Arch LinuxのISOをUSBに書き込む手順|dd・Rufus・Ventoyの使い分けとインストールまで
Arch Linuxのインストールは、ISOをUSBメモリに書き込む最初の一歩でつまずくことが少なくありません。書き込み先をパーティションに指定した、Windowsのツールで既定のモードのまま焼いた、といった理由でUSBが起動せず、そこから先へ進めないケースです。この記事では2026年7月版のISOを例に、ISOの入手と署名検証、dd・cp・Rufus・Ventoyの使い分け、sgdiskでのパーティション作成、pacstrapでのシステム導入、GRUB設定までを実際に打つコマンドで通します。起動しないときの切り分けも症状別にまとめました。
まとめ
- ISOは公式ダウンロードページから取得し、書き込み前にチェックサムの照合とGPG署名の検証を済ませます。2026年7月版は
archlinux-2026.07.01-x86_64.isoで約1.5GB、USBメモリは4GB以上を用意します。 - 書き込み先はパーティション(
/dev/sdb1)ではなくデバイス全体(/dev/sdb)です。ArchWikiがパーティション番号を含めないよう明示的に警告している箇所で、起動しないUSBの典型的な原因になります。 - LinuxとmacOSはdd、ISOがisohybrid形式なのでcpでも書けます。WindowsはRufusを使い、既定のISOイメージモードで起動しなければDDイメージモードで焼き直します。
- 複数のディストリビューションを1本のUSBで使い分けたいならVentoyを選びます。ISOをコピーするだけで、書き込みのたびにUSBを消す必要がありません。
- インストール本体は、公式インストーラのarchinstall(最新は4.4/2026年6月28日公開)を使えば10分程度で終わります。パーティション構成を自分で決めたい場合だけsgdiskとpacstrapの手動手順に進みます。
ISOの入手から順に追いますが、インストール本体をarchinstallで済ませるつもりなら「archinstallと手動インストールの判断基準」まで読み飛ばして構いません。
ISOの入手と署名検証
ダウンロードするファイルとUSBメモリの容量
Arch Linuxの公式ダウンロードページでは、月初にビルドされたISOが配布されます。2026年7月時点の最新はarchlinux-2026.07.01-x86_64.isoで、サイズは約1.5GBです。同じディレクトリにsha256sums.txt、b2sums.txt、そして署名ファイルarchlinux-2026.07.01-x86_64.iso.sigが置かれています。検証に使うので、ISOと一緒に落としておきます。
USBメモリは4GB以上を用意します。書き込むとUSB内のデータは完全に消えるため、残したいファイルがないか事前に確認してください。なお書き込み後のUSBはWindowsから「フォーマットされていないドライブ」として認識されますが、これは正常です。表示される「フォーマットしますか」というダイアログは必ずキャンセルしてください。
sha256とGPG署名による改ざん検出
ミラーサーバー経由でISOを取得する以上、転送途中の破損や差し替えの可能性はゼロではありません。Arch Linux公式もHTTPで取得したイメージについて、使用前に署名を検証するよう案内しています。手順は2段階です。まずチェックサムでファイルの同一性を確認します。
$ sha256sum -c sha256sums.txt --ignore-missing
archlinux-2026.07.01-x86_64.iso: OK
次に、ISOが本当にArchの開発者によって署名されたものかをGPGで検証します。公開鍵を持っていない場合は、鍵の自動取得オプションを付けて実行します。
$ gpg --keyserver-options auto-key-retrieve --verify archlinux-2026.07.01-x86_64.iso.sig
2026年7月版の署名者は[email protected]で、鍵のフィンガープリントは3E80 CA1A 8B89 F69C BA57 D98A 76A5 EF90 5444 9A5Cです。出力に表示されたフィンガープリントがこれと一致し、かつ「Good signature」と出れば検証成功です。「WARNING: This key is not certified with a trusted signature」という警告は、その鍵を自分が信頼済みとして登録していないという意味なので、フィンガープリントが一致していれば問題ありません。逆に「BAD signature」が出たISOは使わず、別のミラーから取り直してください。
ISOをUSBへ書き込む方法の選び方
Arch LinuxのISOはisohybrid形式で作られており、光学メディア用のイメージがそのままUSBのブートイメージとしても機能します。このため専用の書き込みツールを使わずとも、バイト列をデバイスへ流し込むだけで起動可能なUSBができます。ArchWikiが挙げる主な方法は次の通りです。
