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扶養控除と配偶者控除の対象者・所得要件・控除額における根本的な違い

目次

扶養控除と配偶者控除の対象者・所得要件・控除額における根本的な違い

扶養控除と配偶者控除はどちらも所得控除の一種ですが、対象となる人物や適用条件がまったく異なります。この違いを正確に把握しておかないと、本来受けられるはずの控除を見逃してしまったり、誤った申告をしてしまったりする原因になりかねません。ここではまず、両制度の根本的な違いを整理していきます。

扶養控除は配偶者以外の16歳以上親族が対象となる所得控除の基本要件

扶養控除とは、納税者が一定の要件を満たす親族を経済的に養っている場合に適用される所得控除です。対象となるのは、その年の12月31日時点で16歳以上の扶養親族であり、配偶者は含まれません。扶養親族として認められるためには、合計所得金額が58万円以下であること、納税者と生計を一にしていること、青色申告者の事業専従者として給与を受けていないことなどの要件を満たす必要があります。

ここで重要なのは、16歳未満の子どもは扶養控除の対象外であるという点です。これは児童手当の支給対象と制度が整理された結果であり、所得税の計算上は16歳未満の子どもがいても控除額は増えません。ただし、住民税の非課税判定には影響するため、扶養親族として申告書に記載する意味がなくなるわけではありません。扶養控除の金額は、扶養親族の年齢区分によって38万円から63万円まで段階的に設定されており、特定扶養親族(19歳以上23歳未満)の場合に最も高い63万円が適用されます。

配偶者控除は民法上の配偶者のみが対象で内縁関係が除外される理由

配偶者控除は、納税者に合計所得金額が58万円以下の配偶者がいる場合に受けられる所得控除です。控除額は納税者本人の所得に応じて最大38万円、配偶者が70歳以上の老人控除対象配偶者であれば最大48万円となります。対象はあくまでも民法上の婚姻関係にある配偶者に限られ、内縁関係(事実婚)のパートナーは制度上含まれません。

内縁関係が除外される理由は、税法上の控除制度が戸籍に基づく法律婚を前提として設計されているためです。社会保険の被扶養者認定では内縁関係でも対象となるケースがありますが、所得税の配偶者控除ではこのような取り扱いはされません。また、配偶者控除を受けるには、配偶者が納税者と生計を一にしていること、青色事業専従者や白色事業専従者でないことも要件となります。婚姻届を提出していない場合は、いくら経済的に扶養していても配偶者控除の適用はありませんので、制度利用を前提にした家計設計をする際にはこの点を必ず確認してください。

扶養控除38万円〜63万円と配偶者控除38万円〜48万円の控除額比較

扶養控除と配偶者控除では、控除額の幅に明確な差があります。扶養控除は扶養親族の年齢区分に応じて金額が変動し、一般の控除対象扶養親族(16歳以上19歳未満、23歳以上70歳未満)は38万円、特定扶養親族(19歳以上23歳未満)は63万円、老人扶養親族(70歳以上)は同居の場合58万円、同居以外の場合は48万円です。

控除の種類 対象者 控除額(所得税)
一般扶養控除 16歳以上19歳未満・23歳以上70歳未満の親族 38万円
特定扶養控除 19歳以上23歳未満の親族 63万円
老人扶養控除(同居) 70歳以上の同居親族 58万円
老人扶養控除(非同居) 70歳以上の非同居親族 48万円
配偶者控除 所得58万円以下の配偶者 最大38万円
老人配偶者控除 70歳以上の配偶者 最大48万円

このように比較すると、大学生の子どもを養っている場合の特定扶養控除63万円は、配偶者控除の38万円を大きく上回ります。家族構成によってどの控除がどれだけの節税効果をもたらすかは異なりますので、自身の世帯状況に当てはめて控除額を確認することが大切です。

扶養控除に所得制限なし・配偶者控除は本人所得1000万円超で適用外

扶養控除と配偶者控除の大きな違いのひとつが、納税者本人の所得に対する制限の有無です。扶養控除には納税者本人の所得制限がありません。つまり、年収がいくら高くても、要件を満たす扶養親族がいれば控除を受けられます。一方、配偶者控除と配偶者特別控除には納税者本人の合計所得金額1000万円以下という制限が設けられています。

この所得制限は、高所得者層に対する課税の公平性を意識した制度設計といえるでしょう。具体的には、納税者の合計所得金額が900万円以下であれば満額の38万円が控除されますが、900万円超950万円以下で26万円、950万円超1000万円以下で13万円と段階的に減額されていきます。合計所得金額が1000万円を超えると、配偶者控除も配偶者特別控除も一切適用されません。扶養控除にはこうした段階的減額の仕組みがないため、高所得者であっても親や子どもを扶養に入れることで確実に所得控除を受けられる点は覚えておきましょう。

6親等内の血族・3親等内の姻族まで広がる扶養控除の対象親族の範囲

扶養控除の対象となる親族の範囲は、配偶者控除と比較して非常に広く設定されています。具体的には、6親等内の血族および3親等内の姻族が対象です。血族には、子・孫・ひ孫・親・祖父母・曽祖父母・兄弟姉妹・おじおば・いとこなどが含まれ、姻族には配偶者の両親や兄弟姉妹などが該当します。

