。
| 機能 | Safari・Firefoxでの状態 | 主な対策 |
|---|---|---|
| リターゲティングのリスト化 | リストに入りにくい | 顧客リスト連携・ログイン会員の活用 |
| ビュースルーコンバージョン | 記録されにくい | 増分効果の検証に切り替え |
| サイト横断のフリークエンシーキャップ | 効きにくい | 媒体ごとの上限設定 |
| サイト間のCookie同期 | 成立しにくい | 共通IDや自社データとの照合 |
| 埋め込み・SSO・決済iframe | 動かない場合がある | CHIPS・Storage Access API・FedCM |
| 自社サイト上のコンバージョン計測 | 動く(保存期間に制限あり) | 拡張コンバージョン・サーバー送信 |
| GA4などアクセス解析 | 動く(保存期間に制限あり) | 同意設定とサーバー側の補完 |
自社サイト上のコンバージョン計測が動く理由は、Googleのコンバージョンリンカーの説明にあります。広告クリックの情報は「ウェブページのドメイン上にあるファーストパーティの Cookie とブラウザのローカル ストレージに保存されます」(タグマネージャー ヘルプ)。ただしSafariでは、JavaScriptで作ったCookieが一定期間の未操作で消える、ITPが追跡能力ありと分類したドメインからクエリ文字列やフラグメント付きURLへ遷移した場合、着地ページでJavaScriptが設定する永続Cookieの有効期間が24時間に制限される、といった別の条件があります。「計測が落ちた」原因がサードパーティCookieではなくこちらにあることも多いので、切り分けてから対策を選びます。サイト間のCookie同期の仕組みと影響はクッキーシンク(Cookie Sync)とは?仕組みとシンク率の2つの定義【2026年】にまとめています。
自社サイトへの影響を確かめる手順
対策の優先度は、自社の訪問者がどのブラウザで来ているかと、サードパーティCookieに頼った部品がサイトにいくつあるかで決まります。まずは次の2つを確認します。
GA4によるブラウザ別の訪問比率の確認
GA4の[レポート]にあるテクノロジーの詳細レポート(英語表示では Tech details)で「ブラウザ」を表示するか、探索でディメンション「ブラウザ」を選ぶと、Safari・Firefox・Chrome・Edgeの比率が出ます。Safariの比率が高いサイトほど、サードパーティCookieを前提にしたリターゲティングや計測はすでに目減りしています。BtoBでPCのChromeとEdgeが大半でも、Edgeの追跡防止や利用者の設定による影響は残ります。広告計測の欠落と埋め込み部品の不具合を確認し、実際の損失が大きいものから対応します。
ChromeのサードパーティCookie遮断時の動作確認
Chromeの[設定]→[プライバシーとセキュリティ]→[サードパーティ Cookie]で「サードパーティの Cookie をブロックする」を選ぶか、シークレットウィンドウを開きます(シークレットモードでは既定でブロックされます)。その状態で、問い合わせフォーム、チャット、動画や地図の埋め込み、決済、外部サービスでのログインを順に操作し、止まる箇所を書き出します。DevTools(F12)の[Network]パネルで[More filters]→[Blocked response cookies]にチェックを入れると、レスポンスのCookie保存が拒否されたリクエストが表示され、各リクエストの[Cookies]タブで拒否の理由を確認できます(Chrome DevTools のリファレンス)。同じ確認をSafariとFirefoxの既定設定でも行い、標準的な環境での挙動を比較します。結果にはOS・ブラウザのバージョン、ログイン状態、同意状態、サイトごとの例外設定を記録します。
企業がとるべき対策の着手順
影響を確かめたら、次の順で進めます。順番を入れ替えると、データが正しく取れていない状態で基盤や配信に投資することになります。
1. 計測の欠落の補完:拡張コンバージョンとコンバージョンAPI
最初に手を付けるのは、広告の成果が媒体に戻らなくなっている部分です。Google 広告の拡張コンバージョンは、ウェブサイトのタグで取得したメールアドレスなどのファーストパーティデータをハッシュ化してGoogleへ送り、既存のコンバージョン計測を補完する仕組みです。EEA(欧州経済領域)の利用者がいるサイトでは、2023年11月に追加された同意モードのパラメータ(ad_user_dataとad_personalization)で同意の状態を送ることも求められています。MetaやLINEヤフーなどは、サーバーから媒体へ直接イベントを送るコンバージョンAPIを用意しています。方式の比較と導入体制はコンバージョンAPI(CAPI)とは?Cookie規制下の計測の仕組みと4つの導入方式・外注判断を解説で詳しく扱っています。
2. ファーストパーティデータの収集・統合
会員登録・資料請求・購買履歴など、自社が直接受け取るデータを顧客IDでつなぎます。Google 広告の拡張コンバージョンに必要な顧客データの取得と同意管理は、計測改善と並行して整備します。リターゲティングの代わりに顧客リストを広告媒体へ連携する、メールやアプリで再接触する、といった施策はこのデータが前提です。利用者が自ら答えたアンケートや好みの情報はゼロパーティデータとは?ファーストパーティとの違いと集め方・マーケでの使い方を解説、自社Cookieの属性設計や有効期限はファーストパーティークッキー(1st Party Cookie)とは?違いと有効期限の上限を参照してください。
3. 配信手法の見直し:コンテキスト広告・PMP・データクリーンルーム
