「バイタル」は現場で「バイタルサイン」を短く言い換えたもので、体温・脈拍・呼吸・血圧という、生きていることを示す最も基本的な徴候を指します。ただし実務で迷うのは言葉の意味ではなく、「何度からが異常なのか」「どの順番で測るのか」「正常値の範囲内だが普段と違うとき報告すべきか」という線引きのほうでしょう。この記事では、厚生労働省の通知と学会ガイドラインで数値の根拠がはっきりしているところと、施設ごとの取り決めに従うべきところを分けて整理します。
まとめ:バイタルの4項目と、報告を判断する線引き
- 狭義のバイタルサインは体温・脈拍・呼吸・血圧の4項目。広義では意識レベルや酸素飽和度も含みます(日本看護科学学会の用語定義)。
- 体温は37.5℃以上が「発熱」、38.0℃以上が「高熱」。これは厚生労働省が感染症法の届出基準で定めた数値です。
- 血圧は診察室血圧140/90mmHg以上が高血圧(日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」)。140/90mmHg未満なら正常、ではありません。
- SpO2は96〜99%が標準値、90%以下は呼吸不全の可能性(日本呼吸器学会)。
- 測定は締め付けや接触の刺激が少ない項目から始め、血圧を最後に回します。小児では啼泣で値が動くため、この順序の意味がさらに大きくなります。
- 正常値の範囲に収まっていても、その人の普段の値から外れていれば報告対象です。早期警告スコアは絶対値を点数化する仕組みですが、「混乱は新規発症のみ加点」のように、背景による意味の違いを設計に織り込んでいます。
以下、この線引きの根拠と、記録・報告に何を残すかを順に見ていきます。
バイタルが指す4項目と、広義に含まれる生命徴候の境界
vitalは「生きている」、signsは「徴候」を意味します。公益社団法人日本看護科学学会が公開する用語集JANSpedia(看護学学術用語検討委員会編)は、バイタルサインを「人間が生きていることを示す最も基本的な徴候(しるし)」と定義したうえで、「一般的にバイタルサインとは、『体温』『脈拍』『呼吸』『血圧』をさす」と述べています。さらに「近年広義の意味で、意識レベルや心音、腸蠕動音、酸素飽和度など、生体の全ての生命徴候を含み、バイタルサインと表す場合もある」と補足しています。
4項目と5項目・6項目の数え方が分かれる理由
「バイタルサインは5つ」「6つ」と書かれた資料を見かけるのは、この狭義と広義の差によるものです。学術用語としての中核は4項目。そこに意識レベルを加えれば5項目、さらにSpO2を加えれば6項目という数え方になります。実習記録や施設のマニュアルで項目数が違っていても矛盾ではなく、どちらの範囲で言っているかを確認すれば足ります。迷ったときは、自分の施設の記録用紙にどの欄があるかが実務上の答えです。なお実務では尿量も同じ用紙に記録されることが多く、循環と腎機能を反映する観察項目として扱われます。
記録で使う略語と、バイタルチェックという言い方
記録では英語の略語が使われます。書き間違いは値の取り違えにつながるため、単位まで含めて覚えます。
| 略語 | 英語 | 日本語 | 単位 |
|---|---|---|---|
| BT/T | Body Temperature | 体温 | ℃ |
| P/HR | Pulse/Heart Rate | 脈拍/心拍数 | 回/分 |
| R/RR | Respiration/Respiratory Rate | 呼吸数 | 回/分 |
| BP | Blood Pressure | 血圧 | mmHg |
| SpO2 | Percutaneous Oxygen Saturation | 経皮的動脈血酸素飽和度 | % |
「バイタルチェック」「VS測定」も同じ行為を指す言い方で、介護現場では前者、看護記録では後者が使われることが多いだけの違いです。
年齢帯別の正常値と、出典が明確な異常の線引き
正常値は成書や施設のマニュアルによって幅があります。ここでは、公的な通知や学会ガイドラインで数値がはっきり定められているものと、慣習的な目安とを分けて示します。
成人で押さえる5つの数値と、その根拠
| 項目 | 成人の目安 | 異常の線引き | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 体温 | 36℃台 | 37.5℃以上=発熱/38.0℃以上=高熱 | 厚生労働省 |
