物流・製造

海運DXとは?内航海運と船舶管理の着手順序、パッケージと受託開発の判断

流通系システムが業界にもたらす影響

海運のDXは自動運航船や港湾荷役の無人化として語られることが多く、内航海運の事業者が明日から何に手を付けるかという話には落ちてきません。この記事では内航海運と船舶管理業を前提に、配船と運航計画・機関部の保全記録・燃費と運航データ・検査と報告書類という四つの領域を着手順序として並べ、船陸間通信という制約のもとで何をどこまで記録するかを整理しました。そのうえで、既製の船舶管理パッケージで足りる範囲と、受託開発へ倒す範囲を条件付きで示します。

まとめ:海運DXは配船から書類の順に着手し開発範囲を絞り込む

着手順序は配船と運航計画からです。船側の設備投資はどれも時間と費用がかかるのに対し、配船は陸上の事務所だけで完結し、電話とFAXとExcelの往復をなくすだけで効果が出ます。船に何かを載せる話は、陸側の計画データが整理された後で構いません。

機関部の保全記録は、設備管理システムを選ぶ話から入ると必ず止まります。先に決めるのは記録項目です。運転時間・交換部品・次回の交換予定という三つを機器ごとに揃えるところまで進めば、その先の道具は後から差し替えられます。

燃費と運航データの収集では、常時接続を前提にしない設計にしてください。洋上で通信が切れることを異常として扱わず、船内でいったん溜めて接岸時や通信良好時にまとめて送る。この形にしておくと、通信手段が衛星に変わっても仕組みを作り直さずに済みます。

検査と報告書類の電子化は、制度側が動いた領域です。国土交通省のオンライン申請システムは2025年3月28日に船舶検査関係を含む72手続で電子申請を再開し、海技士の各種申請は令和8年(2026年)3月2日からマイナポータル経由で手数料納付まで一気通貫になりました。自社側の準備は、紙の原本をどこに置くかを決めるだけで足ります。

既製の船舶管理パッケージで足りるのは、保有隻数が十数隻までで船種が揃っており、自社運航が中心の場合です。運航データを会計や請求へつなぐ、荷主のシステムと直結する、船隊固有の配船制約を計算に入れる。この三つのどれかが要件に入った時点で、受託開発による連携部分の実装を検討する段階に入ります。

海運DXが指す範囲と内航海運の位置づけ|陸上物流との接点の作り方

海運という言葉が指す範囲は広く、外航と内航では課題も投資体力も違います。ここでは日本国内の港湾を結ぶ内航海運と、その船舶を預かって運航・保守・配乗を担う船舶管理業に対象を絞ります。想定読者は数隻から数十隻を保有または管理する事業者です。

国内貨物のトンキロ38.3%を担う内航海運という前提の置き方

内航海運は、国内貨物輸送のトンキロベースで38.3%を運んでいます(日本内航海運組合総連合会が国土交通省「内航船舶輸送統計年報」から引いた令和5年度の数字)。品目を絞るとさらに比重が上がり、鉄鋼・石油製品・セメントといった産業基礎物資では輸送トンキロの89.8%、輸送トン数の90.3%が内航海運です(同・令和4年度)。

もう一つの前提が事業者の規模です。内航海運は船を持つオーナーと、船を借りて輸送を請け負うオペレーターに分かれており、オーナー側は一隻から数隻規模の事業者が中心。情報システム部門を置く例は少なく、総務や運航管理者の兼務で回っています。この体制を超えた計画は着手した瞬間に止まります。

デジタル化との違い|船側の記録と陸側の計画がつながった状態を指す

紙の帳票をPDFにする、Excelをクラウドの表計算に載せ替える。これらは業務のデジタル化であって、それ自体では船の動かし方は変わりません。DXとは?定義とデジタル化との違い・進め方を受託開発の実務目線で解説で扱っているとおり、DXは業務プロセスそのものが組み替わったところまでを指します。

海運に引き寄せると、境界線は「船側で発生した記録が、陸側の計画や判断に自動で戻ってくるかどうか」です。機関日誌を電子化しても、次の入渠時期を決める人が紙をめくり直しているなら、置き換わったのは記入用紙だけ。運転時間の累計が保全計画へ自動で反映され、配船を組む段階で入渠予定が候補から外れて初めて、計画の立て方が変わったことになります。

