YouTrack(ユートラック)は、IntelliJ IDEAの開発元であるJetBrainsが提供する課題管理・プロジェクト管理ツールです。課題(イシュー)の追跡を軸に、スクラム・カンバンのアジャイルボード、ガントチャート、ナレッジベース、顧客対応用のヘルプデスクまでを1つの製品で扱えます。10ユーザーまでは無料で、クラウド版(YouTrack Cloud)と自社サーバー版(YouTrack Server)があります。この記事では、2025年10月1日に改定された料金と無料プランの範囲、Jiraとの違い、ワークフローによる自動化、検索クエリ・REST API・MCPの使い方を、2026年10月時点の公式情報で整理します。
まとめ:YouTrackの料金・無料枠・Jiraとの違いの要点
- 無料プランは10ユーザー・ヘルプデスク3エージェントまでで、Cloud版の保存容量は30GBです。カスタムロゴ以外は有料版と同じ機能が使え、AIアシスタントも追加料金なしで含まれます。
- 11ユーザー以上になると全員分が有料で、Cloudの月払いは1ユーザー月額5.40ドルから、年払いは実質4.50ドルからです(2025年10月1日改定)。
- Jiraとの差が大きいのは自社運用です。AtlassianはJira Data Centerの新規顧客向け販売を2026年3月30日に終了しており、YouTrackはServer版の販売を続けています。
- 課題の自動割り当てや期限切れの通知は、ワークフローで組みます。コード不要のコンストラクターで足りなければJavaScriptで書きます。
- Atlassian製品で開発基盤を統一済みの組織や、Marketplaceのアプリに依存する運用ではJiraのままが妥当です。
| 項目 | YouTrack | Jira |
|---|---|---|
| 提供元 | JetBrains | Atlassian |
| 無料枠 | 10ユーザー・30GB | 10ユーザー・2GB |
| 月払いの単価(100人以下) | 5.40ドル以下/ユーザー | 9.70ドル/ユーザー |
| 自社運用 | Server版を販売中 | DCは新規顧客向け販売終了 |
| ヘルプデスク | 同一製品に内蔵 | 別製品(JSM) |
表の単価はどちらも米ドル建ての月払いで、Jiraは2026年10月13日改定後のStandardプランの値です。以下、料金の数え方、Jiraとの違い、始め方、日々の操作と自動化の順に見ていきます。
YouTrackでできることと最新版2026.2の変更点
YouTrackは、ソフトウェア開発チームの課題追跡から出発し、現在はタスク管理・マーケティング・顧客サポートまで扱う汎用のプロジェクト管理ツールです。画面表示は日本語を含む9言語がJetBrainsの公式ローカライズとして提供され、表示言語はユーザーごとにプロファイル設定で選べます(検索クエリ・コマンド・カスタムフィールドの言語はシステム全体で1つ)。
課題管理以外の機能:ナレッジベース・ガントチャート・ホワイトボード
課題と同じ画面から使える機能は次のとおりです。いずれも無料プランで使えます。
| 機能 | 用途 |
|---|---|
| アジャイルボード | スクラム・カンバンの進行管理 |
| ガントチャート | 依存関係付きの日程計画 |
| ナレッジベース | 手順書・仕様の記事を課題と相互リンク |
| ヘルプデスク | メール・フォームの問い合わせをチケット化 |
| ホワイトボード | カードを課題に変換する企画用の画面 |
ホワイトボードは任意機能(Optional Features)の扱いで、管理者がグループ単位でオフにできます。ナレッジベースの記事はヘルプデスクの報告者にも公開でき、問い合わせの画面に関連記事として表示されます。社内の問い合わせ窓口とナレッジをどう分けて設計するかは、ITヘルプデスクの仕組みを作る手順で扱っています。
2026.2で追加された主な機能
2026.2の中心は、B2Bサポート向けのヘルプデスク機能です。問い合わせ元を会社・チーム単位の「顧客グループ」にまとめ、グループごとにSLAや担当エージェントを割り当てられるようになりました。報告者は手動か、メールのドメインによる自動割り当てでグループに追加でき、同じグループの報告者同士でチケットを共有できます。
- ガントチャートの刷新:タイムラインから直接タスクを作成し、検索でバックログの項目を追加できます。
