Raspberry Pi Pico Wとは?基本仕様・モデルの違い・できることを総まとめ
Raspberry Pi Pico Wは、1,000円台で買えるマイコンボードにWi-FiとBluetooth Low Energy(BLE)を載せた製品です。無印Picoと同じRP2040を積みながら無線チップを追加したことで、センサーの値をスマホやクラウドへ飛ばすIoT工作が1枚で完結します。このページでは、基本仕様、無印Pico・WH・Pico 2 Wとの違い、ESP32やArduinoとの棲み分け、購入から初回Wi-Fi接続までの手順、そして日本国内で使ううえで外せない技適(電波法)の注意点までを、電子工作を始める前提知識ゼロの人向けに一度に整理します。
まとめ:Pico Wの要点を先に確認
- 何者か:RP2040搭載マイコンにWi-Fi 802.11n(2.4GHz)とBluetooth 5.2を足した無線対応ボード。パソコンではなく、電源を入れると即プログラムが走る組み込み用マイコンです。
- できること:温湿度センサーの値をWi-Fiでクラウド送信、Webサーバーで家電の遠隔操作、BLEでスマホ連携など。ネットワークを使う電子工作の入口に向きます。
- モデル選び:はんだ付けを避けたいならピンヘッダ実装済みのWH、より高い処理性能や暗号処理が要るならPico 2 W(RP2350)を選びます。まず無線を試すだけなら無印Pico Wで十分です。
- ESP32との違い:常時Wi-Fi通信の速さとライブラリ量ではESP32が有利。低消費電力の間欠動作やPIOを使った独自I/O制御ではPico Wが扱いやすい、という棲み分けです。
- 国内利用の必須条件:技適マーク付きの正規品を使うこと。マーク無し品をそのまま電波発射すると電波法違反になります。
Raspberry Pi Pico Wの基本仕様(RP2040・Wi-Fi・BLE)
Pico Wの心臓部はRaspberry Pi財団が設計したSoC「RP2040」です。無印Picoと同じチップで、そこにInfineon製の無線チップCYW43439を追加したのがPico Wです。まず主要スペックを押さえます。
| 項目 | Raspberry Pi Pico W |
|---|---|
| SoC | RP2040 |
| CPU | Arm Cortex-M0+ デュアルコア 最大133MHz |
| SRAM | 264KB |
| フラッシュ | 2MB(オンボード) |
| 無線 | CYW43439:Wi-Fi 802.11n 2.4GHz / Bluetooth 5.2・BLE |
| GPIO | 26本(ロジックは3.3V) |
| ADC | 12bit×3ch(+内蔵温度センサー) |
| 特殊I/O | PIO 8ステートマシン |
| 給電/動作 | micro USB 5V入力 / 内部3.3V動作 |
ポイントは3.3Vロジックであることです。5V出力のセンサーやモジュールをGPIOへ直結すると壊れる可能性があるため、レベル変換や分圧が必要になる場面があります。無線はWi-FiとBluetoothを1チップで兼ねますが、同時利用時はスループットが落ちる点も設計時に見込んでおきます。
マイコンとシングルボードコンピュータの違い
混同されがちですが、Pico Wは「マイコンボード」で、Raspberry Pi 4やRaspberry Pi 5のような「シングルボードコンピュータ(SBC)」とは別物です。SBCはLinuxが動く小型パソコンで、キーボードやディスプレイをつないでOS上でアプリを動かします。対してPico Wはmicro:bitやArduinoと同じマイコンで、OSは載らず、書き込んだ1本のプログラムが電源投入と同時に動き続けます。消費電力が小さく即起動する一方、Webブラウザや一般的なアプリは動きません。「センサーを常時読んで無線で送る」ような単機能・低電力の用途に向くのがマイコン、と切り分けると選定を誤りません。
Pico・W・WH・Pico 2 Wの違いと選び方
Picoシリーズは名前が似ていて迷いやすいので、無線の有無・ピンヘッダの有無・SoC世代の3軸で整理します。
| モデル | SoC | 無線 | ピンヘッダ | 実売の目安 |
|---|---|---|---|---|
| Pico | RP2040 | なし | 未実装 | 約550円 |
| Pico W | RP2040 | Wi-Fi+BLE | 未実装 | 約1,100円 |
| Pico WH | RP2040 | Wi-Fi+BLE | 実装済み | 約1,300円 |
| Pico 2 W | RP2350 | Wi-Fi+BLE | 未実装 | 約1,400円 |
価格は変動するため、購入前に各販売店の最新表示で確認してください。
WとWHの違いはピンヘッダのはんだ付け