| 方法 | 対応OS | 複数ISO | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| dd | Linux / macOS | 不可 | 出力先の指定ミスでディスク破壊 |
| cp | Linux / macOS | 不可 | isohybrid形式のISOのみ |
| Rufus | Windows | 不可 | 起動しない場合はDDモードで再作成 |
| Ventoy | Windows / Linux | 可 | 初回にUSBへ専用領域を作成 |
1本のUSBをArch専用にするならdd系、WindowsしかないならRufus、複数のディストリビューションを持ち歩くならVentoyという選び分けになります。ArchWikiには挙がっていませんが、コマンドで書き込み先を間違えるのが怖い場合は、Raspberry Pi ImagerでOSに「Use custom」を選び、ISOを指定してUSBへ書く手もあります。GUIで対象デバイスを選べるぶん誤爆しにくい方法です。導入方法はRaspberry Pi Imagerの各OSへのインストールとOS書き込み手順で詳しく扱っています。
LinuxとmacOSでのddとcpによる書き込み
まず書き込み先のデバイス名を確認します。
$ lsblk -o NAME,SIZE,MODEL,TRAN
$ ls -l /dev/disk/by-id/ | grep usb
ArchWikiが示すddの書式は次の通りで、進捗表示と書き込み完了の同期を付けた形になっています。
# dd bs=4M if=~/Downloads/archlinux-2026.07.01-x86_64.iso of=/dev/disk/by-id/usb-SanDisk_Ultra_4C530001 conv=fsync oflag=direct status=progress
出力先に/dev/sdbではなく/dev/disk/by-id/配下のパスを使っているのには理由があります。/dev/sdbのような名前は接続順で変わるため、再起動やUSBの抜き差しで内蔵SSDを指してしまう危険があるからです。by-idのパスはデバイス固有なので取り違えが起きません。conv=fsyncはキャッシュ上のデータをすべて書き終えてからコマンドを終了させる指定で、これがないとddの終了直後にUSBを抜いてしまい書き込みが途中で切れることがあります。oflag=directはページキャッシュを経由せず直接書く指定で、進捗表示が実際の書き込み量に近づきます。
isohybridであることを活かせば、cpでも同じ結果が得られます。cpにはキャッシュを同期する仕組みがないため、実行後にsyncを必ず打ちます。
# cp ~/Downloads/archlinux-2026.07.01-x86_64.iso /dev/disk/by-id/usb-SanDisk_Ultra_4C530001
# sync
macOSはデバイス名の体系もddの方言も異なります。ブロックサイズの接尾辞はGNU版の大文字ではなく小文字で、bs=4Mと書くとdd: bs: illegal numeric valueで弾かれます。書き込み先にはrを付けたrawデバイスを指定すると速度が出ます。
$ diskutil list
$ diskutil unmountDisk /dev/disk4
$ sudo dd bs=4m if=archlinux-2026.07.01-x86_64.iso of=/dev/rdisk4 status=progress
WindowsでのRufusとVentoyの使い分け
WindowsではRufusが定番です。デバイス欄でUSBを選び、ブートの種類でArchのISOを指定し、パーティション構成をGPTにしてスタートを押します。注意すべきなのはモードの選択です。Rufus 3.0以降ではスタートをクリックした後に書き込みモードの選択ダイアログが表示され、既定はISOイメージモードになっています。ArchWikiは、既定のISOイメージモードで起動しないドライブができた場合はDDイメージモードを使うよう明記しています。作成したUSBがブートメニューに出てこない、あるいは起動途中で止まる場合は、モードを切り替えて作り直すのが最初に試すべき対処です。
Ventoyは考え方が違います。最初にUSBへVentoy自身をインストールしておくと、以降はISOファイルをそのUSBにファイルとしてコピーするだけで済みます。起動時にブートメニューが出て、コピーしてあるISOのどれを立ち上げるか選べる仕組みです。ISO1本あたり数分かかる書き込み作業が、単なるファイルコピーで済みます。Arch以外にKali Linuxの導入と機能で扱うようなセキュリティ検証用のディストリビューションも同じUSBへ入れておけます。
書き込みが失敗する典型パターン
最も多いのは出力先の指定ミスです。ArchWikiも警告している通り、/dev/sdb1や末尾に-part1が付くパスのようにパーティション番号を含めると、ISOがパーティションの内部に書かれ、ブートに必要なパーティションテーブルが作られません。
