Photon Fusionとは何か?次世代マルチプレイ開発の新常識を解説

目次
- 1 Photon Fusionとは何か?次世代マルチプレイ開発の新常識を解説
- 2 PUN2との比較で見えてくるPhoton Fusionの圧倒的な優位性
- 3 Photon Fusionを使ったマルチプレイゲーム開発のはじめの一歩
- 4 Fusionを選んだ理由と、実際にゲームを作ってみた体験談
- 5 Photon Fusionの主要機能と200人同時対戦を可能にする革新技術
- 6 Photon Fusionのモード別活用方法と用途に応じた設計方針
- 7 【Unity】Photon Fusionを使ってみた【マルチプレイ】
- 8 PUN2からPhotonFusionに移植したときにハマったところ3選
- 9 利用したFusionのモードと、利用方針
- 10 基本性能(アプリの概要)
Photon Fusionとは何か?次世代マルチプレイ開発の新常識を解説
Photon FusionはExit Gamesが提供するUnity向けの次世代マルチプレイネットワークエンジンであり、高パフォーマンス・低レイテンシ・スケーラビリティの三拍子が揃った強力なツールです。従来のPUN(Photon Unity Networking)シリーズから大幅に進化しており、入力同期ベースの処理方式やTick制御など、ゲーム開発者が求めていたリアルタイム性と正確な同期処理を両立できる設計となっています。特に、対戦型ゲームやeスポーツ用途のタイトルにおいて、ラグの少ない快適なプレイ環境を実現可能にしています。また、Shared/Host/Serverといった複数の動作モードにより、プロジェクトの規模やアーキテクチャに応じた柔軟な設計も可能です。Unityとの統合性も高く、既存開発環境にスムーズに組み込めるのも魅力の一つです。
Photon Fusionの開発背景と目指すビジョンについて
Photon Fusionは、PUN2の限界を超えることを目的に開発されました。PUN2は手軽にオンラインゲームを構築できる反面、大規模マルチプレイやリアルタイム性の高いゲームにおいて処理遅延や同期ズレの問題が発生しやすいという課題がありました。Fusionでは、これらの課題を解消するために、Tick単位の入力同期方式や、ネットワークインフラと連携した高精度なラグ補正、また帯域最適化の技術などが導入されました。さらに、200人以上の対戦にも耐え得る性能を備えており、今後の大規模マルチプレイ需要に応える設計がされています。Exit Gamesは「もっとゲームらしい、もっとダイナミックなオンライン体験を、誰でも構築できる」ことをFusionのビジョンとし、プロ/インディー問わず幅広い開発者に活用されることを目指しています。
リアルタイム同期を可能にするネットワークアーキテクチャ
Photon Fusionの最も特筆すべき特徴のひとつが、リアルタイムな同期処理を可能にする高度なネットワークアーキテクチャです。従来の状態同期方式では、各クライアント間での位置ズレや遅延が目立つことがありましたが、Fusionは入力同期方式を採用し、プレイヤーの操作をTick単位でシミュレーションします。これにより、各クライアントが同一の結果を導き出すDeterministicな動作が保証されます。また、パケットロス時の再送制御や、帯域幅に応じた圧縮処理などが自動で最適化される設計となっており、クライアントの負担を最小限に抑えつつ高精度な同期を実現しています。これにより、スピード感のあるFPSやアクションゲームでも、安定したプレイが可能になります。
対応プラットフォームとUnityとの親和性の高さ
Photon FusionはUnity専用に最適化されたSDKであり、Unity 2020.3以降のLTSバージョンに対応しています。モバイル・PC・コンソール・WebGLといった主要プラットフォームをサポートし、クロスプラットフォーム対応のマルチプレイゲーム開発を容易にします。UnityのMonoBehaviourベースではなく、NetworkBehaviourクラスをベースに独自のライフサイクルが構築されている点も特徴であり、よりゲーム開発に適したコンポーネント設計が可能です。また、UnityのInspectorを活用したデバッグや設定も充実しており、開発者にとって学習コストが低いことも大きな利点です。アセットバンドルやアニメーションなどUnity標準機能との親和性も高く、既存のゲームプロジェクトにPhoton Fusionを組み込むこともスムーズに行えます。
旧SDK(PUN2)との根本的な違いとFusionの革新性
PUN2との最大の違いは、ネットワーク同期のアプローチにあります。PUN2では状態同期(State Sync)を基本とし、オブジェクトの位置や状態を定期的に送信する方式でしたが、Fusionでは「入力同期(Input Sync)」が導入され、操作内容を送信しシミュレーション結果を各クライアントで再現します。これにより、帯域使用量が抑えられるほか、リプレイ性・巻き戻し補正が容易になります。また、Fusionはサーバー側での信頼性ある処理(Server Authority)を前提としているため、不正操作への耐性が高いことも特徴です。PUN2でありがちだった位置飛びやラグのストレスが大きく軽減されるため、競技性の高いゲームにも適しています。さらに、内部処理はECSに近い構造を持ち、性能面でも大きな優位性を誇ります。
Photon Fusionの導入メリットと用途別の利用可能性
Photon Fusionの導入には多くのメリットがあります。まず、最大200人以上の同時接続が可能な点が挙げられ、MMOやバトルロイヤル形式のゲームに最適です。次に、開発者が扱いやすいAPI設計と豊富なサンプルプロジェクトにより、導入時のハードルが低く、学習コストを抑えることができます。また、Shared/Host/Serverの3モードを自由に選択できるため、プロジェクトの規模や目的に合わせた構成が可能です。特にHost ModeではP2P構成に近く、インディーゲームに向いた手軽なマルチプレイ実装が可能となっています。アクション性の高いリアルタイムゲームはもちろん、ターン制ゲームやシミュレーションにも応用できる柔軟性があり、Unityベースの開発者にとっては次の標準技術と言っても過言ではありません。
