セクショナリズムは、組織の中の部署が自分たちの権限や利害を守ることを優先し、ほかの部署と協力しなくなる傾向を指す言葉です。日本語では「縄張り意識」「セクト主義」とも言い換えられ、官公庁の「縦割り」と同じ文脈で語られます。この記事では辞書の定義、縦割りとの違い、職場での2つの現れ方、起こる理由と解消策を、辞書・法令・研究の原典に沿って整理します。
まとめ:セクショナリズムの要点
- セクショナリズム(sectionalism)は、部門が権限や利害に固執して排他的になる傾向や状態のことです。デジタル大辞泉は同義語として「セクト主義。派閥主義。縄張り意識。」を挙げています。
- 「縦割り」は組織の構造、「縄張り意識」は人の心理を指します。縦割りの構造に縄張り意識が重なり、部署の境界で仕事が止まった状態をセクショナリズムと整理できます。
- 職場では、他部署に協力しない型と、他部署と張り合う型の2通りで現れます。前者は対立が見えにくく、たらい回しや情報の抱え込みとして積み上がります。
- 部署ごとに考え方が違うこと自体は、分業の結果として生じます。ローレンスとローシュの1967年の研究では、業績が高かった2つの組織は部門の違い(分化)とそれをまとめる働き(統合)をどちらも高い水準で備えていました。
- 対策を交流イベントだけに頼るべきではありません。少年キャンプで行われたロバーズ・ケーブ実験では、食事や映画を共にする接触では摩擦が減らず、両グループが協力しないと達成できない「上位目標」を重ねたときに緊張が下がりました。
セクショナリズムの意味と辞書の定義
辞書4種に共通する「権限への固執」と「排他性」
語源は英語の sectionalism で、sectional(部門の・地域の)に主義を表す -ism が付いた形です。ニッポニカによると、アメリカでは利害で結ばれた複数の州をセクションと呼び、それらが連邦の統一的な政策に対して特殊な主張をすることを指す歴史的な用法もあります。国内の主な辞書は次のように説明しています(いずれもコトバンクに収録)。
| 辞書 | 定義の要点 |
|---|---|
| デジタル大辞泉 | 部門が党派的利害や権限に固執し、排他的になる傾向や状態 |
| 精選版 日本国語大辞典 | 一つの部門や立場にとらわれ、排他的になる傾向。なわばり根性 |
| 日本大百科全書(ニッポニカ) | 各セクションが権限や利害に固執して張り合い、協調・連携しない傾向 |
| ブリタニカ国際大百科事典 | 部分の権限を固守して全体的な視野をもとうとしない割拠主義 |
4つに共通するのは「自分の部門の権限や利害にこだわる」ことと「外に対して閉じる」ことの2点です。部署ごとに専門が分かれている、部署内の仲が良いというだけではセクショナリズムとは呼びません。ブリタニカは「俗にいう縄張り争い」と言い換え、明治政府の藩閥や第二次世界大戦中の陸軍と海軍の対立を例に挙げています。日本国語大辞典が示す初出の実例は大岡昇平『俘虜記』(1948年)の「彼のセクショナリズムは、彼の中隊で大隊書記がやり込められたことによって喜ばされたのである」という一文です。
「縄張り」の本来の意味と、組織で使うときの意味
「縄張り」はもともと組織の用語ではありません。改訂新版 世界大百科事典によると、本来は土地などに縄を張って境界を定め、自他を区別することを指し、戦国時代以降は築城の際の区画や建物の配置計画を指すようになりました。動物学では、個体や集団が同種の侵入者から防衛して占有する地域(テリトリー)を指し(日本大百科全書)、博徒の世界では寺銭や所場代を得る勢力圏を意味します(ブリタニカ国際大百科事典)。
組織について「縄張り意識」と言うときは、この「境界を引いて他者の立ち入りを拒む」性質を部署に当てはめています。担当範囲をはっきりさせること自体は責任の所在を明確にする正常な働きです。問題になるのは、境界の内側を守ることが目的になり、全体の仕事が境界で止まるときです。
縄張り意識・縦割り・セクト主義・サイロ化との違い
周辺の似た言葉は、どこに焦点があるかで分けると次のようになります。
| 用語 | 焦点 | よく使われる場面 |
|---|---|---|
| セクショナリズム | 部門が排他的になる傾向・状態 | 組織論、人事・経営 |
| 縄張り意識 | 担当領域を守ろうとする心理 | 職場の人間関係 |
| 縦割り | 上下関係を中心にした組織の運営 | 行政(縦割り行政)、企業組織 |
| セクト主義 | 党派・派閥単位の排他性 | 政治運動、社内の派閥 |