- MCP接続の簡素化:管理者が設定すれば、利用者は永続トークンを発行せずにYouTrackアカウントでのサインインだけでAIツールを接続できます。
- 移行ツールの追加:ClickUpとAsanaからプロジェクト・タスク・ユーザー・コメント・添付を取り込めます。
2026.2の初版は2026年6月23日に公開され、Server版の最新ビルドは2026年10月21日公開の19656です(YouTrackの新機能ページ)。
AIアシスタントの機能と使える条件
YouTrackには課題・記事・コメント向けのAIアシスタントが組み込まれています。できることは、説明文の長い課題や記事の要約、課題の件名の候補作成、コメントの校正と「丁寧に」「フォーマルに」の言い換え、他のユーザーのコメントへの返信案の作成です。ヘルプデスクのエージェントは、生成した返信案を手直しして送る使い方ができます。説明文が空の課題では、要約のメニューが押せません。
料金は別にかかりません。JetBrainsの料金FAQは、AIアシスタントがすべてのサブスクリプションに追加費用なしで含まれると明記しています。ただし無制限ではなく、サイトごとに無料のクレジットが割り当てられ、AIアシスタントを1回使うごとに1クレジットを消費します。クレジットは毎週補充され、2026年10月時点では追加購入ができません。使える条件は提供形態で違い、Cloud版は全顧客が対象、Server版はバージョン2023.3以上で、無料プランまたは有効な有料サブスクリプションを利用していることが条件です(JetBrains AIの設定ページ)。
要約や言い換えの多くは、OpenAIやGoogleなど外部のAIプロバイダーに課題の内容を送って処理します。社外秘の課題を扱うプロジェクトがある場合は、管理画面の「連携 > JetBrains AI」で利用できるユーザーとグループを絞ってから有効にしてください。既定では全員が使える設定です。
YouTrackの料金と無料プランの範囲(2025年10月改定後)
JetBrainsは2025年10月1日にYouTrackの料金を改定しました。2020年以来の値上げで、既存の契約は満了日までは旧価格のまま使え、更新とユーザー追加から新価格が適用されます。10ユーザーまで無料、ヘルプデスクは3エージェントまで無料という枠は改定後も変わっていません。
Cloud版の料金:11ユーザー以上は全員分が1ユーザー月額5.40ドルから
Cloud版の月払いは1ユーザー月額5.40ドルからで、人数が増えるほど単価が下がります。年払いは「12か月分を10か月分の価格で」払う形で、実質の単価は月額4.50ドルからです。JetBrainsの料金改定FAQが示す料金例は次のとおりです(米ドル)。
| ユーザー数 | 月払い(月額) | 年払い(年額) |
|---|---|---|
| 15 | $81.00 | $810.00 |
| 25 | $135.00 | $1,350.00 |
| 50 | $270.00 | $2,700.00 |
| 100 | $539.00 | $5,390.00 |
| 500 | $1,995.00 | $19,950.00 |
ヘルプデスクのエージェントは3人まで無料で、4人以上になると全エージェント分が有料になります。料金は月払いで1エージェント月額6.00ドル、年払いで1エージェント月額5.50ドルです。円建ての価格はYouTrackの購入ページに表示されるので、見積もりの前に確認してください。国内向けの比較記事には、現行の5.40ドルではなく1ユーザー月額4.40ドルと載せたままのものもあるので、引用元の日付を確かめてください。
無料プランで使える機能と保存容量
無料プランの上限はユーザー10人・ヘルプデスクのエージェント3人で、Cloud版では保存容量が30GBです。報告者(チケットを送る顧客)は無制限です。機能の制限はカスタムロゴだけで、ワークフロー、ガントチャート、ナレッジベース、AIアシスタントまで有料版と同じものが使えます。Jiraの無料プランも10ユーザーまでですが、ファイルの保存容量は2GBなので、添付ファイルが多い運用ではYouTrackの無料枠のほうが長く持ちます。