| 脈拍 | 60〜100回/分 | 100超=頻脈/60未満=徐脈 | 慣習的な目安 |
| 呼吸 | 12〜20回/分 | 施設マニュアルによる | 慣習的な目安 |
| 血圧 | 120/80mmHg未満 | 140/90mmHg以上=高血圧 | 日本高血圧学会2025 |
| SpO2 | 96〜99% | 90%以下=呼吸不全の可能性 | 日本呼吸器学会 |
体温の2つの数値は、厚生労働省が平成25年9月30日付の健感発第930001号で改正した感染症法の届出基準に由来します。別紙第1「全般的事項」に「本基準において、『発熱』とは体温が37.5℃以上を呈した状態をいい、『高熱』とは体温が38.0℃以上を呈した状態をいう」と定められています。届出という文脈に限定した定義ではありますが、日本の実務で「何度から発熱か」を問われたときに引ける、数少ない公的な線引きです。
血圧で注意したいのは、140/90mmHg未満だから正常、とは言えない点です。診察室血圧140/90mmHg以上が高血圧という診断基準は日本高血圧学会が2025年8月29日に6年ぶりの改訂として発行した「高血圧管理・治療ガイドライン2025」でも据え置かれましたが、その手前には正常高値血圧・高値血圧という区分があり、正常血圧は120/80mmHg未満とされています。降圧目標などの管理基準は同ガイドラインで見直された部分があるため、患者指導や記録の判断に使う数値は同学会の公式ページで最新版を確認してください。
脈拍と呼吸数には、体温や血圧のような公的な線引きがありません。60〜100回/分、12〜20回/分は広く使われる目安ですが、出典を問われたら「施設マニュアルの基準」と答えるのが正確です。数値を単独で「異常」と断じず、後述する普段の値との差で見ます。
小児・新生児の正常値の目安と、WHOが示す速い呼吸の閾値
小児は年齢が上がるほど脈拍と呼吸数が減り、血圧は上がります。下表は看護の成書で広く使われる目安で、公的に定められた数値ではありません。施設で使っている年齢別表があればそちらが優先です。
| 区分 | 脈拍(回/分) | 呼吸(回/分) |
|---|---|---|
| 新生児(生後28日まで) | 120〜160 | 30〜50 |
| 乳児(1歳未満) | 110〜130 | 30〜40 |
| 幼児(1〜5歳) | 100〜110 | 20〜30 |
| 学童(6〜12歳) | 80〜100 | 18〜20 |
| 成人 | 60〜100 | 12〜20 |
一方、5歳未満の呼吸数には国際的に共通の判断線があります。WHOのIMCI(小児疾患の統合管理)が定める「速い呼吸」の閾値です。
| 月齢・年齢 | 速い呼吸と判定する呼吸数 | 疑う病態 |
|---|---|---|
| 生後2か月未満 | 60回/分以上 | 重症疾患 |
| 生後2〜11か月 | 50回/分以上 | 肺炎 |
| 12〜59か月(1〜5歳) | 40回/分以上 | 肺炎 |
50回/分・40回/分は、咳や呼吸困難のある生後2か月から5歳未満で肺炎を疑う判断に使われます。生後2か月未満の60回/分はこれとは別枠で、肺炎の分類ではなく重症疾患を疑う徴候の一つとして扱われ、60回を超えた場合は数え直すことが指示されています。いずれも1分間の実測が前提です。成人の「12〜20回/分」の感覚のまま小児の呼吸数を見ると、40回台を異常と気づけないことがあります。新生児の呼吸数が成人の倍以上あるのは、体格に対して必要な酸素量が多いためで、それ自体は異常ではありません。
正常値より優先される、その人の普段の値
正常値の役割は、初対面の患者・利用者を大まかにふるい分けることです。継続して関わる相手では、正常値より本人の平常値のほうが判断材料になります。平熱が35℃台の高齢者にとって37.2℃は1℃以上の上昇ですし、収縮期血圧が普段150mmHg前後で安定している人が130mmHgまで下がったとき、正常値の中に入ったからと見過ごせば変化を取り逃がします。
高齢者では、教科書どおりの反応が出ないこと自体を前提にします。感染していても高熱が出にくく、微熱や食欲低下だけが手がかりになる場合があります。動脈硬化があると収縮期血圧が高めに出やすく、降圧薬やβ遮断薬を服用していれば、本来なら脈拍が上がる場面でも数値が動きません。「熱がないから感染していない」「脈が正常だから循環は保たれている」という読み方が通じない相手だということです。初回の測定は異常の判定であると同時に、以後の比較の基準を作る作業でもあります。