| サイロ化 | 情報やシステムが部門ごとに孤立した状態 | IT、データ管理 |
「セクト主義」はデジタル大辞泉ではセクショナリズムの参照語として扱われていますが、日本国語大辞典は第1義をセクショナリズムと同じとしたうえで、第2義を「セクトの利害にとらわれ、独善的な行動をとろうとする態度。」と定義し、その用例に小林多喜二『党生活者』(1933年)を挙げています。政党や運動体の派閥争いを指して使われてきた言葉で、ビジネスの場では部署よりも社内の派閥や出身母体ごとの排他性を指すときに向いています。「セクト意識」も同じ意味の言葉です。
縦割り組織のメリットと、横割り・マトリクス組織との違い
デジタル大辞泉は「縦割り」を「組織が上下関係を中心に運営されること」と定義し、反対語に「横割り」を挙げています。指揮命令系統を部門ごとに分けること自体は普通の組織設計で、命令の出どころが一本になり、部門の中で専門性を深めやすいという利点があります。弊害が出るのは、部門をまたぐ仕事を受け持つ人や場が無いときです。縦割りの組織に縄張り意識が重なり、部門間の連携が止まった状態をセクショナリズムと呼ぶ、と整理すると使い分けやすくなります。
辞書の「横割り」は「いくつかの同格の部署を並列して関連づけ組織すること」です。ブリタニカ国際大百科事典はマトリックス組織を「命令一元化の原則に反し,複数の上司による管理を導入した組織形態」と説明しています。縦割りと対になる形を並べると次のとおりです。
| 組織の形 | 部門をまたぐ調整の仕組み | 起こりやすい問題 |
|---|---|---|
| 縦割り(職能別組織など) | 上位の管理者が調整する | 境界で仕事が止まる |
| 横割り | 同格の部署を並列して関連づける | 部署の数だけ調整先が増える |
| マトリクス組織 | 職能と事業の2系統で指揮する | 上司が2人になり判断が割れる |
| 横断チーム(CFT・タスクフォース) | 課題ごとに各部門から人を集める | 掛け持ちで負担が偏る |
| フラット組織 | 階層を減らして直接やり取りする | 決定の責任者が曖昧になる |
どの形でも部門の境界は無くならず、境界の位置が変わるだけです。階層を減らす方向の実例はフラット組織の事例(Valve・Gore・GMOの運用と、Google・Mediumの撤回)、役割単位で権限を分ける方式はホラクラシー組織の解説にまとめています。
セクショナリズムの言い換えと対義語:全体最適・部門間連携
辞書に載っている言い換えは「セクト主義」「派閥主義」「縄張り意識」「なわばり根性」「割拠主義」です。ビジネス文書では「部分最適」「部門エゴ」「サイロ化」も同じ問題を指して使われます。縄張り意識だけを言い換えるなら「テリトリー意識」、縦割りの弊害を言うなら「タコツボ化」も使われます。
対義語は、コトバンクに収録された4辞書のセクショナリズムの項目には示されていません。「縦割り」に「横割り」という反対語が載っているのとは対照的です。そのため使う場面に応じて選びます。判断の基準を対比させるなら、組織全体の成果を基準に判断する「全体最適」。部門同士の関係を対比させるなら「部門間連携」「協働」が自然です。組織の仕組みとして対置するなら、前の表の横断チームが該当し、Wikipediaの「セクショナリズム」も対義的な用語にプロジェクトチームを挙げています。
セクショナリズムの種類:協力しない型と張り合う型
セクショナリズムは、分かりやすい対立よりも手続きや判断の遅れとして現れがちです。辞書は型を分けていませんが、ブリタニカの「全体的な視野をもとうとしない」は協力しない型に、ニッポニカの「張り合い」は張り合う型に近い記述です。人事系の解説では前者を「無関心型(非協力型)」、後者を「排他型(批判型)」と呼ぶ分け方も見られます。
協力しない型:たらい回し・情報の抱え込み・重複発注
- 問い合わせのたらい回し:「それは別部署の担当です」と回すだけで、誰も最後まで引き取らない。
- 情報の抱え込み:営業が受けたクレームや要望が開発に渡らず、同じ不具合の報告が何度も上がる。
- 重複した発注:部署ごとに似たツールや調査を別々に契約し、全社で見ると二重払いになっている。
誰も声を荒らげないため、問題として上がってきにくい型です。顧客対応の待ち時間や、同じ内容の契約の件数を部署を横断して数えると見えてきます。
張り合う型:責任の押し付け合い・管轄外の差し戻し・他部署批判
ブリタニカ国際大百科事典の「縄張り」の項は、近代官僚組織のセクショナリズムについて、職務や権限が部門に明白に分配されていても、境界的な出来事には「縄張り争い,あるいはその反面としての押しつけ合いが認められる」と書いています。取り合いと押し付け合いは、同じ境界から生じる表と裏です。
