ケアプランデータ連携システムの利用事業所は、WAM NETの利用状況サイトで2026年8月18日現在108,361件と公表されています。10万件を超えたと聞けば普及は済んだように読めますが、現場から紙とFAXが消えたという話にはなっていません。このシステムは送り手と受け手の双方が登録していなければ1件も減らない仕組みだからです。公表件数の伸び方、普及率が資料によって1割とも4割弱とも書かれる理由、取引先の加入を名指しで確かめる手順、そして2027年1月の統合が様子見の期限を切る事情までを整理し、担当件数と取引先の加入率という2つの条件で先行と保留の線を引きます。
まとめ:10万件超の利用登録でも紙が残る条件と、先行して入れるべき事業所の輪郭
先に結論を出します。居宅介護支援事業所は、担当利用者が20名を超えて提供票の送付先が10事業所以上あるなら、2026年中に登録して差し支えありません。ライセンス料は2025年6月1日に始まったフリーパスキャンペーンで年額21,000円が無料になっており、2027年1月に予定される介護保険資格確認等WEBサービスへの統合後は利用料そのものが無料になる方針です。費用面の障害は実質的に消えました。
受け手側のサービス事業所は事情が違います。受け取る居宅介護支援事業所が5社に満たず、月の実績返送が10件程度なら、削減できる時間は月あたり数十分にとどまる計算です。この規模なら介護ソフト側の対応状況だけ確認しておき、登録は統合のタイミングに合わせても間に合います。
判断を分けるのは全国の普及率ではありません。自分が毎月やり取りする相手のうち何社が登録済みか、それだけです。WAM NETの利用状況サイトは事業所名と地域から加入の有無を1件ずつ照合できるため、上位10社の取引先を突き合わせるだけで、全国値より正確な見積もりが手に入ります。
2026年8月時点の利用事業所数と、フリーパス開始後に登録が伸びた実際の伸び幅
公表されている数字は一つではありません。集計元と時点で見え方が変わるため、まず一次情報にあたる件数から押さえます。
WAM公表の掲載件数10万8千件と、1か月前との差分から読める増加ペース
独立行政法人福祉医療機構が運営するWAM NETの「ケアプランデータ連携システム利用状況」は、国民健康保険中央会から提供を受けた利用事業所を地図上に掲載しています。掲載件数は2026年8月18日現在で108,361件。同じサイトの2026年7月15日現在の表示は101,227件でしたから、1か月あまりで約7,100件増えた計算です。
月あたり7千件前後という増え方は、2023年4月の本格稼働からの3年間を平均したペースをはっきり上回ります。伸びの山は2026年前半に集中していて、後述するフリーパスキャンペーンの延長が告知された時期と重なります。
ここで注意したいのは、掲載件数が「利用登録を済ませた事業所」の数だという点です。月に何件のデータを実際にやり取りしたかという稼働の数字ではありません。登録したまま使っていない事業所が含まれるため、この数字を導入効果の裏付けには使えません。
2025年6月開始のフリーパスと、年額21,000円が無料になる期間の現在地
通常のライセンス料は1事業所あたり年額21,000円(税抜)です。国民健康保険中央会は2025年6月1日からフリーパスキャンペーンを実施しており、新規申込と契約更新の双方でこの料金が無料になります。当初の期限は2026年5月31日でしたが、2026年4月20日の告知で介護保険資格確認等WEBサービスの統合日まで延長されました。
電子証明書も無償で発行されます。つまり2026年8月時点で、登録そのものに伴う直接の出費はほぼゼロ。残るのは介護ソフト側の連携オプション費と設定作業の工数だけで、金額の内訳と回収ラインはケアプランデータ連携システムの料金で年額と削減額を突き合わせています。
無料期間に入ってから登録が伸びたという事実は、裏返せば年間21,000円を払ってまで入る便益は感じられていなかったということでもあります。件数の伸びを普及の完了と読むと、判断を誤ります。
普及率が資料によって1割とも4割弱とも書かれる理由と、分母の三つの取り方
同じ時期の記事で「普及率は1割程度」と書くものと「約38%」と書くものが並んでいます。どちらも計算違いではありません。分母が違うだけです。
居宅介護支援事業所37,258か所を分母に置いたときに率が壊れる理由
厚生労働省の令和6年介護サービス施設・事業所調査(令和6年10月1日現在)では、居宅介護支援事業所は37,258か所。ケアプランを送り出す側だけを数えるとこの規模です。利用登録の108,361件をこの数で割ると3倍近くになり、率として成立しません。