PUN2との比較で見えてくるPhoton Fusionの圧倒的な優位性
Photon Fusionは、従来のPhoton Unity Networking 2(PUN2)と比べて、リアルタイム性、同期精度、スケーラビリティのすべてにおいて大幅に進化しています。特に「入力同期(Input Sync)」というアプローチにより、クライアント間の状態一致を保ちやすくなり、大規模ゲームにおけるパフォーマンスのボトルネックを解消します。また、Tick単位の時間管理によって、FPSや対戦アクションのような緻密なタイミング制御が求められるゲームでも、正確なシミュレーションが可能です。さらに、開発者にとって扱いやすいAPI設計や、豊富なチュートリアルとドキュメントが整備されているため、PUN2からの移行も比較的スムーズに進められます。より安定したオンライン体験を提供したい開発者にとって、Fusionは間違いなく次の選択肢となるでしょう。
PUN2とFusionの処理方式(状態同期 vs 入力同期)の違い
PUN2とFusionの最大の違いは、ネットワーク処理方式にあります。PUN2では状態同期(State Sync)を中心とした仕組みで、オブジェクトの位置や状態を一定間隔で送受信していましたが、これはデータ量が増加するにつれ帯域や同期精度に限界が生じやすい設計です。一方、Fusionは入力同期(Input Sync)を基本とし、各クライアントの操作情報をサーバーに送信して処理結果を共有する方式を採用しています。この方式により、必要なデータ量が大幅に削減され、同時接続数や通信の安定性が飛躍的に向上します。さらに、Tickベースの同期により、処理タイミングがブレにくく、より正確な挙動を保証できる点も大きな特徴です。
データ送信の最適化と遅延軽減の仕組み
Photon Fusionは、データ送信の最適化とネットワーク遅延の軽減においても、PUN2を大きく上回る技術を備えています。Fusionでは、送信するデータが圧縮・差分化されており、必要最低限の情報だけがネットワーク上を流れます。これにより、帯域の使用を抑えつつも同期精度を維持することが可能です。また、Lag Compensation(ラグ補償)やRollback(巻き戻し)機能が標準で用意されており、遅延によるプレイヤーの不公平感を低減します。これらの機能はすべて自動的に制御され、開発者が個別に対処する必要がありません。結果として、グローバルなプレイヤーが集う環境でも快適なマルチプレイ体験が提供できるようになります。
スケーラビリティと大規模セッション対応力の違い
Photon Fusionはスケーラビリティにも優れており、最大200人以上の大規模対戦を想定した設計がなされています。PUN2では10~20人規模のセッションが限界となる場合も多く、大規模ゲーム開発には不向きでした。Fusionでは、ZoneやRegionといったセグメント単位の管理により、処理負荷を分散しながらプレイヤーの活動範囲を維持できるようになっています。また、Fusion専用のサーバーインフラが提供され、サーバー処理もスケールアウト可能なクラウドベースで展開できます。このような構成により、大規模なリアルタイムイベントやMMOタイプのゲームにも対応可能であり、プロジェクトの成長に合わせた拡張がしやすくなっています。
コードの記述スタイルとAPI設計の違い
Photon Fusionでは、従来のPUN2に比べてよりモダンで直感的なAPI設計が採用されており、ゲーム開発者にとって読みやすく・書きやすいコードが実現されています。PUN2ではPhotonViewコンポーネントを通じて状態同期を行っていましたが、FusionではNetworkBehaviourを継承し、イベント駆動やTick単位の処理が自然に書ける設計になっています。また、Input AuthorityやState Authorityといった権限管理もコード上で明示的に定義できるため、複雑な処理の実装がより柔軟に行えます。この違いにより、マルチプレイ特有のバグや処理競合を未然に防げるようになり、保守性・拡張性も大幅に向上します。
Fusionでのデバッグ・テストの効率化ポイント
Photon Fusionはデバッグ機能も充実しており、特にマルチプレイの挙動確認やパフォーマンス検証に役立つツールが多数用意されています。例えば、Unity Editor上で複数のクライアントをシミュレーション可能な「Simulation Mode」により、実機を用意しなくてもテスト環境を構築できます。また、Fusion専用のログ出力やプロファイラツールにより、通信状況やTick進行の可視化ができ、パフォーマンスボトルネックの特定が容易です。さらに、API側でPlayerRefやNetworkObjectにアクセスしやすいため、デバッグ時のブレークポイント設定や状態確認もシンプルに行えます。これらの機能により、開発スピードを落とすことなく、品質の高いマルチプレイ環境を構築できます。
Photon Fusionを使ったマルチプレイゲーム開発のはじめの一歩
Photon Fusionは強力な機能を提供しますが、初めて導入する開発者にとっては、どこから始めれば良いか戸惑うこともあるでしょう。このセクションでは、開発環境の準備から最初のサンプル作成まで、Fusionを使ったマルチプレイゲーム開発の基本ステップを丁寧に解説します。UnityとFusionの統合は比較的スムーズですが、正しく動作させるためには初期設定やライフサイクル理解が欠かせません。各モードの選定やプレイヤーのスポーン処理、ネットワークオブジェクトの管理方法など、ゲーム開発に不可欠な要素を順を追って学ぶことで、無理なく本格的なマルチプレイ開発へと進めます。
開発環境の準備と必要なパッケージのインストール手順
