介護ソフトの月額は5,500円から27,500円という幅で紹介されることが多いのですが、この数字だけでは予算を組めません。課金の分母が製品ごとに違うからです。利用者1人あたり220円で計算する製品、職員1人あたり880円の製品、タブレット1台あたり5,500円の製品、事業所単位の定額制の製品が、同じ料金比較表に並ぶ状況です。この記事では、課金方式ごとの月額の出方と事業所規模別の金額レンジ、見積書に載らない運用コスト7項目の実額、月額の安さが5年総額で逆転する損益分岐、介護テクノロジー導入支援事業の補助を織り込んだ実質負担額の計算、そして費用を理由に開発へ切り替える金額の線までを順に置きます。自事業所の利用者数・職員数・端末台数を入れて5年総額を出せる試算コードも載せました。介護ソフトそのものの機能や提供形態は介護ソフトとは?機能・種類とクラウド/オンプレの選び方で扱っているため、ここでは金額の話だけに絞ります。
まとめ:介護ソフトの費用で先に固めておく金額の目安と判断
先に金額の結論を置きます。クラウド型の介護ソフトは、居宅介護支援や訪問系の1事業所なら月額5,500円から10,000円台、通所介護や施設系では月額20,000円台後半まで上がります。初期費用0円の製品が主流で、オンプレミス型を選ぶと初期に100万円以上、60か月で割った月換算はおよそ16,000円。ここまでが各社の公表料金から読み取れる範囲です。
予算が崩れるのはこの先。見積書に載る金額は実際に出ていくお金の一部で、残りはタブレットと無線LANの整備費、稼働初月の並行運用に伴う人件費、他システムとの連携開発費、そして解約するときのデータ抽出手数料として出ていきます。5年で並べ直すと、月額の安い製品が総額で逆転する例は珍しくありません。利用者60人・職員25人・端末8台の通所介護で試算すると、5年総額は課金方式によって約200万円から約410万円まで開きました。
判断の基準は3つに絞れます。第一に、課金の分母を自事業所の実数へ当てはめて月額を出し直すこと。第二に、見積書に現れない7項目を金額で埋めて5年総額に足すこと。第三に、介護テクノロジー導入支援事業で補助を受けられる範囲を所在地の都道府県の要綱で確定させ、採択されなかった場合の資金計画まで同時に用意しておくことです。
そして打ち切りの線。オプション開発の見積もりがパッケージの5年総額の3割を超え、その機能が日次で使われるものなら、パッケージの中で解決しようとする構成は費用面で不利になります。請求と法定帳票をパッケージに残し、外側だけを連携開発で組んだほうが、総額も納期も読めるようになりました。
介護ソフトの費用相場を課金方式3種と事業所規模で分けた月額レンジ
料金表の数字を横に並べる前に、各社が何を分母にして課金しているかを揃えます。
利用者単価と職員単価と事業所定額で分かれる介護ソフト月額の出方
介護ソフトの月額は、4つの分母のどれかで計算されています。利用者1人あたり、職員1人あたり、入力端末1台あたり、事業所単位の定額です。利用者単価型の製品には1人あたり220円からという従量課金があり、サービス種別に応じて月額の上限が5,500円または8,800円に設定されています。職員単価型は1人あたり880円、端末単価型はタブレット1台あたり5,500円という置き方。事業所定額型では、5,500円から27,500円の製品や、8,580円から14,080円の製品が公表されています。
| 課金の分母 | 月額の出方 | 総額が伸びる条件 |
|---|---|---|
| 利用者1人あたり | 220円から(上限あり) | 利用者数の増加 |
| 職員1人あたり | 880円前後 | 非常勤を含む全職員 |
| 端末1台あたり | 5,500円前後 | 入力端末の増設 |
| 事業所単位の定額 | 5,500円〜27,500円 | サービス種別の追加 |
| 初期の買い切り | 100万円超 | 5年ごとの更新 |
自事業所の実数を入れて計算し直すと、料金表の並び順とは違う結果になります。利用者60人・職員25人・入力端末8台の通所介護を例に取ると、利用者単価の製品は上限に張り付いて月8,800円、職員単価の製品は月22,000円、端末単価の製品は月44,000円。同じ「安い製品」という紹介でも、分母が変われば5倍の差が出ます。
サービス種別で月額5,500円から27,500円へ広がる主な理由