- 失敗の押し付け合い:トラブルの振り返りが原因分析ではなく、どの部署の責任かの議論で終わる。
- 担当範囲を理由にした差し戻し:部署をまたぐ提案が、中身ではなく「うちの管轄外」という理由で止まる。
- 他部署の仕事への批判:自部署の不調を他部署の遅れや質の低さのせいにし、社内でも「あちら」「うちら」と呼び分ける。
縄張り意識が強い人を個人の性格の問題として片づけると、仕組みの側の原因が残ります。その人が自部署の数字だけで評価されていないか、他部署を手伝った時間が評価に反映されない仕組みになっていないかを先に確かめてください。
セクショナリズムが起こる原因
分業による細分化と「内集団」の形成
日本大百科全書(ニッポニカ)は、発生の仕組みを次のように説明しています。業務が多種大量になって分業が進むと、職務や権限が細分化されて各セクションに配分され、全体の等質性が乏しくなる。そのため共通の目的や全体利益の意識が薄れ、各セクションは自らの存在の確保と強化を優先し、構成員は身内として団結して内集団を形成する。そしてセクション外の者を外集団とみなし、対抗して自己の権益を守ろうとする、という流れです。社会心理学では、H.タジフェルらが1971年に発表した実験で、重要性の低い分類で分けただけの集団でも、被験者が実際の報酬配分で内集団を優遇したことが報告されています(European Journal of Social Psychology 第1巻第2号)。
ニッポニカはセクショナリズムを分業の副作用として「多かれ少なかれ生じる」ものと位置づけ、官僚制的な組織機構はとりわけ生み出しやすいとしています。社員数が増えて部署が分かれ、経営者が全員の仕事を見渡せなくなる段階は、「30人の壁」「50人の壁」「100人の壁」と呼ばれる組織拡大の節目とも重なる時期です。組織の仕組みが本来の目的をかえって妨げる働きは社会学で「逆機能」と呼ばれ、ブリタニカ国際大百科事典はこの概念をR.マートンが提起したものと説明しています。
部門ごとの考え方の違い:ローレンスとローシュの「分化と統合」
部署同士で話がかみ合わない理由を、個人の性格ではなく部門の役割から説明したのが、P.R.ローレンスとJ.W.ローシュの研究です。Administrative Science Quarterly 第12巻第1号(1967年6月)に載った論文は、同じ業界で事業を営む6つの組織を比較し、販売・研究開発・製造の各部門がそれぞれ市場・科学・技術と経済という異なる環境に向き合う中で身につける違いを「分化(differentiation)」と呼びました。分化は、目標への志向、時間の長さへの志向、対人関係への志向、組織構造の公式性の4つの次元で測られています。部門の努力を一つにそろえる働きは「統合(integration)」と定義されました。
比較の結果、業績が高かった2つの組織は、分化と統合をどちらも高い水準で同時に達成していました。6組織の比較では、部門の考え方の違いが大きいことと業績の低さは結びついていなかったわけです。この結果を手がかりにするなら、対策の向きは部門の考え方をそろえることではありません。違いは残したまま、調整役や横断の会議体といった統合の仕組みを足します。
評価・予算・異動の制度と部門間協力の阻害要因
制度面の確認対象は、評価・予算・異動です。まず評価。部署の売上や予算達成率だけで評価される組織では、他部署への協力は評価されない時間の持ち出しになり、断るほうが本人には合理的になってしまいます。評価項目の組み立て方は人事評価制度の3本柱と評価手法の解説が参考になります。
次に予算の区切り方です。費用を出す部署と効果を受ける部署が違う全社施策ほど、どの部署も自分の予算から出したがらず、止まったままになりがちです。異動が少ないことも境界を固くすると考えられます。同じ部署に長くいる社員は他部署の業務や制約を知る機会が少なく、依頼の背景を想像できないまま「無理な要求」と受け取りやすくなります。
行政の縦割り:法律に「弊害」と明記された例
縦割りの弊害は法律の条文にも書かれています。国が選んだ手段は、企業の対策を考えるときの参考になります。
国家公務員制度改革基本法と内閣人事局
