クラウドRPAという言葉は、売る側によって指す構成が異なる言葉です。ブラウザの中だけで動くSaaS型のロボットを指すこともあれば、管理画面はクラウドにあり、ロボット本体は社内のPCで動く構成を指すこともあります。この違いを押さえないまま選ぶと、導入してから「社内の業務アプリに触れない」と気づく結果になりかねません。この記事では、クラウド型RPAとデスクトップ型の違いをロボットが動く場所で整理し、Power AutomateとUiPathの公式ドキュメントをもとに、クラウドから社内PCを動かす仕組み、無人実行の条件、ボット単位の料金差を解説します。最後に示すのは、クラウドRPAを採用する条件と、別の手段へ回すべき業務を分ける判断の基準です。
まとめ:クラウドRPAとデスクトップ型の違いはロボットが動く場所で決まる
クラウドRPAは、ロボットがブラウザの中だけで動く「ブラウザ完結型」と、管理と起動はクラウドで行い、実行は社内PCやベンダーの仮想マシンで行う「クラウド管理型」の2つに分かれます。前者はWebとSaaSの操作しかできません。社内の業務アプリやExcelを含む業務を自動化するなら、後者を選び、実行用のWindowsマシンをどこに置くかを決める必要があります。
判断の順序は、まずAPIで連携できるかを確かめ、できなければRPAを検討し、最後に実行マシンを自前で持つかベンダーに任せるかを決めます。Power Automateの場合、無人実行は1ボット月額22,488円、ベンダー側の仮想マシンを使うと月額32,233円で(2026年11月時点・税抜・年払い)、差額はPCの管理を外に出す費用と考えてください。
クラウドRPAの定義とデスクトップ型・サーバー型との違いを動作場所で比較
RPAの種類は「デスクトップ型・サーバー型・クラウド型」の3分類で説明されることが多いものの、この分類はロボットが動く場所と、ロボットを管理する場所を混ぜています。2つを分けて見ると、製品ごとの違いが見通しやすくなります。
ブラウザ完結型とクラウド管理型、同じクラウドRPAに混在する2つの意味
ブラウザ完結型は、ベンダーのクラウド上にあるブラウザでWebサイトやSaaSを操作する方式です。PCへのインストールが要らず、申し込んだ当日から使えます。その代わり、操作できるのはインターネットから見える画面だけです。社内ネットワークの中にある販売管理システムや、PCにインストールした会計ソフトには届きません。
クラウド管理型は、ロボットの作成・予約・ログの管理をクラウドで行い、実際の画面操作はWindowsマシン上のエージェントが担う方式です。Power AutomateやUiPathのクラウド版はこちらに当たります。マシンを社内に置けば社内システムも操作できるため、業務システムの自動化で比較対象になるのは、ほとんどの場合この型です。
デスクトップ型・サーバー型・クラウド型を動作場所と管理場所で比べた表
次の表は、3分類にクラウドの2つの意味を加え、ロボットの実行場所と管理場所で並べ直したものです。
| 種類 | ロボットの実行場所 | 管理・起動の場所 | 社内システムの操作 |
|---|---|---|---|
| デスクトップ型 | 各自のPC | 同じPC | できる |
| サーバー型 | 社内サーバー上の実行環境 | 社内の管理サーバー | できる |
| クラウド管理型(社内マシン) | 社内のWindowsマシン | ベンダーのクラウド | できる |
| クラウド管理型(ホスト型) | ベンダーの仮想マシン | ベンダーのクラウド | ネットワーク接続を設計すれば可 |
| ブラウザ完結型 | ベンダーのクラウド上のブラウザ | ベンダーのクラウド | できない |
デスクトップ型との本当の違いは、管理と起動の場所がクラウドに移ることです。ロボットの台数が増えても予約と実行ログを1か所で見られる反面、実行するマシンの用意は消えません。RPA全体の仕組みや向く業務の一般論はRPAの仕組みと導入判断の解説で扱っており、ここではクラウド特有の論点に絞ります。
クラウドから社内PCのロボットを動かす仕組みとエージェント・ゲートウェイの役割
クラウド管理型で社内システムを自動化するとき、クラウドと社内ネットワークをつなぐ部品が2つあります。画面を操作するエージェントと、データを受け渡すゲートウェイです。競合の解説では触れられないことが多いものの、構成と費用を決めるのはこの2つです。
