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クラウドネイティブとは?CNCFの定義・構成技術・移行との違いと導入判断を解説

クラウドネイティブとは、クラウドで動かすことを前提に、クラウドの利点を引き出す形でシステムを設計・開発・運用する考え方です。単に既存システムをクラウドに載せ替えることとは区別され、コンテナやマイクロサービスといった特有の技術群とセットで語られます。本記事の内容は、CNCF(Cloud Native Computing Foundation)による定義、リフト&シフトとの違い、5つの構成技術とCI/CD・IaCの役割、メリットと直視すべき課題までの整理です。最後に、クラウドネイティブ化を進めるべき条件と見送るべき場面を、受託開発の実務目線で解説します。

目次

まとめ:クラウドネイティブの要点と導入判断の結論

クラウドネイティブの本質は「クラウドに置くこと」ではなく「変更に強いシステムの作り方」にあります。CNCFの定義が示すとおり、コンテナ・マイクロサービス・宣言型APIなどの技術で疎結合なシステムを組み、自動化と組み合わせることで、頻繁な変更を小さな労力で安全に行える状態を目指すものです。リリース速度と障害への回復力が競争力に直結する事業ほど、投資の回収が速くなります。

一方で、万能の設計ではありません。技術の学習コスト、分散システム特有の運用の複雑さ、体制づくりという実費がかかるため、変更頻度の低い安定システムに適用するのは過剰投資です。結論として、①機能追加やリリースが頻繁、②負荷の変動が大きい、③複数チームでの並行開発、のいずれかに当てはまる場合に段階的に導入し、すべて当てはまらないなら従来型の構成を維持する。この線引きを本文で具体化します。

クラウドネイティブの定義:CNCFが示す意味とクラウド利用との違い

言葉の定義には揺れがありましたが、現在は業界団体CNCFの定義が事実上の標準です。まず定義を押さえ、「クラウドを使っている」状態との違いを明確にします。

CNCFによる定義:クラウドの利点を引き出す設計・運用のアプローチ

CNCF(Cloud Native Computing Foundation)は、2015年にLinux Foundation傘下で設立された、クラウドネイティブ技術を推進する非営利団体です。Kubernetesの開発がGoogleからこの団体へ寄贈されたことが設立の起点で、現在は主要クラウド事業者を含む数百規模の企業・団体が参加しています。2018年に公開された同団体の定義文書(CNCF Cloud Native Definition)が、この言葉の共通の拠り所になっています。

定義の要点は3段構えです。第1に目的:パブリック・プライベート・ハイブリッドを問わず、スケーラブルなアプリケーションを構築・実行する能力を組織にもたらすこと。第2に手段:その代表例としてコンテナ、サービスメッシュ、マイクロサービス、イミュータブルインフラストラクチャ、宣言型APIの5つを挙げていること。第3に効果:これらにより回復性・管理力・可観測性を備えた疎結合システムが実現し、堅牢な自動化と組み合わせることで、影響の大きい変更を最小限の労力で頻繁かつ予測どおりに行えるとしていること。つまり技術の名前の列挙ではなく、「変更を高速かつ安全に繰り返せる組織能力」までを含む概念です。

「クラウドで動かす」との違い:リフト&シフトとクラウドネイティブの距離

オンプレミスのサーバー構成をほぼそのままクラウドの仮想マシンに載せ替える移行は、リフト&シフト(リホスト)と呼ばれます。これはクラウド「利用」ではあってもクラウド「ネイティブ」ではありません。載せ替えただけのシステムは構造がモノリシックなまま残るため、スケールも変更もオンプレ時代と同じ制約を引きずり、クラウドの従量課金だけが乗る結果になりがちです。

ただし、リフト&シフトを否定する必要はありません。実務では「まずリフト&シフトでクラウドへ移し、効果の大きい部分から段階的にネイティブな構成へ作り替える」という2段階が定石です。検索で増えている「クラウドリフトとクラウドネイティブの違い」という疑問への答えは、対立する選択肢ではなく移行の段階の違い、と整理するのが正確です。どこまで作り替えるかは後述の判断基準で決めます。