2024年問題後のモーダルシフトで荷主から求められる輸送データ

トラックドライバーの時間外労働上限規制が始まって以降、長距離輸送の一部を海上へ振り替える動きが続いています。政府の「物流革新に向けた政策パッケージ」(2023年)は、鉄道と内航海運の輸送量を今後10年程度で倍増する方針を掲げました。フェリーやRORO船への振り替えが進めば、陸上側の運行管理システムと海上側の運航情報を突き合わせる場面が増えます。

陸上物流側でどのような制度と実務が動いているかは、物流DXとは?2024年問題と改正物流効率化法を踏まえた課題と進め方を解説にまとめてあります。荷主から求められる情報の中身は、そちらを読んでおくと想像がつきやすくなるはずです。

内航海運のDXが進みにくい三つの構造制約|分業・通信・入力工数

海運のDXが他業種と同じ手順で進まない理由は構造にあります。以下の三つは、どの内航事業者でも突き当たるものです。順序を決める前に、自社がどれに強く縛られているかを見てください。

オーナーとオペレーターの分業でデータの持ち主が二つに分かれる

内航海運では、船を保有して船員を配乗するオーナーと、その船を用船して輸送を引き受けるオペレーターが分かれている取引が一般的です。この構造だと、運航に関するデータの持ち主が二つに割れます。荷物と航海の指示はオペレーター側にあり、船体と機関、乗組員の記録はオーナーまたは船舶管理会社側にあるという状態です。

ここで起きるのが、燃費の話が噛み合わない現象です。減速航行で燃料を減らしたい動機はオーナー側に強く働きますが、到着時刻を決めているのはオペレーター側。データを片側だけで集めても、意思決定に届きません。着手時には「自社が持っているのはどちらの側のデータか」をまず確認し、相手側から受け取る必要がある項目を洗い出します。

2022年4月1日に施行された改正内航海運業法は、この分業のうち船舶管理業を登録制度の対象として定義し直しました(第2条第2項第3号)。他人の所有する船舶に船員を乗り組ませ、点検・整備と航海を行う業務が船舶管理業にあたります。自社の業務がこの定義に入るなら、管理受託先ごとにデータの持ち方と引き渡し方を契約段階で決めておくのが筋になります。

船陸間通信の制約|常時接続を前提にできない同期設計の組み立て方

陸上のシステムは通信が常時つながっている前提で設計されています。船はそうではありません。沿岸では携帯通信網が届く一方、航路によっては圏外の時間帯が生じ、衛星通信を併用すると費用が跳ね上がります。

この数年で状況は変わりつつあります。NTTドコモビジネスは2025年7月15日、船舶のLTEと衛星通信を一元管理し通信環境に応じて経路を自動で切り替える通信管理ソフト「ShipLINK」の提供を始めました。低軌道衛星による通信も旅客船を中心に広がっています。とはいえ貨物船の一隻あたり予算で常時接続を前提にできるかは別問題です。

設計側の対処は単純で、船内にいったんデータを溜め、通信可能なタイミングでまとめて送る方式を選びます。画面操作のたびにサーバーへ問い合わせる作りにしないこと、送信に失敗した記録が消えずに再送されること、この二点だけ仕様として明示しておけば、通信手段が入れ替わっても作り直しは発生しません。

乗組員が当直の合間に入力できる項目数から逆算する記録の設計手順

船内の入力者は乗組員です。当直、荷役、保守作業の合間に入力する前提で項目数を決めなければなりません。ここを陸上の感覚で設計すると、初月は入力され、三か月目に空欄が並び、半年で誰も使わなくなります。

現実的な線引きとして、一回の記録で求める入力は五項目前後に抑え、手入力は二項目までとします。残りは機器からの自動取得か、前回値の引き継ぎ、選択肢からの選択で埋める。入力そのものが当直の作業手順へ収まる形にしてください。