次に多いのが、書き込み前にUSBをフォーマットしてしまうケースです。ddやcpはパーティションテーブルごと上書きするため事前のフォーマットは無意味で、Ventoyの場合はUSBの構造をVentoy側が管理しているので手動フォーマットが領域を壊します。3つ目は抜くタイミングです。conv=fsyncやsyncを省いてプロンプトが戻った瞬間に抜くと、末尾が書かれていない不完全なメディアができ、起動は始まるのにカーネル読み込みの途中で停止するという分かりにくい症状になります。
なお、書き込んだUSBの中身を後から確認したくなっても、通常のデータ用USBのようにはマウントできません。ISO9660のイメージが丸ごと書かれているためで、確認するならlsblk -fでラベル(ARCH_202607のような形式)を見るか、mount -o loopで元のISOファイル側をマウントします。
USBからのライブ起動とUEFI設定
起動デバイスの選択とセキュアブートの扱い
USBを挿した状態でPCを起動し、メーカーごとの起動メニューキー(多くはF12、F11、Esc)を押してUSBを選びます。UEFI環境では同じUSBが「UEFI: 製品名」と「製品名」の2通りで表示されることがあります。必ずUEFI表記の方を選んでください。レガシー側で起動すると/sys/firmware/efi/efivarsが現れず、後のgrub-install --target=x86_64-efiが「EFI variables are not supported on this system.」で失敗します。UEFIで起動し直す以外に回避策はないため、ここは最初に確認しておく価値があります。
セキュアブートが有効なままだと、Archの標準ISOは署名を持たないためファームウェアに拒否されます。「Secure Boot violation」「Invalid signature detected」といったメッセージが出た場合は、UEFI設定でセキュアブートを無効にします。あわせて高速起動(Fast Boot)も無効にしておくと、起動メニューにUSBが現れないトラブルを避けられます。Windowsとのデュアルブートを組む場合は、Windows側の高速スタートアップも切っておきます。これが有効だとシャットダウン時にWindowsのシステム領域(NTFS)が休止状態のまま残り、Linuxから読み書きでマウントするとファイルシステムが壊れることがあるためです。ESPはFAT32なのでこの影響を受けませんが、Windows領域をArchからマウントする予定があるなら無効化は必須です。
ライブ環境で最初に確認する項目
ライブ環境が起動するとrootのプロンプトが出ます。作業に入る前に、キーボード配列、起動モード、ネットワーク、時刻の4点を確認しておくと後戻りがありません。
# loadkeys jp106
# ls /sys/firmware/efi/efivars
# ping -c 3 archlinux.org
# timedatectl status
/sys/firmware/efi/efivarsが存在すればUEFIモードで起動できています。時刻についてはライブ環境でsystemd-timesyncdが既定で有効になっているため、timedatectl statusで「System clock synchronized: yes」を確認するだけで足ります。無線LANしかない環境ではpingが通らないので、iwctlで接続してから進みます。
# iwctl
[iwd]# device list
[iwd]# station wlan0 scan
[iwd]# station wlan0 get-networks
[iwd]# station wlan0 connect SSID名
[iwd]# exit
パスフレーズは接続時に対話で聞かれます。一行で済ませたい場合はiwctl --passphrase パスフレーズ station wlan0 connect SSID名の形にまとめられます。ステルスSSIDに接続するときはconnectではなくconnect-hiddenを使います。
archinstallと手動インストールの判断基準
Arch Linuxの公式ISOには、対話形式のインストーラであるarchinstallが同梱されています。最新版は4.4(2026年6月28日公開)で、4.0以降はTextualベースのTUIに刷新され、ディスク構成・デスクトップ環境・ブートローダー・ネットワーク・ユーザー作成までをメニューで選ぶだけになりました。ライブ環境で次を打つだけで起動します。
# archinstall --version
# archinstall
結論から言えば、「Arch Linuxを使いたい」ことが目的ならarchinstallを使うべきです。archinstallなら10分程度で終わる工程に手動では1時間前後を費やすことになりますが、その差で得られるのは達成感だけで、後の運用で必要になる知識はpacmanとsystemdの使い方であってpacstrapのオプションではありません。archinstallは構成をJSON設定ファイルとして保存できるため、同じ構成を複数台へ展開する場面でも手動より確実です。
一方で、手動手順を選ぶべき場面もはっきりしています。LVMやBtrfsのサブボリュームを自分の設計どおりに切りたい場合、既存のWindowsパーティションを残したままArchを追加する場合、暗号化とスワップの組み合わせを細かく制御したい場合です。archinstallのメニューは一般的な構成を素早く作ることに最適化されているため、ディスクレイアウトに要件がある環境ではかえって設定の当て込みに時間を取られます。既存環境を壊さずに追加インストールする局面では、パーティションを自分の手で切る方が安全です。以降は手動手順を選んだ場合の流れになります。