登録の大半は受け手側が占めます。同じ調査で訪問介護は37,264か所、通所介護は24,585か所、地域密着型通所介護は18,921か所、訪問看護ステーションは18,042か所。この5区分に居宅介護支援を加えた合計は136,070で、108,361件を当てると8割弱という数字が出ます。
延べ数で数える公的統計の性質と、単純合計約32万を分母にできない事情
その8割弱も額面どおりには受け取れません。同調査の表には「複数のサービスを提供している事業所は、各々に計上している」という注記が付いています。訪問介護と通所介護を同一拠点で運営していれば2事業所として数えられるということです。全区分を単純に足すと約319,610になりますが、これは延べ数であって法人や拠点の実数ではありません。
民間の解説記事が「介護事業所の総数を23万件と仮定して計算」と断ったうえで38%台を示しているのは、この延べ数を実数に寄せて丸めた結果です。仮定を変えれば率は動きます。普及率という数字そのものを記事間で比べても、得られる情報はほとんどありません。
自社の判断に使うべき分母は全国値ではなく取引先リストという結論
投資判断に使える分母は一つだけです。自分が毎月やり取りする相手のうち、何社が登録済みか。取引先20社のうち3社しか登録していなければ、全国で8割が登録していても手元には17社ぶんの紙が残ります。逆に往復件数の多い主要5社が全部登録していれば、全国率が1割でも効果は出る。
導入状況を調べる目的は、全国の順位表を眺めることではなく、この置き換え作業を済ませることにあります。仕組みそのものの要件や申込手順はケアプランデータ連携システムとはで整理しているので、置き換えの前に前提を確認しておくと迷いません。
片側だけの導入で紙とFAXが残る仕組みと、二重管理が発生する取引先の割合
「導入したのに楽にならない」という声は普及の初期から一貫して出ています。原因は運用の慣れではなく、受け渡しの構造そのものにあります。
送り手と受け手の双方が登録していなければ1件も減らない受け渡しの構造
この仕組みは、居宅介護支援事業所が作った提供票を標準仕様のCSVで送り、サービス事業所が実績を同じ形式で返す往復を前提にしています。送信先が登録していなければ、その相手には従来どおり郵送かFAXで送るしかありません。片側だけの導入では送付の手段が1本増えるだけで、封入も送付簿も残ります。
効果が見え始めるのは、取引先の過半数が登録して紙を例外として扱えるようになってからです。半数を割っているうちは、電子と紙の2系統を並行して回す状態が続きます。
提供票と実績を月次で往復させる運用に、CSVと紙が混在したときの手戻り
月初の実績確認と月末の提供票配布は、介護報酬の請求期限に挟まれた短い期間に集中します。ここで電子と紙が混ざると、どの事業所に何を送ったかを追う管理表を別に作ることになり、突合の手間が上乗せされます。二重管理と呼ばれている状態です。
回避策は単純で、送付先をまとめて切り替えることに尽きます。1社ずつ様子を見ながら移行する方針は、二重管理の期間をそのまま引き延ばします。切り替えを半年かけるくらいなら、対象を絞って一気に寄せたほうが負担は軽い。
介護ソフト側の取り込み対応と標準仕様1.2系への追随状況の確認箇所
システム本体が無料でも、手元の介護ソフトが標準仕様のCSVを取り込めなければ、受け取ったデータを画面から入力し直す作業が残ります。国民健康保険中央会は2025年4月30日にアップデート版1.2.0系の配布を開始しており、ソフト側もこれに追随している必要があります。ベンダーの対応表で自社の契約バージョンが対象に入っているかを確認してください。
取り込みに対応していない場合の選択肢は、ソフトの入れ替えか、連携部分だけを個別に作るかの二択です。請求ソフトや記録システムと標準仕様CSVをつなぐ処理は、API開発・システム連携のように既存システムへ後付けする形でも組めます。ソフト選定そのものから見直すなら、介護ソフトとはで機能と提供形態を整理してから比較に入ると判断が早くなります。
取引先が加入済みかを名指しで確かめる手順と、判断に使う月間やり取り件数
ここからは手を動かす工程です。全国値を自分の取引先の数字に置き換えます。
WAMの利用状況サイトで事業所名と地域から加入を1件ずつ照合する手順
WAM NETの利用状況サイトは、利用登録済みの事業所を地図と一覧で公開しています。掲載データは国民健康保険中央会の提供で、所在地は介護サービス情報公表システムの情報を使っています。次の順序で照合してください。
