Orange Pi 5 Plusとは|RK3588の性能・価格・対応OSと無印5との違い
Orange Pi 5 Plusは、Rockchip RK3588(Cortex-A76×4 最大2.4GHz+Cortex-A55×4、Mali-G610 GPU、6TOPSのNPU)を載せたハイエンドのシングルボードコンピュータ(SBC)です。2.5GbE有線LANを2系統、NVMe SSD用のM.2 M-Key(PCIe 3.0 x4)、HDMI出力2系統とHDMI入力、eMMCソケットまで1枚に載せており、Raspberry Pi 5では届かないネットワーク帯域とストレージ速度を確保できます。その代わりオンボードのWi-Fi/Bluetoothは非搭載で、電源はUSB Type-Cの5V/4A(20W)供給が要求され、ヒートシンクとファンが実質的に必須です。
この記事では、仕様と実測値、4GB/8GB/16GB/32GBの選び方、AliExpressや国内での価格と購入時の注意、Raspberry Pi 5との実際の差、対応OS(Windowsが使えるかを含む)、そしてRK3588の後継が見えている2026年時点で「いま買うべきか」までを整理します。日本語では「オレンジパイ5 プラス」と表記されることもあります。価格と基板リビジョンは改訂されるため、発注前にOrange Pi 5 Plus(v2.1)の公式仕様ページで対象モデルを確認してください。
まとめ:Orange Pi 5 Plusの要点
- 中身:RK3588(8コア/最大2.4GHz)+Mali-G610 MP4+NPU 6TOPS。基板は約100×75mm。
- 他機との決定的な差:2.5GbEを2系統持つこと。ルーター/NAS/ゲートウェイ用途では、これがRaspberry Pi 5(1GbE×1)との最大の違いになります。
- メモリ:4GB/8GB/16GBが中心。32GBは公式SKUとして存在しますが、v2.1として流通する在庫は4/8/16GBが主です。
- 無線:オンボードWi-Fi/Bluetoothなし。M.2 E-Keyにモジュールを追加するか、USBドングルが必要です。無線を最初から使いたいならOrange Pi 5 Max(Wi-Fi 6E/BT 5.3内蔵)が候補になります。
- OS:Orange Pi OS、Ubuntu、Debian、Android、コミュニティ版のArmbianが動作。Arm版Windowsは非公式(EDK2ベースのコミュニティUEFI)で常用向きではありません。
- 向く用途/向かない用途:2.5GbEとNVMeを使い切る自作NAS・ホームサーバー・ルーターには強く向きます。GPIOでセンサーを読む学習用途、低消費電力・静音が最優先の用途では、情報量と省電力でRaspberry Piが優位です。
Orange Pi 5 Plusの仕様:RK3588とインターフェース
SoCとメモリ構成(4GB/8GB/16GB/32GBの選び方)
SoCはRockchipのRK3588です。8nmプロセスで、高性能コアのCortex-A76が4基(最大2.4GHz)と省電力のCortex-A55が4基という構成に、GPUのMali-G610 MP4、INT8で6TOPSのNPU、8K対応のビデオコーデックを統合しています。Orange Pi 5 Plusはこのフル版RK3588を採用しており、後述する無印のOrange Pi 5(RK3588S)とはPCIeレーン数と搭載できるインターフェースの数が違います。
メモリは4GB/8GB/16GBが基本です。32GB版はOrange Pi公式サイトに独立した製品ページを持つ正規のSKUですが、v2.1として流通する在庫の仕様表は4GB/8GB/16GBで、実際に買える経路は限られます。「32GB」と表記された出品では、届く基板のリビジョンを確認してください。選び方の目安は次のとおりです。
- 16GB:Dockerコンテナを複数常駐させる、仮想マシンを動かす、デスクトップとして常用する場合の基準。
- 8GB:ファイル共有、DNS、リバースプロキシなど単機能サーバーを数個動かす用途なら十分。
- 4GB:Raspberry Pi 5との価格差が縮み、Orange Pi 5 Plusを選ぶ理由(潤沢なメモリと帯域)が薄れます。
- 32GB:入手経路が限られ価格も跳ねます。大きなモデルをオンメモリで扱う等、明確な理由がある場合のみ。
インターフェース:2.5GbE×2、HDMI入出力、M.2
