DGX Sparkとは?スペックと実測性能・OEM互換機との違い・価格【2026年7月】

DGX Sparkは、NVIDIAが2025年10月15日に発売した手のひらサイズのAIスーパーコンピュータです。128GBの統合メモリに2,000億パラメータ級のモデルを載せられる一方、メモリ帯域は273GB/sしかなく、得意なことと苦手なことがはっきり分かれます。この記事では、GB10のスペック、実測値で見る生成速度の限界、ASUS Ascent GX10をはじめとするGB10搭載OEM機との違い、そして4,699ドルへ値上げされた後の価格と日本国内での買い方を、2026年7月13日時点の一次情報で整理します。

まとめ:DGX Sparkの要点

  • 載せられるが、速くは回せない:128GB統合メモリで200Bパラメータ級の推論が可能。ただしメモリ帯域273GB/sが生成速度を縛り、Llama 3.1 70B(FP8)のデコードはLMSYS実測で毎秒2.7トークンにとどまります。
  • 純正は4,699ドルへ値上げ、OEMは据え置き:NVIDIA純正Founders Editionは2026年2月に3,999ドルから4,699ドルへ引き上げられました。値上げはOEM各社に連動しないため、ASUS Ascent GX10(1TB版3,099.99ドル)などGB10互換機の割安感が広がっています。
  • OEM機との中身はほぼ同一:GB10・128GB・273GB/s・ConnectX-7・DGX OSは共通で、実質的な違いは価格・SSD容量と暗号化グレード・保証窓口・付属ツールです。
  • 日本の実売は約98万円から:パソコン工房で984,980円(税込)、TSUKUMOで1,009,542円(税込)。個人でも購入できます(法人販路のNTTPCは909,700円・税込)。

DGX Sparkとは?デスクに置けるAIスーパーコンピュータ

DGX Sparkは、NVIDIAが個人の開発者や研究者向けに設計したデスクトップサイズのAIスーパーコンピュータです。CES 2025で「Project DIGITS」として披露され、2025年3月のGTCで正式発表、2025年10月15日に発売されました。データセンター向けのDGXシリーズが個人開発者に開かれた最初の機種にあたります。

本体は150×150×50.5mm・約1.2kg。従来はGPUサーバーかクラウドでしか扱えなかった大規模モデルを、机の上でローカル完結させられる点が価値の中心です。学習データや推論入力を外部に出さずに済むため、金融・医療のように持ち出し制限のあるデータを扱うPoCで意味を持ちます。

DGX Sparkの主なスペック

項目 内容
SoC GB10 Grace Blackwell Superchip(NVLink-C2C接続)
CPU 20コアArm(Cortex-X925×10+Cortex-A725×10)
GPU Blackwell世代/第5世代Tensorコア
AI性能 最大1PFLOPS(FP4・スパース性有効時)/1,000TOPS
メモリ 128GB LPDDR5x 統合コヒーレントメモリ(256bit)
メモリ帯域 273GB/s
ストレージ 4TB NVMe M.2(自己暗号化)
ネットワーク ConnectX-7 200Gbps(QSFP)+10GbE/Wi-Fi 7/Bluetooth 5.4
消費電力 240W ACアダプタ(GB10のTDPは140W)
サイズ/重量 150×150×50.5mm/1.2kg
OS DGX OS 7(Ubuntu 24.04ベース。Windows非対応)

数値はNVIDIA公式製品ページ(2026年7月13日確認)に基づきます。表の中で購入判断に効くのは、AI性能の1PFLOPSではなくメモリ帯域273GB/sWindows非対応の2行です。前者は後述する生成速度の上限を決め、後者は「既存のWindows環境に足す機材」としての使い方を封じます。

GB10 Grace Blackwell Superchipの仕組み

GB10は、20コアのArm CPUとBlackwell GPUを1パッケージに統合し、両者をNVLink-C2Cで直結したSoCです。128GBのメモリはCPUとGPUが同じアドレス空間で共有します。一般的なPCではCPUメモリとGPUメモリが分離しており、モデルの重みをGPU側へコピーする工程がボトルネックになりますが、DGX Sparkではこのコピーが不要です。同じBlackwell世代のGPUはコンシューマー向けのRTX 5090にも採用されていますが、こちらはVRAM 32GBの専有メモリ構成で、設計思想が逆方向にあります。

2台・3台の連結(ConnectX-7)