- 直近3か月に提供票を送った、または実績を受け取った事業所を一覧にする
- WAM NETの「ケアプランデータ連携システム利用状況」で、事業所名または都道府県から検索する
- 掲載があれば登録済み、掲載がなければ未登録として一覧に印を付ける
- 登録済みの社数と、その相手との月間往復件数を合計する
事業所名の表記ゆれで見つからないことがあります。ヒットしないときは法人名や市区町村まで範囲を広げ、それでも出てこない場合のみ未登録として扱ってください。
月間の往復件数から、削減できる郵送費と封入工数を見積もる計算
削減額は「月間の送付通数×郵送費」と「封入・宛名・送付簿の作業時間」の2本で概算します。郵便料金は2024年10月の改定後、定形郵便25g以内が110円です。
| 月間の送付通数 | 郵送費の月額 | 郵送費の年額 | 封入等の年間工数 | 判断 |
|---|---|---|---|---|
| 10通未満 | 約1,100円 | 約13,200円 | 6時間前後 | 金額では判断がつかない |
| 30通前後 | 約3,300円 | 約39,600円 | 12時間前後 | 工数の削減で判断する |
| 60通以上 | 約6,600円 | 約79,200円 | 24時間前後 | 先行して登録する |
工数は1通あたり封入と宛名確認で3分という前提で置いた目安です。表の下段に当たる事業所は、登録が無料である以上、検討する時間のほうが高くつきます。上段の事業所は金額では結論が出ないため、取引先の加入率で決めてください。
2027年1月の介護WEBサービス統合が、様子見という判断の期限を切る理由
導入状況を語る前提が2026年夏に変わりました。無料であるうちに入るかどうかという構図が、そもそも成立しなくなります。
統合後に利用料が無料化しても、登録手続きが別途必要になる三つの分岐
厚生労働省は2026年7月30日付の介護保険最新情報Vol.1529で、ケアプランデータ連携システムを2027年1月に介護保険資格確認等WEBサービスへ統合する方針を示しました。統合後は利用料が無料になる一方、使い続けるには介護WEBサービスへの登録が要ります。事業所の現状によって手続きは分かれます。
- 介護WEBサービスを既に利用登録している:改めての登録は不要
- ケアプランデータ連携システムだけを使っている:介護WEBサービスへの登録が必要
- どちらも未導入:両方の導入と登録が必要
三つ目に当てはまる事業所が最も手数を要します。統合直前に着手すれば、年度末の請求業務と手続きが重なります。
統合を待って先送りした事業所に残る、移行期の実務コストの内訳
「無料になるまで待つ」という判断は、フリーパスで既に無料である以上、金銭的な意味を持ちません。待つことで生じるのは、電子証明書の取得と職員への操作説明を統合直後の混雑期にまとめて行うコストです。全国向けの説明会は2026年8月26日にオンラインで開かれており、資料と手順は先に手に入ります。
先に登録して運用を慣らしておけば、統合時にやることは登録状態の確認だけで済みます。なお統合によって利用が義務になるわけではありません。法令上の位置づけと期日の逆算はケアプランデータ連携システムの義務化で扱っています。
事業所の規模と役割で分ける、先行して導入する場面と待ってよい場面の線引き
ここで判断を言い切ります。送り手か受け手か、そして月間の往復件数がどのくらいか。この2軸で結論は決まります。
居宅介護支援事業所で担当件数と送付先数が閾値を超える場合の判断
居宅介護支援事業所は先行して入れる側です。担当利用者が20名を超えて提供票の送付先が10事業所以上あれば、月の往復は数十通規模になり、郵送費と封入工数の削減が表の下段に届きます。登録は無料、電子証明書の発行も無償ですから、判断を遅らせる理由が費用の側にありません。
担当が10名前後で送付先が3社という小規模事業所でも、結論は同じです。削減の絶対量は小さいものの、登録に費用がかからない以上、取引先が1社でも登録済みなら入れておくほうが得になります。ここは「効果が薄いから見送る」ではなく「費用がゼロだから入れておく」で判断が反転する、珍しい種類の投資です。
受け手側のサービス事業所が導入を後回しにしてよい条件と、その期限
訪問介護や通所介護のようなサービス事業所は、受け取る居宅介護支援事業所が5社未満で月の実績返送が10通程度なら、後回しでかまいません。片側だけ登録しても紙は減らず、介護ソフト側の設定作業だけが発生するからです。
