i-SSP®(インテージシングルソースパネル®)は、市場調査会社のインテージが2013年5月にデータ提供を始めた調査パネルです。同じ協力者から、テレビ・パソコン・スマートフォンの接触ログと日々の買い物の記録をあわせて集めるため、「このCMを見た人が、その後その商品を買ったか」を個人単位で追えます。
本記事は、i-SSP®を中心に調査パネルとしてのシングルソースを扱い、国内の類似サービスとの違いと選び方を公式発表の数値で整理します。シングルソースデータという用語の定義や海外での成り立ちは、シングルソースとは?シングルソースデータの定義と仕組み・分野別の意味で解説しています。
まとめ:i-SSP®とシングルソースパネル®の要点
- 定義:同じ対象者から購買・意識・メディア接触を継続して集める調査パネルです。広告接触と購買の関係を個人ベースで見られます。
- i-SSP®の規模:テレビ視聴パネルは2022年7月の刷新で全国24,000人以上・4〜99歳へ広がりました。購買データは全国消費者パネル調査SCI®が土台です。
- 国内の類似サービス:ビデオリサーチのACR/exはアンケート型、マクロミルのMFDは自社パネルのデータを統合するツールで、i-SSP®のログ型とは設計が違います。
- 選び方:CM接触から購買までを検証したいならログ型、ネット非利用者を含む市場全体の意識と接触を見たいならACR/exが向きます。
- 注意点:購買ログはバーコード付き商品が中心です。細かいセグメントに切るとサンプルが足りなくなるため、分析軸は発注前に決めておきます。
シングルソースパネル®の定義と通常のパネル調査との差
インテージの用語集は、シングルソースパネル®を「同じ対象者(シングルソース)から、購買行動や意識、メディア接触など複数データを継続的に収集する調査パネル」と定義しています。なお「シングルソースパネル」はインテージの登録商標です。
パネル調査は同じ対象者を継続して調べる手法の総称で、収集するデータが1種類に限られるわけではありません。テレビ視聴率の調査対象者と、購買の調査対象者が別の人であれば、「CMを見た人ほど買ったか」は集団の平均どうしを比べる推定になります。シングルソースパネル®は、この2種類を同一人物に紐づけるため、接触した人と接触しなかった人の購買を個人単位で比べられます。
もう1つの違いは記録の取り方です。「先週どの番組を見たか」をアンケートで聞くと、回答者の記憶に左右されます。i-SSP®は接触ログを機械で集めるため、時刻や回数の単位でメディア接触を把握できます。
i-SSP®の仕組みとデータ構成
SCI®の購買ログに接触ログを重ねる設計
i-SSP®は、インテージの主力データであるSCI®(全国消費者パネル調査)を基盤に、同じ対象者からパソコン・スマートフォンのWeb閲覧とテレビ視聴のデータを追加で集める仕組みです。SCI®は全国15〜79歳の男女70,000人から日々の買い物を継続収集しており、食品・飲料・日用雑貨・化粧品・医薬品などバーコード付き商品について「誰が・いつ・どこで・何を・いくつ・いくらで買ったか」がわかります。
インテージの公式サービスページによると、i-SSP®で得られるデータは次の3系統です。
- PC・スマートフォン・テレビの接触ログ(機械式で収集)
- 属性・意識・実態に関するアンケート回答
- SCI®の購買履歴
対象者に追加でアンケートを配信する「アドオン型」も用意されており、耐久財やサービスの購入状況、価値観はここで補います。
2013年から2022年までのパネル拡張の経緯
i-SSP®は関東のテレビパネルから始まり、エリアと人数を段階的に広げてきました。
| 時期 | 内容 | テレビ視聴パネル |
|---|---|---|
| 2013年5月 | データ提供開始 | 関東3,000サンプル |
| 2015年1月 | 関西・中京へ拡大 | 3エリア |
| 2021年4月 | 全国化 | 8,000人→12,000人 |
| 2022年7月 | スイッチメディアと新パネル | 24,000人以上 |
2013年の開始時点は、パソコン17,000・モバイル4,000・テレビ(関東)3,000サンプルの構成でした。2022年6月30日の発表によると、刷新では人数の倍増に加えて、対象年齢が男女15〜69歳から4〜99歳に広がり、世帯内の1人だけでなく全員の視聴ログを集める設計に変わりました。共視聴の把握や、ブロック単位・5道県単位(北海道・宮城・静岡・広島・福岡)での接触率集計ができるようになっています。