sgdiskによるパーティション作成とフォーマット
GPTへのESPとルートパーティションの作成
UEFI環境ではGPTを使い、EFIシステムパーティション(ESP)とルートパーティションを用意します。ライブ環境にはsgdiskのほかcfdisk・fdisk・partedも入っており、対話画面で切るならcfdisk、手順を記録して再現したいならsgdiskという使い分けになります。sgdiskはgdiskの非対話版で、コマンド一行で完結します。まず対象ディスクを確認します。
# lsblk -o NAME,SIZE,TYPE,MOUNTPOINTS
# sgdisk -p /dev/sda
ディスクを特定したら、既存のパーティションテーブルを消してから2つ切ります。--zap-allはGPTとMBRの両方を消去するため、旧環境が残っていても確実にやり直せます。
# sgdisk --zap-all /dev/sda
# sgdisk -n 1:0:+1G -t 1:ef00 -c 1:"EFI system partition" /dev/sda
# sgdisk -n 2:0:0 -t 2:8304 -c 2:"Linux root" /dev/sda
# sgdisk -p /dev/sda
-n 1:0:+1Gは「1番目のパーティションを、空きの先頭から1GiB分」という意味です。-n 2:0:0の2つ目のゼロは残り全部を指します。-tで指定するタイプコードは、ef00がEFI System、8304がLinux x86-64 root、8200がLinux swap、8300が汎用のLinux filesystemです。ESPのサイズについて、Arch公式のインストールガイドは最低300MiB、複数のカーネルをインストールする場合は最低1GiBとしています。LTSカーネルを併用する可能性を考えると、最初から1GiB確保しておく方が後で切り直す手間がありません。
フォーマットとマウントの実行
ESPはFAT32でなければファームウェアから読めません。ルートは特別な要件がなければext4で十分です。なおmkfs.vfatはmkfs.fatへのシンボリックリンクなので、どちらの表記で打っても結果は同じです。
# mkfs.fat -F 32 /dev/sda1
# mkfs.ext4 /dev/sda2
# mount /dev/sda2 /mnt
# mount --mkdir /dev/sda1 /mnt/boot
mount --mkdirはマウントポイントのディレクトリ作成を同時に行うオプションで、mkdir -pを打つ手間が省けます。ESPのマウント先を/mnt/bootにしているのは、1GiB確保したESPへカーネルとinitramfsを直接置く構成にするためです。/bootと/boot/efiの二段構えにならないので、後述するgrub-installの--efi-directoryを取り違えにくくなります。ただしFAT32なのでパーミッションやシンボリックリンクは保持されません。
スワップファイル・パーティション・zramの使い分け
スワップはパーティション、スワップファイル、zramの3通りから選びます。パーティションを切る場合はタイプコード8200で作成し、mkswapとswaponを実行します。ただし後からサイズを変えにくいため、SSD搭載機ではスワップファイルの方が扱いやすい構成です。
# mkswap -U clear --size 4G --file /mnt/swapfile
# swapon /mnt/swapfile
ここで作った/mnt/swapfileは、インストール後のシステムでは/swapfileとして見えます。後述のgenfstab -U /mntが有効なスワップを自動で/etc/fstabへ書き出すため、fstabの手編集は不要です。ハイバネートを使わないのであれば、物理メモリの一部を圧縮領域として使うzramという選択もあります。ディスクへの書き込みが発生しないぶんSSDの消耗を避けられますが、ハイバネートにはディスク上のスワップ領域が必須なので、休止状態を使うならファイルかパーティションを選びます。どのサイズが妥当か、swappinessをどう調整するかはLinuxのスワップ領域の確認方法と推奨サイズで数値とともに整理しています。
pacstrapによるベースシステム導入からGRUBまで
ミラー選択とベースパッケージの導入
ライブ環境ではreflectorが起動時に自動実行され、直近で同期されたHTTPSミラーが速度順に設定されています。ただし国は絞られないため、日本のミラーへ寄せるには手動で上書きします。
# reflector --country Japan --age 12 --protocol https --sort rate --save /etc/pacman.d/mirrorlist
# pacstrap -K /mnt base linux linux-firmware vim sudo networkmanager
-Kは新しいインストール先でpacmanのキーリングを初期化するオプションです。これを付け忘れると、chroot後のパッケージ導入で署名検証が通らずエラーになります。小文字の-kはカーネルバージョンの指定でまったく意味が異なるため、大文字である点に注意してください。
