オールドメディアとは、テレビ・新聞・雑誌・ラジオのように、インターネットが普及する前から情報を届けてきたメディアの総称です。2024年の選挙をきっかけにSNSで広がり、2025年には新語・流行語大賞のトップテンに入りました。いまは「衰退した」「偏向している」という批判を込めて使われることが多い言葉です。この記事では、言葉の意味と由来を押さえたうえで、広告費・発行部数・利用時間・信頼度の公表データを使い、どこまでが事実でどこからが印象なのかを切り分けます。
まとめ:オールドメディアの意味と「衰退・偏向」を判断する要点
- 意味:テレビ・新聞・雑誌・ラジオ(マスコミ四媒体)の総称。法律上の区分ではなく、SNSなどのネット媒体と対比する呼び名。英語では legacy media がほぼ同じ意味。
- 衰退は指標による:新聞の発行部数は2025年に2,487万部で、10年で約44%減った。広告費は2025年にネットが4兆459億円と初めて総広告費の過半数になったが、テレビの広告費は1兆7,556億円で前年比99.7%と横ばい。
- 世代差が大きい:平日のテレビ視聴時間は10代43.4分・20代46.3分に対し、70代は313.5分(総務省 令和7年度)。
- 信頼度は今もネットより高い:「信頼できる」と答えた割合は新聞58.8%・テレビ57.9%・インターネット26.3%。10代でもテレビ55.7%・ネット33.6%。
- 偏向の議論は制度を分けて考える:放送は放送法第4条で「政治的に公平であること」が求められるが、新聞にこの規定は無く、社説で立場を取ることは新聞倫理綱領でも認められている。
オールドメディアの意味と対象になる4媒体
オールドメディアが指すのは、一般にテレビ・新聞・雑誌・ラジオの4つです。広告業界ではこの4つを「マスコミ四媒体」と呼び、電通の「日本の広告費」も新聞・雑誌・ラジオ・テレビメディアの合計を一つの区分として集計しています。法律で定義された言葉ではないため、書き手によってはケーブルテレビや出版全般、通信社まで含めることもあります。
| 媒体 | 主な形態 | 2025年の広告費 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| テレビ | 地上波・BS/CS | 1兆7,556億円 | 99.7% |
| 新聞 | 全国紙・地方紙・スポーツ紙 | 3,136億円 | 91.8% |
| ラジオ | AM・FM | 1,153億円 | 99.2% |
| 雑誌 | 週刊誌・月刊誌 | 1,135億円 | 96.3% |
4媒体の合計は2兆2,980億円で、その76%をテレビが占めます。「オールドメディア」と一括りにされても、規模と減り方は媒体ごとにまったく違う点を、次の章以降の前提にしてください。
語の由来:「ニューメディア」との対比
オールドメディアは、1980年代に流行した「ニューメディア」と対比される呼び名です。経済企画庁の昭和59年(1984年)年次経済報告は「一般にニューメディアと呼ばれる新しい情報通信メディア」が目覚ましい発展をみせているとし、その例に衛星通信・文字多重放送・テレビ会議サービス・CATV(有線テレビ)を挙げています。Wikipediaの「オールドメディア」は、早い用例として雑誌『ビデオα』1987年冬号でニューメディアとの比較に使われた例を挙げています。現在の「ニューメディア」はSNS・動画配信・ネットニュースを指すため、同じ反対語でも比べる相手が40年で入れ替わっています。
2024〜2025年に広まった経緯と流行語大賞
一般に広く使われるようになったのは、2024年の東京都知事選挙と兵庫県知事選挙のあとです。東京都知事選ではSNSで支持を集めた石丸伸二氏が2位に入り、兵庫県知事選では県議会の不信任決議で失職した斎藤元彦氏が再選されました。どちらもSNSや動画での拡散が選挙戦の焦点になり、「新聞・テレビはもう影響力がない」という意味でこの言葉が広がりました。
「現代用語の基礎知識 選 2025 T&D保険グループ新語・流行語大賞」では「オールドメディア」がトップテンに入り、受賞者は青山繁晴氏でした。選考の解説文は、首長選挙や国政選挙で「新聞・テレビは今や不要のオールドメディア」という論評が出回ったと記したうえで、切り抜き動画や一方的な意見で支持を集める手法を「あまりにも無秩序なのではないか」と問いかけています。流行語として選ばれた時点で、この言葉は中立の分類語ではなく、評価を含む語として扱われていたことがわかります。
オールドメディアとニューメディアの違い