Power Automateでクラウドから登録済みPCのフローを起動する仕組み
Microsoftの手順書「クラウド フローからデスクトップ フローをトリガーする」によると、前提は登録済みのマシンかマシングループ、職場または学校のアカウント、デスクトップフロー接続の3つです。クラウド側のフローに「デスクトップ用 Power Automate で構築したフローを実行する」アクションを置き、アテンド型か非アテンド型かの実行モードを選びます。
メールの受信やSharePointへのファイル追加をきっかけにクラウドフローが動き、社内PCで画面操作を行い、結果をクラウドへ返す。これが典型的な流れです。入力変数の上限は2MBで、1つの接続あたり1分間に70回までという実行回数の制限も記載されています(2026年5月更新の版)。クラウドフローとデスクトップフローの機能の違いはクラウドフローとデスクトップフローの選び分けの解説に詳しくまとめています。
無人実行はRDPセッションを新規作成するため全ユーザーのサインアウトが条件
夜間や休日に人のいない状態でロボットを動かすには、非アテンド型の実行が必要です。手順書「非アテンド型のデスクトップ フローを実行する」では、Power Automateがマシン上にリモートデスクトップ(RDP)セッションを作って自動でサインインし、終了後にサインアウトする仕組みが説明されています。
見落とされやすいのは、すべてのユーザーがサインアウトした状態のマシンが必要という条件です。Windows 10と11では、ロックされた状態も含めて誰かのセッションが残っていると実行できません。つまり、日中に社員が使っている業務PCを夜間だけ無人ロボットに貸す運用は、サインアウトの徹底が前提になります。現実には、ロボット専用のマシンを1台用意する構成が安定します。
オンプレミスデータゲートウェイは送信接続のみで社内DBとクラウドをつなぐ
画面操作ではなく、社内のデータベースやファイルサーバーをクラウドフローから直接読み書きしたい場合は、オンプレミス データ ゲートウェイを社内のWindowsマシンに入れます。公式の説明では、ゲートウェイはクラウドへの送信接続を自ら開始し、受信ポートを開ける必要はありません。
情報システム部門がファイアウォールに穴を開けずに済むため、社内承認は通りやすくなります。ただし書き込み時のペイロードは2MBまで、サポート対象は直近6リリースまでで、毎月更新が出ます。ゲートウェイを入れた後に放置すると、半年ほどでサポート外になる点は運用計画に入れてください。
ベンダー側の仮想マシンでロボットを動かすホスト型の仕組みと運用上の制約
実行マシンを自前で用意したくない場合の選択肢が、ベンダーが仮想マシンを提供するホスト型です。管理だけでなく実行もクラウドに移るため、言葉どおりの意味で「クラウドRPA」に最も近い構成です。
Power Automateのホスト型:Windows 365での作成と待ち時間
Microsoftの「ホスト型コンピューター」は、Power Automateのポータルから作成すると、Windows 365を使ってWindowsマシンが自動で用意され、環境に登録されます。既定のイメージはWindows 11 Enterpriseのクラウド PC 24H2が基になっており、業務アプリを入れたい場合はAzure Compute Galleryから自社イメージを渡せます。日本の環境では東日本リージョンにイメージを置く指定です。
利用には Power Automate Hosted Process ライセンスに加え、Windows、Intune、Microsoft Entra IDのライセンスも前提になります。マシンが使えるようになるまで30分以上かかる場合があり、Hosted Process ライセンスのない環境では14日間使われないマシンが自動で削除されます。試用で作ったマシンが消えて接続を作り直す手間は、検証計画に織り込んでおいてください。
UiPathのクラウドロボットはVM・Serverless・自社クラウドの3方式
UiPathのクラウドロボットの概要(本文は英語)では、3つの方式が示されています。UiPathが仮想マシンを提供・管理するVM型、インフラの準備が要らないコンテナで動くServerless型、利用者のクラウドアカウント内で台数を自動で増減させるElastic Robot Orchestrationです。
