LiveKitとは?オープンソースWebRTC基盤の特徴・料金・使い方
LiveKitは、リアルタイムの音声・映像・データ通信を実現するオープンソースのWebRTC基盤です。Go言語で書かれたSFU(後述)とSDK群から成り、ビデオ会議だけでなく、音声AIエージェントの土台としても広く使われています。この記事では「LiveKitとは何か」を起点に、仕組み、主な機能、LiveKit Cloudと自前運用の違い、料金、始め方までを、公式情報をもとに整理します。
まとめ
先に要点をまとめます。詳細と判断材料は本文で解説します。
- LiveKitは、Go製のオープンソースWebRTC SFU。ライセンスはApache License 2.0で、自前運用なら無料で使える。
- SFU方式により、多人数の通話でも各参加者の帯域負担を抑えてスケールする。simulcastやSVC(AV1・VP9)に対応する。
- 近年の主用途は音声AIエージェント。LiveKit Agentsフレームワークが2025年4月に1.0へ到達し、LLM連携や発話の区切り検出、電話(SIP)連携を扱える。
- 提供形態は2つ。マネージドのLiveKit Cloudと、自分のインフラで動かすセルフホスト。Cloudには無料のBuildプランがある。
- 料金は使った分だけの従量制が基本。検証はBuild無料枠で始め、本番規模が見えてから有料プランかセルフホストを選ぶのが現実的。
以降では、定義と仕組みから始め、機能・Agents・提供形態・料金・始め方の順に掘り下げます。
LiveKitとは何か
LiveKitは、WebRTCを使ったリアルタイム通信サーバーと、各種言語向けのSDKをまとめたオープンソース基盤です。開発元はLiveKit社で、サーバー本体はGo言語で実装され、WebRTC実装にはPionを採用しています。ソースコードはApache License 2.0で公開されており、商用利用も含めて自由に使えます。公式情報では、世界で10万を超える開発者に使われ、年間30億回以上の接続を処理しているとされています。
WebRTCそのものは「ブラウザやアプリ間で音声・映像・データを直接やり取りする規格」です。ただしWebRTCの仕様だけでは、3人以上の通話や認証、録画、電話連携といった実務機能は自前で組む必要があります(WebRTCの仕組みとICE/STUN/TURN・SFU選定の判断で仕様と実装を整理しています)。LiveKitは、その面倒な部分をサーバーとSDKで肩代わりする位置づけだと理解すると分かりやすいです。
SFUとは何か(mesh・MCUとの違い)
LiveKitの中核はSFU(Selective Forwarding Unit)です。SFUは、各参加者から送られた映像・音声ストリームを受け取り、必要な相手へ選択的に転送するサーバーです。多人数通話の方式は主に3つあり、SFUはその中間に位置します。
| 方式 | 転送の仕方 | 向く規模 |
|---|---|---|
| mesh(P2P) | 全員が全員へ直接送信 | 2〜3人 |
| SFU | サーバーが選択的に転送 | 数十〜大規模 |
| MCU | サーバーで合成して1本に | サーバー負荷大 |
meshは人数が増えると各端末の送信本数が爆発し、すぐ限界が来ます。MCUはサーバー側で映像を合成するため負荷が重い。SFUは合成せず転送に徹するので、端末の負担を抑えながら大規模化できます。LiveKitがSFUを採用しているのは、この拡張性のためです。
LiveKitの主な機能(映像・音声・録画・電話連携)
LiveKitは、リアルタイム通信を実務で使うための機能をひと通り備えています。代表的なものを挙げます。
- simulcast:1つの映像を複数の画質で同時送信し、受信側の回線に応じて最適な画質を配る。
- SVC(スケーラブル動画コーデック):AV1やVP9に対応し、帯域に合わせて段階的に画質を落とせる。
- 適応的ストリーム・選択購読:表示中の相手の映像だけ、必要な解像度で受け取り、無駄な帯域を使わない。
- エンドツーエンド暗号化(E2EE):参加者間の通信を経路上で読み取られないよう保護する。ただしブラウザでE2EEを有効にすると、サーバー側録画やAIエージェントとの併用には制約がある。
- 録画・配信(Egress)/取り込み(Ingress):通話の録画や外部配信、RTMP等からの取り込みに対応する。
- 電話連携(SIP):固定電話・携帯との発着信をネイティブに扱える。
これらは個別に組むと相応の工数がかかる部分です。LiveKitを使う実利は、こうした実務機能がSDKの呼び出しで揃う点にあります。映像方式の比較はWebSockets・SSE・WebRTC・WebTransportのパフォーマンス比較もあわせて読むと、なぜリアルタイム映像にWebRTCが選ばれるかが整理できます。
LiveKit Agents(音声AIエージェント基盤)
LiveKitの用途として近年中心になっているのが、ビデオ会議ではなく音声AIエージェントの基盤としての使い方です。LiveKit Agentsは、リアルタイムに会話するAIを作るためのフレームワークで、2025年4月にバージョン1.0へ到達しました。その後も更新が続いているため、最新版はGitHubと公式ドキュメントで確認してください。