Pico WとPico WHは電気的な性能が同一で、違いは基板端のピンヘッダが最初から実装されているかどうかだけです。WHはヘッダ実装済みなので、ブレッドボードに挿すだけで配線を始められます。はんだ付けの道具を持っていない、あるいは失敗したくない初心者は、200〜300円ほど高くてもWHを選ぶと導入でつまずきません。逆に基板を薄く保ちたい、独自に別のコネクタを付けたい場合は、ヘッダ未実装のWを選びます。
Pico 2 W(RP2350)は性能とセキュリティを強化
Pico 2 Wは第2世代SoCのRP2350を積み、Pico Wから中身が大きく変わります。CPUはArm Cortex-M33デュアルコアで最大150MHzに引き上げられ、ビルド構成によってはHazard3という2基のRISC-Vコアへ切り替えて使えます。SRAMは264KBから520KBへ、オンボードフラッシュは2MBから4MBへ倍増しました。加えてArm TrustZoneに対応し、鍵やファームウェアを保護領域で扱えます。暗号処理や署名検証が要る業務用途、メモリを多く使う画像・音声処理、RISC-Vを試したい開発では2 Wが効いてきます。単純なセンサー送信やLチカ学習だけなら無印Pico Wで足り、価格差300円前後を性能に払う価値があるかで判断します。既存のPicoプロジェクトを移行する際は、RP2350はメモリ配置やSDK対応状況が変わるため、ライブラリのバージョンとピン定義を必ず確認してください。
Pico Wで何ができる?Wi-Fi・BLE活用例
Pico Wの価値は、無線でネットワークにつながることです。単体のPicoでは難しかった「離れた場所へデータを送る」「外から操作する」用途が現実的になります。代表的な使い道を挙げます。
- センサーデータのクラウド送信:BME280などで温度・湿度・気圧を測り、Wi-Fi経由で外部サービスへ蓄積・可視化する。データの見える化にはIoTセンサーデータをクラウドで可視化するAmbientのようなサービスと組み合わせる構成が定番です。
- Webサーバーによる遠隔操作:Pico W上に小さなWebサーバーを立て、スマホのブラウザからLEDやリレーをオン・オフする。
- NTPによる時刻同期:起動時にインターネット上の時刻サーバーから正確な時刻を取得し、時計や定時制御に使う。
- BLEでのスマホ連携:Bluetooth 5.2・BLEを使い、スマホアプリとセンサー値をやり取りする近距離連携。
開発言語はMicroPythonが最も情報が多く初心者向きですが、性能を詰めるならC/C++、既存資産があればCircuitPythonも選べます。Go言語で組み込みを書きたい場合は組み込み・IoT開発向けの小型コンパイラTinyGoもPicoに対応しており、選択肢になります。
ESP32・Arduinoとの比較でわかる得意分野
無線付きマイコンの定番はESP32で、教育・試作の定番はArduinoです。Pico Wをどの場面で選ぶべきかは、この2つとの比較で見えてきます。
| 項目 | Pico W | ESP32(DevKit系) | Arduino Uno R4 WiFi |
|---|---|---|---|
| CPU | Cortex-M0+ 133MHz | Xtensa LX6 240MHz | RA4M1(Cortex-M4)48MHz+ESP32-S3 |
| 無線 | Wi-Fi+BLE 5.2 | Wi-Fi+BT 4.2/BLE | Wi-Fi+BLE |
| SRAM | 264KB | 520KB | 32KB(RA4M1) |
| 特徴 | PIO・低消費電力 | 高クロック・ライブラリ豊富 | Arduino互換・入門向け |
| 実売の目安 | 約1,100円 | 約600〜900円 | 約4,000円台 |
常時Wi-Fi通信でスループットを稼ぐ用途や、Wi-Fi/Bluetooth関連のライブラリ資産を活用したい場合はESP32が有利です。ESP32を実際の製品として体験するなら、ESP32を基盤としたM5Stack Core2のハードウェア仕様やESP32系ボードを幅広く展開するLilyGoが参考になります。一方でPico Wは、間欠的にセンサーを読んで送るような低消費電力の運用や、PIO(プログラマブルI/O)を使ってステッピングモーターや独自プロトコルを正確に叩く制御で扱いやすさが際立ちます。Arduino Uno R4 WiFiは価格こそ高いものの、Arduino IDEの膨大なサンプルと日本語情報で学習の入口としての安心感があります。IoTセンサーを電池で長く動かすならPico W、常時通信の重い処理ならESP32、という基準で選ぶと外しません。
購入から初回Wi-Fi接続までの導入手順
必要なものは多くありません。Pico W本体(約1,100円)、micro USBケーブル、ブレッドボードとジャンパー線があれば、初期投資2,000円以内で始められます。最初の書き込みはドライバ不要で、次の5ステップで完了します。
- パソコンにThonny(MicroPython対応の無料エディタ)をインストールする