この広い親族範囲は実務上も見落とされがちなポイントです。たとえば、離れて暮らす親に毎月仕送りをしている場合、同居していなくても生計を一にしていると認められれば扶養控除の対象になります。甥や姪であっても、経済的に支援していれば対象となる可能性があります。ただし、都道府県知事から養育を委託された里子や、市町村長から養護を委託された老人も対象に含まれる一方、老人ホームに入所している親は「同居老親等」には該当しません。入所していても生計を一にしていれば「同居老親等以外」として48万円の控除を受けることは可能です。対象親族の範囲を正しく理解し、申告漏れを防ぐことが節税の第一歩になります。

令和7年度税制改正で変わった所得要件と年収の壁123万円への引き上げ

令和7年度税制改正は、扶養控除と配偶者控除の両方に大きな影響を与えました。基礎控除や給与所得控除の引き上げにより、扶養判定の基準となる年収ラインが変更されています。改正の内容を正確に把握しておかないと、年末調整や確定申告で誤った処理を行うリスクがあります。

合計所得金額48万円から58万円への引き上げで扶養判定が変わる具体例

令和7年度税制改正により、扶養親族および同一生計配偶者の合計所得金額の要件が、従来の48万円以下から58万円以下に引き上げられました。この10万円の引き上げは、基礎控除額の引き上げに連動したものです。給与収入のみの場合、合計所得金額58万円以下は年収123万円以下に相当します。

具体例で考えてみましょう。たとえば、パートで働く配偶者の年収が110万円だった場合、改正前は給与所得控除55万円を差し引いた所得金額が55万円となり、48万円を超えるため配偶者控除の対象外でした。しかし改正後は、給与所得控除65万円を差し引いた所得金額が45万円となり、58万円以下の要件を満たすため配偶者控除の対象になります。同様に、大学生の子どものアルバイト収入が115万円だった場合も、改正前は扶養親族の要件から外れていましたが、改正後は所得金額が50万円となり扶養控除の対象として認められます。このように、改正によって新たに控除対象となる人が相当数いると見込まれるでしょう。

給与所得控除の最低保障額55万円から65万円への改正が手取りに与える影響

令和7年度税制改正では、給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられました。給与所得控除とは、給与収入から一定額を差し引いて所得金額を算出するための控除であり、サラリーマンやパートタイマーの「必要経費」に相当するものです。最低保障額が10万円増えたことで、低収入の給与所得者ほど恩恵が大きくなっています。

手取りへの影響を数値で見ると、年収123万円の場合は給与所得控除65万円を差し引いた所得が58万円となり、さらに基礎控除58万円を適用すると課税所得はゼロになります。つまり、年収123万円までは所得税が発生しません。改正前は年収103万円がこのラインでしたから、20万円分の引き上げとなりました。パートやアルバイトの年収調整をしている方にとっては、より多く働いても所得税がかからない範囲が広がったことを意味しており、家計の収入増に直結する改正といえるでしょう。なお、給与所得控除は年収850万円超で195万円が上限となっており、高収入の給与所得者にとっては最低保障額の引き上げによる影響はありません。

基礎控除の最大95万円への段階的引き上げと年収160万円非課税ラインの関係

基礎控除は従来一律48万円でしたが、令和7年度税制改正により合計所得金額に応じて段階的に引き上げられました。合計所得金額132万円以下の場合は最大95万円の基礎控除が適用されます。132万円超336万円以下であれば88万円、336万円超489万円以下であれば68万円、489万円超655万円以下であれば63万円、655万円超2350万円以下であれば58万円です。

この段階的引き上げの結果、給与収入のみの場合で年収160万円までは所得税が非課税となるラインが形成されました。計算の内訳は、給与所得控除65万円+基礎控除95万円=160万円です。いわゆる「103万円の壁」が「160万円の壁」に変わったと表現されることもありますが、正確にいえば160万円は本人の所得税が非課税となるラインであり、扶養の判定基準となる「123万円の壁」とは性質が異なります。配偶者がパートで年収150万円を得ていても配偶者自身には所得税がかかりませんが、配偶者控除の対象からは外れる点に注意が必要です。

改正前の103万円の壁と改正後の123万円の壁で変わるパート収入の判断基準

長年「103万円の壁」と呼ばれてきた年収ラインは、令和7年度税制改正によって「123万円の壁」に変わりました。改正前は、基礎控除48万円+給与所得控除55万円=103万円が所得税非課税のラインであると同時に、配偶者控除や扶養控除の適用上限でもありました。改正後は、扶養親族の所得要件である合計所得金額58万円に給与所得控除65万円を加えた123万円がこの壁になっています。

パートで働く方にとって具体的に変わるのは、年収調整の目安です。たとえば月収10万円で年間120万円の収入がある場合、改正前であれば103万円を超えているため扶養から外れていましたが、改正後は123万円以下のため扶養に留まれます。ただし、年収123万円はあくまで給与収入のみの場合の基準であり、副業収入や投資所得がある場合は合計所得金額で判定される点を見落としてはなりません。また、配偶者特別控除の満額ラインも150万円から160万円に引き上げられたため、123万円を多少超えても控除額が急減するわけではない仕組みになっています。