Serverless型はバックグラウンドの自動化向けとされ、画面のある業務アプリを操作する用途ではVM型が候補になります。どの方式を選んでも、ロボットの予約・キュー・資格情報の管理先はクラウド版のOrchestratorです。その設計の考え方はOrchestratorによるロボット集中管理の解説で扱っています。
ホスト型から社内システムにつなぐには独自の仮想ネットワーク設計が別途必要
ホスト型のマシンは、既定ではベンダーが管理するネットワークに置かれます。インターネット上のSaaSは操作できても、社内の業務システムには届きません。Power Automateのホスト型コンピューターは、自社のAzure仮想ネットワークに接続する機能を持ち、Microsoft Entra ハイブリッド参加で社内のActive Directoryに参加させることもできます。
この場合、Azureと社内ネットワークを閉域でつなぐ回線、DNSの設定、ドメイン参加用のサービスアカウントが追加で必要です。ホスト型を選べばPCの調達は消えますが、ネットワークの設計作業は消えません。社内システムが主な操作対象なら、ネットワーク工事込みの見積りで自前マシンと比べてください。
クラウドRPAの料金比較:有人・無人実行とマシンの配置で変わる課金単位
クラウド管理型の費用は、人が立ち会って動かすか、無人で動かすか、実行マシンをどこに置くかの3点で決まります。Power AutomateのPremium・Process・Hosted Processの公式価格を例に、実行方式とマシンの配置による差額の意味を整理します。
有人実行は1ユーザー月額2,248円、無人実行は1ボット月額22,488円から
Power Automate の価格ページ(2026年11月5日時点・税抜・年払い)の主要プランは次のとおりです。
| Power Automateのプラン | 月額(税抜) | 課金単位 | 実行の形 | 年額換算 |
|---|---|---|---|---|
| Power Automate Premium | 2,248円 | ユーザー | 人が立ち会うアテンド型 | 26,976円 |
| Power Automate Process | 22,488円 | ボット | 自前マシンでの無人実行 | 269,856円 |
| Hosted Process | 32,233円 | ボット | ホスト型マシンでの無人実行 | 386,796円 |
ProcessとHosted Processは、ボットをマシンに割り当てて使います。価格ページの注記では、1ボットが同時に実行できる非アテンド型のデスクトップフローは1件です。夜間に3本のロボットを並行して動かしたいなら3ボット分が必要になります。課金単位の数え方と見積りの手順はPower Automateの料金・ライセンスの解説で詳しく扱っています。
自前マシンとホスト型の差額は1ボット年約11.7万円、PC管理を買うかの判断
ProcessとHosted Processの差は月額9,745円、年額で116,940円です。この差額で買っているのは、実行マシンの調達・OS更新・故障対応を自社で持たないことです。
社内に常時起動できるWindowsマシンを1台置き、OSの更新と再起動を情報システム部門が回せるなら、Processで対応できる構成です。逆に、拠点や在宅勤務の都合でロボット専用機を置く場所がない、あるいはPCの保守担当がいない組織では、年約11.7万円はPC1台の調達と保守の手間より安く済む場合が多いと判断できます。ただし、前の章のとおり社内システムに届かせるネットワーク工事は別にかかります。
クラウドRPAを採用する条件と、デスクトップ型やAPI連携へ回す業務の判断基準
ここまでの仕組みと費用を踏まえ、どの業務にどの型を当てるかを言い切ります。優先して確認すべきは、操作対象がインターネットから見えるかどうかです。
ブラウザとSaaSだけで完結する業務はブラウザ完結型かiPaaSを先に検討
操作対象がWebサイトとSaaSだけなら、Windowsマシンを持つクラウド管理型は過剰です。相手のSaaSがAPIを公開していれば、画面を操作せずにiPaaSでSaaS同士をつなぐ方法を先に検討してください。APIは画面の改修で壊れないため、保守の手間が一桁変わります。APIがなく、画面からしか取れない情報がある場合に限り、ブラウザ完結型のRPAを選びます。