測定する目的と、記録に残す根拠
バイタル測定の目的は3つです。自覚症状として現れる前の変化を数値で捉えること、投薬・処置・リハビリなどの介入が狙いどおりに働いたかを確かめること、その人の平常値を確定させて以降の比較の物差しを作ること。
項目ごとの根拠を言うと、体温は感染や炎症・脱水・環境要因の反映、脈拍は循環の代償が働いているかの指標です。呼吸数は自覚症状より早く動くことが多く、血圧は組織へ血液を送る力、SpO2は酸素が実際に血液へ取り込めているかを示します。同じ「息苦しい」という訴えでも、呼吸数が増えているのかSpO2が下がっているのかで、次に何を疑うかが変わります。
測定値をその都度書き残す理由も、ここにあります。単発の数値は正常か異常かしか語りません。急変時に判断材料になるのは、直前の1点ではなくそこに至るまでの推移です。
測定の順番と、項目ごとに誤差が出る条件
順番が資料で割れる理由と、小児で明確に推奨される順序
成人の測定順序は、実は固定されていません。体温から始める手順を示す資料もあれば、順序は特に決まっていないとする資料もあります。理由から考えると、締め付けや接触の刺激が少ないものを先に置くのが合理的です。血圧測定は上腕を締め付けるため不快感が強く、先に行うと脈拍や呼吸が上がった状態で残りを測ることになります。実務上は、脈拍を測りながら同時に呼吸数を数え、体温、最後に血圧という流れに落ち着きます。
小児では推奨がはっきりしています。啼泣すると呼吸数も脈拍も一気に変わるため、患児の抵抗が少ない順に、呼吸→脈拍→体温→血圧の順で測ります。年齢や理解力、機嫌によって順番を入れ替える判断も必要で、たとえば眠っている乳児なら、起こす前に呼吸数と心音を済ませてしまうほうが正確な値が取れます。決められた順序を守ること自体が目的ではありません。値が動く前に、動きやすい項目から取ると考えると迷わないはずです。
呼吸数を正確に数えるための条件
呼吸は、意識すれば自分で変えられる数少ないバイタル項目です。「これから呼吸を数えます」と伝えた時点で、その値はもう平常時のものではなくなります。脈拍を測っている流れのまま胸腹部の動きを見る、といった配慮が必要になるのはこのためです。
数える時間も結果を変えます。15秒間の実測値を4倍する方法は、1回の数え間違いが4回分の誤差になります。呼吸が不規則な患者や小児では、1分間の実測が前提です。前述のWHOの閾値も1分間のカウントを条件にしています。
脈拍と体温で誤差が出る場面
脈拍は回数だけでなく、リズムの規則性と強さも記録の対象です。不整脈があると、末梢で触れる脈拍数が心臓の拍動数より少なくなることがあります。この差がある場合、脈拍だけを記録すると心臓の状態を過小評価します。
体温は測定部位で値が変わります。直腸・鼓膜・口腔・腋窩の順に低くなるのが一般的で、直腸温と鼓膜温は身体の内部の温度、口腔温と腋窩温は外側に近い温度を反映します。部位を書かずに数値だけ記録すると比較できません。腋窩で測る場合、汗が残っていると気化熱で低く出るため拭き取ってから体温計を挟み、測定側の腕は動かさないようにします。前回と違う部位で測った値をそのまま並べると、部位差の分だけ「解熱した」ように見えます。
血圧測定で結果を変える体位・カフ・衣服と、避けるべき測定部位
血圧はカフの位置が心臓の高さからずれるだけで値が動きます。腕が心臓より低ければ高く、高ければ低く出ます。カフの幅が腕の太さに合っていない場合も同様です。細すぎるカフでは動脈を圧迫するのに必要以上の圧をかけることになり高い値が出ますし、太すぎれば逆に低く出ます。
衣服の扱いも誤差要因です。厚手の衣服の上からカフを巻くと圧が正しく伝わらず、かといって袖をきつくたくし上げれば、その部分が上腕を締め付けて値を変えてしまいます。腕を出せない状況なら、薄手の肌着1枚までにとどめるか、袖を脱いでもらう判断が要ります。測定直前の歩行や食事、会話でも値は上がるため、数分安静にしてから測り、直前の活動を記録に残します。手首式は上腕式より心臓の高さから外れやすく、姿勢の影響を受けます。