事業所定額型で月額が5倍近く開くのは、サービス種別ごとに処理する業務量が違うからです。居宅介護支援はケアプラン作成と給付管理が中心で、1人のケアマネジャーが担当する利用者数にも上限があります。訪問介護になるとヘルパーのシフトと実績突合が加わり、通所介護では送迎管理と当日キャンセルの処理が乗る。施設系では24時間の記録と看護・介護の情報共有まで含まれ、特別養護老人ホーム向けには月額79,731円という水準の製品もありました。
複数種別を1法人で運営している場合の見方も、金額を集める前に決めます。種別ごとに必須要件をどう切り分けるかは介護ソフトの選び方でサービス種別ごとの要件を確定させる記事で整理しました。1契約で3種別を処理できる製品と、種別ごとにライセンスが要る製品では、同じ月額表示でも支払いが2倍から3倍に変わりました。見積依頼の時点で運営中のサービス種別と事業所数を書いておかないと、返ってきた金額は横並びになりません。総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)の単価マスタを標準で持つかどうかも、追加費用の有無に直結します。
オンプレミス型で初期費用が100万円を超える構成と月額換算の置き方
オンプレミス型は初期費用100万円以上から始まり、施設系では数百万円という水準になります。この金額をクラウド型の月額と比べるときは、60か月(5年)で割った月換算に直してください。100万円なら月およそ16,000円。クラウド型の月額が10,000円台に収まるなら、5年の範囲ではオンプレミス型のほうが高くつく計算です。
ただし月換算だけで結論は出ません。オンプレミス型には、5年前後で発生するサーバー入れ替えと、介護報酬改定のたびの更新プログラム適用作業が残ります。改定は3年周期で、直近が令和6年度介護報酬改定(2024年4月施行、訪問看護などは6月施行)、次期は令和9年度(2027年4月施行予定)。5年の計画には改定が最低1回、7年なら2回入る計算になります。この適用作業を事業所側の誰が担うかを人件費に換算して足すと、月換算の差はさらに開きました。
見積書に載らない介護ソフトの運用コスト7項目を金額へ置き直す手順
見積書の合計金額は、実際に出ていくお金の一部でしかありません。抜けやすい項目を先に金額で埋めます。7項目は、端末、無線LAN、研修の人件費、並行稼働の人件費、データ移行費、旧システムの閲覧契約、解約時の抽出手数料です。
タブレットと無線LANの整備費を5年の更新周期で見積もる実額の目安
介護ソフト本体の見積書に、タブレットと無線LANの費用は入りません。別会社への発注になるためです。現場で使う端末は10インチ台のタブレットで1台6万円から8万円、業務用ケースと保護フィルムを含めると1台あたり7万円前後。20台そろえれば140万円で、ソフトの月額5年分を上回ります。
端末の更新周期は3年から4年で見ておきます。サービス種別ごとに必要な台数をどう見積もるかは介護記録システムの端末選定と同期仕様を整理した記事にまとめています。バッテリーの劣化とOSのサポート終了がこの周期で来るからです。5年の計画なら更新を1回織り込む。館内の無線LANは、ユニット型の特別養護老人ホームや鉄筋の建物では中継機を増やす工事が必要になり、フロアあたり数十万円の見積もりが出ます。端末と無線LANの整備費は介護テクノロジー導入支援事業の補助対象経費に含まれるため、ソフト費用と分けて申請できる形の見積書をもらってください。国の実施要綱では、機器と一体で使う情報端末の補助額は1台あたり10万円以内とされています。
職員研修と並行稼働に消える人件費を時間から金額へ換算する手順
研修と並行稼働の人件費は、外部への支払いが発生しないため見積書に現れません。それでも実コストです。介護職員の時給を1,700円、事務職員を1,900円と置いて、時間から金額へ直します。
操作研修は1人あたり2時間から3時間。職員50人の事業所なら延べ125時間で、およそ21万円になります。請求担当の並行稼働はこれより重く、新旧2系統で実績入力と請求データ作成を回す最初の1か月に、担当者1人あたり40時間から60時間の時間外が発生した例がありました。時給換算で10万円前後が1事業所分。さらに稼働から3か月は、入力ミスの修正と職員からの問い合わせ対応で1事業所あたり月10時間程度が上乗せされます。合計すると、職員50人規模で35万円前後を初年度に見込んでおく計算です。
データ移行費と解約時のデータ抽出手数料が総額を押し上げる条件