2008年6月13日に公布された国家公務員制度改革基本法は、第5条第2項で「政府は、縦割り行政の弊害を排除するため、内閣の人事管理機能を強化し、並びに多様な人材の登用及び弾力的な人事管理を行えるよう、次に掲げる措置を講ずるものとする」と定めています。措置には、幹部職員を対象とした新たな制度や、内閣官房長官による幹部候補の適格性審査が含まれます。これを受けて、2014年5月30日に内閣人事局が設置されました。省庁ごとに閉じていた幹部人事を内閣の側からも審査する形にし、人事の視点を組織の外に置いたわけです。
原子力規制委員会設置法:推進と規制の分離
2012年6月27日に公布された原子力規制委員会設置法は、第1条(目的)に、東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故を契機に明らかとなった政策に係る「縦割り行政の弊害を除去し、並びに一の行政組織が原子力利用の推進及び規制の両方の機能を担うことにより生ずる問題を解消するため」と書いています。そのうえで、安全の確保に関する事務を一元的につかさどる組織を置きました。
同じ条文は、縦割りの弊害と並べて、推進と規制という利害の反する機能を一つの組織に同居させる問題も挙げています。縦割りの解消は「全部を一つにまとめる」ことと同じではありません。
縦割り110番の受付件数と一時停止:外部窓口の設計
内閣府規制改革推進室と内閣官房行政改革・効率化推進事務局は、個人・企業・団体から提案を受け付ける「規制改革・行政改革ホットライン(縦割り110番)」を設置しています。受け付けた提案は内容の確認と精査を経て所管省庁に検討を要請し、所管省庁からの回答を公表する運用です。2020年9月17日には河野太郎行政改革担当大臣が自身のホームページに「行政改革目安箱(縦割り110番)」を立ち上げ、既存のホットラインと並べて意見を受け付けました。ホットラインの受付件数は同年11月19日18時時点で7,191件に達し、それまでの年間700件ほどの約10倍になったため、大臣は翌週いっぱいで受付を一時停止すると表明しています(2020年11月20日の大臣記者会見)。境界で止まっている案件を部署の外の人が直接持ち込め、回答が公開されるので放置しにくい。社内の部門間調整にも使える設計ですが、受け皿の処理能力を超えると窓口そのものが止まります。
セクショナリズムの弊害と、部門の結束との線引き
部門間の協調の不足は、日本企業の調査でも数字に出ています。情報処理推進機構(IPA)の『DX動向2025』(調査期間2025年2月上旬〜3月下旬)は、経営者・IT部門・業務部門の協調が「十分にできている」「まあまあできている」と答えた企業の割合を、日本が約4割、米国が8割弱、ドイツが6割5分程度と報告しています。翌年の『DX動向2026』(調査期間2026年4月中旬〜6月中旬)では、日本の同じ項目は2025年度で48.9%、DXの成果が出ている企業では72.9%、出ていない企業では37.1%でした。ただし同じ時点の回答を並べたもので、協調が成果を生んだという因果までは示していません。
問い合わせが部署の境界で止まれば、顧客からは会社全体の対応が遅く見えます。部署ごとの重複発注は、それぞれの予算の中では目立たないまま全社のコストを押し上げる要因です。部署をまたぐ改善提案が担当範囲を理由に通らない状態が続けば、提案者の意欲は下がります。
一方で、部署内の結束や専門性へのこだわりそのものは問題ではありません。辞書の定義が問題にしているのは「排他的になる」ことです。線引きの目安は、自部署の判断が他部署や顧客に不利益を与えると分かっていても、それを優先するかどうか。結束の強いチームを無理に解体すると、専門性と責任感まで失います。
セクショナリズムを解消する対策
ロバーズ・ケーブ実験における接触と共同目標の効果
懇親会や社内イベントで交流を増やす方法は、まず挙がりやすい対策です。ただ、集団間の対立を扱った古典的な実験では、接触だけでは摩擦が減りませんでした。社会心理学者ムザファー・シェリフらは、1954年夏に米国オクラホマ州のキャンプに集めた少年たちを2つのグループに分け、グループ間の競争で対立を生じさせたうえで、それを減らす方法を検証しました(報告書Intergroup Conflict and Cooperation: The Robbers Cave Experiment、1954年/1961年)。最初に試したのは、一緒に映画を見る、同じ食堂で自由に席を選んで食事をする、爆竹を一緒に鳴らすといった15分から1時間ほどの接触の場面です。食堂でも映画でも席はグループごとに分かれ、からかいや罵声が続きました。報告書は「上位目標を含まない接触は、集団間の摩擦を減らすうえで効果からほど遠かった」と記しています。