測る腕を選ぶ判断も必要です。麻痺のある側、乳がんでリンパ節郭清をした側、透析シャントのある側、点滴が入っている側では測定を避け、反対側で測ります。両腕とも使えない場合は下肢での測定に切り替えるか、施設の取り決めを確認してください。
SpO2を読むタイミングと、測定できない条件
日本呼吸器学会は、パルスオキシメーターについて「装着直後ではなく、脈拍が安定する20〜30秒後に数値を読んでください」と示しています。装着してすぐ表示された値をそのまま記録すると、実際より低い数字を拾うことがあります。
同学会は正しく測定できない条件も挙げており、体動によって発光部と受光部がずれる場合、指先の冷えで測定部に血流が十分にない場合、マニキュアなどで光の透過が妨げられる場合が該当します。冬季に高齢者のSpO2が低く出るときは、まず指先を温めてから測り直すのが先です。慢性の肺・心疾患がある人では絶対値より変化幅が重要で、同学会は、息苦しさや喘鳴などの症状が強くなり、かつSpO2が普段の値から3〜4%低下した場合に、かかりつけ医への連絡・受診を勧めています。
異常値を見つけたときの報告判断と、早期警告スコアの考え方
「正常値を外れたら報告」だけでは現場は回りません。判断を構造化した仕組みとして、英国のRoyal College of Physiciansが2017年12月の報告書で更新した早期警告スコアNEWS2があります。呼吸数、酸素飽和度、収縮期血圧、脈拍数、意識レベル(新規の混乱を含む)、体温の6項目を点数化し、酸素投与が必要な人にはさらに2点を上乗せして、合計点で対応を決める設計です。ただしRCPは、小児(16歳未満)と妊婦にはNEWS2を用いないよう明記しています。急性疾患時の生理反応がこの2群では異なるためで、本記事で小児の正常値を扱っている点とは別枠の話です。
点数表そのものより、設計の考え方が現場で役立ちます。同学会が配布する記録チャート(2022年再発行版)には、血圧は収縮期のみを採点する(Score uses systolic BP only)、意識の混乱は新規発症のみ採点し慢性のものは加点しない(Score for NEW onset of confusion/no score if chronic)、SpO2には2つの評価スケールがあり、目標値が異なる患者(例:高二酸化炭素血症性呼吸不全)に用いるScale 2は有資格の臨床家(a qualified clinician)の指示下でのみ使う、と明記されています。同じ数値でもその人の背景によって意味が変わることを、スコア自体が織り込んでいるわけです。
ここで誤読しやすいのが「慢性なら加点しない」の意味です。これはスコアを押し上げないという規定であって、報告そのものが不要という意味ではありません。認知症のある利用者に普段どおりの見当識の乱れがあるとき、スコアが拾うのは新しく生じた変化のほうだと理解したうえで、報告の要否は施設の基準に従ってください。
バイタルの数値が重症度判定に直結する例もあります。日本救急医学会が2024年7月25日に公表した「熱中症診療ガイドライン2024」は、最重症群としてIV度を新設し、深部体温40.0℃以上かつグラスゴー・コーマ・スケール(GCS)8以下をIV度と定義しました。さらに現場で深部体温が測れない状況を想定し、表面体温40.0℃以上もしくは明らかな熱感があり、かつGCS 8以下あるいはジャパン・コーマ・スケール(JCS)100以上であればqIV度(quick IV度)と判定するとしています。GCSは開眼・言語・運動の3項目を合計3〜15点で評価し8以下が重度の意識障害、JCSは3-3-9度方式で100は痛み刺激に対して払いのけるような動作をする水準です。つまり体温計と意識レベルの評価だけで、冷却を始めつつ高次救急医療機関へ搬送するかどうかが決まります。環境側の指標についてはWBGT(暑さ指数)の計算式と基準値の早見表を、搬送先の選定や優先順位づけの考え方についてはトリアージの4色タグの色分けと優先順位を整理した記事も参考になります。
報告するときは、測定値だけでは足りません。測定した時刻、そのときの体位と活動状況、普段の値、前回測定値からの変化、随伴症状をあわせて伝えます。「いま何がどうなっているか」を先に言い、経過は後から補足するほうが受け手は動きやすくなります。数値が正常値の範囲でも、普段の値から明らかに外れていれば報告してください。同時に、単発の異常値だけで判断せず測り直す一手間も必要です。報告するかどうかと、値を確定させたかどうかは別の判断だからです。