着手順序|配船と運航計画から始めて保全・燃費・書類へ広げる理由

四つの領域を同時に進めると、船側の投資と陸側の業務変更が同時に走って共倒れになります。以下は費用が小さく効果が早い順、かつ後段の前提になる順に並べたものです。

第一段階:配船と運航計画の脱Excel化で効く電話とFAXの削減

最初に手を付けるのは配船です。理由は三つあります。陸上の事務所だけで完結するため船への設備投資が要らないこと、担当者の頭の中にある船繰りの制約を可視化できること、そして後段の保全記録や運航データが「どの航海の記録か」を紐づける先になることです。

現状の配船業務は、Excelの表に電話で入った貨物情報を手で書き込み、確定した予定をFAXやメールで流す形が多く見られます。ここで失われているのは変更の履歴と、変更が起きた理由です。荷役の遅れで玉突きになった予定変更が残らないため、翌年も同じ読み違いを繰り返します。

最初の実装で押さえるのは、船・航海・貨物・港・予定日時という五つの単位と変更履歴です。これだけの小さな仕組みでも、予定変更の連絡を一覧から自動生成でき、電話とFAXの往復が目に見えて減ります。基幹システムを入れ替える話ではないため、数か月で形になります。

第二段階:機関部の保全記録で残すべき項目と点検表の電子化の順序

次が機関部の保全記録です。設備管理の道具選びから議論を始めると動けません。先に決めるべきは記録項目のほうです。機関・甲板設備の管理単位の切り方や船級検査との紐づけまで踏み込むなら、船舶の設備管理で保全計画と検査記録を一元化する手順を参照してください。

機器ごとに揃える最小構成は、主機と補機の運転時間の累計、交換した部品と交換日、次回の交換予定時期の三つです。この三つが揃うと、入渠と定期検査の計画を運転時間から逆算できるようになり、配船の段階で入渠予定を織り込めます。逆にこの三つが揃っていない状態で道具だけ入れても、入力先が増えるだけに終わります。

紙の点検表をどう電子化するかは、船に限らない一般論が使えます。チェックリストの持ち方や端末の選び方は点検管理システムとは?紙・Excel点検の課題とタブレット点検・チェックリスト電子化の選び方で整理しているため、そちらを参照してください。船舶の設備管理そのものの製品選定は本記事の範囲外とし、記録項目を決めるところまでを海運DXの工程として扱います。

第三段階:燃費と運航データの収集を通信制約下で成立させる方法

燃料油の消費量、主機の回転数と負荷、速力、位置。これらを継続して取ると、同じ航路でも本船ごと・船長ごとに燃費が違うことが数字で見えてきます。ただし配船データが整っていないと、取得した数値をどの航海の実績として評価するかが決まらず、順序を飛ばせません。

取得方法は二通りです。機関の計測機器から自動で拾う方式は精度が高い代わりに船側の改装費用がかかり、機関日誌の記入値を日次で送る方式は精度が粗い代わりに追加投資がほぼ要りません。最初は後者で始めて、燃費差が数字で出た本船から自動取得へ切り替える進め方が、費用の面では収まりがよくなります。

第四段階:検査と報告書類の電子申請がどこまで進んだかの現在地

書類を最後に置いたのは、自社の裁量が最も小さい領域だからです。ただし2025年以降、この前提は変わりました。

国土交通省のオンライン申請システムは、システム更改に伴う停止を経て2025年3月28日に72手続で電子申請を再開しています。船舶検査関係の手続もこの再開対象に含まれました。さらに海技士・小型船舶操縦士の各種申請については、令和8年(2026年)3月2日からマイナポータルを利用したオンライン申請が可能となり、新規・進級・限定解除・登録事項訂正・更新・再交付の各申請で、必要書類の提出から手数料と登録免許税の納付までがオンラインで完結し、地方運輸局等への来局が不要になりました。手数料はクレジットカードとペイジーによるキャッシュレス決済です。

ただし注意点があります。オンライン申請では海技免状・小型船舶操縦免許証の即日交付ができず、交付まで数週間を要する場合があると案内されています。乗り組み予定が迫る更新は従来どおり窓口で申請する運用を、社内の手順書へ明記してください。自社側の準備は、書類の電子的な保管場所と原本を残す書類の切り分けだけです。