2025年12月1日施行のため年末調整から適用される改正スケジュールの注意点

令和7年度税制改正は2025年12月1日に施行され、令和7年分の所得税から適用されます。このスケジュールで特に注意すべきなのは、2025年11月までの毎月の源泉徴収事務には原則として変更が生じないという点です。改正内容が反映されるのは、12月に行う年末調整の段階になります。

実務担当者にとっては、年末調整のタイミングでいくつかの確認作業が求められます。まず、改正により新たに扶養控除等の対象となった親族がいないか従業員に確認し、該当者がいれば「扶養控除等(異動)申告書」の再提出を受けなければなりません。さらに、特定親族特別控除の適用を受ける従業員からは「給与所得者の特定親族特別控除申告書」の提出も必要です。申告書の様式も一部変更されており、令和7年分からは「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」という統合された書式が使われます。年末調整で適用しきれなかった場合でも、確定申告によって還付を受けることが可能です。

配偶者特別控除・特定親族特別控除との併用関係で生じる控除額の損得

扶養控除や配偶者控除だけでなく、配偶者特別控除や新設された特定親族特別控除も含めて全体像を理解することが、世帯の節税効果を最大化する鍵になります。それぞれの控除がどのような場合に適用され、併用関係にどのような制約があるのかを整理していきましょう。

配偶者の年収123万円超〜201万6000円未満で段階的に減る特別控除額の一覧

配偶者控除の対象から外れる年収123万円超の配偶者がいる場合でも、配偶者特別控除によって一定の所得控除を受けられます。配偶者特別控除は配偶者の合計所得金額が58万円超133万円以下(給与収入のみの場合は123万円超201万6000円未満)の範囲で適用され、所得が増えるほど控除額が段階的に減少する仕組みです。

配偶者の給与年収 合計所得金額 控除額(本人所得900万円以下)
123万円以下 58万円以下 38万円(配偶者控除)
123万円超〜160万円以下 58万円超〜95万円以下 38万円
160万円超〜165万円以下 95万円超〜100万円以下 36万円
165万円超〜170万円以下 100万円超〜105万円以下 31万円
170万円超〜175万円以下 105万円超〜110万円以下 26万円
175万円超〜180万円以下 110万円超〜115万円以下 21万円
180万円超〜185万円以下 115万円超〜120万円以下 16万円
185万円超〜190万円以下 120万円超〜125万円以下 11万円
190万円超〜197万円以下 125万円超〜130万円以下 6万円
197万円超〜201万6000円未満 130万円超〜133万円以下 3万円

この表からわかるとおり、配偶者の年収が160万円以下であれば配偶者特別控除でも満額38万円が適用されます。つまり、123万円を超えたからといって直ちに控除額が減るわけではなく、160万円までは配偶者控除と同額の恩恵を受けられるのです。年収調整を考える際には、この160万円のラインを意識することが重要になります。

年収160万円以下なら配偶者特別控除でも満額38万円が適用される仕組み

令和7年度税制改正の前は、配偶者特別控除の満額ラインが年収150万円(合計所得金額95万円以下)に設定されていました。改正後はこのラインが年収160万円(合計所得金額95万円以下、給与所得控除65万円適用後)に引き上げられています。この変更により、いわゆる「150万円の壁」は「160万円の壁」に移行しました。

実際の家計への影響を考えると、この改正は共働き世帯にとって大きなメリットです。配偶者の年収が150万円から160万円の範囲にある場合、改正前であれば控除額が段階的に減額されていましたが、改正後は満額38万円が維持されます。たとえば納税者の所得税率が20%の場合、38万円の控除は約7万6000円の所得税軽減に相当します。住民税の控除(33万円)も合わせると、年間で約11万円程度の節税効果が見込めるでしょう。この金額は月額にすると約9000円ですから、パートの勤務時間を無理に減らして年収を抑えるよりも、160万円まで働いたほうが世帯全体の手取りは増えるケースがほとんどです。

19歳〜22歳の子を持つ親向けに新設された特定親族特別控除の最大63万円

令和7年度税制改正で新たに創設された「特定親族特別控除」は、19歳以上23歳未満の親族(特定親族)を対象とする制度です。従来、この年齢層の親族は合計所得金額が48万円(改正後は58万円)を超えると扶養控除の対象から完全に外れていましたが、新制度では所得金額に応じて最大63万円の控除が段階的に適用されます。

特定親族特別控除の対象となるのは、合計所得金額が58万円超123万円以下の特定親族です。控除額は所得金額が増えるほど減少していきますが、合計所得金額が85万円以下であれば63万円の満額控除が受けられます。給与収入に換算すると、年収150万円以下であれば63万円の控除が維持されるため、大学生のアルバイト収入が123万円を超えても直ちに親の税負担が大幅に増えるわけではありません。この制度は、大学生の子どもを持つ世帯が年収調整に過度に悩まなくて済むように設計されており、年末調整では「給与所得者の特定親族特別控除申告書」を提出することで適用を受けられます。

配偶者控除と扶養控除は同一人物に重複適用できない二重控除禁止の原則

所得控除には「同一の人物について複数の控除を重複して適用することはできない」という基本原則があります。配偶者控除と扶養控除についても、ひとりの親族を複数の納税者が同時に扶養親族として申告することはできません。たとえば、共働き夫婦がそれぞれの確定申告で同じ子どもを扶養親族として計上した場合、どちらか一方しか認められないことになります。