データ移行費と解約時の費用は、契約書のどこにも金額が書かれていないことがあります。確認するのは次の3点です。
- 移行対象の範囲:利用者基本情報だけか、過去の介護記録とアセスメント履歴まで含むか
- 移行できないデータの扱い:旧システムを閲覧専用で残す場合の月額と契約年数
- 解約時の抽出形式と手数料:CSVで出せるか独自形式か、抽出作業に別途費用が乗るか
介護記録には、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準でサービスの提供に関する記録を完結の日から2年間保存する定めがあり、自治体の条例で5年としている地域もあります。解約の翌月にデータが消える契約だと、保存義務を満たすために旧システムの契約を延長し続けることになりました。過去記録の移行を見送る判断そのものは合理的ですが、そのぶん旧システムの閲覧契約が数年分の固定費として残る点まで金額に含めてください。この出口の条件を複数社へ同じ文面で聞く方法は、介護ソフトの比較で候補を3社に絞る7軸で整理した相見積もりの前提条件に含めてあります。
月額の安さが5年総額で反転する分岐点と安い介護ソフトの見極め方
月額の安い製品を選んだのに総額で高くつく。この逆転がどこで起きるかを、条件で切り分けます。
初期費用0円のクラウド型が利用者数の増加で逆転する損益分岐点
初期費用0円のクラウド型は、導入時の資金負担がない代わりに、月額が利用者数や職員数へ連動します。逆転が起きるのはこの連動部分。利用者1人あたり220円の製品は、上限が設定されていれば利用者が増えても月8,800円で止まりますが、上限のない製品だと利用者100人で月22,000円まで上がります。契約前に上限の有無を必ず確認してください。
損益分岐の出し方は単純です。初期費用の差額を、月額の差額で割る。初期55万円・月額8,000円の製品と、初期0円・月額16,000円の製品なら、差額55万円を月8,000円で割っておよそ69か月。5年(60か月)で入れ替える計画なら初期0円の製品が安く、7年(84か月)使うなら逆転します。建物の賃借期間や次の介護報酬改定のタイミングと突き合わせ、何年で判断するかを先に決めるのが順番です。
自事業所の数字で5年総額と補助後の実質負担を出す試算コードの使い方
課金方式ごとの月額と見積書に載らない費用を、同じ条件で5年分に積み上げるための試算です。Python 3が入っていれば、下のコードを tco.py として保存し、python tco.py で実行できます。冒頭の users・staff・devices を自事業所の利用者数・職員数・入力端末台数へ、plans の金額を手元の見積書の月額へ差し替えてください。
# 介護ソフトの5年総額と補助後の実質負担を課金方式ごとに試算する(税込・円)
MONTHS = 60
users, staff, devices = 60, 25, 8
TABLET = 70000 # ケース・保護フィルム込みの1台単価
plans = {
"利用者単価220円・上限8,800円": min(users * 220, 8800),
"職員単価880円": staff * 880,
"端末単価5,500円": devices * 5500,
"事業所定額16,000円": 16000,
}
# 見積書に載らない費用:端末の初回購入と更新1回、研修と並行稼働の人件費
hidden = devices * TABLET * 2 + 350000
def subsidy(eligible, staff, rate=0.75):
# 実施要綱の職員数別基準額(10人以下100万・20人以下150万・30人以下200万・31人以上250万)
for limit, cap in ((10, 1000000), (20, 1500000), (30, 2000000)):
if staff <= limit:
return min(int(eligible * rate), cap)
return min(int(eligible * rate), 2500000)
for name, monthly in plans.items():
total = monthly * MONTHS + hidden
# 補助対象は当該年度中の経費のみ:初年度12か月分の利用料と端末の初回購入
aid = subsidy(monthly * 12 + devices * TABLET, staff)
