AIサービスとは、AIのモデルを画面やAPIを通じて使える形にして提供する役務です。ChatGPTのようにブラウザで使う生成AIアプリも、AWSやGoogle Cloudが「AIサービス」と呼ぶ音声認識・翻訳・文書読み取りのAPIも、どちらもこの言葉に含まれます。この記事では用途別の一覧に加えて、同じAIでも「アプリで使うか、APIで組み込むか、法人契約にするか」で料金の単位と入力データの扱いが変わる点を、各社の公式記述で整理します。
まとめ:AIサービスの用途・提供形態・契約条件による費用とデータの扱いの違い
- AIサービスという言葉は、ChatGPTなどの完成品アプリにも、開発基盤や専用API、完成品アプリを含むクラウド各社のAI製品群にも使われる
- 用途は文章・検索・画像・動画・音声・翻訳・文書読み取り・コード生成に分かれ、用途ごとに定番の製品と課金の単位が違う
- 提供形態は「アプリをそのまま使う」「既存の業務ソフトに内蔵されたAIを使う」「APIで組み込む」「受託開発で作る」の4つ
- ChatGPTやClaudeの個人プラン、GeminiのAPI無料枠は入力が学習や改善に使われうる。学習利用の既定は製品・契約ごとに異なり、有料APIでも改善に使われる場合がある
- 代表的な課金単位は「1人あたり月額」「トークン数」「分・文字・ページ数」で、ほかにクレジットや確保した計算容量・時間に応じた料金もある
- 自社サービスにAIを組み込んで顧客に出す会社は、AI事業者ガイドライン第1.2版でいう「AI提供者」になる
AIサービスの意味と、言葉が指す2つの範囲
総務省・経済産業省のAI事業者ガイドライン(第1.2版・令和8年3月31日)は、AIサービスを「AIシステムを用いた役務」と定義しています。同じ項で、AIサービスの提供・運営は技術だけでなく、人間によるモニタリングやステークホルダーとのコミュニケーションと組み合わせて行うものだとしています。モデルや計算の仕組みそのものではなく、使う人に価値を届ける形まで含めた言葉です。AIという技術そのものの意味と種類はAIとは?人工知能の意味・種類・仕組みを法令の定義と歴史から解説で扱っています。
生成AIアプリとしてのAIサービス
検索結果の上位に並ぶ「AIサービス比較」の多くは、ChatGPT・Gemini・Claude・Microsoft Copilotのような、契約すればすぐ画面から使える生成AIアプリを指しています。利用者はモデルを意識せず、チャット画面に指示を書けば文章や画像が返ってきます。ChatGPTとAIの関係でいえば、AIは技術の総称、ChatGPTはOpenAIが提供するサービス名で、その中で動いているのがGPT系のモデルです。
クラウド各社が「AIサービス」と呼ぶ製品群(AIaaS)
もう一つの意味が、クラウド事業者が提供するAIの製品群で、中心は開発者向けの部品です。AI as a Serviceの頭文字でAIaaSとも呼ばれます。AWSのAIサービスのページは、自社のAI製品を「AIエージェントとアプリを構築するためのツールとインフラストラクチャ」(Amazon Bedrock、Amazon SageMaker AIなど)、「専用のAIサービス」(Amazon Transcribe、Amazon Translate、Amazon Textractなど)、「すぐに使えるAIエージェントとアプリ」(Amazon Quick Suite、Kiroなど)の3区分で並べています。このうち専用のAIサービスはAPIで組み込む用途が中心ですが、クラウド各社のAIサービスには画面から使うアプリも含まれます。
用途別に見るAIサービスの種類と一覧
用途ごとの代表的なサービスと、主な提供形態・課金の単位を一覧にしました。製品名は2026年10月時点で提供されているものです。
| 用途 | 代表的なサービス | 主な提供形態 | 課金の単位 |
|---|---|---|---|
| 文章作成・対話 | ChatGPT、Gemini、Claude、Microsoft Copilot | アプリ/API | 月額/トークン |
| 検索・リサーチ | Perplexity、ChatGPTのdeep research | アプリ | 月額 |
| 画像生成 | Midjourney、Adobe Firefly、Canva AI | アプリ | 月額・クレジット |
| 動画生成 | Runway、HeyGen | アプリ | 月額・クレジット |
| 音声認識・文字起こし | Amazon Transcribe、Speech-to-Text | API | 音声の秒数 |
| 翻訳 | Amazon Translate、Translator | API | 文字数 |
| 文書読み取り(OCR) | Amazon Textract、Document AI | API | ページ数 |
| コード生成 | GitHub Copilot、Cursor、Claude Code | アプリ・エディタ | 月額 |
| 業務ソフト内蔵 | Microsoft 365 Copilot、Gemini in Workspace | 既存ソフトの追加機能 | 月額 |