Photon Fusionでの開発を始めるには、まずUnityの最新版LTS(推奨はUnity 2021.3以降)をインストールし、Photon Fusion SDKを導入する必要があります。SDKはPhoton公式サイトまたはUnity Asset Storeから入手可能で、Unityプロジェクトにインポートすることで使用開始できます。次に、Fusion用のPhoton App IDを取得し、プロジェクト設定に反映させることでオンライン通信が可能になります。ここでは「Photon Realtime」サービスを使う設定になります。また、開発時には「Fusion Samples」も導入することで、各種サンプルコードを参照でき、理解を深める助けになります。Visual Studioの導入とC#開発環境の整備も忘れずに行いましょう。これでFusion開発の基盤が整います。
Fusionプロジェクトの構成とフォルダ設計の基本
Fusionプロジェクトを効率的に管理・拡張していくには、初期段階でのフォルダ設計とスクリプトの整理が重要です。一般的には、Scripts・Prefabs・Scenes・Network・UIなどの主要ディレクトリを作成し、それぞれの役割を分けると良いでしょう。FusionではNetworkObjectを中心とした同期管理が行われるため、Networkオブジェクト用のプレハブを「Network」フォルダに分けておくと管理がしやすくなります。また、NetworkBehaviourを継承したスクリプト群は「Scripts/Fusion」などに集約すると、後からの見通しやすさに繋がります。さらに、複数モードに対応する場合は、Shared/Host/Serverモードごとの処理分離にも配慮し、アーキテクチャ設計を事前に検討しておくことが開発効率の向上に寄与します。
プレイヤーオブジェクトの生成とネットワーク同期
Photon Fusionでプレイヤーキャラクターをネットワーク上に生成するには、NetworkObjectを持ったプレハブを用意し、Spawn()メソッドで生成するという手順を取ります。この際、NetworkRunnerのStartGame()メソッドと連動して、接続時に自動的にスポーンする処理を設定することが一般的です。NetworkRunnerCallbacksを通じてOnPlayerJoined()イベントが発火し、その中でプレイヤーのSpawn処理が行われます。同期にはFusionのState Authorityの概念が活用され、どのクライアントがオブジェクト制御権限を持つかを明示的に設定できます。また、Transformの同期にはNetworkTransformを使用し、位置・回転・スケールのリアルタイム更新が行われます。こうした流れを正しく理解することで、マルチプレイ環境で安定して動作するプレイヤー同期が可能となります。
Photon Fusionは3つのモード(Shared、Host、Server)をサポートしており、それぞれの特徴を理解して使い分けることが重要です。Shared Modeは全クライアントが同等の立場で処理を共有する簡易モードで、ローカルマルチや小規模ゲームに適しています。Host Modeは1つのクライアントがホストとして他のクライアントの処理を管理し、P2Pに近い構成が可能です。Server Modeは専用のサーバーが全プレイヤーの処理を統括する方式で、最もセキュアかつ大規模対戦に向いています。選択にあたっては、ゲームのジャンル、想定同時接続数、チート対策の重要性などを考慮し、設計段階で最適なモードを採用することが求められます。必要に応じてモード切り替えを実装し、柔軟な運用を可能にする設計も有効です。
最小限のコードで動作するサンプルの構築方法
Fusionでは、最小構成のマルチプレイ動作確認も容易に行えます。まずNetworkRunnerオブジェクトをシーンに設置し、起動時にStartGame()メソッドを実行するコードを記述します。必要最小限のコードでは、プレイヤーが参加すると自動でNetworkObjectのプレハブが生成・同期され、シンプルな移動制御が反映されるような仕組みを構築できます。Input Handlingも独自に記述でき、Fusion独自の「Tick Input」処理で滑らかな同期が実現されます。このようなサンプルを最初に動かしておくことで、Fusionの動作モデルを体感的に理解でき、次のステップとしてより複雑な処理の実装へとスムーズに移行できます。ドキュメントに沿って段階的に構築していくことが、Fusion開発の成功への第一歩です。
Fusionを選んだ理由と、実際にゲームを作ってみた体験談
実際のゲーム開発現場でPhoton Fusionを選ぶ理由は多岐にわたります。PUN2では対応が難しかった高速なアクション同期や大規模対戦、さらには不正対策など、現代のマルチプレイゲームに求められる要素がすべてFusionではカバーされています。本セクションでは、実際にFusionを使ってプロジェクトを立ち上げた事例をもとに、開発者がFusionを導入した理由、導入後の開発効率や安定性の違い、そして移植時に遭遇した技術的な壁や、それをどう乗り越えたかを具体的に紹介します。Fusion導入の判断材料や実装時のヒントを得ることで、これから導入を検討している開発者にとって大きな助けとなるはずです。
Fusionを選択した経緯とプロジェクトの目的
当初、我々のプロジェクトではPUN2での開発を検討していましたが、開発中のタイトルがリアルタイム性の高いアクションゲームであったため、状態同期のズレやラグの影響が大きく、より精度の高い同期処理が必要でした。そこで登場したのがPhoton Fusionでした。Fusionは入力同期ベースの処理方式を採用しており、クライアント間での処理整合性が保ちやすく、Tick単位での動作管理によりラグ補正も強力です。また、開発初期段階でのサンプル構築も容易であり、初学者でも数時間でオンライン同期のデモが作れる手軽さがありました。これらの要素が合致し、Fusionを採用する決断に至りました。特に今後、同時接続ユーザーの増加を見込んでいたため、スケーラビリティの面でもFusionは理想的な選択でした。
ゲーム開発の中で直面した課題とその解決方法