print(f"{name}: 月額{monthly:,}円 5年総額{total:,}円 補助見込{aid:,}円 実質{total - aid:,}円")
初期値のまま実行すると、次の4行が出力されます。
利用者単価220円・上限8,800円: 月額8,800円 5年総額1,998,000円 補助見込499,200円 実質1,498,800円
職員単価880円: 月額22,000円 5年総額2,790,000円 補助見込618,000円 実質2,172,000円
端末単価5,500円: 月額44,000円 5年総額4,110,000円 補助見込816,000円 実質3,294,000円
事業所定額16,000円: 月額16,000円 5年総額2,430,000円 補助見込564,000円 実質1,866,000円
読み取れることは2つあります。1つ目は、月額の差より見積書に載らない費用のほうが総額を動かしている点で、この例では端末と人件費だけで147万円が5年総額に乗っています。2つ目は、補助が効くのは初年度の経費だけという点。国の実施要綱では補助対象にリース費用も含む一方、当該年度中に係る経費のみとされているため、月額の高い製品ほど2年目以降の負担が補助で相殺されずに残ります。補助率の rate は、要件を満たさない場合は 0.5 に変えて計算し直してください。都道府県が下限より高い率を設定している場合は、その率に置き換えます。
無料プランと低額プランに付く上限条件と本番運用で外れる機能の範囲
無料プランと低額プランには上限条件が付きます。多いのは、登録できる利用者数、ログインできる職員IDの数、保存できる記録の期間、そして国保連への請求機能の有無です。記録機能だけの無料プランに請求が入っていない構成は珍しくありません。
本番運用で外れやすいのはサポートの範囲です。無料プランは問い合わせ窓口が対象外か、メールのみで回答まで数営業日という条件が付きます。国保連への伝送は毎月10日が締切で、返戻が出た当日にサポートへつながらない構成は実務で使えない。無料プランは要件確認とデモの延長として使い、本番の可否は有償プランの金額と条件で判断してください。有償プランへ移る際の料金と手順を先に確認しておけば、後から総額が跳ねる展開を避けられます。
国保連請求の伝送費とオプション課金で月額が積み上がる仕組みを見積書で確認する
月額の表示価格に含まれない課金も積み上がります。国保連請求の伝送費用は製品によって扱いが分かれ、月額に含む製品、月1,100円を別途とする製品、初期に13,200円からを求める製品が混在しています。1事業所では年間1万円台の差でも、10事業所を運営していれば10倍。請求を記録と別の製品で持つ場合の返戻対応と費用の分かれ方は、介護請求ソフトとは|国保連伝送との違いと返戻対応・連携開発の判断で分けて扱いました。
オプション課金はもっと大きく動きます。加算の算定支援、LIFEへの提出データ生成、他システムとの連携、複数事業所の横断集計といった機能がオプション扱いの製品では、標準機能で足りる製品と比べて月額が2倍近くになる例がありました。シフトと勤怠を専用システムへ分ける場合の費用も、介護ソフトの月額とは別枠です。判断の材料は介護施設の勤怠管理システムとは?夜勤・シフト・人員配置基準に強い選び方にまとめました。
なお、ケアプランデータ連携システムは公益社団法人国民健康保険中央会が運営し、ライセンス料は事業所あたり年額21,000円(税込・月換算約1,750円)。フリーパスキャンペーンは、2026年度下期に予定される介護保険資格確認等WEBサービスとの統合日まで延長されると公式サイトに記載されており、2026年9月時点では無償で試せます。この費用を介護ソフトの月額と混同しないでください。介護ソフト側の対応状況と利用開始の手順はケアプランデータ連携システムとは|利用要件と導入手順、介護ソフト連携の確認点で確認できます。
介護テクノロジー導入支援事業の補助と価格交渉で決まる介護ソフトの実質負担額
金額を下げる手段は補助金と交渉の2つ。順番を間違えると、どちらも効きません。
介護テクノロジー導入支援事業の職員数別の基準額と4分の3になる要件
介護ソフトの補助は、地域医療介護総合確保基金を財源に都道府県が実施する介護テクノロジー導入支援事業で受けます。国の施策の全体像は厚生労働省の介護テクノロジーの利用促進にまとまっており、令和8年度も兵庫県の令和8年度介護テクノロジー導入支援事業のように各都道府県で公募が続いています。補助額の基準は、四国厚生支局が掲載している介護テクノロジー導入支援事業実施要綱に載っている表のとおりです。