ConnectX-7の200GbEポートをQSFPケーブルで直結すると、2台で最大4,050億パラメータの推論に対応します(NVIDIA公式製品ページ)。ASUSの公式FAQでは、QSFPケーブルによる直結は2台、スタックは3台までが現時点のサポート範囲で、それ以上の台数には200GbEスイッチが必要と説明されています。連結ケーブルは同梱とは限らず、NTTPCは10,000円(税別)で別売しています。台数を増やす前提なら、ケーブルとスイッチの費用を最初から見積もりに入れてください。

メモリ帯域273GB/sの壁(プリフィル毎秒7,991トークン対デコード毎秒20.5トークン)

DGX Sparkの評価は「1PFLOPS」ではなく帯域で決まります。LLMの生成(デコード)フェーズは1トークンごとにモデルの全重みを読み出すため、演算性能ではなくメモリ帯域が上限を決めるからです。プロンプトを読み込むプリフィルは演算律速なので、Blackwellのテンソルコアが効いて高速に処理されます。この非対称性が、DGX Sparkの向き不向きをそのまま説明します。

Llama 3.1 70Bはデコード毎秒2.7トークン(密モデルの限界)

SGLang開発元のLMSYSが2025年10月13日に公開した実測(バッチサイズ1)では、Llama 3.1 8Bのプリフィルが毎秒7,991トークンに達する一方、デコードは毎秒20.5トークン。Llama 3.1 70B(FP8)ではプリフィル毎秒803トークンに対し、デコードは毎秒2.7トークンまで落ちます。全パラメータを毎トークン読み出す密モデルほど帯域に張り付くためで、70Bクラスを対話用途で常用するのは現実的ではありません。

一方、活性パラメータの小さいMoEモデルは帯域の影響を受けにくくなります。llama.cpp公式リポジトリのDGX Sparkベンチマーク(build 7941・2026年2月時点、llama-benchのtg32)では、gpt-oss-20b(MXFP4)が毎秒83.43トークン、gpt-oss-120b(MXFP4)が毎秒58.72トークン、Qwen3 30B-A3B(Q8_0)が毎秒61.06トークン。116Bのモデルが70Bの密モデルより20倍以上速いという逆転が起きます。DGX Sparkでは「パラメータ総数」ではなく「1トークンあたり読み出す重みの量」が速度を決めます。なお同じgpt-oss-20bでも、コンテキストを32,768トークンまで伸ばすと毎秒61.65トークンまで落ちます。長い文脈を常用するなら、この目減りも見込んでください。

DGX Spark上でモデルを動かす手順そのものは通常のLinux環境と変わらず、OllamaでCodexをローカル実行する手順LM Studioといったツールがそのまま使えます。

実行系で数値が変わる(同じgpt-oss-20bの比較)

実行系 デコード速度 出典
Ollama(MXFP4) 毎秒49.7トークン LMSYS 2025年10月計測
SGLang(最適化後) 毎秒約70トークン LMSYS 2025年11月計測
llama.cpp(llama-bench tg32) 毎秒83.43トークン llama.cpp公式ベンチ build 7941

同じモデル・同じ機材でも、実行系と最適化の有無で1.7倍ひらきます。ベンチマーク値を比較するときは、実行系・量子化形式・計測条件(バッチサイズやコンテキスト長)まで揃っているかを確認してください。実行系を明記していない「DGX Sparkは毎秒◯トークン」という数値は、それだけでは他機種と比べられません。

RTX 5090・H100との帯域比較

機種 メモリ メモリ帯域 DGX Spark比
DGX Spark(GB10) 128GB LPDDR5x 273GB/s 1.0倍
RTX 5090 32GB GDDR7 約1,792GB/s(算出値) 約6.6倍
H100 SXM 80GB HBM3 3.35TB/s 約12.3倍

RTX 5090の帯域はNVIDIA公式ページに数値の記載がなく、512bit幅とGDDR7の転送レートからの算出値です。H100の3.35TB/sは公式値。生成速度の差もこの帯域比に沿います。LMSYSが同条件(Ollama・MXFP4・gpt-oss-20b)で測ると、DGX Sparkの毎秒49.7トークンに対しRTX 5090は毎秒205トークンで、約4倍の開きがあります。

ここから導かれる判断ははっきりしています。32GBに収まるモデルを速く回したいならRTX 5090、大量のリクエストを捌く本番サービングならH100搭載機、32GBに載らない大きなモデルを手元で動かして試したいならDGX Sparkです。DGX Sparkを「安いH100」として本番推論基盤に据えると、スループット不足で確実に失敗します。LMSYS自身も用途をプロトタイピングと軽量なオンデバイス推論に限定しています。