- Pico WのBOOTSELボタンを押しながらUSBでパソコンにつなぐ
- 公式サイト(raspberrypi.com)で配布されているPico W用のMicroPythonファーム(UF2ファイル)をダウンロードし、USBメモリのように認識されたドライブへドラッグ&ドロップする
- 自動で再起動し、ThonnyのインタプリタからPico Wが選べるようになる
- コードを書き込んで動作を確認する
Wi-Fiへの接続はネットワーク設定が肝心です。SSIDとパスワードの打ち間違い、2.4GHz帯以外のSSIDを指定した接続失敗が初心者の典型的なつまずきどころです。基板上のLEDを点滅させつつWi-Fiにつなぐ最小コードは次のとおりです。
import network
import time
from machine import Pin
led = Pin("LED", Pin.OUT)
wlan = network.WLAN(network.STA_IF)
wlan.active(True)
wlan.connect("YOUR_SSID", "YOUR_PASSWORD")
while not wlan.isconnected():
led.toggle()
time.sleep(0.5)
print("connected:", wlan.ifconfig())
led.on()
Pico Wの基板上LEDは無線チップCYW43439経由で制御するため、無印PicoのPin(25)ではなくPin("LED")で指定する点に注意します。接続できると割り当てられたIPアドレスが表示され、ここからWebサーバーやセンサー送信へ発展させられます。
購入先の価格・送料と技適の注意点
国内では秋月電子通商やスイッチサイエンスなどの正規取扱店で購入できます。本体価格が近くても送料体系が異なるため、まとめ買いか単品かで実質価格が変わります。
| 購入先 | 送料の目安 | 送料無料の条件 |
|---|---|---|
| スイッチサイエンス | ネコポス 約200円 | 一定額以上で無料 |
| 秋月電子通商 | 宅配 約500円 | 一定額以上で無料 |
| Amazon等 | 出品者による | プライム対象など |
送料の金額と無料条件は改定されるため、注文前に各店の最新案内を確認してください。1個だけ買うと送料が本体価格に匹敵しがちなので、ブレッドボードやジャンパー線、センサーを一緒に揃えて送料無料ラインに乗せると割安になります。
最も重要なのが技適(技術基準適合証明)です。Pico Wは電波を出す無線機器なので、日本国内で使うには技適マーク付きの正規品である必要があります。マーク無しの並行輸入品などをそのまま電波発射すると電波法違反にあたる可能性があります。Amazonなどで買う場合は、技適マークの有無と正規品かどうかを商品説明で確認してから購入してください。あわせて、3.3VのGPIOに5V系センサーを直結して壊す配線ミスも初心者に多い事故です。電圧を合わせてから接続する習慣をつけましょう。
よくある質問(FAQ)
Raspberry Pi Pico Wで何ができますか?
Wi-FiとBLEを使ったネットワーク工作ができます。センサーの値をクラウドへ送る、Webサーバーで機器を遠隔操作する、NTPで時刻を同期する、スマホとBLEで連携する、といった用途が代表例です。単体で完結する時計やLED制御なら無線を使わずとも動きます。
Pico WとWHの違いは何ですか?
性能は同じで、違いはピンヘッダが最初から実装されているかどうかだけです。WHはヘッダ実装済みで、はんだ付け不要でブレッドボードに挿せます。工具を用意したくない初心者はWHが向きます。
Pico WとPico 2 Wの違いは何ですか?
Pico 2 WはSoCがRP2350になり、CPUが最大150MHz、SRAMが520KB、フラッシュが4MBへ強化され、Arm TrustZoneやRISC-Vコアにも対応します。高い処理性能や暗号処理が要る用途で有利です。学習や軽いIoTなら無印Pico Wで十分です。
Pico Wの処理速度(133MHz)は遅くないですか?
デュアルコア133MHzはセンサー読み取りや無線送信、LED・モーター制御には十分な速度です。画像処理や重い演算を求めるなら150MHz・SRAM 520KBのPico 2 Wや、240MHzのESP32が候補になります。用途に対して過不足がないかで判断します。
Bluetoothは使えますか?
使えます。無線チップCYW43439がBluetooth 5.2・BLEに対応しており、ファームウェアの対応により有効化されています。BLEでスマホやセンサーと近距離通信が可能です。
技適マークは必要ですか?
必要です。日本国内で電波を発射して使うには技適マーク付きの正規品であることが前提で、マーク無し品の使用は電波法違反になり得ます。国内正規店で買えば技適対応品が手に入ります。