Orange Pi 5 Plusの性格を決めているのはインターフェースです。2.5GbEのRJ45を2系統備えるため、1枚でWAN側とLAN側を分けたソフトウェアルーターや、2.5GbE接続のNASとして構成できます。ストレージはM.2 M-Key(PCIe 3.0 x4、2280サイズ)にNVMe SSDを装着でき、eMMCソケットにモジュールを載せることも可能です。映像はHDMI 2.1出力が2系統(最大8K)に加え、HDMI入力を1系統持つ点が独特で、他機の映像を取り込む用途に使えます。USB Type-CはDisplayPort Alt Modeに対応します。無線用にはM.2 E-Keyが用意されていますが、モジュールは同梱されません。電源はUSB Type-Cで5V/4A(20W)の供給能力が要求され、Raspberry Pi用のACアダプタを流用すると電力不足で不安定になります。
Orange Pi 5 / 5 Pro / 5 Max との違い:シリーズ内の選び方
「orange pi 5」と「orange pi 5 plus」を混同したまま買うと、無線やLANの本数で後悔します。同じRK3588世代でも役割が違うためです。
| モデル | SoC | 有線LAN | オンボード無線 | 立ち位置 |
|---|---|---|---|---|
| Orange Pi 5(無印) | RK3588S | 1GbE×1 | なし | 入門・デスクトップ |
| Orange Pi 5 Pro | RK3588S | 1GbE×1 | あり(Wi-Fi 5/BT 5) | 無線込みの手軽な一台 |
| Orange Pi 5 Max | RK3588 | 2.5GbE×1 | あり(Wi-Fi 6E/BT 5.3) | 無線が要る高性能機 |
| Orange Pi 5 Plus | RK3588 | 2.5GbE×2 | なし | ルーター/NAS向け |
Orange Pi 5 Maxは2024年8月に発表された後発機で、2.5GbEは1系統ながらWi-Fi 6EとBluetooth 5.3を内蔵します。判断は単純です。2.5GbEが2系統必要ならOrange Pi 5 Plus以外に選択肢がなく、逆に無線が必須ならOrange Pi 5 Maxが素直です。5 Plusで無線を使う場合、M.2 E-Keyモジュールとアンテナ、あるいはUSBドングルの費用と作業が上乗せされます。教育用途や初心者にこの機種を勧めない理由もここにあり、「箱を開けてすぐWi-Fiで繋がる」体験は得られません。
Raspberry Pi 5との比較:どちらを選ぶか
Raspberry Pi 5はBroadcom BCM2712(Cortex-A76×4、2.4GHz)で、シングルコア性能はOrange Pi 5 Plusとほぼ同水準です。差が出るのはコア数(8対4)と、周辺インターフェースです。
| 項目 | Orange Pi 5 Plus | Raspberry Pi 5 |
|---|---|---|
| CPU | RK3588:A76×4+A55×4(最大2.4GHz) | BCM2712:A76×4(2.4GHz) |
| メモリ | 4/8/16GB(32GB構成あり) | 2/4/8/16GB |
| 有線LAN | 2.5GbE×2 | 1GbE×1 |
| NVMe | M.2 M-Key(PCIe 3.0 x4)を搭載 | PCIe x1。M.2 HAT等の拡張基板が必要 |
| 無線 | なし(M.2 E-Keyで追加) | Wi-Fi 5/Bluetooth 5.0 内蔵 |
| NPU | 6TOPS | なし(外付けで対応) |
| 基板サイズ | 約100×75mm | 85×56mm |
| 電源 | 5V/4A | 5V/5A(PD推奨) |
マルチスレッドの処理量、ネットワーク帯域、ストレージ帯域はOrange Pi 5 Plusが明確に上です。一方でRaspberry Piは公式OSの更新が長期にわたり、トラブル時の情報量が多く、国内で正規代理店から買えます。「動かすまでの時間」と「困ったときの解決しやすさ」に価値を置くならRaspberry Pi 5、「1枚あたりの帯域と処理量」で選ぶならOrange Pi 5 Plusという切り分けになります。Raspberry Pi側の世代差はRaspberry Pi 5 と Pi 4 の違いを徹底比較|スペック・性能・できること【2026年版】で整理しています。
公開ベンチマークで見える実力と、期待してはいけない部分