両者の違いは、情報の流れと、載せる前に誰が選ぶかに表れます。オールドメディアでは記者・編集者・デスクが取材と確認を経て載せる情報を選びます。ニューメディアには、発信者が直接投稿するSNSのほか、探査報道を専門とするTansaのように記者が独自取材して記事を公開するネット報道機関もあり、編集部の有無だけで新旧を分けることはできません。
| 比較軸 | オールドメディア | ニューメディア |
|---|---|---|
| 代表例 | テレビ・新聞・雑誌・ラジオ | SNS・YouTube・ネットニュース |
| 情報の流れ | 発信者から受け手へ一方向 | 双方向・誰でも発信可能 |
| 載せる情報の選別 | 編集部・番組制作者 | 投稿者・編集部・アルゴリズム |
| 誤りへの対応 | 訂正記事・訂正放送 | 削除・コミュニティノート等 |
| 主な規律 | 放送法(放送のみ)・各社の綱領 | 各プラットフォームの規約 |
| 主な収益 | 広告・購読料・受信料 | 広告・投げ銭・サブスク |
境目はすでに曖昧です。電通の集計では、新聞・雑誌・ラジオ・テレビ各社がネットで稼いだ「マスコミ四媒体由来のデジタル広告費」が2025年に1,651億円あり、なかでもテレビ番組の見逃し配信などに付く動画広告は805億円で前年比123.3%と伸びています。テレビ局の番組がYouTubeやTVerで見られるいま、「媒体の古さ」で線を引くより、「編集部の確認を経た情報か」で見分ける方が実用的です。発信の主体が編集部から個人へ移っていく流れは分散型メディアとは?定義とメリット・デメリット、BuzzFeedが示した10年後の答えでも整理しています。
オールドメディアは衰退しているのか:3つの指標で見る現状
「衰退」を一つの印象で語ると判断を誤ります。発行部数・広告費・利用時間の3つで見ると、減っているものと持ちこたえているものがはっきり分かれます。
新聞の発行部数:10年で約44%減
日本新聞協会の調査では、2025年10月時点の新聞の発行部数は24,868,122部で、前年から約175万部(6.6%)減りました。2015年の44,246,688部と比べると約44%減、2000年の53,708,831部の半分以下です。1世帯あたりの部数は2000年の1.13部から2025年は0.42部まで下がり、いまは「2世帯に1部もない」状態です。紙の新聞については「衰退」は数字で裏づけられます。
広告費:ネットが初めて過半数、テレビは横ばい
電通の「2025年 日本の広告費」では、総広告費8兆623億円のうちインターネット広告費が4兆459億円(前年比110.8%)で、構成比50.2%と1996年の推定開始以来はじめて過半数に達しました。マスコミ四媒体は2兆2,980億円(同98.4%)です。ただし媒体別に見ると、新聞は91.8%と減り続けている一方、テレビは99.7%、ラジオは99.2%でほぼ前年並みでした。広告の世界では「テレビが急落している」とまでは言えず、伸びの大半をネットが取っている、というのが正確な姿です。
利用時間:10代・20代と60代以上で逆転
総務省情報通信政策研究所の令和7年度調査(2026年6月26日公表・13〜79歳1,800人)では、全年代の平日の平均利用時間はインターネット183.9分、テレビ(リアルタイム)156.1分でした。年代で分けると差が際立ちます。
| 年代(平日) | テレビ | ネット | 新聞 |
|---|---|---|---|
| 全年代 | 156.1分 | 183.9分 | 8.8分 |
| 10代 | 43.4分 | 228.3分 | 0.4分 |
| 20代 | 46.3分 | 266.9分 | 0.2分 |
| 40代 | 112.3分 | 229.2分 | 3.0分 |
| 60代 | 249.3分 | 140.2分 | 14.3分 |
| 70代 | 313.5分 | 93.8分 | 27.1分 |
平日にテレビの視聴時間がネットを上回るのは60代と70代だけです。前年度と比べると、全年代のテレビ視聴時間は平日で1.4分、休日で6.5分増えており、少なくとも直近1年は「減り続けている」わけではありません。掲載した利用時間の比較から読み取れるのは、若年層ではテレビよりネットの利用時間が長いという世代差です。過去からの利用履歴までは判断できません。
オールドメディアが「偏向」「信用できない」と言われる理由