Fusion導入当初、最も苦労したのは「タイミングのズレ」に起因するバグでした。たとえば、プレイヤー同士の攻撃判定が同期されていない、位置情報が巻き戻りによってずれるなど、Tick制御に不慣れだったことが原因でした。この問題を解決するために、Fusionが提供する「Lag Compensation」機能や「Physics Prediction」を適切に導入し、処理順序を厳密に制御しました。また、NetworkObjectのスポーンやデスポーンのタイミングも重要であり、NetworkRunnerCallbacksを適切に実装することで安定性を確保できました。これらの経験から、Fusionでの開発は「順序と権限をしっかり管理する」ことが成功の鍵であると実感しました。
Fusionを導入して実感した開発効率の違い
Fusionを導入して最も感じたのは、開発効率の劇的な向上です。まず、Input AuthorityやState Authorityの概念が明確に定義されているため、複数人の開発者が共同で作業する際にも処理の役割分担がしやすく、コンフリクトが起きにくくなります。また、デバッグ環境の充実も特筆すべき点で、Unityエディタ内で複数クライアントの同時挙動を再現できる「Simulation Mode」は、テスト効率を飛躍的に向上させてくれました。さらに、Stateのローカル保持とネットワーク反映を分離できるため、ローカル動作とオンライン動作の両立が簡単に実現でき、開発フェーズに応じて段階的にオンライン対応を進めることができました。
PUN2から移行した際に感じたギャップと注意点
PUN2からFusionへの移行では、コード構造の違いやライフサイクルの変化に戸惑うこともありました。PUN2ではPhotonViewによる同期処理が中心でしたが、FusionではNetworkObjectとNetworkBehaviourが基本単位となり、処理の分離・責任範囲の明確化が求められます。また、PUN2のようなRPC呼び出しはFusionでは「RPC()」ではなく「Runner.RPC()」を用いるため、イベント設計の方法も一新する必要があります。加えて、Tick単位での動作制御が導入されるため、物理処理やアニメーションの再現もその仕組みに合わせる必要があります。最初は戸惑いましたが、慣れれば構造が明快で拡張性が高いため、移行後はむしろ開発がスムーズになったと感じています。
実際に完成したゲームとその技術的な特徴
完成したゲームは、最大100人のプレイヤーが同時にバトルロイヤル形式で戦うリアルタイムアクションです。Photon FusionのServer Modeを活用し、専用サーバー上で全プレイヤーの操作とイベントを統括しています。プレイヤーオブジェクトはNetworkObjectとしてスポーンされ、攻撃、ジャンプ、スキル使用などのアクションはTick制御と入力同期で処理されるため、ラグがほとんど感じられません。また、ラグ補正による正確なヒット判定や、NetworkSceneManagerを使ったシームレスなマップ切り替えも導入しました。これらにより、安定性とパフォーマンスを両立したオンラインゲームを実現することができ、ユーザーからも高い評価を得ています。
Photon Fusionの主要機能と200人同時対戦を可能にする革新技術
Photon Fusionの登場は、マルチプレイゲーム開発に革新をもたらしました。特に注目すべきは、最大200人以上のプレイヤーが同時に参加可能なセッションを安定して実現できる点です。これを可能にしているのが、Fusionに内蔵された複数の高性能ネットワーク技術群です。Tickベースのシミュレーション管理、ECSスタイルの効率的なデータ処理、ラグ補償、差分圧縮通信、Zoneを活用した負荷分散など、いずれも現代の大規模オンラインゲームに必要不可欠な要素です。このセクションでは、これらの革新技術の中でも特に重要なものをピックアップし、それぞれの仕組みと実践的な使い方を解説していきます。
大規模対戦を支えるECSベースの高性能同期エンジン
Fusionの根幹を支えているのが、Entity Component System(ECS)にインスパイアされたデータ処理構造です。従来のOOP中心の処理ではオブジェクト同士の依存関係が複雑になりやすく、スケーラビリティに限界がありました。FusionではNetworkObject単位でデータを分離し、それぞれが独立した処理サイクルでTick単位に更新されるため、200人規模でも高効率で動作可能です。この構造により、更新の優先順位や通信対象の最適化がしやすく、ボトルネックが発生しづらいネットワーク設計が実現できます。結果として、大規模バトルロイヤルやイベント型のゲームなどにも安定して対応する力を持っています。
Tickベースのシミュレーション管理による正確な同期
Photon Fusionの特長的な機能のひとつが、Tick単位で動作を管理する仕組みです。ゲーム内のすべてのイベントは、1秒間に一定回数の「Tick」によって進行し、すべてのクライアントが同一のTickで同じ処理を行うことで、精度の高い同期が可能になります。この仕組みにより、たとえネットワーク遅延が発生しても、Fusionが内部で補正処理を行い、ズレを自動調整します。これにより、遠距離にいるプレイヤー間でも正確な同期が行え、アクションゲームにおいても違和感のない体験を提供できます。Tickベースの管理は、ゲームの構造を理解しやすくし、デバッグやチューニング作業も効率化してくれます。
ネットワーク帯域とCPU負荷を抑える最適化手法
Fusionはネットワーク帯域の最適化にも力を入れており、プレイヤー数が増加しても通信の安定性を保てるように設計されています。具体的には、データの圧縮・差分送信・送信頻度の制御といった機能により、無駄なパケットの発生を防いでいます。また、Fusionは必要なオブジェクトに対してのみ同期処理を行う「Interest Management(興味領域管理)」を内包しており、プレイヤーが見えていないオブジェクトに対してはデータを送信しないよう最適化されます。さらに、CPU負荷の軽減を図るために、処理の分散化と非同期実行が行われており、端末スペックが低い環境でもスムーズなプレイが可能です。これにより、パフォーマンスを損なわずに大人数でのリアルタイムマルチプレイを実現しています。