この原則に違反する申告が行われた場合、税務署から是正通知が届き、控除の取り消しと追加の税額の納付が求められます。実務上よくあるのは、離婚した元夫婦が双方で同じ子どもを扶養親族に入れてしまうケースや、兄弟姉妹が別々に同じ親を扶養に入れるケースです。また、配偶者は扶養控除の対象には含まれず、配偶者控除または配偶者特別控除のいずれかで申告する必要がある点も間違えやすいポイントです。年末調整で申告書を記入する際には、家族間でだれがだれを扶養に入れるかを事前に話し合っておくことが、トラブル回避につながります。

保険満期返戻金や年金所得を見落とすと配偶者特別控除の適用判定を誤る失敗例

配偶者控除や配偶者特別控除の適用判定で見落とされがちなのが、給与以外の所得の存在です。合計所得金額にはパートやアルバイトの給与所得だけでなく、公的年金等の雑所得、生命保険の満期返戻金による一時所得、不動産所得、株式の譲渡所得なども含まれます。これらを計算に入れ忘れると、配偶者の合計所得金額が実際には要件を超えていたという事態が起こりかねません。

たとえば、配偶者のパート年収が120万円で配偶者控除の範囲内だと考えていても、その年にたまたま満期を迎えた生命保険の返戻金で一時所得が30万円発生していたとします。一時所得は特別控除50万円を差し引いた後の2分の1が合計所得金額に加算されるため、この場合の影響は限定的ですが、返戻金の額が大きければ所得要件を超えてしまうことも考えられるでしょう。同様に、遺族年金以外の公的年金を受給している配偶者の場合、年金収入も合計所得金額に含まれる点を見落としてはなりません。年末調整の時期に配偶者の「所得の見積額」を記入する際には、給与以外のすべての収入源を洗い出して正確に計算することが欠かせません。

共働き世帯が年収ライン別に判断すべき扶養控除と配偶者控除の使い分け

共働き世帯では、配偶者の年収や子ども・親の扶養状況に応じて、どの控除をどちらの名義で申告するかが世帯全体の手取りを左右します。年収ラインごとの最適な判断基準を把握しておくことで、無駄な税負担を避けることが可能です。

配偶者の年収123万円以下なら配偶者控除を選択して最大38万円を確保する判断

配偶者の給与年収が123万円以下の場合、合計所得金額は58万円以下となるため、配偶者控除の要件を満たします。この場合、納税者本人の合計所得金額が900万円以下であれば最大38万円の所得控除が適用されます。配偶者控除を受けるために必要な手続きは、年末調整で「給与所得者の配偶者控除等申告書」に配偶者の氏名・所得見積額を記入して提出するだけです。

判断のポイントとなるのは、配偶者の年収を123万円以下に抑えるべきかどうかという点です。結論からいえば、123万円を少し超えた程度では控除額は減りません。配偶者特別控除により、年収160万円以下であれば同額の38万円が適用されるためです。したがって、配偶者の年収が123万円を超えそうな場合でも、160万円のラインまでは無理に年収を抑える必要はありません。ただし、配偶者自身に所得税が課されるのは年収123万円超からですので、配偶者本人の税負担も含めて世帯全体の損得を計算する必要があります。

子ども・親を扶養に入れる場合に夫婦どちらの申告が有利か所得税率で比較

共働き夫婦の場合、子どもや親を扶養に入れる際にどちらの申告で控除を受けるかによって節税額が変わります。原則として、所得税率が高いほうの配偶者が扶養控除を申告したほうが節税効果は大きくなるのが原則です。所得税は累進課税制度のため、課税所得が高い人ほど適用税率が高く、同じ38万円の控除でも減税額に差が出るからです。

課税所得 所得税率 扶養控除38万円の減税効果
195万円以下 5% 約1万9000円
195万円超〜330万円以下 10% 約3万8000円
330万円超〜695万円以下 20% 約7万6000円
695万円超〜900万円以下 23% 約8万7000円

たとえば、夫の課税所得が500万円(税率20%)で妻の課税所得が250万円(税率10%)の場合、同じ38万円の扶養控除でも夫が申告すれば約7万6000円、妻が申告すれば約3万8000円の減税にとどまります。住民税の税率は一律10%で差がないため、所得税率の差が大きいほど申告者の選択が重要になります。ただし、配偶者控除には納税者本人の所得制限があるため、夫の所得が1000万円を超える場合は妻側で申告する選択肢も検討すべきです。

配偶者の年収130万円前後で社会保険料負担が発生し世帯手取りが逆転する境界

税制上の控除だけでなく、社会保険の扶養の壁も共働き世帯の手取りに大きく影響します。配偶者の年収が130万円を超えると、納税者の社会保険の被扶養者から外れ、配偶者自身が国民健康保険と国民年金に加入するか、勤務先の社会保険に加入する必要が出てきます。この場合の社会保険料は年間で20万円以上にのぼることが一般的です。

具体的に試算してみましょう。配偶者の年収が129万円の場合、社会保険の被扶養者のままですので社会保険料の自己負担はゼロです。ところが年収が131万円になると、国民健康保険料と国民年金保険料の合計が年間約25万円〜30万円かかり、手取りは実質的に年収100万円台まで下がってしまうことがあります。この「手取りの逆転現象」が、130万円の壁と呼ばれる理由です。税制上は年収160万円まで配偶者特別控除38万円が適用されますが、社会保険料の負担を含めて考えると、年収130万円前後は最も慎重な判断が求められるゾーンといえます。