新聞・テレビへの不信は「オールドメディア」という言葉より古く、ネット上では2000年代から「マスゴミ」という蔑称が使われてきました(2009年には三橋貴明『マスゴミ崩壊 ―さらばレガシーメディア―』が扶桑社から出ています)。「偏向」という批判を検討するには、制度・信頼度の調査・受け手の心理の3つを分けて見る必要があります。どれか一つだけで結論を出すと、批判する側も擁護する側も議論がかみ合いません。
放送法第4条と新聞倫理綱領の適用範囲
テレビとラジオの放送事業者は、放送法第4条第1項により、番組の編集に当たって「政治的に公平であること」「報道は事実をまげないですること」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」などを守らなければなりません。一方、新聞と雑誌にはこれにあたる法律はありません。
日本新聞協会の新聞倫理綱領(2000年6月21日制定)は、報道は「正確かつ公正でなければならず、記者個人の立場や信条に左右されてはならない」としつつ、「論評は世におもねらず、所信を貫くべきである」と定めています。つまり、ニュース記事には公正さが求められても、社説で各紙が異なる立場を取ること自体は綱領が想定している姿です。新聞ごとに論調が違うことを「偏向」と呼ぶか「言論の多様性」と呼ぶかは、この区別を知っているかで変わります。
テレビ・ラジオの番組に問題があると考えたときは、NHKと民放連が設置した第三者機関のBPO(放送倫理・番組向上機構)が視聴者からの意見を受け付け、問題があると判断すれば検証して見解を公表します。新聞への意見は各社の読者窓口が受け付けます。
新聞・テレビ・ネットの信頼度調査の比較
同じ総務省の令和7年度調査で、各メディアに「信頼できる情報がどの程度あるか」を尋ねた結果(「全部信頼できる」と「大部分信頼できる」の合計)は次のとおりです。
| 年代 | 新聞 | テレビ | ネット | 雑誌 |
|---|---|---|---|---|
| 全年代 | 58.8% | 57.9% | 26.3% | 12.9% |
| 10代 | 47.1% | 55.7% | 33.6% | 15.7% |
| 20代 | 47.7% | 48.2% | 28.9% | 14.7% |
| 70代 | 72.4% | 70.7% | 19.2% | 7.4% |
テレビをほとんど見ない10代・20代でも、信頼度はテレビ・新聞がネットを上回っています。また「世の中のできごとについて信頼できる情報を得る」ために最も使うメディアは、全年代でテレビが50.3%でした。ただし、この設問は媒体ごとの情報への信頼度を尋ねたもので、「オールドメディアは信用できない」という意見への賛否を直接測ったものではありません。また同調査は、新聞と雑誌の信頼度が前年度より下がったとも報告しています。
別の調査でも、新聞とテレビの信頼度はネットを上回っています。新聞通信調査会が2026年10月に公表した第19回「メディアに関する全国世論調査」(n=2,676)では、全面的に信頼する場合を100点とした信頼度の平均点が、NHKテレビ66.1点、新聞64.6点、民放テレビ59.8点、インターネット46.9点でした。一方で、前年度より全てのメディアの点数が下がっています。オールドメディアは「ネットより信頼されているが、その信頼は少しずつ目減りしている」というのが、2つの調査に共通する姿です。
敵対的メディア効果による報道評価の違い
報道を偏っていると感じる理由には、受け手側の心理もあります。スタンフォード大学のVallone・Ross・Lepperが1985年に発表した研究(Journal of Personality and Social Psychology 49巻3号)では、1982年のベイルートでの虐殺を伝える同じテレビ報道を、親イスラエル派と親アラブ派の学生に見せたところ、双方が「報道は相手側に有利に偏っている」と評価しました。この現象は「敵対的メディア効果」と呼ばれます。
この研究が示したのは、同じ報道でも、対立する立場の受け手がそれぞれ自分側に不利だと評価しうることです。個々の報道が中立であることを保証する結果ではありません。偏向かどうかを確かめるには、自分の印象ではなく、同じ出来事を扱った複数の社の記事と一次資料(会見の全文、統計の原表、判決文など)を突き合わせるのが確実です。SNSのおすすめ表示で同じ意見ばかりが届く仕組みについてはフィルターバブルとエコーチェンバーの違いとは?サイバーカスケードとの関係・身近な例と対策で解説しています。
オールドメディアは終わりなのか:残る役割と弱点
紙の新聞の発行部数が縮小していることは数字で確認できます。ただし、部数の減少だけで紙の新聞やメディア全体の終わりを判断することはできません。判断の目安は次の3点です。
