Raspberry Pi Imagerは、Raspberry Pi用のOSイメージをmicroSDカードやUSBストレージへ書き込む公式ツールです。Linuxで使う場合、入手経路によって入る版が大きく違います。2026年9月26日時点の現行版は2.0.11.1ですが、Ubuntu標準リポジトリのaptで入るのは1.8.5、Snapでは1.9.6です。どちらも1.x系で、現行のRaspberry Pi OS(Trixie)に対するWi-Fi・SSH・ユーザーの事前設定を正しく書き込めません。この記事では、2.0系をLinuxへ入れる3つの方法、OSの書き込み手順、カスタマイズ項目、--cliによる書き込みを、公式ソースと配布元のデータに基づいて説明します。
まとめ:Linuxでの入手経路とバージョンの違い
- 現行版は2.0.11.1(2026-08-17公開)。2.0.0(2025-11-24)でUIがウィザード形式に変わり、1.x時代の
Ctrl+Shift+Xによる詳細設定画面はなくなった - Ubuntu・Debian系のx86_64では、公式サイトのAppImageか、GitHub Releasesの
.debを使う。Raspberry Pi OS上ならsudo apt install rpi-imagerで2.0.11が入る - Ubuntuの
apt(1.8.5)とSnap(1.9.6)は旧版。Imager 1.xはTrixieが使うcloudinit-rpi形式を知らないため、設定したはずのWi-FiやSSHが初回起動で反映されない - ホスト名・ユーザー・Wi-Fi・SSH・Raspberry Pi Connectは、書き込み前のカスタマイズ手順でまとめて設定できる
- コマンドラインでは
sudo rpi-imager --cli <イメージ> <デバイス>で書き込める。ただしホスト名やWi-Fiを直接指定するオプションはなく、cloud-initの設定ファイルを渡す
Linuxへの導入方法は、後述の配布経路表で使用するOSとCPUアーキテクチャに合わせて選べます。
Raspberry Pi Imagerの現行版と2.0での変更点
GitHub Releasesで公開日を確認すると、版の流れは次のとおりです。2.0.11.1は、2.0.11の公開後に配布された不具合修正版です。
| 版 | 公開日 | 主な変更 |
|---|---|---|
| 2.0.11.1 | 2026-08-17 | Pi Connect手順の「次へ」修正、Wayland用Qtライブラリ同梱 |
| 2.0.11 | 2026-08-14 | rpi-preseed形式に対応、armhf版AppImageを追加 |
| 2.0.0 | 2025-11-24 | 新UI(ウィザード形式)、CLI専用パッケージ |
| 1.9.6 | 2025-07-21 | 1.x系の最終版 |
| 1.8.5 | 2024-01-21 | Ubuntu標準リポジトリに残る版 |
2.0.0のリリースノートには、新UI、Raspberry Pi Connectとの連携、キーボード操作への対応、CLI専用パッケージの追加が挙がっています。変更は311ファイル・約7万9千行の追加に及びます。操作面で最も大きい変化は、1.xの「歯車アイコン」やCtrl+Shift+Xで開いていた詳細設定がなくなったことです。代わりにホスト名やユーザーの設定がウィザードの一工程になりました。2.0.11.1のQMLソースに登録されているショートカットはCtrl+Shift+P(性能データの書き出し)だけで、Ctrl+Shift+Xはありません。
LinuxにRaspberry Pi Imagerをインストールする方法
2026年9月26日に各配布元へ問い合わせた結果は次のとおりです。Ubuntu・Debian系では、ディストリビューション標準の経路ほど古い版が入る点に注意してください。
| 入手経路 | 入る版 | 対象 |
|---|---|---|
| 公式サイトのAppImage | 2.0.11.1 | x86_64 |
| GitHub Releasesの.deb | 2.0.11.1 | amd64 / arm64 / armhf |
| Raspberry Pi OSのapt | 2.0.11-1 | Trixie・Bookworm |
| Flathub | 2.0.11.1 | 開発元の認証バッジなし |
| Snap(stable) | 1.9.6 | amd64 / arm64 / armhf |
| Ubuntu標準リポジトリ(universe) | 1.8.5 | 24.04〜26.10 |
Ubuntuのrpi-imagerパッケージは、24.04 LTSからUbuntu 26.04 LTS、開発中の26.10まで1.8.5+noembedのままです。Snapの発行者アカウントはwaveformで、ストア上の認証(verified)は付いておらず、2026年1月に公開された1.9.6から先へ進んでいません。
AppImageで導入する手順(x86_64の各ディストリビューション)
公式ドキュメントが「Raspberry Pi OS以外のLinux」に案内している方法です。公式サイトの「Download for Linux (x86_64)」はimager_latest_amd64.AppImageを指し、2.0.11.1のファイルへ転送されます。
wget https://downloads.raspberrypi.com/imager/imager_latest_amd64.AppImage