船員の労務管理|労務管理記録簿と運航計画をつなぐデータの設計

船員の労務管理は、着手順序とは別の軸で外せない領域です。制度上の義務が定まっており、記録の元になるデータが配船・運航計画と同じところにあるためです。

2022年4月に義務化された労務管理記録簿と労務管理責任者の要件

2022年4月施行の改正船員法により、船舶所有者には労働時間等の管理を行う記録簿の作成と備置、その管理を行う労務管理責任者の選任、そして責任者の意見を勘案した措置を講じることが義務付けられました。船員の働き方改革と呼ばれる一連の改正の中核にあたる部分です。

この義務は「労働時間の状況を把握して記録する」ところに実務負荷が集中します。船内で当直表と作業実績から時間を拾い、陸側で集計して記録簿へ整える。この往復を紙とExcelで回していると、月次の締めが数日単位の作業になります。なお、本船ごとに当直表の書式が違う状態のまま集計だけを自動化しようとすると、変換ルールが本船数だけ増えるため、様式の一本化を先に置いてください。

改正内航海運業法が運航計画へ労働時間の配慮を求めている意味合い

2022年4月施行の改正内航海運業法では、オペレーターに対して船員の労働時間に配慮した運航計画の作成が求められ、荷主に対してもオペレーターの法令遵守への配慮義務が創設されました。労務管理の話が、オーナー側の内部管理だけでは閉じないという構造がここにあります。

これをデータ設計に翻訳すると、配船計画の段階で乗組員の乗船期間と休息時間の見込みが参照できる形になっている必要がある、ということになります。配船を組んでから労務の帳尻を合わせるのではなく、配船を組む画面で無理のある航海が警告される。ここまで到達して初めて、制度の求める配慮が仕組みとして担保されます。

紙の航海日誌や作業日報から記録を起こすときにつまずく三つの点

既存の紙帳票をそのまま電子の入力画面に置き換えると、三つの場所でつまずきます。一つ目は時刻の基準で、船内時刻と標準時が混在したまま記録されているケースです。航路によっては時差調整が入るため、記録側でどちらを保持するかを決めておかないと、労働時間の集計が合いません。

二つ目は当直と作業の重なりです。当直中に甲板作業へ入った時間の数え方は現場ごとに慣行が分かれるため、様式を統一する段階で定義を決めます。あいまいなまま自動化すると本船ごとに違う数字が出て、手作業での確認が復活します。

三つ目は交代のタイミングで、乗下船日をまたぐ記録の帰属です。同じ日に前任者と後任者の記録が両方立つ日をどう扱うかを、様式の統一と同時に決めてください。陸上の運送会社における点呼記録と日報の電子化でも似た論点が出てきます。突き合わせの参考として運送業のDXとは?2024年問題後の課題とデジタル化の進め方・システム導入の判断を解説もあわせてご覧ください。

船舶管理パッケージで足りる範囲と受託開発へ倒す範囲の分け方の基準

ここまでの工程を既製品で賄うのか開発するのか。判断軸は費用ではなく、要件が既製品の設計思想の内側に収まるかどうかです。

既製パッケージで足りる条件|保有隻数と船種の均質性で判断する

船舶管理向けのパッケージ製品は、保全記録・在庫・乗組員名簿・書類管理といった機能を一通り備えています。足りるのは次の三条件がすべて当てはまる場合です。保有または管理する隻数が十数隻まで、船種と機関の型式がある程度揃っている、自社運航が中心で外部との複雑なデータ交換が発生しない。

この範囲なら標準機能に業務を合わせるほうが早く、保守も製品側に任せられます。船種が揃っていれば保全項目の雛形をそのまま使え、隻数が少なければ運用の例外を人の判断で吸収できるためです。可否を分けるのは費用よりも、標準へ業務を合わせる決定を経営層が下せるかどうか。なお、配船の可視化すらできていない段階で製品選定に入ると入力先が増えるだけになるため、第一段階を終えてから選んでください。