GB10搭載OEM互換機との違い(gx10 vs dgx spark)

DGX Sparkで最も誤解されているのが、NVIDIA純正とOEM機の関係です。GB10を搭載した互換機はAcer・ASUS・Dell・GIGABYTE・HP・Lenovo・MSIの7社から出ており、SoC・メモリ容量・メモリ帯域・ConnectX-7・DGX OSはいずれも共通です。性能差を期待して選ぶ対象ではありません。

ASUS Ascent GX10とDGX Sparkの差分

観点 DGX Spark(純正FE) ASUS Ascent GX10
SoC・メモリ・帯域 GB10/128GB/273GB/s 同一
価格 4,699ドル(4TB) 3,099.99ドル(1TB)/4,149.99ドル(4TB)
SSD 4TBのみ(Gen5・自己暗号化) 1TB/2TB(Gen4・TCG Pyrite)、4TB(Gen5・TCG Opal)
ネットワーク ConnectX-7 200Gbps 同一(QSFP直結は2台・スタックは3台まで)
OS DGX OS 7 DGX OS(ASUS公式が唯一の推奨OSと明記)
保証窓口 NVIDIA ASUS(部品交換・改造は保証失効)

同じ4TB同士で約550ドル、最小構成同士(純正4TB対GX10の1TB)なら約1,600ドルの差がつきます(後者はSSD容量が違う点に注意)。中身が同じである以上、この差額は筐体と保証窓口の違いに対して払っていることになります。GX10の1TB・2TB版はSSDの暗号化がTCG Pyrite止まり(4TB版のみTCG Opal)なので、ストレージ暗号化を社内規程で求められる環境では容量選択が制約になります。

純正とOEM7機種の価格・構成比較

機種 米国価格 SSD 特記
NVIDIA DGX Spark(FE) 4,699ドル 4TB Gen5 純正。2026年2月に値上げ
MSI EdgeXpert MS-C931 2,999ドル〜 1TB/4TB Gen5 GB10勢の最安帯
ASUS Ascent GX10 3,099.99ドル〜 1TB/2TB/4TB SKUが3種で選びやすい
GIGABYTE AI TOP ATOM 3,499.99ドル〜 1TB/4TB SSDはGen4・Gen5を選択可
Acer Veriton GN100 3,999ドル〜 最大4TB 2025年9月3日に発表
Lenovo ThinkStation PGX 約4,100ドル〜(販売店実勢) 1TB/4TB 公式MSRPは非公開
HP ZGX Nano G1n 英国4,939.19ポンド〜(4TBは8,164.79ポンド) 1TB/4TB ZGX Toolkit(MLflow・Ollama)を無償同梱
Dell Pro Max with GB10 5,688.18ドル(dell.com公式構成) 2TB Gen4・QLC 法人調達チャネル向き

価格は2026年7月13日時点で、SSD容量や販売チャネルによって振れます(Lenovoは公式MSRPを公開していないため販売店の実勢値、HPは英国HPストアの税込価格)。純正の値上げがOEM価格に連動しない(NVIDIA開発者フォーラムの告知が「OEM機の価格は各OEMに問い合わせよ」と明示)ため、価格差は2026年前半以降むしろ開いています。HPのZGX Toolkitのようなベンダー独自ツールを除けば、AIソフトウェアスタックはどの機種も同じDGX OS上の標準構成です。

用途別の機種選定(単体検証・4TB構成・複数台クラスタ)

単体で試すだけなら、最安帯のMSI EdgeXpertかASUS Ascent GX10の1TB構成で十分です。モデルの重みを何本も置くならSSDは実務上4TBが欲しくなりますが、その場合でもASUSの4TB版が純正より安く付きます。純正Founders Editionを選ぶ理由は、NVIDIAのサポート窓口に一本化したい場合と、社内規程でOEM機の調達が通らない場合に絞られます。逆に、2台以上を連結してクラスタを組む予定があるなら、保証と部材(QSFPケーブル・スイッチ)を1社にそろえられる法人チャネル(Dell・Lenovo・NTTPC)を選ぶほうが後の運用が楽です。

DGX Sparkの用途と、向かない使い道

公式・実測の双方から、DGX Sparkが有効なのは次の場面です。

  • 大規模モデルのプロトタイピング:クラウドGPUの空き待ちをせずに、200Bパラメータ級のモデルを手元で読み込んで挙動を確かめられます。
  • 最大70Bのファインチューニング:公式が上限として示す規模です。
  • 機密データのPoC:データを外部に出さずに検証を回せます。ELYZAのような国産モデルのローカル活用や、Open WebUIを使った社内RAGの検証環境として使えます。