| 職員数 | 基準額 |
|---|---|
| 1名以上10名以下 | 100万円 |
| 11名以上20名以下 | 150万円 |
| 21名以上30名以下 | 200万円 |
| 31名以上 | 250万円 |
職員数には訪問介護員などの直接処遇職員だけでなく、ICTを使う見込みのある管理者や生活相談員も算入します。補助率は、ケアプランデータ連携システムなどによるデータ連携、LIFEへのCSV連携、文書量半減を実現する導入計画といった要件を満たす場合に4分の3を下限として都道府県が設定した率、それ以外は2分の1を下限とした率です。補助額は、対象経費に補助率を掛けた額と基準額を比べて少ないほうになります。この要綱は令和7年度時点のもので、令和8年度の数字は所在地の都道府県の要綱で確かめてください。ロボットや見守り機器と組み合わせる場合の対象経費の切り分けは介護ロボットの補助金|介護テクノロジー導入支援事業の対象経費と補助率の判断で整理しました。
補助率と上限額から実質負担を出す計算と採択前提を避けるべき理由
実質負担は次の順で出します。上の試算コードの subsidy 関数は、この3番目と4番目を機械的に行うものです。
- ソフト・端末・ネットワークを分けた総額を見積書から確定させる
- 所在地の都道府県の公募要領で、補助対象経費・上限額・補助率を確認する
- 総額から補助対象外の経費を引き、残りへ補助率を掛けて上限額と比べる
- 低いほうを補助見込み額とし、総額から差し引いた金額を実質負担として計画に載せる
注意するのは採択の前提です。公募は多くの都道府県で5月から8月にかけて順次始まり、年度内の短期間しか受け付けない例が少なくありません。兵庫県の令和8年度事業でも、申請見込額の調査は2026年7月6日が締切でした。補助は原則として事業者がいったん全額を支払い、実績報告を経て交付を受ける流れになります。採択されなかった場合に契約を続けられるかを先に確認しておかないと、資金繰りが詰まりました。ベンダーの営業資料に載る補助額は前年度のものが残っている場合があるため、金額の根拠は必ず自治体の公募要領で取ってください。
価格交渉で動く項目と動かない項目を見積書上で切り分ける判断基準
価格交渉で動くのは3項目に限られます。初期設定と導入支援の費用、操作研修の回数と単価、そして契約期間を延ばす代わりの月額割引。この3つは各社とも裁量を持っています。
動かないのは月額の基本単価と、国保連請求に関わる費用です。標準の料金体系から外すと、他社への提示価格との整合が取れなくなるためです。交渉の順番も決まっています。まず要件を確定させ、次に相見積もりを同一条件で集め、最後に本命1社と条件を詰める。要件が固まる前に値引きを求めると、機能を削った構成の安い見積もりが出てきて、稼働後に追加費用が乗りました。契約期間の縛りも同時に確認します。年契約の自動更新で、中途解約時に残期間分の支払いが発生する条件は珍しくありません。
費用を理由に介護ソフトから連携開発へ切り替える金額の分岐条件
金額を積み上げた結果、パッケージの中では解決しない構成に行き着く事業者が一定数あります。ここは印象ではなく金額で線を引きます。
オプション開発費が積み上がったときに比較を打ち切る金額の水準
候補製品の標準機能で埋まらない業務があり、その対応をオプション開発として見積もると、1機能あたり数十万円から百万円台が並びます。水準はこう置いてください。オプション開発費の合計がパッケージの5年総額の3割を超えたら、その時点で連携開発と並べて比較する。3割という数字は、開発費を単独で回収できる下限としてではなく、比較する価値が生まれる境目として置いています。
たとえば5年総額600万円の構成で、オプション開発の見積もりが200万円を超える場合。この200万円はベンダーの改定対応スケジュールに縛られ、次の令和9年度改定が近づけば改修は後回しになります。同じ200万円を連携開発へ充てれば、納期も仕様も自社の都合で決められる。金額が同水準なら、動かせるほうを選ぶ判断になります。
請求と法定帳票を残して外側だけ作る構成で費用と納期が読める理由
全面的な独自開発を勧めることはありません。国保連請求は法定様式で3年ごとに変わるため、自社開発で持つと改定のたびに改修費が発生し、維持費が見合わない領域です。