chmod +x imager_latest_amd64.AppImage
# Ubuntu 24.04以降でFUSE 2が無い場合
sudo apt install libfuse2t64
sudo ./imager_latest_amd64.AppImage
AppImageは実行時にFUSE 2(libfuse.so.2)を使います。Ubuntu 24.04以降ではパッケージ名がlibfuse2t64に変わっているので、旧名のlibfuse2で探しても見つかりません。公式ドキュメントはAppImageをrootで実行する手順(sudo ./Raspberry_Pi_Imager-<version>-desktop-x86_64.AppImage)を示しています。ストレージへの書き込みには管理者権限が必要なためです。
.debで導入する手順(Ubuntu・Debian)
GitHub Releasesには、amd64・arm64・armhf向けの.debが公開されています。aptにファイルパスを渡すと、依存パッケージも一緒に解決されます。
wget https://github.com/raspberrypi/rpi-imager/releases/download/v2.0.11.1/rpi-imager_2.0.11.1-1_amd64.deb
sudo apt install ./rpi-imager_2.0.11.1-1_amd64.deb
rpi-imager --version
この.debの中身はネイティブビルドではありません。パッケージ定義(debian/rpi-imager.install)を見ると、AppImageを/usr/bin/rpi-imagerとして配置しています。依存関係にlibfuse2とpkexecが入っているのはこのためで、Ubuntu 24.04ではlibfuse2t64がlibfuse2を提供するので問題なく入ります。さらに、PolicyKitのポリシーと、rpiboot・fastboot機器用のudevルールも一緒に設置されます。Ubuntu標準の1.8.5が既に入っている場合は、apt policy rpi-imagerで入れ替わった版を確認してください。
Raspberry Pi OS上で導入する手順
Raspberry Pi自体で別のmicroSDカードやUSBストレージへ書き込む場合は、公式リポジトリ(archive.raspberrypi.com)から入れます。TrixieとBookwormのどちらでも2.0.11-1が配布されています。
sudo apt update
sudo apt install rpi-imager
GUIのないLite版やヘッドレス運用では、CLI専用のrpi-imager-cliパッケージも選べます。ただしrpi-imagerとは同時に入れられません(パッケージ定義でConflictsが指定されています)。USBブートでストレージを使う場合は、Raspberry PiでUSBメモリを使う方法でブート順の設定も確認してください。
Ubuntuのapt・Snapで入る1.xを避ける理由
旧版を避けるべき理由は、「古いから」だけではありません。ImagerがOSイメージに事前設定を書き込む方式はinit_formatというメタデータで決まり、1.xと2.xでは対応している方式が違います。公式マニフェスト(2026-09-15版)の値は次のとおりです。
| OSイメージ | init_format | 1.xでの事前設定 |
|---|---|---|
| Raspberry Pi OS(64-bit・32-bit・Lite・Full) | cloudinit-rpi | 反映されない |
| Raspberry Pi OS(Legacy=Bookworm) | systemd | 反映される |
リポジトリ内の文書doc/os_customisation_formats.mdによると、Imager 1.xが扱えるのはsystemdとcloudinitだけです。しかも1.xには、知らない形式をsystemdとみなして書き込む不具合があります。その結果、Trixieのイメージに1.xで設定を書き込むと、画面上は成功したように見えても、初回起動時に何も適用されません。Wi-Fiを事前設定したヘッドレス構成では、ネットワークにつながらずSSHもできない状態になります。すでに入っているImagerの版は次の方法で確認できます。
rpi-imager --version
apt policy rpi-imager
snap list rpi-imager
# 旧版を外す場合
sudo apt remove rpi-imager
sudo snap remove rpi-imager
Raspberry Pi ImagerでOSを書き込む手順
2.0のウィザードは、左の工程一覧を上から順に進める作りです。公式ドキュメントの手順は次のとおりです。
- Device:Raspberry Piのモデル(Pi 5、Pi 4、Zero 2 Wなど)を選ぶ
- OS:OSを選ぶ。一覧の最上位がそのモデルの推奨OS。手元のイメージは「Use custom」から選ぶ
- Storage:書き込み先のmicroSDカードやUSBストレージを選ぶ
- Customisation:カスタマイズに対応するOSなら、ホスト名やユーザーを設定する(後述)
- Writing:設定の要約を確認して「Write」を押し、「I understand, erase and write」で消去と書き込みを承認する