コア構成から言えることは単純です。高性能コアのCortex-A76は最大2.4GHzでRaspberry Pi 5と同じ世代・同じクロックのため、単スレッド性能はほぼ互角で、差が出るのは8コアを使い切る場面に限られます。ブラウザ操作のような単スレッド依存の作業で体感が変わるわけではなく、効くのはコンパイル、複数コンテナの同時稼働、動画のトランスコードといった並列処理です。
ストレージについては、公称値と実測値の差を知っておく必要があります。M.2 M-KeyはPCIe 3.0 x4で、ベンダー資料では最大2,000MB/s級とされます。一方、第三者レビューのbret.dkによる計測(8GBモデル、Crucial P3 Plus 500GB)では、シーケンシャル読み込み569.09MB/s、書き込み394.63MB/sという結果が報告されています。公称の2,000MB/sをそのまま期待すべきではありませんが、それでもmicroSD運用(一般に数十MB/s台)とは水準が違い、常用するならNVMe起動が事実上の前提です。
ネットワークは2.5GbEですので、対向のスイッチやNASも2.5GbE対応でなければ帯域は1Gbpsで頭打ちになります。ボードだけ速くしても意味がない点は、購入前に自宅・社内の機器構成と突き合わせてください。
期待してはいけないのはGPUとNPUのソフトウェア成熟度です。Mali-G610のドライバやNPUのツールチェーンはベンダー提供のものに依存し、Raspberry Piのように「標準のディストリでそのまま全機能が動く」わけではありません。6TOPSのNPUも、対応フレームワーク向けにモデルを変換して初めて使える性能です。
対応OSと書き込み:Ubuntu/Debian/ArmbianとWindowsの実態
公式からはOrange Pi OS、Ubuntu、Debian、Androidのイメージが配布されます。コミュニティ主導のArmbianも対応しており、新しいカーネルを求める場合はArmbianを選ぶのが一般的です。書き込みはRaspberry Pi ImagerやbalenaEtcherでイメージをフラッシュする流れで、microSD/eMMC/NVMeのいずれからも起動できます(NVMe起動は基板のSPIフラッシュにブートローダを書く手順が必要です)。書き込みツールの使い方はRaspberry Pi Imagerとは|Linux(apt・snap・AppImage)含む各OSのインストールとOS書き込み・SSH/Wi-Fi設定の使い方で解説しています。
「orange pi windows」で検索されることの多いArm版Windowsについては、はっきり書いておきます。Rockchip RK3588でのWindows起動は、EDK2ベースのコミュニティ製UEFIファームウェアを使う非公式な手段であり、Orange Piの公式サポートはありません。GPUやNPU、一部I/Oのドライバが揃わず、実験としては動いても業務や常用の環境には向きません。Windowsが要件なら、x86のミニPCを選ぶ方が短時間で確実です。なお、Raspberry Pi向けのWoR(Windows on Raspberry)はRaspberry Pi専用のツールで、RK3588とは無関係です。
価格と購入方法:どこで買うと何が起きるか
入手経路はAliExpressのOrange Pi公式ストア、Amazonの並行輸入出品、一部の国内ショップに限られ、正規代理店経由の安定供給という点ではRaspberry Piに及びません。価格は経路で大きく変わります。発表時のメーカー希望価格は4GBが89.90ドル、8GBが109ドル、16GBが129ドルで、AliExpressの公式ストアはこの水準が基準です。一方、再販業者や国内の並行輸入出品はこれを大きく上回ることがあり、同じ16GBモデルでも数倍の値付けが存在します。「Orange Pi 5 Plus 16GB」という同じ商品名でも、どこで買うかで支払額が変わるため、必ず複数経路を比較してください(価格は為替と時期で変動します。最新は各販売ページで確認してください)。
見落としやすいのは本体以外の費用です。5V/4AのUSB Type-C電源、ヒートシンクとファン、必要ならM.2 NVMe SSD、無線モジュールとアンテナ。これらを足すと、本体が安く見えても総額はRaspberry Pi 5一式と大差なくなることがあります。本体価格だけで比較しないことが、この機種で失敗しないための要点です。並行輸入品は保証と初期不良対応が販売者依存になる点も、購入前に確認してください。