クラウドネイティブが広がる背景:変更頻度と回復力を競争力にする狙い

普及の土台になったのは技術の成熟です。2013年のDocker登場でコンテナが一般化し、2015年に公開されたKubernetesが2017年頃にはコンテナ運用の事実上の標準になりました。道具が揃ったことで、大手Web企業の専有物だった構成が一般企業にも手が届くようになったという経緯です。

需要側の理由はビジネスの速度です。市場の変化に合わせて週次・日次でリリースを重ねる開発では、変更のたびにシステム全体を止めてテストする従来構成が律速になります。政府がクラウド利用を第一候補とする方針(クラウド・バイ・デフォルト)を掲げるなど公共分野でもクラウド前提化が進み、システムを「作って終わり」ではなく「変え続ける」前提で組む必要性が、この設計思想を後押ししています。

クラウドネイティブを支える構成技術:CNCFの5要素とCI/CD・IaC

定義に挙がる5要素と、実務でほぼセットになる自動化の仕組み(CI/CD・IaC)を、それぞれ何を解決する技術なのかという観点で整理します。

コンテナとオーケストレーション:環境差の排除と大量コンテナの自動運用

コンテナは、アプリケーションと実行に必要な部品一式をパッケージ化し、隔離された環境で動かす軽量な仮想化技術です。企業がコンテナを導入すべきかの判断軸は、コンテナとは何か・企業の導入判断の解説で整理しました。開発機・テスト環境・本番で「手元では動いたのに」という環境差の事故を潰せることと、仮想マシンより起動が速く集積度が高いことが採用理由になります。技術的な仕組みと仮想マシンとの違いはコンテナ技術とは何か:仮想化との違いの解説で詳しく扱っています。

コンテナが数十・数百に増えると、配置・監視・障害時の再起動を人手で管理するのは不可能になり、これを自動化するオーケストレーションが必要になります。デファクト標準がKubernetesで、あるべき状態を宣言しておけば、障害で止まったコンテナの再起動や負荷に応じた増減をシステム側が自律的に行います。Kubernetes自体の仕組みはKubernetesとは?K8sの意味から仕組みまでの解説を参照してください。あわせて、稼働中の環境に手を入れず、更新のたびに新しい環境へ丸ごと入れ替えるイミュータブルインフラストラクチャの考え方が、この「壊して作り直せる」運用を支えています。

マイクロサービス・サービスメッシュ・宣言型API:疎結合を保つ3要素

マイクロサービスは、アプリケーションを独立して開発・デプロイできる小さなサービスの集合に分割する設計です。1つの巨大なプログラム(モノリス)では、小さな修正でも全体のテストと停止が必要になるのに対し、分割されていれば変更の影響範囲をサービス単位に閉じ込められます。モノリスとの比較と、必ずしも分割が正解ではないという論点はモノリスとマイクロサービスの違いの解説で掘り下げています。

分割の代償はサービス間通信の複雑化で、これを引き受けるのがサービスメッシュ(通信の制御・暗号化・監視をアプリ本体の外側で担う層)です。そして宣言型APIは、「手順」ではなく「あるべき状態」を指示する方式を指します。コンテナを4つ動かすと宣言すれば、障害で3つに減った際もシステムが自動で4つに戻す、という自己回復の土台になる考え方で、Kubernetesの設定はこの方式で書かれます。3要素はいずれも、部品同士を疎結合に保ちながら全体を成立させるための仕掛けです。

CI/CDとIaC:定義に並ぶ自動化を実務で担う開発・構成管理の仕組み

CNCFの定義が「堅牢な自動化と組み合わせる」と述べている部分を実務で担うのが、CI/CDとIaCです。CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)は、コード変更のたびにビルド・テスト・デプロイを自動実行するパイプラインで、頻繁なリリースを人手の作業ミスなしに回すための前提になります。手作業のリリースが残ったままコンテナ化だけしても、変更速度は上がりません。