ただし期限は2027年1月です。統合後は介護WEBサービスへの登録が前提になり、居宅側から電子での受け渡しを求められる頻度も上がります。それまでにやっておくのは登録ではなく、介護ソフトが標準仕様のCSVを取り込めるかどうかのベンダー確認です。ここで対応不可と分かれば、ソフトの入れ替えか連携部分の開発かという別の検討が必要になり、数か月の準備期間が要ります。
導入しても効果が出ない失敗パターンと、そこで先に直すべき運用
使われない状態に落ちる典型は二つあります。一つは、介護ソフトが標準仕様のCSVを取り込めず、受け取ったデータを画面へ手入力しているケース。この状態では送付の手間だけが電子に移り、入力工数はそのまま残ります。もう一つは、取引先の切り替えを1社ずつ進めて移行期間を半年以上に延ばしたケースで、紙と電子の管理表を二重に持つ期間が負担として残り続けます。
どちらも登録の前に決着させられる話です。ベンダーに取り込み対応を確認し、切り替える取引先をまとめて洗い出してから登録する。この順序さえ守れば、登録したまま使わない事業所の側に回ることはありません。
よくある質問
導入状況と普及率をめぐって、事業所から実際に出る質問を5つ挙げます。
ケアプランデータ連携システムの導入状況は現在どのくらいですか?
WAM NETの「ケアプランデータ連携システム利用状況」では、2026年8月18日現在で108,361件が掲載されています。データは国民健康保険中央会が提供しており、同サイトの2026年7月15日現在の表示は101,227件でした。1か月あまりで約7,100件の増加です。ただしこれは利用登録を済ませた事業所の数で、実際にデータをやり取りしている件数ではありません。稼働の実態は、この数字とは別に見る必要があります。
普及率が資料によって1割とも4割弱とも書かれるのはなぜですか?
分母の取り方が違うためです。厚生労働省の令和6年介護サービス施設・事業所調査では、居宅介護支援事業所が37,258か所、訪問介護が37,264か所、通所介護が24,585か所などと区分ごとに数えられ、全区分の単純合計は約319,610になります。同調査は複数サービスを提供する事業所を各区分に計上しているため、この合計は延べ数です。実数に寄せて23万と仮定すれば4割弱、全区分の合計に近い数を置けば1割台になります。
取引先がこのシステムを導入しているかを調べる方法はありますか?
WAM NETの利用状況サイトで、事業所名または都道府県から検索できます。掲載されていれば利用登録済みです。所在地情報は介護サービス情報公表システムのデータを使っているため、表記ゆれで見つからないことがあります。法人名や市区町村まで条件を広げて確認してください。直近3か月に提供票や実績をやり取りした相手を一覧にして順に照合すると、自分の事業所にとっての実効的な普及率が出ます。
2027年1月の統合後も、今登録しておけばそのまま使えますか?
そのままとはいきません。厚生労働省の介護保険最新情報Vol.1529(2026年7月30日)では、2027年1月に介護保険資格確認等WEBサービスへ統合され、継続して利用するには介護WEBサービスへの登録が必要とされています。既に介護WEBサービスを利用登録している事業所は追加の手続きが不要です。ケアプランデータ連携システムだけを使っている場合は、介護WEBサービス側の登録を済ませてください。
導入したのに紙とFAXが減らないのはどうしてですか?
送り手と受け手の双方が登録していないと、その相手とのやり取りは電子化されないためです。取引先の過半数が未登録なら、電子と紙の2系統を並行して管理することになり、かえって手間が増えます。もう一つの原因は、介護ソフトが標準仕様のCSVを取り込めず、受信データを手入力し直しているケースです。国民健康保険中央会は2025年4月30日にアップデート版1.2.0系の配布を始めており、ソフト側の対応状況をベンダーに確認してください。
関連記事
- ケアプランデータ連携システムとは:利用要件と申込手順、介護ソフト連携の確認点を規格の側から整理しています
- ケアプランデータ連携システムの補助金:対象経費と生産性向上関連の加算要件との関係を扱っています
- 介護記録システムとは:記録の電子化範囲と入力端末の設計を、連携の前工程として整理しています
- 介護請求ソフトとは:国保連伝送との違いと返戻対応を扱い、請求側の連携判断に使えます
- 訪問看護システムとは:医療保険と介護保険で分かれる請求・記録の要件を比較しています