老人扶養親族と老人控除対象配偶者で控除額48万円に増額される70歳以上の条件

扶養親族や配偶者が70歳以上の場合、通常の控除額よりも増額された老人控除が適用されます。老人扶養親族の場合、同居しているなら58万円、同居していない場合は48万円の控除額です。老人控除対象配偶者の場合は最大48万円が適用されます。いずれも、その年の12月31日時点での年齢で判定されます。

老人扶養控除で注意すべきなのは「同居」の定義です。老人ホームなどの施設に入所している場合、たとえ住民票が同じ住所にあっても「同居老親等」には該当しません。入所先が生活の本拠とみなされるためです。ただし、入院中の場合は一時的な別居とみなされるため、同居老親等に該当する可能性があります。実務上は、病院への入院と施設への入所で扱いが異なるため、判断に迷った場合は税務署に確認することをおすすめします。また、同居していても世帯分離をしている場合は「生計を一にしている」と認められない可能性がある点にも留意が必要です。控除額の差は所得税・住民税の双方に影響するため、親族の居住状況を正しく把握したうえで申告することが求められます。

共働き世帯の年収600万円・800万円・1000万円モデル別の控除シミュレーション

共働き世帯の控除効果を具体的にイメージするために、夫の年収別に配偶者控除と扶養控除のシミュレーションを行います。ここでは、配偶者の年収が120万円(配偶者控除適用)、16歳の子ども1人を夫の扶養に入れるケースで試算してみましょう。

夫の年収 所得税率の目安 配偶者控除の減税額 扶養控除の減税額 合計減税額(所得税のみ)
600万円 20% 約7万6000円 約7万6000円 約15万2000円
800万円 23% 約8万7000円 約8万7000円 約17万4000円
1000万円 33% 約4万3000円(減額適用) 約12万5000円 約16万8000円

年収1000万円のケースでは、合計所得金額が1000万円以下に収まるかどうかで配偶者控除の適用可否が分かれます。給与収入1000万円の場合の給与所得控除後の所得金額は約805万円ですので、配偶者控除は適用されるものの、950万円超1000万円以下の区分で控除額が13万円に減額されてしまいます。一方、扶養控除には所得制限がないため、税率33%がフルに適用され、38万円×33%=約12万5000円の減税効果を享受できるでしょう。このように、年収帯によって各控除の実質的な恩恵が異なるため、世帯全体での最適化が欠かせません。

年末調整・確定申告で扶養控除と配偶者控除を正しく適用する実務手順

扶養控除と配偶者控除を正しく受けるためには、年末調整や確定申告で適切な申告書を期限内に提出する必要があります。令和7年度税制改正で申告書の様式や記載事項にも変更がありましたので、最新の手続きを確認しておきましょう。

扶養控除等異動申告書の記入時に源泉控除対象配偶者欄で間違えやすい判定基準

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、年末調整だけでなく入社時や年の最初の給与支払い日前までに提出が求められる基本書類です。この申告書には「源泉控除対象配偶者」の欄がありますが、ここに記入すべき配偶者の判定基準を誤るケースが少なくありません。

源泉控除対象配偶者とは、納税者本人の合計所得金額が900万円以下かつ配偶者の合計所得金額が95万円以下(給与収入のみの場合、年収160万円以下)の場合に該当する配偶者です。この欄に記載があると、毎月の源泉徴収税額の計算で扶養親族等の数に1人加算されるため、月々の天引き額が減ります。しかし、配偶者控除の対象となる「控除対象配偶者」(所得58万円以下)とは基準が異なる点に注意が必要です。源泉控除対象配偶者欄は所得95万円以下が対象ですが、配偶者控除そのものは所得58万円以下でなければ適用されません。この違いを理解していないと、源泉控除対象配偶者に該当するからといって自動的に配偶者控除が受けられると勘違いしてしまう恐れがあります。

配偶者控除等申告書と特定親族特別控除申告書が令和7年分から統合された変更点

令和7年分から、年末調整で使用する申告書の様式が変更され、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」という統合された1枚の書式になりました。従来の「基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」に、特定親族特別控除申告書が追加された形です。

この変更に伴い、19歳以上23歳未満の扶養親族がいる従業員は、新たに特定親族特別控除の記載欄にも必要事項を記入する必要があります。記載が必要となるのは、対象の親族の合計所得金額が58万円超123万円以下で、扶養控除の要件から外れるものの特定親族特別控除の対象となるケースです。実務担当者としては、従業員への案内資料を更新し、新しい記載欄の存在と記入方法を事前に周知しておくことが重要です。記入漏れがあると控除が適用されず、従業員の税負担が不必要に増えてしまう可能性がありますので、提出された申告書のチェック体制も見直しておきましょう。

年の途中で扶養親族が増減した場合に異動届を再提出すべきタイミングと書き方

扶養親族の増減は年の途中でも発生します。子どもが生まれた場合、子どもが就職して扶養から外れた場合、親と同居を始めた場合、離婚や死別により配偶者がいなくなった場合などが典型的なケースです。こうした変動があった場合には、速やかに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を再提出する必要があります。