セッション管理とロードバランサーの役割
Photon Fusionは、複数のゲームセッションを同時に安定運用するためのセッション管理機能と、それを支えるロードバランサーの仕組みを備えています。Fusionでは「Region」「AppVersion」「GameMode」などの識別子によってセッションを分類・選択することができ、接続のたびに最適なセッションへとプレイヤーを自動的に割り当てます。さらに、Photon Cloudでは地理的に分散されたサーバーが稼働しており、地域ごとに最適な通信経路を選定し、レイテンシの低い環境を提供します。これにより、大量のプレイヤーが一度にアクセスするイベントなどにおいても、接続エラーや遅延を最小限に抑えた快適なプレイが可能になります。
複数エリアでの同時進行を実現するZoneの概念
FusionのZone機能は、ゲーム内での負荷分散と最適化を実現するための重要な概念です。Zoneとは、ゲームマップや世界を複数のエリアに分割し、それぞれのZoneごとに処理や通信の対象を限定することで、全体の負荷を抑えながらも高い同期精度を維持できる仕組みです。たとえば、プレイヤーが特定のエリアにいる場合、そのZoneに属するオブジェクトのみが同期対象となり、他のZoneの情報は送受信されません。これにより、200人規模のプレイヤーがマップ全体に散らばるようなゲームでも、帯域使用を抑えつつ滑らかな動作を維持できます。Zoneの活用は、大規模オンラインゲームの設計において不可欠な最適化手法のひとつとなっています。
Photon Fusionのモード別活用方法と用途に応じた設計方針
Photon Fusionは、Shared、Host、Serverという3種類のネットワークモードを提供しており、それぞれのモードが持つ特徴を理解し、用途に応じて使い分けることが非常に重要です。どのモードを選択するかによって、実装するコードの内容やセキュリティの確保方法、負荷分散の考え方が大きく変わるため、プロジェクトの初期段階で設計方針を明確にしておく必要があります。本セクションでは、各モードの基本的な仕組みと活用シーン、モード選択時に考慮すべきポイント、さらにはプロジェクト規模やゲームジャンルに応じた設計方針について詳細に解説します。
Shared Modeは、すべてのクライアントが同等の権限を持ち、各自が処理を実行し、その結果を同期する構成です。このモードでは専用のサーバーは不要で、比較的簡易な構成でマルチプレイを実現できるため、小規模なインディーゲームやローカルマルチプレイに適しています。通信コストも低く、初学者でも扱いやすい一方で、チート対策や不正アクセスへの防御力が低くなるというデメリットもあります。そのため、対戦型のゲームではなく、協力型・非競技性の高いゲームに向いています。Shared Modeは、実装が最も簡単である反面、責任の所在が曖昧になりやすいため、処理の整合性を取るための同期設計がカギとなります。
Host Modeでの疑似P2P構成の実装メリット
Host Modeは、あるクライアントをホスト(サーバー役)として立て、そのクライアントが全体の処理を統括する構成です。他のクライアントはホストに接続してデータをやりとりする形となり、疑似的にP2Pに近い動作を実現します。このモードは、専用サーバーを用意できない場合に便利であり、家庭用ネットワーク環境や開発コストを抑えたいケースで活用されます。ただし、ホストクライアントが切断されると全体が停止してしまうため、再接続処理やホスト交代のロジックをしっかり設計しておく必要があります。非同期通信や処理の優先制御を工夫することで、安定したマルチプレイ体験を実現できます。
Server Modeを利用したスケーラブルなサーバー構築
Server Modeは、専用のサーバーインスタンスを用いてゲーム全体の処理を一元管理する構成です。このモードでは、すべてのプレイヤーがサーバーと通信し、ゲーム内の状態はサーバー側で決定されるため、セキュリティ性・安定性・スケーラビリティの面で非常に優れています。特に不正操作への耐性が高く、競技性のあるPvPやバトルロイヤルといったゲームにおいては必須の構成と言えるでしょう。また、Photon Cloudを活用することで、地域別に分散されたサーバーを自動的に利用でき、遅延の少ない接続も実現可能です。Server Modeは導入コストが高いものの、長期的な運用やユーザー拡大を見込むゲームにおいては最も安定した選択肢です。
モード別に変わるコーディング戦略と設計注意点
Fusionでは、使用するネットワークモードによってコーディングの設計方針が大きく異なります。Shared Modeでは全クライアントが同時に処理を行うため、整合性を取るために入力のブロードキャストや状態補正の設計が不可欠です。Host Modeでは、ホストにのみState Authorityを持たせ、他のクライアントは入力のみを送信するように実装します。Server Modeでは、基本的にすべての権限をサーバー側に持たせ、クライアント側は完全に受動的な構成となります。各モードに応じて、オブジェクト生成、移動、RPCなどの実装方法が異なるため、最初からモードごとの構造を意識してコーディングを行うことが開発効率向上のポイントです。
プロジェクトの規模やジャンル別のモード選択指針
ゲームの規模やジャンルによって、適切なネットワークモードを選択することが成功の鍵となります。例えば、2~4人程度で遊ぶ協力型のカジュアルゲームであれば、実装が簡単なShared Modeで十分でしょう。一方で、8~16人の対戦型FPSやMOBAゲームではHost Modeが選択肢に入ります。さらに、100人以上の同時接続や、報酬・ランキング制度があるような競技性の高いゲームではServer Modeが最適です。また、今後の拡張性を見越して、最初はHost Modeで実装し、将来的にServer Modeへスムーズに移行できる構成にしておくと、技術的なリスクを低減できます。初期設計段階でモードごとの特性を正しく理解し、プロジェクトに最も適した構成を選択することが極めて重要です。