Agentsが扱うのは、音声をテキスト化する処理、LLMへの問い合わせ、応答音声の生成といった一連の流れです。特徴的なのが、利用者の発話が終わったかを推定する「ターン検出」で、AIが相手の話に被せて喋り出す不自然さを抑えます。さらに2025年にはネイティブのSIPと電話番号が加わり、電話の発着信にTwilioなどの外部ブリッジを挟まずAIエージェントを電話につなげるようになりました。音声AIを電話やアプリに載せたい場合、LiveKitは有力な選択肢です。
LiveKit Cloudとセルフホストの違い
LiveKitには2つの動かし方があります。マネージドのLiveKit Cloudと、自分のサーバーで動かすセルフホストです。どちらもSDKやコードは共通で、違いは「サーバーの運用を誰が持つか」です。
| 観点 | LiveKit Cloud | セルフホスト |
|---|---|---|
| 運用 | LiveKit社が管理 | 自分で構築・保守 |
| 費用 | 無料枠+従量課金 | ソフトは無料・インフラ費のみ |
| スケール | 自動で拡張 | 自前で設計 |
| 向く相手 | 早く出したい・運用を持ちたくない | 大規模・データを内部に置きたい |
判断の目安はこうです。まず試す段階や中小規模なら、運用を持たなくて済むLiveKit Cloudが速い。一方、通信量が大きくランニングを抑えたい場合や、データを自社インフラ内に閉じたい要件があるなら、セルフホストが効きます。CPaaS型の他サービスとの比較検討をするなら、VonageとTwilioを比較したCPaaSの解説が判断軸の参考になります。
LiveKitの料金
セルフホストならソフトウェア自体は無料で、かかるのは自前インフラの費用だけです。LiveKit Cloudは従量課金が基本で、無料のBuildプランから始められます。公開情報による目安は次のとおりです(料金は改定されるため、契約前に公式の料金ページで最新を確認してください)。
- Build(無料):エージェントセッション1,000分、WebRTC 5,000分、データ転送50GB、推論クレジット2.50ドル、無料の米国電話番号1つを含む。検証に十分な範囲。
- 本番向け有料プラン:月額およそ50〜500ドルに、使った分の従量課金が加わる。WebRTCは1分あたり0.0004ドル前後から。
つまり、最初から有料契約を結ぶ必要はありません。Build枠で動作と品質を確かめ、想定通信量が見えてから有料プランかセルフホストを選ぶ進め方が合理的です。
LiveKitの始め方
導入は、サーバーを用意してSDKからつなぐだけで、最小構成なら短時間で動かせます。大まかな流れは次の順です。
- サーバーを決める。すぐ試すならLiveKit Cloudでプロジェクトを作る。自前で動かすならサーバーをローカル起動する。
- APIキーとシークレットを取得し、接続用のアクセストークンを発行する。
- 使う言語のSDK(JavaScript、React、Swift、Android、Goなど)をアプリへ導入する。
- ルーム(Room)に接続し、カメラやマイクのトラックを公開(publish)・購読(subscribe)する。
自前で手早く動作確認したいときは、開発用サーバーをコンテナで起動できます。
docker run --rm -p 7880:7880 livekit/livekit-server --dev
この開発モードはローカル検証専用です。本番ではTLSやスケール設定が必要になるため、これらの運用を自前で持てない場合はLiveKit Cloudが現実的です。
よくある質問
LiveKitとは何ですか?
リアルタイムの音声・映像・データ通信を実現する、オープンソースのWebRTC基盤です。Go製のSFUサーバーと各言語向けSDKから成り、ビデオ会議や音声AIエージェントの土台として使われます。ライセンスはApache License 2.0で、セルフホストなら無料で利用できます。
LiveKitは無料で使えますか?
使えます。ソフトウェアはオープンソースのため、自前のサーバーで動かすセルフホストならソフト費用はかかりません。マネージドのLiveKit Cloudも、無料のBuildプランから始められます。本番で通信量が増えると、Cloudでは従量課金が発生します。
LiveKitとWebRTCの違いは何ですか?
WebRTCは、ブラウザやアプリ間でリアルタイム通信を行うための「規格」です。LiveKitは、そのWebRTCを使って多人数通話・認証・録画・電話連携などの実務機能を提供する「サーバーとSDKの実装」です。WebRTCが土台の規格、LiveKitがそれを実用化した製品、という関係になります。
LiveKit Cloudとセルフホストはどちらを選ぶべきですか?
運用を持ちたくない、または早く出したいならLiveKit Cloudが向きます。通信量が大きくランニングコストを抑えたい、データを自社インフラ内に閉じたいといった要件があるならセルフホストが向きます。まずCloudの無料枠で検証し、規模が見えてから移行を判断する進め方が手堅いです。
LiveKitで音声AIエージェントは作れますか?
作れます。LiveKit Agentsフレームワークが、音声認識・LLM連携・音声合成・発話のターン検出をまとめて扱います。2025年にネイティブのSIPと電話番号が加わり、電話に応答するAIエージェントも外部ブリッジなしで構築できます。最新の対応状況は公式ドキュメントで確認してください。