再提出のタイミングは、原則として異動が生じた日の翌月の最初の給与支払日の前日までです。ただし、実務上は異動が判明した時点でできるだけ早く提出することが望ましいとされています。申告書の書き方としては、異動前の内容を二重線で消し、異動後の内容を記入するか、新しい用紙に改めて記入し直す方法があります。異動届の提出が遅れると、毎月の源泉徴収額が実態と合わなくなり、年末調整で大幅な過不足が発生する原因になりかねません。特に子どもが就職して扶養から外れるケースでは、源泉徴収税額が過少になっていた分を年末調整で追加徴収されることになるため、早めの届出が従業員にとっても負担軽減になります。

確定申告で扶養控除・配偶者控除を申告する場合の必要書類と記載箇所の一覧

年末調整を受けられない自営業者やフリーランス、あるいは年末調整で控除の適用を受けなかった給与所得者は、確定申告で扶養控除や配偶者控除を申告します。確定申告書には第一表と第二表があり、控除に関する記載箇所が分かれている点に注意が必要です。

  1. 確定申告書第一表の「所得から差し引かれる金額」欄に、配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除の各金額を記入します
  2. 確定申告書第二表の「配偶者や親族に関する事項」欄に、対象者の氏名・生年月日・マイナンバー・所得の見積額を記入します
  3. 配偶者控除等を受ける場合は、第二表の「配偶者控除」の区分欄にも該当する区分番号を記載します
  4. 扶養控除を受ける場合は、第二表の「扶養親族」欄に対象者の情報を漏れなく記入します
  5. 特定親族特別控除を受ける場合は、令和7年分から新設された記載欄に対象者の情報を記入します

確定申告の際に添付が必要な書類は、原則として申告書のみです。扶養親族の所得証明書や源泉徴収票の添付は不要ですが、税務署から確認を求められた場合に備えて、配偶者や扶養親族の源泉徴収票や収入がわかる書類は手元に保管しておくことをおすすめします。e-Taxで電子申告する場合は、画面の案内に沿って各欄を入力するだけで自動計算されるため、記載ミスの防止にも役立ちます。

還付申告なら5年間遡及可能だが年末調整のやり直しは翌年1月末までの期限

扶養控除や配偶者控除の申告を忘れていた場合、還付申告であれば過去5年分まで遡って申告することが可能です。たとえば、別居中の親を扶養に入れられることを知らなかった場合、過去5年分の確定申告書を提出して還付を受けられる可能性があります。還付申告は確定申告の期間(2月16日〜3月15日)に限らず、対象年の翌年1月1日から5年間いつでも提出可能です。

一方、年末調整のやり直しには期限があります。年末調整で扶養控除等の適用を誤った場合、勤務先で年末調整をやり直せるのは翌年の1月末日までです。この期限を過ぎた場合は、従業員本人が確定申告を行って修正する必要があります。実務上は、年末調整後に配偶者の年収が確定し、当初の見積額と異なっていたことが判明するケースが少なくありません。その場合、翌年1月末までに勤務先の経理担当者に連絡すれば年末調整のやり直しが可能ですが、それを過ぎると本人が確定申告で修正することになります。控除の申告漏れに気づいた時点で、まず期限内かどうかを確認し、適切な手続き方法を選択しましょう。

社会保険の扶養106万円・130万円の壁と税制上の控除を両立する家計設計

税制上の控除と社会保険の扶養は、似たような「年収の壁」を持ちながらまったく別の制度です。両方の仕組みを理解したうえで家計全体を最適化することが、手取り収入を最大化する近道になります。

税制の123万円の壁と社会保険の106万円・130万円の壁は判定基準が別制度

年収の壁にはいくつかの種類がありますが、大きく分けると税制上の壁と社会保険上の壁に分類されます。税制の壁は所得税・住民税の課税や控除の適用に関するもので、合計所得金額を基準に判定されるのが特徴です。一方、社会保険の壁は健康保険や年金の被扶養者資格に関するもので、年間の見込み収入額を基準に判定される仕組みです。

具体的には、税制の「123万円の壁」は給与所得控除65万円+基礎控除58万円で算出される所得税非課税ラインであり、同時に扶養控除・配偶者控除の適用上限でもあります。これに対し、社会保険の「106万円の壁」は特定の条件を満たすパート労働者が厚生年金・健康保険に加入する義務が生じる年収ラインであり、「130万円の壁」は社会保険の被扶養者から外れる年収ラインです。判定の時期も異なり、税制は暦年(1月〜12月)の確定額で判断されますが、社会保険は将来に向けた見込み年収で判断されるため、月収が10万8334円(130万円÷12か月)を恒常的に超える見込みがあると扶養から外れることになります。

従業員51人以上の企業で週20時間以上働くと年収106万円で社会保険加入の義務

社会保険の106万円の壁は、すべてのパート労働者に適用されるわけではありません。この基準が適用されるのは、従業員数が常時51人以上の企業に勤務し、週の所定労働時間が20時間以上、月額賃金が8万8000円以上(年収約106万円)、2か月を超える雇用見込みがある学生以外の労働者です。これらの条件をすべて満たした場合に厚生年金と健康保険への加入義務が発生します。