ベースパッケージに何を含めるかは好みが分かれますが、baseだけではテキストエディタもsudoもネットワーク管理も入りません。再起動後に設定ファイルを編集できず詰むのを避けるため、エディタ・sudo・networkmanagerは最初から入れておくのが実用的です。無線LANで運用する機器ならiwdも足します。
chroot後のロケール・時刻・ユーザーの設定
fstabを生成してから新環境に入ります。
# genfstab -U /mnt >> /mnt/etc/fstab
# arch-chroot /mnt
chroot後は、タイムゾーンのリンクを張り、ハードウェアクロックを合わせ、ロケールを生成し、ホスト名とパスワード、そして一般ユーザーを設定する流れです。
# ln -sf /usr/share/zoneinfo/Asia/Tokyo /etc/localtime
# hwclock --systohc
# vim /etc/locale.gen
# locale-gen
# echo "LANG=en_US.UTF-8" > /etc/locale.conf
# echo "archbox" > /etc/hostname
# passwd
# useradd -m -G wheel -s /bin/bash archuser
# passwd archuser
# EDITOR=vim visudo
/etc/locale.genではen_US.UTF-8 UTF-8とja_JP.UTF-8 UTF-8の行頭のコメント記号を外してからlocale-genを実行します。ここでLANGにja_JP.UTF-8ではなくen_US.UTF-8を設定しているのは意図的です。この時点のシステムには日本語フォントが入っていないため、日本語ロケールにするとコンソールのメッセージが全て豆腐(□)になり、エラーの内容が読めなくなります。日本語表示はフォントを導入するデスクトップ環境の設定時に切り替えれば十分です。
visudoでは%wheel ALL=(ALL:ALL) ALLの行頭のコメント記号を外し、wheelグループのユーザーがsudoを使えるようにします。この一般ユーザーの作成は省略できません。SDDMもGDMも既定でrootのログインを拒否するため、ユーザーを作らないままデスクトップ環境を入れるとログイン画面から先に進めなくなります。
GRUBのインストールとネットワークの引き継ぎ
ブートローダーにはGRUBを使います。UEFI環境ではNVRAMにブートエントリを書き込むefibootmgrが必須なので、grubと同時に導入します。
# pacman -S grub efibootmgr
# grub-install --target=x86_64-efi --efi-directory=/boot --bootloader-id=GRUB
# grub-mkconfig -o /boot/grub/grub.cfg
--efi-directoryにはESPをマウントした場所を指定します。前述の手順では/mnt/bootにマウントし、chroot後は/bootとして見えるので/bootを指定します。ここを/boot/efiと書く記事もありますが、それはESPを/boot/efiにマウントした構成の話であり、自分のマウント先と一致していなければ起動しません。--bootloader-idはUEFIのブートメニューに表示される名前になります。
ライブ環境で使っていた無線LANの接続情報は、インストール先には引き継がれません。再起動後にネットワークを使うため、chroot内でサービスを有効化しておきます。スワップファイルを作った場合は、それがルートのファイルシステムを掴んだままだとumountが失敗するので、先に無効化します。
# systemctl enable NetworkManager
# exit
# swapoff /mnt/swapfile
# umount -R /mnt
# reboot
再起動後のデスクトップ環境とpacman運用
再起動してGRUBメニューからArchが立ち上がり、ログインプロンプトが出れば最小構成のインストールは完了です。ここからGUIを載せます。KDE PlasmaとGNOMEが主要な選択肢で、必要なパッケージとディスプレイマネージャの組み合わせが異なります。
# pacman -S plasma-meta konsole dolphin sddm
# systemctl enable sddm
# pacman -S noto-fonts-cjk noto-fonts-emoji fcitx5-im fcitx5-mozc
GNOMEを選ぶ場合はpacman -S gnome gdmとsystemctl enable gdmに読み替えます。端末エミュレータはgnomeグループに含まれるので個別指定は不要です。フォントを入れた後であれば/etc/locale.confのLANGをja_JP.UTF-8に変更しても表示が壊れません。fcitx5は入力メソッドで、デスクトップにログインし直してから設定ツールでMozcを有効にします。メモリ1GB以下の機材ではKDE PlasmaもGNOMEも実用速度に届かないため、Tiny Core Linuxの基本設計と動作原理で扱うような超軽量ディストリビューションを検討する方が現実的です。