- 縮小が確認できるもの:紙の新聞の発行部数。1世帯0.42部まで下がり、広告費も前年比91.8%と減少が止まっていない。
- 形を変えて残るもの:テレビ・ラジオの番組制作。テレビ・ラジオの広告費はほぼ前年並みで、テレビメディア関連動画広告費は前年比123.3%と伸びている。ラジオ番組がポッドキャストとして聴かれる流れはポッドキャストとは?仕組み・ラジオとの違い・聞けるアプリと通信量(ギガ)を解説で取り上げています。
- 引き続き必要な機能:記者による一次取材と公開前の事実確認。Tansaのように独自取材を行うネット報道機関もあり、旧来媒体だけが担う機能ではありません。
弱点ははっきりしています。若い世代の接触時間が短いことと、自社の不祥事や広告主に関わる話題で報道が鈍いと見られやすいことです。災害や感染症の流行時に誤情報が大量に出回る問題はインフォデミックとは?意味・語源とWHOの定義、事例と対策を解説で扱っており、ここでは編集部の確認を経た情報源の価値がむしろ上がります。
企業広報におけるオールドメディアとSNSの使い分け
企業の広報にとって、オールドメディアに載ることの価値は「到達する人数」より「第三者の記者が取材して書いた」という信用にあります。媒体への信頼度と、掲載された企業への評価は別の指標です。取引先や採用候補者への効果は、掲載内容や対象者の反応で確かめる必要があります。
一方で、10代・20代に届けたい商品やサービスなら、テレビや新聞だけに頼ると、ネットで情報に接する時間が長い若年層との接点を十分に確保できない可能性があります。若年層向けはSNS・動画、信用を補強したい場面では新聞・業界紙・テレビの取材、詳しい情報の受け皿は自社サイト、と役割を分けるのが現実的です。媒体を組み合わせる考え方はメディアミックスとは?広告とIP展開で違う2つの意味と成功事例、自社で発信する媒体の作り方はオウンドメディアとは?目的・メリットと「自社でやるべきか」の判断基準を解説が参考になります。記事掲載を受け止める自社メディアを立ち上げる場合は、オウンドメディアサイト制作のような支援を使う方法もあります。
避けたいのは、「オールドメディアは終わった」と判断して記者との関係を切ってしまうことです。不祥事や事故が起きたとき、事実関係を広く伝える経路としては今もテレビと新聞の影響が大きく、平時に関係がない会社ほど取材対応で後手に回ります。
よくある質問
オールドメディアとはどういう意味ですか?
テレビ・新聞・雑誌・ラジオのように、インターネット以前から情報を届けてきたメディアの総称です。「ニューメディア」と対比される呼び名で、2024年の選挙以降は「影響力を失った既存メディア」という批判を込めて使われることが多くなりました。
オールドメディアの反対語は何ですか?
反対語は「ニューメディア」で、現在はSNS・動画配信・ネットニュースなどを指します。英語では old media のほか legacy media(レガシーメディア)、traditional media(伝統的メディア)という表現も使われます。
オールドメディアはなぜ偏向していると言われるのですか?
批判を検討する際は、報道内容の問題と受け手の評価を分ける必要があります。まず、社説とニュース記事は区別すべきです。新聞倫理綱領は論評で所信を貫くことを認めており、放送法第4条の「政治的に公平であること」は放送にしか掛かりません。次に受け手側の心理も関わります。1985年の研究では、対立する立場の受け手が同じ報道をそれぞれ自分側に不利だと評価する「敵対的メディア効果」が示されています。ただし、この結果だけで個々の報道の偏りを否定することはできず、報道内容そのものは複数の社の報道と一次資料を比べて確かめる必要があります。
オールドメディアは信用できないのですか?
総務省の令和7年度調査では、「信頼できる」と答えた割合は新聞58.8%、テレビ57.9%で、インターネットの26.3%を大きく上回りました。10代でもテレビ55.7%、ネット33.6%です。ただし新聞と雑誌の信頼度は前年度より下がっており、個々の報道は複数の社や一次資料と照らして確かめるのが確実です。
オールドメディアは今後なくなるのですか?
紙の新聞は部数が10年で約44%減っており縮小が続きますが、メディア全体が消える兆しはありません。テレビの広告費は2025年も前年比99.7%と横ばいで、各社はネット配信の動画広告を伸ばしています。媒体の形は変わっても、取材と事実確認を担う組織としては残る見通しです。