インテージは刷新時に「国内最大のテレビ視聴パネル」と発表しましたが、これは自社調べ(2022年4月時点)で、モニター宅のテレビに専用測定機を設置する手法の中での比較です。現在のテレビ視聴パネル人数は、参照したi-SSP®のサービスページには明記されていないため、発注前に最新の資料で確認してください。
i-SSP®による広告到達・購買・態度変容の分析
インテージが挙げる用途は、ターゲットのプロファイル作成、メディアプランの立案、キャンペーンのリーチとフリークエンシーのクロスメディア分析、キャンペーン前後の態度変容の測定です。
クロスメディア分析では、広告接触を「テレビCMのみ」「デジタル広告のみ」「両方」の3区分で、ターゲット別に把握できます。SCI®の購買データと組み合わせれば、CM接触者が接触前より自社商品を買うようになったかを地域別に比較できます。接触者と非接触者にアンケートを送れば、認知率や好意度の差であるブランドリフトも同じ対象者で測れます。
国内のシングルソース型サービスの比較
「シングルソース」をうたう国内サービスは、データの取り方がそれぞれ違います。代表的な3つと、過去に提供されていたぺるそねを並べます。規模はi-SSP®が2022年7月、MFDが2021年11月、ぺるそねが2014年の発表時点の値で、ACR/exは現行の調査概要です。数えている対象(テレビ視聴パネル・調査対象者・統合元のパネル)が違うため、人数の大小で優劣は比べられません。
| サービス | 提供元 | 収集方式 | 規模 |
|---|---|---|---|
| i-SSP® | インテージ | 接触ログ+購買ログ | テレビ24,000人以上 |
| ACR/ex | ビデオリサーチ | タブレットで回答 | 7地区10,700サンプル |
| MFD | マクロミル | 既存データを統合 | パネル130万人 |
| ぺるそね | コプロシステムほか | アンケートDB | 約3万人・150問 |
ACR/ex:無作為抽出のアンケート型
ビデオリサーチのACR/exは、エリア・ランダム・サンプリングで選んだ7地区計10,700サンプル(男女12〜69歳)に調査専用のタブレット端末を貸与し、基本属性、意識・価値観、テレビ・インターネット・ラジオ・新聞・雑誌の接触、商品やサービスへの関与を同じ人に聞きます。東京50km圏の4,800サンプルは1年間の通年調査、他のエリアは4〜6月の調査です。
インターネット非利用者も含む市場全体を母集団として設計している点が、ネット上で募るモニターとの大きな違いです。一方、接触も購買も本人の回答にもとづくため、ある日時のCMに実際に接触したかどうかの検証には向きません。
マクロミルMFD:パネルではなく統合の仕組み
マクロミルが2021年11月24日に発表したMFD(Macromill Fast Data architecture)は、同社の130万人の消費者パネルから得た購買履歴・デジタルログ・アンケート・属性情報を、指定した条件でシングルソースとしてつなぎ、ダッシュボードまで自動生成するツールです。購買履歴データのダッシュボード化に平均250時間かかっていた作業が、約10分で出力できるようになったと発表しています。
新しい調査パネルを立てたのではなく、既存パネルのデータ統合を速くする仕組みです。マクロミルは2021年11月の発表で、日清食品グループがMFDとPANORAMAを用いた消費者理解に取り組むことを公表しています。
ぺるそね:提供が確認できない旧サービス
ぺるそねは、約3万人に150問のアンケートを実施した結果をデータベース化したクラウド型の分析ツールで、2011年にサービスを開始しました(2014年2月のリリース)。コプロシステム・ドゥ・ハウス・ゲインの3社が共同運営していました。
2026年9月時点で公式サイトのドメインは無関係な内容のサイトに変わっており、現在も提供されているかは確認できません。過去の解説記事で見かけても、導入候補からは外して考えるのが無難です。
ログ型とアンケート型を分ける判断基準