アプリ型の製品は入れ替わりが速く、画像や動画は商用利用の条件も製品ごとに違います。画像は商用利用できる無料の画像生成AIおすすめ7選と業務導入の判断基準、動画は動画生成AIランキング|業務利用で選ぶ主要9ツールの実額比較と生産投入の判断基準【2026年最新】、コード生成はコード生成AIとは?無料で使えるツール比較と選び方【2026年版】で個別に比べています。
AIサービスの提供形態4つと、それぞれの違い
同じ「AIを使う」でも、導入方法によって初期費用、毎月の払い方、データの置き場所が変わります。以下は導入時の選択肢を整理したもので、受託開発でAPIを組み込むなど、複数の選択肢を組み合わせる場合もあります。AIツール・AIサービス・AIプラットフォームという呼び名の違いも、実際にはこの提供形態の違いとして見ると整理できます。
| 提供形態 | 例 | 初期費用 | 課金 | 向く用途 |
|---|---|---|---|---|
| アプリをそのまま使う | ChatGPT、Claude | なし | 1人あたり月額 | 文章・調査など個人の作業 |
| 業務ソフトに内蔵 | Microsoft 365 Copilot | なし | 既存契約への追加 | メール・資料・会議の効率化 |
| APIで組み込む | OpenAI API、Amazon Bedrock | 開発費 | 使った量 | 自社システムへの機能追加 |
| 受託開発で作る | 社内データ連携のAI | 開発費 | 開発費+利用量 | 自社固有の業務・データ |
一般にAIツールと呼ばれるのは上の2行で、画面から操作するものです。APIで組み込む形は、クラウド事業者が提供するAIサービスやAIaaSの代表例です。目的別にどのツールを選ぶかはAIツールのおすすめと選び方|目的別の比較と業務導入の判断基準【2026年版】で詳しく扱っています。
三大クラウドのAIサービス群と現在の名称
ここでは、主要なクラウドAIプラットフォームとしてAWS・Microsoft Azure・Google Cloudを比較します。2025〜2026年に名称の変更が続いたため、古い記事の製品名では公式ページにたどり着けないことがあります。
| クラウド | 生成AIの基盤 | 専用のAIサービスの例 |
|---|---|---|
| AWS | Amazon Bedrock | Transcribe、Translate、Textract、Rekognition、Polly |
| Microsoft Azure | Microsoft Foundry | Foundry Tools(Speech、Translator、Document Intelligence、Vision) |
| Google Cloud | Gemini Enterprise Agent Platform | Speech-to-Text、Translation AI、Vision AI、Document AI |
Microsoftは旧Azure AI servicesをFoundry Toolsと呼び替え、同じページでAnomaly DetectorやPersonalizerなど6サービスに「retired」の表示を付け、新しいアプリケーションでは使わないよう案内しています。Google CloudはVertex AIをGemini Enterprise Agent Platformへ改称し、AIプロダクトの一覧ページではAgent PlatformのModel Gardenに200以上のモデルがあると案内しています。改称の経緯と各社の推論基盤の違いはAIエンジンとは?仕組み・種類と主要AIの一覧、提供形態別の選び方、Azure側の整理はAzure AI ServicesとAzure OpenAI Serviceの違い|守備範囲とリソース種別で選ぶ基準とMicrosoft Foundryとは?できること・料金の仕組み・始め方【2026年10月】にまとめています。
契約形態による入力データの学習利用・保持条件の違い
入力データの扱いを比較する際は、学習への利用条件を契約単位で確認します。実際には同じ会社のAIでも、個人プラン・法人プラン・APIで既定の扱いが違います。各社の公式ページの記述を並べると次のとおりです(確認日 2026-10-27)。
| 契約の形 | 入力の学習・改善への利用(既定) |
|---|---|
| ChatGPT Free・Plus・Pro | 利用されうる(設定でオフにできる) |
| ChatGPT Business・Enterprise | 使わない |
| OpenAI API | 使わない(明示的なオプトインを除く) |
| Claude Free・Pro・Max | 許可時のほか、安全性審査・フィードバック等で利用されうる |
| Claude for Work・Anthropic API | 使わない |
| Gemini API無料枠・無料扱いのGoogle AI Studio(地域・アカウントの例外あり) | 改善に使う(人が読むことがある) |
| Gemini API 有料枠 | 使わない |
| AWSの専用AIサービス(Transcribe・Translate・Textractなど) | 改善に使うことがある(オプトアウト可) |