書き込みが終わると検証(verify)が始まります。「Skip verification」で省略もできますが、公式ドキュメントは検証の完了を推奨しています。Storageの画面では「Exclude system drives」を必ずオンのままにしてください。オフにしてPCの内蔵ディスクを選ぶと、ドライブ名を正確に入力しない限り先へ進めない確認画面が出ます。この確認画面が出たら操作を止め、選択したドライブの容量・機種名・接続先を確認してください。
OSの選択肢は、Raspberry Pi OSのほかに「Other general-purpose OS」(Ubuntu Desktop・Server 26.04.1など)、「Media player OS」、「Emulation and game OS」などのカテゴリに分かれています。Pi 4と5のどちらを選ぶか迷っている場合は、Raspberry Pi 5 と Pi 4 の違いで対応OSと性能差を比べられます。
OSカスタマイズで設定できる項目(ホスト名・ユーザー・Wi-Fi・SSH)
カスタマイズに対応したOSを選ぶと、書き込み前に次のサブ画面が順に表示されます。ここで設定しておくと、ディスプレイやキーボードを付けずに初回起動からネットワーク経由で操作できます。
| サブ画面 | 設定内容 | 入力の制約・挙動 |
|---|---|---|
| Hostname | ホスト名 | 英数字とハイフンのみ |
| Localisation | タイムゾーン・キーボード | 首都を選ぶと自動入力 |
| User | ユーザー名・パスワード | 小文字・数字・_・-のみ |
| Wi-Fi | SSID・パスワード | 非公開SSIDは「Hidden SSID」 |
| Remote Access | SSHの有効化 | パスワードか公開鍵を選択 |
| Raspberry Pi Connect | Connectへの登録 | 対応OSのみ表示 |
ホスト名はmDNSで配信されるので、同じネットワーク内の端末からssh ユーザー名@ホスト名.localで接続できます。Localisationで選んだ首都は、Wi-Fiの規制ドメイン(国コード)の設定にも使われます。日本で使うなら「Tokyo」を選べば、タイムゾーンと規制ドメインがそろいます。SSHの公開鍵認証を選ぶと、PCの~/.sshにあるRSA公開鍵が自動で入ります。無ければ「Browse」で鍵ファイルを指定します。
パスワードなしのsudoを有効にしようとすると、2.0では警告画面が出ます。2.0.11では、利用者がパスワードなしsudoを断った場合にcloud-initへsudo: nullを書き込むよう修正されました。リリースノートによると、それまでcloud-init形式のイメージではOS側の既定値が優先され、断ってもパスワードなしsudoが有効になっていました。2.0.10以前でTrixieのイメージを書き込んで運用している場合は、/etc/sudoers.d/の内容を一度確認してください。書き込み後にAWS IoTなどへつなぐ手順は、ラズパイとAWS IoT Coreを接続する手順でSSH設定から説明しています。
手元のイメージ(Use custom)でカスタマイズ画面が出ないときの対処
自分でダウンロードした.img.xzを「Use custom」で選ぶと、2.0ではカスタマイズの工程が表示されません。どの形式で設定を書けばよいかを判断できないため、init_formatをnoneとして扱う仕様です。1.xは同じ場面でsystemd形式を決め打ちで書き込んでいたため、Trixieでは設定が黙って無視されていました。2.0はそれを避けるために、あえて何もしない動きになっています。
対処法は、公式リポジトリのdoc/local_json/create_local_json.pyをダウンロードし、その保存先を作業ディレクトリにして、手元のイメージ用のマニフェストを作ることです。スクリプトは公式マニフェストを取得し、ファイル名が一致するローカルイメージにメタデータを付けてos_list_local.rpi-imager-manifestを出力します。
python3 create_local_json.py --search-dir ~/Downloads --verify-checksums --output-json ~/Downloads/os_list_local.rpi-imager-manifest
rpi-imager --repo ~/Downloads/os_list_local.rpi-imager-manifest
--online --dry-runを付けて実行すると、対象になるOSの一覧だけを表示できます。2026年9月26日時点の公式マニフェストに対して実行すると、Raspberry Pi OSの各版に続いてUbuntu Desktop 26.04.1などが列挙されます。公式マニフェストに無いファイル名のイメージ(自作イメージなど)は対象外です。
rpi-imager --cliでコマンドラインから書き込む方法
2.0には、GUIを起動せずに書き込むCLIモードがあります。GUI版では--cliを付けて起動し、CLI専用パッケージ・AppImageではrpi-imager-cliを使います。2.0.11.1のソース(src/cli.cpp)に定義されている主なオプションは次のとおりです。
| オプション | 働き |
|---|---|
--sha256 ハッシュ |
書き込みデータのSHA-256を照合 |
--disable-verify |
書き込み後の検証を省略 |
--cloudinit-userdata ファイル |
cloud-initのuser-dataを追加 |