【Unity】Photon Fusionを使ってみた【マルチプレイ】
Unityでのマルチプレイ実装において、Photon Fusionは非常に強力かつ柔軟な選択肢です。PUN2と比べて高性能かつ正確な同期を実現しており、リアルタイム性が求められるゲームに最適です。このセクションでは、実際にUnityでPhoton Fusionを用いてマルチプレイ機能を実装した手順と、その過程で得られた知見を紹介します。Unityとの統合方法、実装フロー、注意点、そしてパフォーマンスや同期精度の実感値など、初心者から中級者までが実際に使ってみる際の参考になる情報をまとめました。
UnityエディタでのPhoton Fusion初期セットアップ
Photon FusionをUnityで使用するには、まずUnity HubでLTSバージョンのUnityプロジェクトを作成し、Fusion SDKを導入するところから始まります。Fusion SDKはUnity Asset StoreまたはPhoton公式サイトから入手でき、Unity Package Manager経由で簡単に追加可能です。その後、Photonのアカウントを作成してApp IDを取得し、Fusionプロジェクトに設定します。NetworkRunnerの作成やNetworkObjectのタグ付けなども初期準備の一環として行い、プロジェクト設定ファイル(ScriptableObject)でネットワークの動作を定義しておくことが推奨されます。これにより、後の開発工程で必要な構成が整い、スムーズな実装に進めるようになります。
プレイヤー同期の実装とシーン構築の流れ
Photon Fusionでは、プレイヤー同期にNetworkRunnerとNetworkObjectを中心とした構成を取ります。まずプレイヤーキャラクターのPrefabにNetworkObjectとNetworkTransformなどの必要な同期コンポーネントをアタッチし、それをNetworkRunner経由でSpawnすることで、他のクライアントと共有可能になります。プレイヤー生成はOnPlayerJoinedイベントなどのコールバック内で行い、プレイヤーごとの管理もPlayerRefを用いることで簡単になります。シーン構築では、サーバーとクライアントが共通で利用できるプレハブを用意し、ビルド時の差分を減らす設計が望ましいです。これにより、マルチプレイの挙動がUnityエディタ上でも再現しやすくなります。
動作確認とSimulation Modeを活用したデバッグ
Unity上での動作確認には、Photon Fusionが提供するSimulation Modeが非常に便利です。このモードを利用すれば、1台のPCで複数クライアントを同時に起動し、ネットワークを経由しなくてもマルチプレイの挙動を検証できます。これにより、実機を複数用意する手間なく、同期処理の検証やバグ修正が可能です。さらに、Fusionは詳細なログ出力機能を備えており、TickやPacketの状況を視覚的に確認することができ、通信の問題や同期のズレを迅速に特定できます。この機能は特に複雑なアクションゲームにおいて、デバッグの効率を大幅に向上させる要素となります。
ゲームジャンル別に見たFusionの応用例
Photon Fusionは、さまざまなゲームジャンルに応用可能な柔軟性を持っています。たとえば、リアルタイム性が求められるFPSやアクションゲームではTickベースの精密な制御により、正確な攻撃判定やスムーズな移動が可能です。また、ターン制ストラテジーやシミュレーションゲームでは、入力同期による簡素なネットワーク構成が有利に働きます。Fusionの入力同期モデルは、入力履歴に基づいて再現性の高いゲームロジックを構築できるため、いわゆる「巻き戻し処理」や「リプレイ機能」も比較的容易に実装できます。このように、ゲームの構成や求められる同期精度に応じて、Fusionの特性を活かした開発が可能です。
導入してわかったPhoton Fusionの強みと弱点
Photon Fusionを導入して実感する最大のメリットは、何と言ってもリアルタイム性の高さと拡張性の高さにあります。Tick単位の同期によってシビアな操作を必要とするゲームでも安定した体験が得られますし、NetworkBehaviourを通じた柔軟なイベント管理によって複雑なマルチプレイ構成も容易に設計できます。一方で、Tick制御やInput Authorityといった概念に不慣れな開発者にとっては、学習コストが少し高く感じることもあります。また、旧来のPUN2に比べるとコード量が増える場面もあり、最初は設計と構造に対する理解が不可欠です。とはいえ、公式のドキュメントやサンプルも充実しているため、導入後のサポート体制も整っており、中長期的には非常に効果的な選択肢であるといえます。
PUN2からPhotonFusionに移植したときにハマったところ3選
PUN2からPhoton Fusionへ移行を検討する開発者は多いですが、両者のアーキテクチャや同期手法は根本的に異なるため、単純な置き換えでは動作しない部分が多々存在します。このセクションでは、実際にPUN2で構築されたゲームをPhoton Fusionへ移植した際に直面した「落とし穴」とその解決方法を紹介します。API設計の違いや処理のタイミング制御、ネットワーク同期の前提など、見落としがちなポイントに焦点を当てているため、同様の移行を検討する開発者にとって有用な情報となるはずです。
PhotonViewとNetworkObjectの違いによる同期失敗
PUN2では同期の中心としてPhotonViewコンポーネントを使用していましたが、FusionではNetworkObjectがその役割を担います。PUN2では簡単にアタッチして使えるPhotonViewの仕組みが非常に便利でしたが、FusionではNetworkObjectがオブジェクト単位の同期の中核となり、より厳密な構成と管理が求められます。たとえば、PUN2では自動的に同期されていたTransformの動きも、FusionではNetworkTransformなどの個別コンポーネントで明示的に設定しなければ同期されません。また、NetworkObjectが存在するプレハブは必ず事前にNetworkRunnerに登録されていないとSpawnに失敗します。こうした仕様の違いを理解せずにそのまま移行すると、オブジェクトが生成されない・同期されないといったトラブルが発生します。