受託開発へ倒す条件|基幹システム連携と独自の配船制約がある場合

受託開発を検討する段階に入るのは、次のいずれかが要件に入ったときです。第一に運航実績を会計・請求・原価計算といった基幹システムへ自動で流し込む場合。第二に荷主やオペレーターのシステムと直接データを交換する場合。第三に岸壁の制限や荷役設備の相性、船員の資格要件といった自社固有の制約を配船の計算へ組み込みたい場合です。

これらはいずれもパッケージの設計思想の外側に出ます。とくに三つ目は制約条件が事業者ごとに固有で、汎用製品の設定項目では表現しきれません。記録と管理はパッケージに任せ、連携部分と自社固有の計算だけを個別に開発して橋渡しする形が現実的です。全部を作り込む必要はありません。

どこまでを既製品に任せ、どこから開発するかの線引きは、現場の業務を棚卸ししないと決まりません。自社の工程を整理する段階から相談したい場合は、DXコンサルティングで業務の棚卸しと実装方式の設計を承っています。

着手を見送るべき条件|紙のまま続けても実害が出ない業務の見極め

すべてを電子化する必要はありません。見送ってよい業務の見分け方は明快で、その記録を後から検索する頻度がゼロに近く、かつ集計に使われていないものです。年に一度しか見返さない帳票を電子化しても、入力の手間だけが残ります。

着手そのものを見送るべき条件も三つあります。運航管理者や機関長が全員兼務で、月に数時間の検討時間も確保できない場合。手掛ける目的を「補助金が出るから」以外の言葉で説明できない場合。そして、配船を握っている担当者が定年間近で、その人の頭の中を引き出す作業に誰も同席できない場合です。

よくある質問

内航海運と船舶管理の現場から寄せられることの多い質問をまとめました。

海運DXと物流DXは何が違いますか?

対象になる業務と制約が違います。物流DXは倉庫内作業・輸配送・受発注が中心で、通信は常時つながっている前提で設計できます。海運DXでは移動する現場である船が加わり、通信が途切れる前提での同期設計と、船員法に基づく労務管理という固有の要件が入りました。荷主から求められる輸送情報の中身は陸上と共通するため、制度と実務の詳細は物流DXの記事に譲っています。

保有隻数が5隻程度の内航オーナーでも着手する意味はありますか?

あります。ただし範囲を絞ってください。5隻規模で効果が出るのは、機関部の保全記録(運転時間・交換部品・次回予定の三項目)と労務管理記録簿の集計です。隻数が少なくても記録は積み上がり、入渠計画と月次の締め作業に直接効きます。逆に配船の仕組み化は組み合わせが少ないぶん効果が出にくく、担当者の頭の中で足りてしまいがち。この二領域だけを小さく始める判断が合理的になります。

船舶管理会社に委託していますが、自社でシステムを持つ必要はありますか?

管理を委託していても、船主として保全履歴と検査記録を自社で参照できる状態は確保しておくべきです。委託先を変更する場面で記録が引き継げないと、船の資産価値を説明できなくなるためです。自社でシステムを構築する必要はなく、受け取る記録の形式と受け渡し頻度を管理委託契約へ書き込むところから始めてください。2022年4月施行の改正内航海運業法で船舶管理業が登録制度の対象になり、取り決めの土台は整いました。

洋上で通信が切れる前提だと、クラウドのシステムは使えないのでしょうか?

使えます。条件は船内側に記録を保持する仕組みを置き、通信可能なときに同期する構成にすることです。船内の端末で入力した内容がその場で保存され、圏内に入った時点で自動的に送られる。この作りなら陸側はクラウドで問題ありません。避けるべきは、画面を開くたびにサーバーへ問い合わせる設計と、送信に失敗した記録が消える設計の二つ。製品選定の段階で、オフライン時の挙動を実機で確認してください。

無人運航船や自動離着桟には、いま取り組むべきですか?

個別の事業者が単独で取り組む段階ではありません。造船所・機器メーカー・船社が組む実証段階の技術であり、既存船への後付けは現実的な選択肢になっていません。内航事業者として今できるのは、将来こうした技術に接続できるよう、運航データと保全記録を機械が読める形で残しておくことです。紙の束のままだと、技術が降りてきた時点で移行に数年かかります。準備の中身は本記事の着手順序そのものになります。

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