--cloudinit-networkconfig ファイル |
cloud-initのnetwork-configを追加 |
--first-run-script ファイル |
firstrun.shを追加(systemd形式) |
--disable-eject |
書き込み後に取り外さない |
--enable-writing-system-drives |
リムーバブル以外への書き込みを許可 |
--quiet / --debug / --log-file |
出力量の調整・ログ保存 |
--sha256に渡すのは、配布されている圧縮ファイル(.img.xz)ではなく展開後のイメージのハッシュです。書き込みと並行して計算した値を最後に比較する方式なので、不一致で失敗した時点で書き込み先はすでに上書きされています。
書き込み元にはローカルファイルのほか、HTTPやHTTPSのURLも指定できます。以下は、対象OSに適合するuser-dataとnetwork-configを作業ディレクトリに用意済みの場合の例です。書き込み先はlsblkで確認したデバイス名を渡します。
lsblk -o NAME,SIZE,RM,TRAN,MODEL
sudo rpi-imager --cli \
--cloudinit-userdata ./user-data \
--cloudinit-networkconfig ./network-config \
./2026-09-15-raspios-trixie-arm64-lite.img.xz /dev/sdb
root権限なしで実行するとERROR: Not running as root.が出て終了します。指定したデバイスがリムーバブル一覧に無い場合はDestination drive is not in list of removable volumes.と表示され、書き込める候補が列挙されます。CLIにはホスト名・Wi-Fi・ユーザーを直接指定するオプションが無く、GUIのカスタマイズ画面に当たる設定は、cloud-initのファイルかfirstrun.shで自分で用意します。同じ設定のイメージを何枚も作る用途では、GUIより手順を再現しやすくなります。
書き込みや初回起動でつまずいたときの確認点
Linux特有の原因と、版の違いに起因する原因が多いので、次の順に確認すると切り分けが早く進みます。
- AppImageが起動しない:FUSE 2が無いと
libfuse.so.2を読み込めずに止まる。Ubuntu 24.04以降はlibfuse2t64を入れる - Wayland環境で表示がおかしい:2.0.11.1でWaylandデスクトップ向けのQtライブラリが同梱された。2.0.11以前ならまず更新する
- ストレージが一覧に出ない:root権限なしで起動していないか、カードリーダーがリムーバブル機器として認識されているかを
lsblkのRM列で確認する - 設定したWi-FiやSSHが効かない:Imagerが1.xでないか(
rpi-imager --version)、「Use custom」でカスタマイズを省いていないかを確認する - 書き込みや検証が途中で失敗する:2.0.11でLinuxのドライブ排他ロックが加わった。他のプロセスがカードをマウントしていないかを確かめ、カードとリーダーを替えて再試行する
書き込んだOSが起動した後の活用例として、広告ブロックDNSを動かすPi-holeの使い方や、ラズパイでスマートホームを自作する方法があります。
よくある質問
Ctrl+Shift+Xで詳細設定(Advanced options)が開かないのはなぜ?
2.0.0で詳細設定画面が廃止され、ホスト名・ユーザー・Wi-Fi・SSHの設定はウィザードの「Customisation」工程に移ったためです。OSとストレージを選ぶと、カスタマイズに対応したOSなら自動で表示されます。
Ubuntuでsudo apt install rpi-imagerを実行すると古い版が入る?
はい。Ubuntuの標準リポジトリは24.04から26.10まで1.8.5のままです。現行のRaspberry Pi OSを事前設定付きで書き込むなら、公式サイトのAppImageかGitHub Releasesの.debで2.0系を入れてください。
Raspberry Pi Imagerは日本語で表示できる?
起動時に言語を選ぶ画面はありますが、日本語訳はほとんど進んでいません。2.0.11.1のソースに含まれる日本語翻訳ファイル(rpi-imager_ja.ts)は、745件中704件の訳文が空です。画面の大半は英語で表示されると考えてください。
Raspberry Pi Imagerを使わずにOSを書き込む方法は?
Linuxならxz -dc イメージ.img.xz | sudo dd of=/dev/sdX bs=4M status=progress conv=fsyncでも書き込めます。ただしこの方法では事前設定が入りません。Raspberry Pi 4B以降の主力モデルとPi 400・500・500+では、有線LANにつないでShiftキーを押しながら起動する「Network Install」も使えます。
Raspberry Pi(arm64)自体でImagerを動かせる?
動かせます。Raspberry Pi OSではsudo apt install rpi-imagerで2.0.11が入り、GitHub Releasesにもarm64とarmhfの.debがあります。USB接続のカードリーダーを使えば、Raspberry Pi 1台で別のmicroSDカードを作れます。