IaC(Infrastructure as Code)は、サーバーやネットワークの構成をコードとして記述・管理する手法です。環境の複製や作り直しがコマンド一つで再現でき、前述のイミュータブルな運用が現実的になります。代表ツールのTerraformなどの個別解説は当サイトのtech記事で扱っており、本記事では「構成のコード化なしにクラウドネイティブの運用は成立しない」という位置づけを押さえれば十分です。CI/CD・IaCそれぞれの詳細は、本グループの続編記事で個別に解説します。

クラウドネイティブのメリットと直視すべきコスト・体制面の課題

メリットは広く語られますが、導入判断はコスト側を直視してこそ成立します。両面を実務の重み付きで示します。

メリット:リリース頻度・耐障害性・スケーラビリティの実務的な効き方

第1の効きどころはリリース速度です。サービス単位の独立デプロイとCI/CDの組み合わせで、システム全体を止めずに機能追加や修正を出せるようになり、月次リリースが週次・日次に縮む変化が典型です。第2が耐障害性で、疎結合な構成と自己回復の仕組みにより、一部の障害がシステム全体の停止に波及しにくくなります。障害を「起こさない」より「起きても即座に復旧する」設計に発想を切り替える点が従来型との違いです。

第3がスケーラビリティで、負荷の増減に応じてリソースを自動で伸縮させ、ピークに合わせた常時過剰なサーバー確保をやめられます。アクセス変動の大きいBtoCサービスやキャンペーンサイトで費用面の効果が出やすい一方、負荷が一定の社内システムではこの利点はほぼ効きません。メリットの大きさは業務の性質で大きく変わる、という前提で自社に当てはめてください。

課題:学習コスト・運用の複雑化・クラウド費用の管理という現実

最大の課題は人と体制です。コンテナ・Kubernetes・IaCはいずれも学習曲線が急で、扱えるエンジニアの確保・育成に時間がかかります。また、分散したサービス群では障害箇所の特定が難しくなるため、ログ・メトリクス・トレースを統合して観測するオブザーバビリティの仕組みまで整えて初めて運用が成立します。モノリス時代の監視のまま移行すると、障害対応がかえって長期化するのが典型的な失敗です。

費用面では、従量課金は「安くなる仕組み」ではなく「使った分だけ払う仕組み」であり、設計と管理を誤ればオンプレより高くつきます。リソースの自動伸縮は費用の自動増加でもあるため、コスト監視と上限設計を運用に組み込む必要があります。これらの課題は導入を止める理由ではなく、見積もりに含めるべき実費です。実費を積んでもメリットが上回る条件を、次章で判定します。

クラウドネイティブ導入の判断基準:段階的な移行と見送るべき場面

検索上位の解説は定義とメリットの紹介で終わるものが大半ですが、実際に必要なのは自社が進むべきかの判定です。受託開発でモダナイズ案件を扱う立場から、条件で線を引きます。

導入が効く条件:変更頻度・トラフィック変動・複数チーム開発の3要件

投資が回収しやすいのは次の3条件です。①変更頻度:機能追加・改修のリリースが月数回以上あり、リリース作業や影響範囲テストが開発のボトルネックになっている。②負荷変動:アクセスが時間帯・季節・施策で大きく変動し、ピーク基準のサーバー費が無駄になっている。③体制:複数チームが同じシステムを並行開発しており、変更の衝突や調整コストが増え続けている。

いずれも「クラウドネイティブの技術が解く問題を、いま実際に抱えているか」の確認です。1つでも強く当てはまるなら、該当領域から部分的に始める価値があります。3つとも薄いのに流行を理由に全面刷新するのは、次項の見送り対象です。

見送るべき場面:安定稼働中の基幹系と小規模システムでの過剰設計

次の場合は、クラウドネイティブ化を採用しない判断が正解です。第1に、変更頻度が年数回以下で安定稼働している基幹系システムです。動いているモノリスを分割する工事は、リスクとコストに見合う効果が出ません。リフト&シフトでインフラ費と保守性だけ改善して止める、が合理的な着地です。第2に、小規模なシステムや少人数チームです。マイクロサービスやKubernetesの運用負荷は固定費として重く、規模が小さいほど過剰設計になります。単一のアプリをシンプルなマネージドサービスで動かすほうが速くて安い場面は非常に多くあります。