特定のCMやデジタル広告への接触と購買の関係を日時の単位で調べたいなら、ログ型のi-SSP®を選びます。接触者と非接触者の比較自体はアンケート型でもできますが、ログ型は回答者の記憶に頼らず、記録された接触日時・回数と購買を対応づけられます。ただし、接触者と非接触者の購買差だけでは広告の効果とは断定できません。接触者はもともとその商品をよく買う層に偏りやすいため、接触前の購買実績をそろえた比較や、配信の有無を無作為に分けるインクリメンタリティの検証と組み合わせます。
目的が「ターゲット像をつかみ、どの媒体で届くかを見立てる」ことなら、ACR/exのほうが合います。価値観や関心の項目が豊富で、無作為抽出のため比率の推計にも向きます。ただし対象は7地区の男女12〜69歳なので、全国・全年齢の市場全体をそのまま代表するわけではありません。自社でマクロミルの調査を継続しているなら、MFDで既存データをつなぐのが早道です。
ログ型を選ばないほうがよい場面もあります。
- 耐久財・サービスの購買が主題のとき:SCI®の購買ログはバーコード付き商品が中心です。自動車や保険の購入は追加アンケート頼みになり、ログ型の強みが薄れます。
- ターゲットが極端に狭いとき:24,000人のパネルでも、年代×地域×カテゴリ購入者と条件を重ねるほど1セルの人数は急速に減り、差が偶然か効果かを判別できなくなります。
- 母集団への推計が必要なとき:協力に同意したモニターの集合は、無作為抽出の標本調査と同じ精度では市場全体を代表しません。
広告費の配分そのものを決めたい場合は、個人単位の検証だけでは足りません。シングルソースデータは「接触した人の購買が増えたか」を示しますが、テレビ・デジタル・店頭販促の予算をどう配分するかは、別途市場データを使ったモデリングと組み合わせて判断します。
シングルソースデータで検証された接触回数の議論
広告は何回見せれば効くのか。1972年にハーバート・クルーグマンが「3回で十分」と論じて以来、この問いはフリークエンシーの設計で繰り返し議論されてきました。
この議論に購買データで異を唱えたのが、ジョン・フィリップ・ジョーンズの1995年の著書『When Ads Work』です。ニールセンのシングルソースデータで世帯ごとのCM接触と購買を突き合わせ、1週間のうちなら1回の接触で強い購買効果が生じ、同じ週の追加接触はほとんど上積みしなかったと報告しています(2006年版の63〜67ページ「Keeping the Brand in the Window」)。この知見は、購買直前の接触を途切れさせないリーセンシーの考え方につながっています。
i-SSP®の「テレビのみ/デジタルのみ/両方」の区分も、同じ問いを自社のキャンペーンで確かめる道具です。回数の目安を一般論で決めず、自社カテゴリの購買データで検証できる点が、シングルソースパネル®を使う最大の理由です。
よくある質問
i-SSPは何の略ですか?
「インテージシングルソースパネル」の略で、正式表記は「i-SSP®(インテージシングルソースパネル®)」です。広告配信で使われるSSP(Supply Side Platform)とは無関係です。
インテージのパネル数はどのくらいですか?
全国消費者パネル調査SCI®は全国15〜79歳の男女70,000人です。i-SSP®のテレビ視聴パネルは、2022年7月の刷新時点で全国24,000人以上と発表されています。
インテージは何の会社ですか?
1960年創業のマーケティングリサーチ会社です。SCI®のほか全国小売店パネル調査SRI+®などのシンジケートデータや、ネットリサーチ・会場調査などの受託調査を提供しています。
シングルソースパネルとパネル調査はどう違いますか?
パネル調査は同じ対象者を継続して調べる手法の総称です。シングルソースパネルはその一種で、購買・意識・メディア接触という複数種類のデータを同じ対象者から集めている点が違います。
i-SSPの費用はいくらですか?
料金は公開されていません。分析の範囲や期間によって変わるため、インテージの問い合わせ窓口で見積もりを取る必要があります。
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※i-SSP®、シングルソースパネル®、SCI®、SRI+®は株式会社インテージの登録商標です。