社内の業務アプリを夜間に無人で動かすならクラウド管理型と社内常設マシン
社内ネットワークにある販売管理や会計ソフトを、夜間にまとめて処理させたい。この要件なら、クラウド管理型に社内常設のロボット専用マシンを組み合わせる構成が第一候補です。起動の予約、失敗時の通知、実行ログはクラウドで一元管理でき、画面操作は社内で完結します。全ユーザーのサインアウトが条件になる以上、社員の業務PCとの兼用は避けてください。
一方、ロボットが1〜2本で、担当者がPCの前にいる時間帯に動かせば済む業務なら、クラウドの管理機能は要りません。Power Automate Desktopの無償で使える範囲で始め、本数が増えた段階でクラウド管理へ移るほうが無駄がありません。
デスクトップ型からクラウドへの移行を外部に任せるべき場面と内製の線引き
Excel転記のロボットを数本、手元のPCで動かしている段階なら、外部委託は不要です。外部の支援を検討すべきなのは、既存のデスクトップ型ロボットをクラウド管理型の無人実行へ移すとき、ホスト型から社内システムへのネットワークを設計するとき、他社製RPAからPower Automateへ乗り換えるときの3つです。いずれの作業でも、画面操作の作り直しより、マシン・アカウント・ネットワークの設計で詰まりやすくなります。
一創のPower Automate導入支援・RPA移行サービスでは、既存ロボットの棚卸しから、実行マシンを自前で置くかホスト型にするかの判断、クラウドフローへの組み替えまでを受託しています。移行の前に、APIやiPaaSで置き換えるべき業務の仕分けから相談いただけます。
よくある質問
クラウドRPAの検討段階でよく挙がる質問に答えます。
クラウドRPAは無料で使えますか?
製品によっては無料プランや試用期間がありますが、本番の無人実行まで無料で済む構成はほぼありません。Power Automateの場合、Windows向けのデスクトップ版は手元のPCで作成して実行できますが、クラウドフローから起動するにはPremium(月額2,248円・税抜)以上、無人実行にはProcess(1ボット月額22,488円・税抜)が必要です(2026年11月時点)。価格ページには30日間の無料試用版も案内されています。
クラウド型RPAのセキュリティはオンプレミス型より劣りますか?
一律に劣るとは言えません。クラウド管理型では、画面操作そのものは社内のマシン内で行われ、クラウドとやり取りするのは予約・実行ログと、フロー間で受け渡す入出力の値です。データ連携に使うオンプレミス データ ゲートウェイは送信接続のみで動き、受信ポートを開けません。注意したいのは、クラウドフローからロボットへ渡す入力値に個人情報やパスワードを含める場合で、Microsoftはログからの除外や難読化を勧めています。
Power Automate DesktopはクラウドRPAですか?
Power Automate Desktop単体はデスクトップ型です。手元のPCでフローを作成し、そのPCで実行します。クラウドフローと組み合わせ、マシンをPower Automateの環境に登録すると、クラウドから起動・管理するクラウド管理型の構成になります。さらにホスト型コンピューターを使う場合は、実行マシンの配置先もMicrosoft側です。同じ製品でも構成によって型が変わる点に注意してください。
クラウドRPAでExcelや社内システムは操作できますか?
ブラウザ完結型では操作できません。クラウド管理型で、実行マシンを社内ネットワークに置けば、PCにインストールしたExcelや社内の業務システムも操作できます。ホスト型のマシンから社内システムを操作するには、Azure仮想ネットワークへの接続と社内ネットワークとの閉域接続が必要です。製品ごとの対応範囲は主要RPAツールの比較で確認できます。
オンプレミス型RPAからクラウドへ移行するときの注意点は何ですか?
ロボットのシナリオより先に、実行マシンとアカウントを設計してください。無人実行ではロボット用のアカウントでマシンにサインインするため、個人のIDを流用していたロボットはそのまま移せません。また、移行は既存ロボットを見直す機会でもあります。連携先にAPIがある業務はRPAから外し、画面操作が残る業務だけを移すと、移行後の保守対象を減らせます。
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