RPCの記述方法の違いとコール対象の指定ミス
PUN2で多用されていたRPC(Remote Procedure Call)は、Fusionでは記述方法が大きく異なります。PUN2では`[PunRPC]`属性をつけたメソッドを`photonView.RPC()`で呼び出していましたが、FusionではNetworkBehaviour内に`[Rpc]`属性をつけ、`Runner.RPC()`メソッドで呼び出す構成に変更されています。この違いを理解しないままPUN2のコードをコピペしても、当然動作しません。また、FusionではRPCの送信先として`RpcTarget`ではなく、`PlayerRef`を指定する必要があります。加えて、メソッドの引数に`RpcInfo`を追加しないと正常に動作しない場合もあるため、関数のシグネチャにも注意が必要です。こうした書き方のルールを守らないと、エラーや無反応に悩まされることになります。
タイミング処理の違いによるラグ補正の誤解
FusionではTick単位で処理が行われるため、時間管理がより正確になっている反面、これまでのフレームベースの感覚でコーディングを行うと予期せぬ挙動が発生することがあります。特にPUN2ではUpdate()ベースの処理が主流だったのに対し、FusionではFixedUpdateNetwork()やRender()など、Tickのタイミングに応じた関数が用意されており、それぞれの関数に適切な処理を割り当てる必要があります。さらに、ラグ補正のための「Rollback」機構が標準搭載されていますが、これを有効に使いこなすにはヒット判定の記録・巻き戻しの適用タイミングなど、ゲームロジック自体の設計を見直す必要が出てきます。PUN2では必要なかった設計観点が求められるため、移植時には時間制御の思想を切り替える覚悟が必要です。
NetworkRunnerの役割とライフサイクル管理の難しさ
PUN2では、ゲームの開始や接続処理が`PhotonNetwork.ConnectUsingSettings()`などで簡単に管理できていましたが、FusionではNetworkRunnerを用いて自前でゲームセッションの作成・接続・切断の制御を行います。NetworkRunnerの`StartGame()`や`Shutdown()`の使い方を誤ると、接続されない・切断されない・同期が停止するなどの不具合が発生します。さらに、NetworkRunnerCallbacksを正しく実装しなければ、プレイヤーのスポーンや切断時の処理も正しく動作しません。これらは一見して問題の原因がわかりにくいため、初学者にとってはかなり難易度が高い部分となります。NetworkRunnerのライフサイクルと役割を正確に把握し、初期化・終了・再接続などの処理を丁寧に組み込む必要があります。
Debug・テスト環境の変更に伴う混乱
PUN2で用意されていたデバッグログや接続状況の確認ツールはFusionとは大きく異なります。Fusionでは、より詳細なログやTickベースでのパフォーマンスログが出力されるようになっていますが、これを見慣れていないと何を意味しているのか分からず、トラブルの原因究明に時間がかかることがあります。また、Unityエディタ上でのSimulation Modeは非常に強力ですが、設定ミスやインスタンスの誤用により、想定通りの挙動が再現できないケースもあります。特にデバッグ用のNetworkRunnerインスタンスを複数持つと競合が発生するため、エディタ内テスト時にはインスタンス管理を慎重に行う必要があります。こうした新しいテスト環境に慣れるには、公式ドキュメントやチュートリアルの活用が不可欠です。
利用したFusionのモードと、利用方針
Photon FusionはShared、Host、Serverの3つのモードを提供しており、プロジェクトの性質やチームの開発方針によって適切なモードを選択することが成功の鍵となります。本セクションでは、実際に採用したFusionのモードと、それを選んだ理由、導入後の運用方針について具体的に解説します。ゲームの規模やジャンル、通信インフラの制約、コスト、セキュリティなど、様々な観点から選択を検討したうえで、最適解として導いたモードの活用事例は、今後のFusion導入に役立つはずです。
開発初期に選定したモードとその理由
プロジェクトの開発初期段階では、まずFusionのHost Modeを採用しました。これは専用サーバーを用意することなく、1つのクライアントがホストとして処理を統括するモデルであり、インフラ構築のコストを抑えつつ、リアルタイム性をある程度担保できる利点がありました。初期のプロトタイプ段階では、ユーザー数が少ないこともあり、Host Modeで十分な性能と信頼性が得られたため、迅速に開発サイクルを回すことができました。また、サーバー代が不要なため、検証や実験的実装に適しており、最初の数ヶ月はこの構成で継続的に検証を行っていました。
モードごとの開発・デプロイ環境の整備
Host Modeを選んだことで、ローカル環境やエディタ上でのテストが非常に容易になり、Photon Cloudに接続する必要がなく、手元のPC2台だけでマルチプレイ検証が可能でした。また、UnityのBuild & Run機能を活用して、1台をホスト、もう1台をクライアントとして起動し、プレイテストを即座に繰り返す開発スタイルが実現しました。後半ではServer Modeへの切り替えも視野に入れて、構成やコードベースをあらかじめ分離・抽象化しておく設計にしました。これにより、開発環境と本番環境の違いを意識しながら柔軟に対応できる体制が整いました。
中~後期でServer Modeへ移行した背景と狙い