運用面では、パッケージの更新はpacman -Syuで一括して行います。Arch Linuxはローリングリリースなので、個別パッケージだけを更新するpacman -Sy パッケージ名は依存関係の不整合を招くため使いません。不要になったパッケージと孤立した依存をまとめて消すにはpacman -Rns パッケージ名を使います。Linux From Scratchの仕組みと目的はpacstrapが裏で何をしているかをソースビルドから追う内容なので、Archのパッケージ管理に慣れた後に読むと理解が深まります。
USB起動とインストールでつまずいたときの切り分け
症状ごとに原因はほぼ決まっています。上から順に確認すると早く復旧できます。
| 症状 | 主な原因 | 対処 |
|---|---|---|
| USBが起動メニューに出ない | Fast Boot有効 | UEFIでFast Bootを無効化 |
| Secure Boot violation | セキュアブート有効 | セキュアブートを無効化 |
| 起動途中で停止 | 書き込み先がパーティション | デバイス全体へ書き直し |
| カーネル読み込みで停止 | 書き込み未完了 | conv=fsyncを付けて再作成 |
| Windowsで作ると起動しない | RufusのISOモード | DDイメージモードで再作成 |
| efivarsが存在しない | レガシーBIOSで起動 | UEFI表記のデバイスを選択 |
| pacstrapが署名エラー | -Kの付け忘れ | pacstrap -Kで再実行 |
| grub-installが失敗 | efibootmgr未導入 | pacman -S grub efibootmgr |
| umount -Rがbusyで失敗 | swapon状態のまま | swapoffしてから再実行 |
| デスクトップにログイン不可 | 一般ユーザー未作成 | useraddでユーザーを追加 |
切り分けの基本は、どの段階まで進んだかを見ることです。ブートメニューにUSBが現れない段階ならファームウェア側の設定、メニューには出るが起動が進まないなら書き込み方法、ライブ環境までは入れるがインストール中に失敗するならコマンドのオプションが原因です。ライブ環境まで到達していれば書き込みは成功しているので、USBを作り直す必要はありません。
よくある質問
Arch LinuxのISOはどのくらいの容量のUSBメモリに書き込めますか?
2026年7月版のISOは約1.5GBなので、4GB以上のUSBメモリを推奨します。書き込むとUSB内のデータは全て消え、書き込み後のUSBはWindowsから未フォーマットのドライブに見えますが、これは正常な状態です。Ventoyで複数のディストリビューションを入れて使い分けるつもりなら、ISOを何本も置けるよう32GB以上を選んでおくと後が楽になります。
RufusでArch LinuxのインストールUSBを作れますか?
作れます。デバイス欄でUSBを選び、ブートの種類でISOを指定し、パーティション構成をGPTにしてスタートを押します。Rufus 3.0以降ではスタート後にモード選択のダイアログが出るので、まずは既定のISOイメージモードで進めてください。それで起動しないドライブができた場合はDDイメージモードを選んで作り直します。ArchWikiもこの手順を案内しています。
ddの書き込み先はデバイス全体とパーティションのどちらを指定しますか?
パーティション番号を含まないデバイス全体、つまり/dev/sdbのような指定です。/dev/sdb1を指定するとISOがパーティションの内部に書かれ、ブートに必要なパーティションテーブルが作られないため起動しません。/dev/sdbという名前は接続順で変わり内蔵SSDを指してしまう危険があるので、/dev/disk/by-id/配下のデバイス固有のパスを使うとより安全です。
ライブUSBを作ったのに起動しません。何を確認すればよいですか?
まずUEFI設定でセキュアブートとFast Bootを無効化し、起動メニューで「UEFI:」と付いた方のデバイスを選んでいるか確認します。それでも起動しない場合は書き込み側が原因です。書き込み先にパーティション番号を含めていないか、Windowsで作ったならRufusのモードがISOイメージモードのままではないかを見直し、デバイス全体を指定してconv=fsyncを付けて作り直します。
archinstallを使えば手動のパーティション作成は不要になりますか?
一般的な構成であれば不要です。archinstall 4.4はディスク構成からデスクトップ環境、ユーザー作成までを対話メニューで設定でき、10分程度で完了します。ただしLVMやBtrfsのサブボリュームを自分の設計で切る場合、既存のWindows領域を残してArchを追加する場合は、sgdiskで手動にパーティションを切る方が確実です。要件のあるディスクレイアウトはメニューへの当て込みに時間を取られます。