バイタル記録に必ず残す項目と、チェック表の作り方
記録用紙の名称は、バイタルチェック表、フローシート、温度表、経過表など施設によって異なりますが、残すべき情報は共通です。値そのものだけを書いた記録は、後から見たときに前回値と比較できません。
| 記録項目 | 残す内容 | 落とすと起きること |
|---|---|---|
| 測定時刻 | 実測した時刻 | 変化の速さが読めない |
| 測定部位 | 腋窩・口腔・鼓膜など | 部位差を解熱と誤読 |
| 測定側と体位 | 左右・臥位/坐位 | 血圧の差が説明できない |
| 直前の活動 | 歩行・食事・入浴など | 一過性の上昇を異常と判断 |
| 使用機器 | 上腕式/手首式など | 機器差を病態変化と誤読 |
| 実施者 | 測定した人 | 測定条件を確認できない |
色分けや記号は、体温は青、脈拍は赤といった書き方が慣習的に使われるものの、公的に統一された記載規格は見当たらず、実務上は施設の記録要領に従うのが一般的です。用紙の凡例を確認し、自己流の記号を混ぜないのが原則になります。転記ミスを防ぐには、測定してから記入するまでの間に別の作業を挟まないことが一番効きます。複数人分をまとめて後から書き写す運用は、値の取り違えが起きる典型的な場面です。
紙の記録は経過を一覧しやすい反面、集計と共有に手がかかります。電子化すると時系列のグラフ化や閾値超過の抽出が自動化できますが、どこまでを電子化するかの線引きが先です。範囲の決め方と入力端末の設計は介護記録システムで電子化する範囲と入力端末の設計で、導入費用の見積もりは介護ソフトの費用相場と5年総額の試算で整理しています。
なお、測られる側が身構えていると値は上がるため、声かけと関係づくりは測定手技の一部です。この点でラポールの意味と築き方は測定技術と地続きの話になります。数値だけでなく表情や皮膚の状態を含めて全体を捉える視点は、ホリスティックアプローチの考え方とも重なります。
よくある質問
バイタルサインは4つですか、5つですか、6つですか?
どれも間違いではありません。日本看護科学学会の用語定義では、狭義のバイタルサインは体温・脈拍・呼吸・血圧の4項目です。これに意識レベルを加えて5項目、さらに酸素飽和度(SpO2)を加えて6項目と数える資料もあります。同学会は広義には心音や腸蠕動音を含む生命徴候全般を指す場合があるとしており、実務では自分の施設の記録用紙にどの欄があるかが答えになります。
BT・HR・BP・RRはそれぞれ何の略ですか?
BTはBody Temperature(体温、単位は℃)、HRはHeart Rate(心拍数、回/分)、BPはBlood Pressure(血圧、mmHg)、RRはRespiratory Rate(呼吸数、回/分)です。体温はT、脈拍はP、呼吸はRと1文字で書くこともあります。脈拍(P)は末梢で触れた回数、心拍数(HR)は心臓が拍動した回数で、不整脈があると両者は一致しません。この差が出るときは、どちらの値かを明記して記録します。
服の上から血圧や体温を測ってもよいですか?
厚手の衣服の上からカフを巻くと圧が正しく伝わらず、値が信用できなくなります。腕を出してもらうのが原則で、難しい場合も薄手の肌着1枚まで。ただし袖をきつくたくし上げると、その部分が上腕を締め付けて値が変わるため、脱いでもらう判断も必要です。腋窩で体温を測る場合も衣服が挟まると正しく測れないので、汗を拭き取り、体温計の先端が腋窩の中央に当たるようにします。
成人の呼吸数の正常値は何回ですか?
成人では12〜20回/分が目安として広く使われています。ただし体温や血圧と違い、公的な通知や学会ガイドラインで定められた数値ではないため、施設のマニュアルに従ってください。数え方も結果を左右します。15秒の実測値を4倍する方法は誤差が4倍になるため、不規則な呼吸や小児では1分間の実測が前提です。
小児のバイタルはどの順番で測りますか?
呼吸→脈拍→体温→血圧の順です。小児は啼泣や体動で呼吸数と脈拍が大きく動くため、抵抗の少ない項目から先に取り、上腕を締め付ける血圧を最後に回します。眠っている乳児なら、起こす前に呼吸数と心音を済ませておくと正確な値が取れます。年齢や機嫌によって順番を入れ替える判断も必要で、値が動く前に動きやすい項目から取る、と考えてください。