ユーザー数が増加し、イベント制やPvPバトルの公平性が求められるフェーズに入ると、Host Modeの限界が見え始めました。特に、ホスト切断によるセッション崩壊のリスクや、チート対策の不十分さが課題となり、Server Modeへの移行を決断しました。Server ModeはPhoton Cloudを用いた専用サーバー構成であり、すべてのプレイヤー操作をサーバーで検証・処理できるため、セキュリティ面で大きな利点があります。また、地理的に最適なサーバーリージョンに自動接続されることで、低遅延の通信も実現しました。この移行により、安定性とパフォーマンスが飛躍的に向上し、運用コストは増えたものの、それに見合う成果を得られました。
開発チーム内で定義したモード利用のルール
モードの選択はチーム全体での合意と役割分担が不可欠です。私たちのチームでは、Shared Modeは検証・デモ目的に限定し、本番実装ではHostまたはServer Modeを使用するというルールを策定しました。Host Modeは主に内部テストや開発段階で用い、Server Modeは本番リリース時の標準構成としました。また、コードレベルでも`#if`ディレクティブなどを用いて、モードごとの処理を分岐させる設計を導入し、モードの切り替えが容易な構成にしました。これにより、開発途中での方針転換や環境変更にも柔軟に対応できるようになりました。
将来的な運用方針とスケーラビリティの確保
今後、より多くのユーザーに対応し、グローバル展開を視野に入れるにあたり、Server Modeをベースとしたクラウドスケーラブルな構成を標準とする予定です。Photon Cloudのマルチリージョン対応を最大限に活用し、アクセスの集中する地域に応じてサーバーを分散配置することで、通信遅延の抑制と障害時の冗長性を確保します。また、ゲーム内でZoneを活用してサーバー負荷を分散するアーキテクチャも導入しており、サーバーの負担を局所化する構成にしています。こうしたモード戦略の柔軟な設計は、長期的なサービス運用において重要な礎となります。
基本性能(アプリの概要)
Photon Fusionを用いた本プロジェクトのアプリケーションは、リアルタイム性とスケーラビリティを両立したマルチプレイアクションゲームです。最大200人の同時接続を想定しつつ、プレイヤーの操作に即応するレスポンスの良さと、安定したセッション管理を重視して設計されました。Unityをフロントエンドに採用し、Photon FusionのServer Modeをベースに構築。操作の快適さやゲーム内イベントの正確な同期は、Tickベースのネットワーク処理と、プレイヤー権限管理によって実現されています。以下では、本アプリケーションにおける主要な性能特性と、実装上の工夫について詳述します。
最大同時接続数とネットワーク負荷への対策
このアプリは、最大で200人規模のプレイヤーが同時に参加可能なバトルロイヤル形式のマルチプレイに対応しています。大量の接続によって発生するネットワークトラフィックを最適化するため、Fusionのデフォルト機能であるデータ圧縮や興味領域管理(Interest Management)を活用しています。特に、可視範囲内のプレイヤーやオブジェクトのみにデータを送信する設計により、帯域の消費を大きく抑えることができました。また、Tickベースのイベント処理を行うことで、全クライアント間での処理整合性を維持し、データの衝突や無駄な再送を防いでいます。
ユーザー操作に対する応答速度とラグ対策
ユーザーが操作を行ってからゲーム内にその結果が反映されるまでの遅延、いわゆる「入力ラグ」の低減は最重要課題の一つでした。Photon Fusionでは、入力同期(Input Sync)とRollback機構を用いることで、ラグを極小化した同期を実現しています。また、各プレイヤーの入力は即座にシミュレートされ、サーバーとの結果照合により同期が行われるため、見た目上の違和感もありません。これにより、0.1秒以下の反応速度を目指す操作環境を提供し、アクション性の高いコンテンツでも快適なプレイフィールが実現できました。
マップ・UIなどクライアント側の描画最適化
サーバー処理の負荷軽減と併せて、クライアント側での描画最適化にも注力しました。とくにプレイヤーの多いバトルロイヤル型のマップでは、遠距離のオブジェクトの描画を抑えるLOD管理(Level of Detail)や、GPUインスタンシングによる描画コストの軽減を実装しています。UIに関しても、Photon Fusionと非同期で動作することでネットワーク負荷に影響を与えず、滑らかな描画が行える設計となっています。また、通信状況やPing、同期状態をUI上に視覚的に表示する機能も実装しており、プレイヤーが安心してプレイできる環境を整えています。
サーバーとの安定した接続性と自動再接続機構
サーバーとの接続の安定性は、オンラインゲームにおける根幹です。本アプリでは、Photon Cloudの安定したインフラを活用するとともに、クライアント側で再接続のリトライ処理を備えています。たとえば、ネットワーク環境が一時的に不安定になった際も、一定時間のうちに接続が復旧すればセッションに復帰できる仕組みを導入しました。さらに、ゲーム中の切断をログに記録し、プレイヤーに状況を通知するUI表示を行うことで、透明性のある運用を心がけています。こうした仕組みにより、長時間プレイでも安心して楽しめるサービス体験が実現されています。
マルチプラットフォーム対応と今後の展望
このアプリはPC、モバイル(iOS/Android)を中心に構築されており、Unityのマルチプラットフォーム機能とPhoton Fusionの柔軟性を活かして、クロスプレイにも対応しています。コントロールデバイスの違いに合わせた入力処理やUIスケーリングも設計済みで、今後はWebGLやコンソールへの対応も視野に入れています。また、Photon Fusionの進化に合わせて、新機能への対応や最適化も継続的に行う予定です。プレイヤーの行動データを元にしたリアルタイム分析や、サーバーリソースの自動スケーリング機能など、今後のアップデートでより洗練されたゲーム体験を提供していく計画です。