厚生年金・健康保険に加入すると、保険料が発生するため手取りは減少しますが、将来受け取れる年金額が増えるというメリットもあります。厚生年金の保険料率は約18.3%で労使折半ですので、従業員負担は約9.15%です。月額賃金8万8000円の場合、従業員負担の保険料は月額約8000円程度になります。年間で約10万円の社会保険料が新たに発生しますが、傷病手当金や出産手当金の受給資格を得られるなど、保障面での恩恵もあります。なお、2025年6月に成立した年金制度改正法により、月額8万8000円の賃金要件は2026年10月をめどに撤廃される予定であり、今後は週20時間以上働けば原則として社会保険加入の対象になるでしょう。

2026年10月に月額8万8000円の賃金要件が撤廃される年金制度改正の影響

2025年6月に可決された年金制度改正法により、厚生年金・健康保険の適用拡大がさらに進むことが決定しました。現行では月額賃金8万8000円以上という要件がありますが、この要件は法律の公布から3年以内、すなわち2026年10月をめどに撤廃されます。また、従業員数51人以上という企業規模要件についても、2027年10月から10年間かけて段階的に撤廃されることが決まっています。

この改正が家計設計に与える影響は大きく、現在「106万円の壁」を意識して年収を調整しているパート労働者にとっては、賃金要件の撤廃後は年収にかかわらず週20時間以上の勤務で社会保険加入の対象になるでしょう。つまり、月額6万〜7万円程度の収入であっても社会保険料が発生する可能性があるのです。一方で、厚生年金に加入することで老齢厚生年金の受給額が増えるため、長期的な視点では有利に働く場合もあります。今後は「何万円まで働くか」ではなく「社会保険に加入したうえでどれだけ働くか」という発想に切り替えていくことが求められるでしょう。

年収130万円を超えると国民健康保険・国民年金の自己負担で手取りが減る具体額

社会保険の被扶養者から外れる年収130万円の壁を超えた場合、勤務先の社会保険に加入できないケースでは、国民健康保険と国民年金に自分で加入する必要があります。この場合の保険料負担は決して軽くありません。国民年金保険料は令和7年度で月額1万7510円、年間で約21万円です。国民健康保険料は自治体によって異なりますが、年収150万円前後であれば年間10万〜15万円程度が目安となります。

合計すると、社会保険の扶養を外れた場合の保険料負担は年間30万〜36万円にもなります。年収130万円から年収140万円に増えても、手取りはむしろ減ってしまう計算です。具体的には、年収130万円で扶養内に留まった場合の手取りが約125万円だとすると、年収140万円で扶養を外れた場合の手取りは社会保険料約32万円と所得税・住民税を差し引いて約104万円前後にまで下がることがあります。手取りが130万円を超えるためには、おおむね年収170万円〜180万円以上を稼ぐ必要があるとされており、このゾーンを「手取りの谷」と呼ぶこともあるほどです。

税制控除と社会保険料負担を一覧化して世帯手取りを最大化する年収帯の選び方

ここまで見てきた税制上の控除と社会保険の扶養を総合的に整理すると、配偶者の年収ごとに世帯手取りに影響するポイントがいくつか浮かび上がります。年収帯ごとの判断基準を一覧にして確認しましょう。

  • 年収106万円以下:所得税・社会保険料ともにゼロ。扶養内で最も負担が軽い年収帯です
  • 年収106万円超〜123万円以下:従業員51人以上の企業で社会保険加入の対象となる可能性がありますが、所得税は非課税のままです
  • 年収123万円超〜130万円以下:所得税が発生するものの、配偶者特別控除は満額38万円が適用されるため影響は軽微です。社会保険の扶養は維持できるため手取りの減少幅は小さめです
  • 年収130万円超〜160万円以下:社会保険の扶養から外れるため保険料負担が発生します。配偶者特別控除は満額が維持されるものの、社会保険料負担により手取りが一時的に逆転する可能性も否定できません
  • 年収160万円超〜201万6000円未満:配偶者特別控除が段階的に減額されます。社会保険料と所得税の双方の負担がありますが、年収が増えるほど手取りも増加する傾向です

世帯手取りを最大化するには、社会保険の壁と税制の壁を混同せず、それぞれの制度を個別に把握したうえで、自分の勤務先の条件(企業規模、週の労働時間)に照らして判断することが大切です。迷った場合は、具体的な数字を入れてシミュレーションするか、税理士やファイナンシャルプランナーに相談することをおすすめします。

扶養控除と配偶者控除の申告で多発する記入ミスと控除漏れの防止策

扶養控除や配偶者控除は制度の理解が不十分なまま申告されることが多く、毎年のように記入ミスや控除漏れが発生しています。よくある失敗パターンとその防止策を知っておけば、無駄な税負担を回避できるでしょう。

別居の親を扶養に入れられるのに申告し忘れて年間数万円を損するケース

扶養控除の要件のひとつに「生計を一にしていること」がありますが、これは必ずしも同居を意味しません。離れて暮らす親であっても、毎月仕送りをしていたり、生活費の大部分を負担していたりすれば「生計を一にしている」と認められます。にもかかわらず、別居しているという理由だけで扶養に入れることを諦めている方は少なくありません。