ChatGPTの個人プランについて、OpenAIのデータコントロールのFAQは、Free・Plus・Proの個人ワークスペースではモデル改善へのデータ共有が既定で有効になっていて、「Improve the model for everyone」をオフにすれば以後の新しい会話は原則として学習に使われないと説明しています。ただしモデル改善へのデータ利用の説明によれば、個人プランで高評価・低評価などのフィードバックを送ると、設定をオフにしていても関連する会話全体が学習に使われる場合があります。法人向けには、法人向けのデータの扱いで、ChatGPT Enterprise・Business・APIのデータを既定で学習や改善に使わないと説明しています。APIについては、開発者向けドキュメントに、2023年3月1日以降のAPIへの送信データは明示的にオプトインしない限り学習に使わないとあります。一方で不正利用の監視ログは既定で最大30日保持され、プロンプトと応答を含むことがあります。
Anthropicは商用製品向けの説明(2026年8月18日更新)で、Claude for WorkやAnthropic APIの入出力を既定で学習に使わないとしています。個人向けの説明では、Free・Pro・Maxでは利用者が許可した会話に加え、安全性審査対象の会話を安全対策用モデルの学習等に使う場合があるとし、高評価・低評価ボタンでフィードバックを送った会話は最長5年保存すると書いています。
Googleでは、無料サービスと有料サービスのデータ利用条件が異なります。Gemini APIの追加利用規約(2026年4月28日更新)は、Google AI StudioとGemini APIの無料枠を「Unpaid Services」とし、入力と応答をGoogleの製品と機械学習技術の改善に使い、品質向上のため人間のレビュアーが読むことがあると定めています。同じ規約は、無料枠に機密情報や個人情報を送らないよう求めています。課金を有効にしたCloudプロジェクト経由の有料枠では、プロンプトと応答を製品改善に使いません。Google AI Studioは、課金が有効なCloudプロジェクトにアクセスできるアカウント、またはWorkspace enterprise accountで使うと有料サービス扱いです。また、EEA・スイス・英国では無料サービスにも有料サービスのデータ利用条件が適用されます。APIだから安全とは限らず、無料枠か有料枠かで扱いが分かれます。
有料のAPIでも、改善への利用が既定で止まっているとは限りません。AWSはAIサービスのオプトアウトポリシーの説明で、AIサービスが顧客のコンテンツを運用上の問題の修正や性能評価、モデルの学習を含むサービス改善のために保存・利用することがあり、その際は利用中とは別のリージョンに保存する場合があるとしています。止めるにはAWS Organizationsのオプトアウトポリシーを設定します。対象サービスの一覧にはTranscribe・Translate・Textract・Rekognition・Polly・Comprehend・Lexが載っています。
学習利用の停止後も保持される監視ログとフィードバック
学習への利用をオフにしても、すべてが消えるわけではありません。OpenAI APIの不正利用監視ログ(通常は最大30日。法令対応や危害防止のため延長される場合あり)、Claudeでフィードバックを送った会話(最長5年)、Gemini APIの有料枠でも禁止用途の検知のために一定期間記録されるログがあります。顧客の個人情報を扱う業務では、学習の有無に加えて保持期間とログの扱いまで契約書で確かめてください。個人向け4サービスの設定画面での切り方と料金は対話型AIサービス比較とおすすめ|ChatGPT・Gemini・Claude・Copilotの料金・無料版・学習設定【2026年10月】で比べています。
AIサービスの代表的な課金単位:席・トークン・処理量
ここでは代表的な課金単位を3つ紹介します。このほか、クレジット制や計算容量・時間に応じた課金もあります。どの単位で払うかによって、費用が人数に比例するのか、使った量に比例するのかが変わります。
| 課金の単位 | 例(確認日 2026-10-27) | 費用が増える要因 |
|---|---|---|
| 1人あたり月額(席) | ChatGPT Business 標準席 月払い25ドル/人 | 利用人数 |
| トークン数 | OpenAI API、Claude API、Gemini API | 入出力の文字量 |
| 処理量(秒・文字・ページ) | Amazon Textract 0.0015ドル/ページ | 音声の長さ・文字数・枚数 |
席課金の法人プランは、ChatGPT Businessが2席から契約でき、各利用者が契約内の利用枠を繰り返し使うほど、利用1回あたりの費用は下がります。逆に月に数回しか使わない人まで席を買うと、使っていない分も払い続けることになります。