第3に、運用体制を用意できない組織です。構築はベンダーに頼めても、日々の監視・更新・障害対応を担う体制がなければ、複雑化したシステムだけが残ります。「Kubernetesを入れること」が目的化した案件は高確率で塩漬けになるというのが実務の相場観で、目的が語れない導入は止めるべきです。

進め方:リフト&シフト後の段階的ネイティブ化とパートナー選定

進め方は段階方式が原則です。手順は、①現行システムの棚卸しと、前述3条件による対象領域の選定、②リフト&シフトでのクラウド移行(必要な場合)、③変更頻度の高い領域からコンテナ化・CI/CD導入、④効果測定を挟みながらマイクロサービス分割やIaCへ拡大、の流れです。全面刷新の一括発注は失敗率が高く、小さく作り替えて効果を確認する反復が結果的に最短になります。

社内にクラウドネイティブ領域の経験者がいない場合は、対象領域の選定という上流から外部と組む選択肢があります。既存システムの構造を踏まえたモダナイズ計画の立案から、コンテナ化・CI/CD構築・運用設計までを一貫して支援するのが、株式会社一創のWebシステム開発サービスです。どこまで作り替えるべきか判断がつかない段階の相談から対応できます。

よくある質問

クラウドネイティブについて検索されることが多い質問に答えます。

クラウドネイティブとクラウドファーストの違いは何ですか?

クラウドファーストは「システムを作る際にクラウド利用を優先的に検討する」という方針を指す言葉で、選定の姿勢の話です。似た言葉のクラウド・バイ・デフォルトは、政府方針などで使われる「クラウドを第一の選択肢とする」原則を指します。これに対しクラウドネイティブは、クラウドに置いた上でどう設計・運用するかという作り方の話です。クラウドファーストで移行した先の設計方針がクラウドネイティブ、という関係で捉えると整理できます。

オンプレミスでもクラウドネイティブは実現できますか?

できます。CNCFの定義もパブリッククラウドに限定しておらず、プライベートクラウドやオンプレミス環境でコンテナ・Kubernetes・CI/CDを運用する構成は実在します。金融や公共など、データを自社設備に置く要件がある組織で採られる形です。ただしクラウド事業者のマネージドサービスに頼れない分、基盤の構築・運用負荷は大きくなるため、要件がないならパブリッククラウドの利用が近道です。

クラウドネイティブ化にはどのくらいの期間がかかりますか?

範囲によって桁が変わります。単一アプリのコンテナ化とCI/CD導入なら数週間〜数か月、既存システムの段階的なマイクロサービス分割を含む本格的なモダナイズは年単位の取り組みになるのが一般的です。期間を左右する最大の要因は技術ではなく、既存システムの複雑さと体制づくりです。全体計画を立てたうえで、最初の領域を3か月程度で形にして効果を確認する進め方を推奨します。

CNCFとは何の団体ですか?

Cloud Native Computing Foundationの略で、2015年にLinux Foundation傘下で設立された非営利団体です。Kubernetesをはじめとするクラウドネイティブ関連のオープンソースプロジェクトを中立的な立場で管理・支援しており、主要クラウド事業者を含む数百規模の企業・団体が参加しています。同団体が公開する定義文書や、技術の全体地図であるCloud Native Landscapeは、技術選定の際の一次情報として使えます。

サーバーレスはクラウドネイティブに含まれますか?

含まれる、と考えるのが一般的です。サーバーレスは、サーバー管理をクラウド事業者側に任せてコード実行だけに集中する方式で、クラウドの利点を前提にした設計という点でクラウドネイティブの一形態にあたります。コンテナを自前で運用する構成と、どちらを選ぶかは要件次第です。使い分けの考え方は本グループの続編記事で個別に解説する予定です。

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