たとえば、地方に住む70歳以上の母親に毎月5万円の仕送りをしている場合を考えてみましょう。母親の年金収入が年間120万円であっても、公的年金等控除110万円を差し引いた雑所得は10万円となり、合計所得金額58万円以下の要件を満たします。この場合、老人扶養親族(非同居)として48万円の控除が受けられます。納税者の所得税率が20%であれば約9万6000円、住民税も合わせると年間約14万円以上の節税効果が期待できるでしょう。5年間遡及して還付申告すれば、約70万円もの税金が戻ってくる計算です。仕送りの事実を証明するために、銀行振込の記録を残しておくことが重要です。

子どものアルバイト収入が123万円を超えて扶養から外れた場合の追徴課税リスク

大学生の子どものアルバイト収入は、年末近くにならないと正確な金額がわからないケースが多く、結果的に扶養控除の要件を超えてしまうリスクがあります。令和7年度税制改正後は合計所得金額58万円以下(給与収入123万円以下)が要件ですが、繁忙期にシフトを増やした結果、年末時点で123万円を超えてしまうことは珍しくありません。

子どもの年収が123万円を超えて扶養親族の要件から外れた場合、親の年末調整で適用されていた扶養控除が取り消され、追加の所得税と住民税が課されます。特定扶養親族(19歳以上23歳未満)の控除額は63万円ですから、所得税率20%の場合で約12万6000円、住民税の控除額45万円の10%で約4万5000円、合計約17万円の追徴が発生する計算です。ただし、令和7年度からは特定親族特別控除が新設されたため、所得金額123万円以下であれば段階的な控除を受けられるようになりました。とはいえ、子どものアルバイト収入は年間を通じて管理し、11月頃の時点で年収見込みを確認する習慣をつけておくことが追徴リスクの軽減につながります。

配偶者の所得見積額を過少申告して年末調整後に修正が必要となる実務対応

年末調整の際に記入する「配偶者の合計所得金額の見積額」は、あくまで見積りであるため、実際の所得金額と一致しないことがあります。特に、配偶者が年末にかけて勤務を増やした場合や、年末賞与の有無によって最終的な所得金額が変動することは珍しくありません。見積額を過少に記入して配偶者控除を適用したものの、実際には所得要件を超えていた場合、年末調整のやり直しまたは確定申告による修正が必要です。

具体的な対応手順としては、まず配偶者の源泉徴収票が発行された時点で実際の所得金額を確認します。年末調整で申告した見積額と差異がある場合は、翌年1月末日までであれば勤務先に連絡して年末調整のやり直しを依頼できます。この期限を過ぎた場合は、本人が確定申告で正しい所得金額に基づいて修正申告を行わなければなりません。修正の結果、追加の税額が発生する場合は延滞税の対象になることもあるため、差異が判明した時点で速やかに対応することが肝要です。過少申告を防ぐためには、見積額を算出する際に12月分の給与まで含めた年間見込みを慎重に計算し、不明な点があれば配偶者の勤務先に確認を取ることをおすすめします。

16歳未満の子どもは扶養控除の対象外だが住民税の非課税判定には影響する注意点

16歳未満の子どもは、所得税の扶養控除の対象にはなりません。これは2010年の税制改正で子ども手当(現在の児童手当)が創設された際に、16歳未満の年少扶養控除が廃止されたためです。しかし、16歳未満の子どもを申告書に記載する意味がまったくないかといえば、そうではありません。

住民税の非課税判定においては、16歳未満の扶養親族の数も計算に含まれます。住民税には「非課税限度額」が設定されており、扶養親族の人数が多いほど非課税となる所得のラインが上がります。たとえば、東京23区の場合、扶養親族がいない単身者は合計所得金額45万円以下が非課税ラインですが、扶養親族が1人いると所得101万円以下まで非課税の範囲が広がる仕組みです。16歳未満の子どもも扶養親族にカウントされるため、この非課税判定で有利に働くことがあるのです。「扶養控除等(異動)申告書」の「住民税に関する事項」の欄に、16歳未満の子どもの氏名やマイナンバーを記載することを忘れないようにしましょう。記載を怠ると、住民税が本来非課税であるにもかかわらず課税されてしまうリスクがあるため注意しましょう。

夫婦間で同一の扶養親族を重複申告した場合に税務署から届く是正通知の対処法

共働き夫婦がそれぞれの年末調整や確定申告で、同じ子どもや親を扶養親族として申告してしまうケースも見受けられます。税務署は複数の申告書を突合して重複を検出しており、問題が見つかると「扶養控除等の是正通知書」が勤務先または本人に届く仕組みになっています。この通知が届いた場合は、速やかに対応しなければ延滞税や不納付加算税が課されるリスクがあるため注意が必要です。

是正通知への対処手順は次のとおりです。まず、通知の内容を確認し、重複している扶養親族がだれであるかを特定します。次に、夫婦間でどちらが扶養親族を申告するかを決めます。所得税率が高いほうが申告したほうが世帯全体では有利になるのが一般的です。決定したら、控除を取り消すべき側の勤務先に連絡して年末調整のやり直しを依頼するか、すでに確定申告書を提出している場合は修正申告を行います。追加で納付すべき税額がある場合は、原則として通知を受けてから速やかに納付します。是正通知を放置すると、加算税や延滞税が膨らむだけでなく、翌年以降の申告にも影響を及ぼす可能性がありますので、通知が届いたら早急に対応することが大切です。

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