処理量課金の例として、Amazon Textractの料金ページは、Detect Document Text APIで10万ページを読み取ると米国西部(オレゴン)リージョンで1ページ0.0015ドル、合計150ドルになる計算例を載せています。Amazon Transcribeは音声の秒数、Amazon Translateは空白を含む文字数で課金され、いずれも最初の12か月に無料利用枠があります。Transcribeの使い方はAmazon Transcribeとは?料金・使い方・日本語対応と対応形式を解説【2026年10月】、Bedrockでの生成AIの見積もりはAWS Bedrockの料金はいくら?課金方式4種と月額試算・費用を下げる順番で試算しています。
AI事業者ガイドラインで見る「使う側」と「提供する側」
AI事業者ガイドライン第1.2版は、事業者を「AI開発者」「AI提供者」「AI利用者」の3つに分けています。AI提供者は、AIシステムをアプリケーションや既存のシステム、業務プロセスに組み込んだサービスとして、AI利用者や業務外の利用者に提供する事業者です。AI利用者は、事業活動でAIシステムやAIサービスを利用する事業者を指します。ガイドラインの冒頭には、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(令和7年法律第53号)が2025年6月に公布され、9月に全面施行されたことも書かれています。内閣府のページによれば、公布は2025年6月4日、全面施行は9月1日です。
実務で効いてくるのは、同じ会社が複数の立場を兼ねうる点です。社内でChatGPT Businessを使うだけならAI利用者ですが、OpenAI APIやAmazon Bedrockを使ったチャットボットを自社の顧客向けに公開すれば、その会社はAI提供者になります。ガイドラインは、一般的にAI開発者がAPI仕様や入出力設計、モデルを動かすインフラを担い、AI提供者がUIやUXの設計、既存の業務システムとの統合を担うと整理しています。APIで組み込む形を選ぶときは、利用規約の確認に加えて、自社の利用者への説明や問い合わせ対応まで設計に含める必要があります。
既製のAIサービスで足りる業務と、組み込みが必要になる条件
文章の下書き、要約、翻訳、調べものでは、まず法人プランの生成AIアプリを候補にします。必要な品質・処理量・データ管理条件を満たせるなら、個別開発は不要です。次の要件を既製アプリの連携機能や法人契約で満たせない場合に、API組み込みや受託開発を検討します。
- 社内の基幹データや文書を検索して答えさせたい(アプリへの都度のアップロードでは回らない)
- 受注・問い合わせなど既存の業務フローの途中で、AIの処理を自動で走らせたい
- 顧客の個人情報を扱い、学習不使用・保持期間・保存リージョンを契約で固定したい
- 利用者が社外にいて、席課金では人数を見積もれない
避けたいのは、個人プランで学習設定を確認しないまま業務データを入力し続ける使い方と、Gemini APIで無料サービスのデータ利用条件が適用される環境に、試作段階から顧客の個人情報や機密情報を送る進め方です。また、月に数回しか使わない部署まで全員分の席を契約すると、利用の少ない席の費用が積み上がります。開発の工程と費用感はAI開発とは?工程・費用相場・内製と受託の判断基準【2026年版】で、社内データと連携するAIの開発は生成AI開発・AI受託開発で支援内容を紹介しています。
よくある質問
AIサービスとは何ですか?
AIのモデルを、画面やAPIを通じて使える形にして提供する役務です。AI事業者ガイドライン第1.2版は「AIシステムを用いた役務」と定義しています。ChatGPTのような生成AIアプリと、AWSなどが提供する音声認識・翻訳・文書読み取りのAPIの両方を含みます。
AIサービスにはどんなものがありますか?
文章作成のChatGPT・Gemini・Claude、検索のPerplexity、画像生成のMidjourney・Adobe Firefly、動画生成のRunway、コード生成のGitHub Copilotがあります。開発者向けには、Amazon Transcribe(文字起こし)、Amazon Translate(翻訳)、Amazon Textract(文書読み取り)のようなAPI型のサービスがあります。
ChatGPTとAIはどう違うのですか?
AIは人工知能という技術の総称で、ChatGPTはOpenAIが提供するAIサービスの製品名です。ChatGPTの中ではGPT系のモデルが動いています。同じOpenAIのモデルでも、ChatGPTの個人プランとAPIでは入力データの学習への扱いが違います。
AIサービスとAIツールの違いは何ですか?
明確な区別はありませんが、画面から操作する完成品をAIツール、APIで自社のシステムに組み込む部品も含めた広い範囲をAIサービスと呼ぶことが多いです。クラウド事業者の「AIサービス」には、組み込み用APIのほか、開発基盤や完成品のアプリも含まれます。
無料で使えるAIサービスはありますか?
ChatGPT・Gemini・Claude・Microsoft Copilot・Perplexityには無料プランがあり、AWSのTranscribeやTranslateにも最初の12か月の無料利用枠があります。業務で使う場合は、製品・契約・設定ごとの学習利用条件と社内規程を確認してください。Gemini APIで無料サービスのデータ利用条件が適用される場合は、機密情報や個人情報を入力しないでください。