拡張と実運用:NAS・ルーター用途での構成
Orange Pi 5 PlusをNASにする場合、M.2にNVMe SSDを1枚載せてシステムと高速領域に使い、大容量はUSB 3.0接続のHDDケースに逃がす構成が現実的です。M.2スロットは1つなので、SSDを複数積むにはPCIeの分岐が必要で手軽ではありません。2.5GbEを2系統活かすなら、片方をデータ経路、もう片方を管理・アップリンクに分ける、あるいはOpenWrtなどでルーターに仕立てる使い方が素直です。
冷却は必須です。8コアを全開にする場面ではパッシブヒートシンクのみだとクロックが下がり、性能を維持できません。電源には5V/4A(20W)の供給能力が要求されます。これは瞬時の要求値であって常時20Wを消費するという意味ではありませんが、Raspberry Pi 4クラスの感覚より確実に大きく、24時間稼働させるなら消費電力と騒音を見積もっておく必要があります。省電力と静音が最優先なら、そもそもこのボードは選択肢から外れます。
RK3588の後継と「いま買うべきか」
RK3588は2022年に登場したSoCで、2026年時点では最新世代ではありません。Rockchipは後継としてArmv9.3世代のRK3688を公表しており、CNX Softwareの初報(2024年10月)ではNPU 16TOPS・UFS 4.0対応と伝えられ、その後の続報ではさらに高いNPU性能が報じられています。ただし正式発表と搭載SBCの一般流通はこれからで、これらの数値を確定情報として扱うべきではありません。
この状況での結論ははっきりしています。いま動かす必要があるならRK3588機を買うべきです。登場から年数が経ち、Armbianのサポート、NVMe起動の手順、既知の不具合と回避策といった情報が蓄積された「枯れた」段階にあります。逆に、最新のNPU性能が要件に含まれるAI用途なら、次世代機の出荷を待つ判断に合理性があります。SBCではなくマイコンで足りる用途なら、Raspberry Pi Pico Wとは?基本仕様・モデルの違い・できることを総まとめのような選択肢を先に検討したほうが、消費電力もコストも抑えられます。
よくある質問
Orange Pi 5とOrange Pi 5 Plusの違いは何ですか?
SoCとインターフェースが違います。無印のOrange Pi 5はRK3588S(省ピン版)で有線LANは1GbEが1系統、Orange Pi 5 PlusはフルのRK3588を載せ、2.5GbEを2系統、HDMI入力、eMMCソケット、M.2 M-Keyを備えます。ネットワークとストレージを使い切るサーバー・NAS用途なら5 Plus、単体のデスクトップや学習用途なら無印でも足ります。
メモリは4GB・8GB・16GB・32GBのどれを選ぶべきですか?
コンテナを並べる、仮想化する、デスクトップとして常用するなら16GBが基準です。単機能サーバーなら8GBで足ります。4GBはRaspberry Pi 5との価格差が縮んで選ぶ意味が薄く、32GBは基板リビジョン依存で流通が限られます(v2.1系のラインアップは4/8/16GB)。出品に「32GB」とあってもリビジョンを確認してください。
Wi-FiとBluetoothは最初から使えますか?
使えません。Orange Pi 5 Plusはオンボードの無線を持たず、M.2 E-Keyに無線モジュールとアンテナを追加するか、USBドングルを挿す必要があります。最初から無線を使いたい場合は、Wi-Fi 6EとBluetooth 5.3を内蔵するOrange Pi 5 Maxを検討してください。
NASとして使えますか?
使えます。M.2のNVMe SSDと2.5GbE×2の組み合わせは、SBCベースのNASとしては上位の構成です。ただしM.2スロットは1つのため複数SSDのRAIDには向かず、大容量はUSB 3.0の外付けに頼ることになります。
RK3588の後継はありますか。今買っても大丈夫ですか?
RockchipはArmv9.3世代のRK3688を後継として公表していますが、2026年7月時点で搭載SBCの一般流通は始まっておらず、NPU性能などの数値も報道ベースで確定していません。RK3588搭載機は情報とソフトウェア対応が揃った段階にあるため、すぐ動かしたいならRK3588機、最新のNPU性能が必須なら次世代機を待つ、という判断になります。
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