摩擦が下がったのは、両グループが協力しなければ達成できない目標(superordinate goals、上位目標)を続けて与えた段階です。キャンプの給水が止まった原因を探す、映画を借りる費用を出し合う、食料を運ぶトラックが動かなくなったのを全員で引くといった場面が用意されました。報告書は「一連の上位目標によって必要となった集団間の協力は、既存の緊張を減らす方向に累積的な効果をもつ」と結論づけています。
部門横断目標の評価・予算への反映
職場に置き換えると、上位目標とは「どの部署も単独では達成できず、達成すれば全部署が得をする目標」です。全社ビジョンを掲げるだけでは上位目標になりません。実験で効いたのは、協力しないと実際に困る状況でした。ただし被験者は平均11歳1か月の少年22人で、給水の停止やトラックの故障は研究者が仕組んだものです。企業の部署で同じ効果が出ることを確かめた実験ではないため、以下は実験の構造を職場に当てはめた設計案です。企業で同じ状態を作るには、受注から納品までのリードタイムや顧客の解約率のような部門横断の指標を関係部署の評価に組み込み、各部署が改善に関与できる範囲に応じて重みを定めます。施策の予算には、部門横断で判断する責任者を置きます。全社目標をチームの目標へつなぐのにOKRを使うなら、達成率をそのまま評価点にしないでください。目標が低く出る原因になり、OKRが失敗する典型パターンの筆頭に挙がっています。
横断チームとジョブローテーションによる部門間調整
目標を共有しても、調整を担う人がいなければ仕事は境界で止まります。特定の課題に複数部門から人を集めるクロスファンクショナルチーム(CFT)や、期限を区切って編成するタスクフォースは、部署をまたいで決める場を組織図の上に作る方法で、ローレンスとローシュの言う統合の仕組みにあたります。あわせて、他部署を経験した社員を増やすジョブローテーションは、依頼の背景を理解できる人を各部署に置く方法です。行政でも、国家公務員制度改革基本法第5条第4項が府省横断的な職員の育成・活用を掲げています。
セクショナリズム対策の失敗条件
- 交流施策だけで終わる:イベントの参加率だけで成功と判断せず、部署間の引き継ぎ時間や情報共有の状況も確認します。改善が見られなければ、評価や予算が協力を妨げていないかを点検します。
- 部門の考え方をそろえようとする:研究開発と販売では向き合う環境も成果が出るまでの時間も違うため、同じ物差しを求めるのは、分化と統合を両立した組織が高業績だったという結果とも合いません。違いを前提に、調整役と横断の会議体を置きます。
- 横断チームに決定権がない:部署から人を出しただけで最終判断が各部長に残っていると、持ち帰りと差し戻しの繰り返しになります。部門間の意見対立を扱う手順はコンフリクトマネジメントの考え方が参考になります。
- 何でも統合する:品質保証や監査のように独立性が必要な機能まで事業部門にまとめると、原子力規制委員会設置法が挙げた「推進と規制の同居」と同じ問題が起きます。
よくある質問
セクショナリズムとは簡単に言うとどういう意味ですか?
組織の中の部署が、自分たちの権限や利害にこだわって排他的になる傾向や状態のことです。デジタル大辞泉の定義を平たく言い直したもので、日本語の「縄張り意識」「セクト主義」「派閥主義」とほぼ同じ意味で使われます。
セクショナリズムの反対語は?
コトバンクに収録された4辞書の「セクショナリズム」の項目には対義語の記載がないため、文脈で選びます。判断の基準を対比させるなら「全体最適」、部門同士の関係を対比させるなら「部門間連携」「協働」が使われます。
「セクショナリズム」の言い換えは?
辞書では「セクト主義」「派閥主義」「縄張り意識」「割拠主義」などが挙がり、行政について言うときは「縦割り行政」が一般的です。
セクショナリズムをなくすためにはどうすればいいですか?
部署単独では達成できない共通の目標を作り、関係部署の評価と予算に組み込むことが軸になります。そのうえで、横断チームやジョブローテーションで部署をまたいで判断できる人を増やします。交流イベントだけでは足りない理由は、本文のロバーズ・ケーブ実験の項を参照してください。
縄張り意識が強い人はどんな心理で、どう接すればいいですか?
多くの場合、自分の担当範囲と評価を守ろうとしています。自部署の数字だけで評価されている人にとって、他部署への協力は評価されない負担です。依頼するときは、相手の部署にとっての利点や、上位の共通目標とのつながりを示すと通りやすくなります。繰り返し止まるなら、本人ではなく評価の仕組みを上長と一緒に見直します。