人を追う配信の比重を下げ、記事や動画の内容に合わせて出すコンテキスト広告、参加者を限定して広告枠を取引するPMP、媒体のログインデータと自社データを個人を出さずに突き合わせるデータクリーンルームを組み合わせます。PMPは取引の形態であり、それ自体でCookieへの依存がなくなるわけではないため、取引ごとにどのターゲティングと計測を使うかを確認します。データクリーンルームは媒体ごとに提供条件が違うため、データクリーンルームとは?仕組み・種類・CDPとの違いをわかりやすく解説で種類と選び方を確認してから検討します。リターゲティングを続ける場合の設定条件はリターゲティング広告とは?仕組みと費用・媒体別の設定条件、効果の正しい測り方【2026年版】にあります。
着手を見送ってよい対策
次の条件に当てはまる対策は、急いで導入しなくて構いません。
- Privacy SandboxのAPI対応:Topics・Protected Audience・Attribution Reportingは終了対象。新規に実装する理由はない。
- 計測が直る前のCDP導入:広告とサイトの計測に欠落があるままでは、統合しても欠けたデータが集まるだけになる。
- Google 広告とMetaが中心の場合の共通ID導入:両媒体はそれぞれ拡張コンバージョンとコンバージョンAPIで補える。オープンな広告取引の比率が小さければ費用に見合いにくい。
- 他社の部品を埋め込んでいるだけのサイトでのCHIPS実装:Partitioned属性の付与はCookieの発行側が行うもので、埋め込む側が自社で実装するものではない。埋め込む側の作業は、提供元の対応状況を確認し、更新後の動作を検証することにとどまる。自社がCookieを発行する埋め込み部品・CDN・外部APIを他のサイトに提供している場合は実装の対象になる。
どこから着手するかを決めかねる場合は、Webコンサルティング・アクセス解析の支援で、GA4と広告計測の現状診断から始めることもできます。
サードパーティCookieに関わる国内の規制と対応
ブラウザの方針とは別に、国内では法令がCookieや端末識別子の扱いを求めています。Chromeが廃止を撤回しても、この部分の対応は変わりません。
電気通信事業法の外部送信規律
2023年6月16日に施行された電気通信事業法の外部送信規律(第27条の12)は、利用者の端末から外部へ情報を送らせるタグを設置する場合に、送信先・送信される情報・利用目的の通知や公表などを求めます。対象はSNS、検索、ニュースや情報提供のウェブサイトなどを運営する事業者です。総務省の外部送信規律FAQは、問1-7で「Cookieを利用していなかったとしても規律対象となります」と答える一方、問1-12・1-13では、小売業者が自社ウェブサイトで商品を販売するのは本来業務の手段として電気通信を用いているにすぎず「電気通信事業」に当たらないため、適用されないとしています。小売業でも、複数の店舗が出店するオンラインモールを運営していれば対象です(問1-14)。対象かどうかの判定と通知の実装は電気通信事業法とは?外部送信規律の対象判定とタグ管理・同意取得の実装要件を解説で手順を示しています。
個人情報保護法の個人関連情報
Cookieで取得した個人の閲覧履歴などは、個人情報・仮名加工情報・匿名加工情報のいずれにも該当しない場合、個人情報保護法の「個人関連情報」に当たります。提供先が個人データとして取得することが想定される場合、提供元は本人の同意が得られていることを確認しなければなりません(法第31条)。媒体への連携では、提供元で個人関連情報に当たるデータには第31条、提供元ですでに個人データに当たる顧客リストなどには第27条等の適用を、それぞれ提供の条件に応じて確認します。2026年7月17日に公布された改正法では、連絡に使える符号などを含む「連絡可能個人関連情報」という区分が新たに設けられました。施行は公布から2年以内の政令で定める日で、詳細は個人情報保護委員会の公表資料で確認してください。
よくある質問
サードパーティCookieはいつ廃止されますか?
Chromeでは廃止されません。Googleは2024年7月に廃止計画を取り下げ、2025年4月に現行方式の維持を発表しました。Safariは2020年3月から既定でブロックし、Firefoxは2022年6月から既定でサイトごとに区画化しているため、この2つのブラウザではサイトをまたぐ用途にはすでに使えません。
Chromeが廃止しないなら対策は不要ですか?
不要にはなりません。Safari・Firefoxの訪問者とChromeのシークレットモードでは、サードパーティCookieに頼った計測や配信は今も動きません。外部送信規律と個人情報保護法への対応も、ブラウザの方針とは関係なく求められます。
サードパーティCookieが廃止される理由は何ですか?
サイトをまたいだ行動追跡からプライバシーを守るためです。Googleは2020年に代替技術を用意したうえでの廃止を計画しましたが、関係者の見解が分かれたことや規制環境の変化を理由に、2025年4月に現行方式の維持を決めました。
サードパーティCookieをブロックするにはどうすればよいですか?
Chromeでは[設定]→[プライバシーとセキュリティ]→[サードパーティ Cookie]で「サードパーティの Cookie をブロックする」を選びます。Safariは既定でブロックされています。サイト運営者が影響を確かめるときも、この設定で自社サイトの各機能を操作するのが手早い方法です。
サードパーティCookieの代替手段は何ですか?
単独で置き換える技術はありません。計測は拡張コンバージョンやコンバージョンAPI、ターゲティングはファーストパーティデータとコンテキスト広告、媒体とのデータ連携はデータクリーンルームで補います。Privacy SandboxのTopicsやProtected Audienceは2025年10月に終了対象となったため、代替手段には数えません。