費用が読める構成はこう分けます。制度で様式が決まっている業務(請求・ケアプラン・法定帳票・LIFE提出)はパッケージ。法人固有の業務(独自帳票、複数事業所の横断集計、家族向けの情報共有、会計や勤怠との連動)は連携開発。この分割なら、改定のたびの改修費はパッケージ側の保守料に収まり、自社が持つのは制度改定の影響を受けにくい部分だけになります。介護ソフト側がAPIまたはCSVでデータを出せることが前提なので、選定段階で入出力仕様の開示可否を確認してください。業種を問わない導入形態の考え方は業務システムとは?種類・基幹システムとの違いと開発・導入形態の選び方で整理しています。当社では既存の介護ソフトを残したまま不足分だけを作る形も含めて医療機関向けシステム開発として対応しており、5年総額とオプション開発費を並べる段階からご相談いただけます。
導入後に費用対効果を検証する3つの数字と再交渉に入る時期の目安
導入後に確認する数字は3つです。請求業務にかかる月間の総時間、記録の入力から請求データ作成までの手戻り件数、そして手作業で残っている転記業務の時間。導入前に同じ3つを実測しておかないと、比較の基準そのものが作れません。
検証は稼働から6か月後と、次の介護報酬改定の半年前に置きます。6か月後は、削減できた時間を人件費へ換算して月額と突き合わせる時期。改定の半年前は、改定対応の追加費用の有無と次の契約更新の条件を確認する時期です。年契約の自動更新は、更新日の30日前から60日前が申し出の期限になっている例が多く、この時期を逃すともう1年分の支払いが確定します。数字を持って再交渉に入るなら、この2つのタイミング以外にありません。
よくある質問
介護ソフトの費用でよく挙がる質問を5つ、金額の根拠とあわせて整理しました。
介護ソフトの費用は月額いくらが相場ですか?
クラウド型で月額5,000円から30,000円程度が公表料金の範囲です。ただし課金の分母が製品ごとに違うため、この幅だけでは予算を組めません。居宅介護支援の1事業所なら5,500円から8,800円、通所介護や施設系では20,000円台後半まで上がります。利用者1人あたり220円、職員1人あたり880円、端末1台あたり5,500円といった従量課金の製品は、自事業所の実数を入れて計算し直してから比べてください。
初期費用が0円の介護ソフトは本当に安いですか?
導入時の資金負担は軽くなりますが、5年総額では逆転する場合があります。初期費用の差額を月額の差額で割ると、何か月目で逆転するかが出ます。初期55万円・月額8,000円と、初期0円・月額16,000円ならおよそ69か月。5年で入れ替える前提なら初期0円の製品が有利で、7年使うなら初期費用のある製品のほうが安く収まります。何年使うかを先に決めるのが順番です。
介護記録ソフトだけを入れる場合の費用はどれくらいですか?
記録機能に絞った製品は、職員1人あたり月880円前後、または端末1台あたり月5,500円前後という課金が中心です。職員10名なら年10万円台、タブレット5台なら年33万円という水準になります。ただし国保連への請求機能は含まれないことが多く、請求ソフトを別に契約すると合計では総合型と変わらない金額になりました。記録と請求を分けるか1本にするかは、両方の金額を合計してから決めてください。
介護ソフトの費用に補助金はいくら使えますか?
介護テクノロジー導入支援事業では、国の実施要綱で介護ソフトなどのICT導入の基準額が職員数に応じて100万円から250万円、補助率は要件を満たす場合に4分の3、それ以外は2分の1をそれぞれ下限に都道府県が設定する建て付けです。補助対象は当該年度中の経費に限られるため、2年目以降の月額には効きません。金額と受付期間は都道府県ごとに決まるため、所在地の公募要領で確認してください。いったん全額を支払う資金が必要になるので、採択される前提で契約を進める進め方は避けたほうが安全です。
介護ソフトの料金は値引き交渉できますか?
動くのは初期設定費と導入支援費、操作研修の回数と単価、契約期間を延ばす代わりの月額割引の3つです。月額の基本単価と国保連請求に関わる費用は動きにくい領域。交渉の順番は、要件を確定させてから同一条件で相見積もりを集め、最後に本命1社と詰める形にしてください。要件が固まる前に値引きを求めると、機能を削った安い見積もりが出て、稼働後に追加費用が乗ります。
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