向かないのは、多数の同時リクエストを捌く本番推論サービングと、Windowsアプリと同居させる開発機としての運用です。前者は帯域が、後者はDGX OS(Ubuntuベース)というOS制約が理由で、どちらも設定では回避できません。既存のワークステーションを置き換える機材ではなく、隣に足す機材だと考えるのが正確です。

DGX Sparkの価格と購入方法(2026年7月時点)

米国価格と値上げの経緯

発売当初のFounders Editionは3,999ドルでした。NVIDIAは2026年2月下旬(開発者フォーラムの「2/23/2026 Price Change Announcement」)に価格改定を告知し、現在は4,699ドル(約18%増)です。理由は世界的なメモリ供給制約で、ハードウェア構成の変更は一切ありません。同じ製品が同じ仕様のまま700ドル上がった形です。告知前に確定していた注文は当時の価格で履行されました。「3,999ドルから」と書かれた情報は2026年2月以前のものと判断できます。

日本国内の価格と販路

販路 価格 条件
パソコン工房(4TB) 984,980円(税込) 個人可・当日出荷可
TSUKUMO 1,009,542円(税込) 個人可・取り寄せ
NTTPC 909,700円(税込) 法人のみ(教育機関は別価格)

4,699ドルを単純換算すると約72万円ですが、国内の実売は約98万〜101万円です。差分は為替・流通マージン・メモリ価格高騰の反映で、円換算の見積もりをそのまま社内稟議に載せると足が出ます。個人購入は日本でも可能で、パソコン工房やTSUKUMOの一般通販から買えます。法人向けのNTTPCは税込909,700円と安い一方、法人限定でクラスタ用ケーブルが別売(10,000円・税別)です。なお、NVIDIA AI Enterprise(NIMやNeMoを含む商用スタック)を本番利用する場合はライセンスの要否と条件が構成によって変わるため、総額はソフトウェアライセンスと保守を含めて販売店に確認してください。

よくある質問(FAQ)

DGX Sparkは個人で購入できますか?

できます。DGXシリーズで初めて個人開発者向けに開放された機種で、日本でもパソコン工房(984,980円・税込)やTSUKUMOの一般通販から購入できます。ただしNTTPCなど一部の法人向け販路は法人・教育機関に限定されています。

DGX Sparkの価格はいくらですか?

NVIDIA純正のFounders Editionは4,699ドルです。発売当初は3,999ドルでしたが、メモリ供給制約を理由に2026年2月に引き上げられました。日本国内の実売は約98万〜101万円(税込)です。

ASUS Ascent GX10とDGX Sparkはどちらを選ぶべきですか?

GB10・128GBメモリ・273GB/sの帯域・ConnectX-7・DGX OSはどちらも同一で、性能差はありません。違いは価格(GX10の1TB版は3,099.99ドル)、SSDの容量と暗号化グレード、保証窓口です。サポートをNVIDIAに一本化したい場合を除けば、コストではGX10が有利です。

DGX SparkでWindowsは使えますか?

使えません。OSはUbuntu 24.04ベースのDGX OS 7で、NVIDIAもOEM各社もWindowsを非対応としています。Windows環境の置き換えではなく、追加のAI開発機として使う機材です。

DGX Sparkは日本語に対応していますか?

本体のOS(DGX OS 7)とツール類のUIは英語が前提です。一方、日本語対応のLLMを動かすことに制約はなく、ELYZAのような国産モデルをローカルで実行できます。日本語で使いたいのがUIなのかモデルなのかで、答えが分かれる質問です。

DGX Sparkの消費電力はどのくらいですか?

付属ACアダプタは240Wで、GB10 SoC自体のTDPは140Wです。残りはメモリ・SSD・ConnectX-7などの周辺が使います。一般的なデスクトップGPU(RTX 5090単体で575W級)と比べると、性能あたりではなく設置環境の面で扱いやすい水準です。

DGX SparkとDGX Stationの違いは何ですか?

どちらもデスクサイドに置く機材ですが、規模が違います。DGX StationはGB300 Grace Blackwell Ultraを搭載し784GBの統合メモリを備える上位機で、DGX SparkはGB10・128GBの開発向け下位機です。DGX Sparkの守備範囲は開発・プロトタイピングと最大70Bのファインチューニングで、帯域273GB/sという制約から大量推論のサービング基盤には向きません。

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