Cloud版の保存容量は「ライセンスが対象とするユーザー数×3GB」で決まります。200ユーザーのライセンスなら600GBです。大人数での使い勝手を試したい場合は、無料プランから14日間のトライアル(最大100ユーザー・50エージェント・100GB、クレジットカード不要)に切り替えられます。
無料枠を超えるときに見落としやすい数え方
見積もりで間違えやすいのが、エージェントの数え方です。ヘルプデスクのエージェントにはユーザーライセンスも必要で、30人のチームのうち5人がエージェントなら「30ユーザー+5エージェント」の契約になります。エージェント5人分をユーザー数から引くことはできません。
有料プランから無料プランへ戻す場合、アクティブなユーザーが10人を超えていると、既定の管理者・ゲスト・ランダムに選ばれた8人以外のアカウントがbanされます。残すユーザーを自分で選びたい場合は、切り替えの前に対象外のユーザーを手動でbanしておきます。Jiraから課題を取り込む場合も、ライセンスの上限を超えた取り込みユーザーはban扱いになります。
Server版(自社運用)の料金とライセンスの考え方
Server版も10ユーザー(ヘルプデスク3エージェント)までは無料です。有料版は15・25・50・100……とユーザー数ごとのパックを買う方式で、2026年6月23日以降に新しく買う場合は年額のサブスクリプションになりました。それより前に買った永続ライセンスは従来の条件のまま使い続け、更新できます(Server版のライセンスの説明)。
| ユーザーパック | 年額(新規契約) | 旧永続ライセンスの更新 |
|---|---|---|
| 15ユーザー | $900 | $450 |
| 25ユーザー | $1,500 | $750 |
| 50ユーザー | $3,000 | $1,500 |
| 100ユーザー | $6,000 | $3,000 |
2つの契約は期限切れの扱いが違います。年額のサブスクリプションは、期限までに更新しないと7日間の猶予期間のあとに利用が制限され、更新したライセンスキーを適用するか無料プランへ切り替えるまで使えません(管理者はライセンス設定とバックアップの操作はできます)。旧来の永続ライセンスは、更新しなくてもその時点の版を使い続けられ、更新はアップデートとサポートのために行います。その更新料が右列の金額で、新規価格の50%です(Server版の価格改定FAQ)。
パックは組み合わせられず、75ユーザーなら25+50ではなく100ユーザーのパックを買う必要があります。ヘルプデスクのエージェントが4人以上になる場合は、1エージェント年額72ドルです。有料サブスクリプションが失効したServer版では、AIアシスタントも使えなくなります。
YouTrackとJiraの違い:保存容量・自社運用・ヘルプデスク
課題の起票、アジャイルボード、ワークフロー、REST APIといった基本機能は両者とも揃っており、機能表の丸の数では差が付きません。選定を分けるのは次の3点です。
- 自社運用の継続性:AtlassianはJira Data Centerの新規顧客向け販売を2026年3月30日に終了し、原則として2029年3月28日に提供を終えると公表しています。ただし、既存Data Center顧客は2028年3月30日まで新規契約や拡張が可能です。これからオンプレミスで課題管理を始める組織にとって、Jiraは選択肢から外れます。YouTrackはServer版をDockerイメージで提供し続けています。
- ヘルプデスク:YouTrackは同じ製品の中にヘルプデスクのプロジェクトを作れます。開発課題と顧客の問い合わせを同じ検索クエリで横断できるのが利点です。Jiraでは別製品のJira Service Managementを契約します。
- 保存容量:無料枠同士では30GBと2GBで15倍の差があります。Jiraは有料のStandardで250GBになります。
Jira Cloudは2026年10月13日に料金を改定し、100ユーザーまでの月払い単価はStandardが9.05ドルから9.70ドル、Premiumが18.30ドルから19.60ドルになりました(Atlassianの改定後の料金表)。Jiraの料金ページに大きく出る8.48ドルは、101人目以降の割安な単価を含めた平均値で、300ユーザーで計算すると一致します。10人台のチームが比べるなら9.70ドルの方です。Jiraの基本操作と用語はJiraの使い方の解説にまとめています。
Jiraを選ぶべき場面
YouTrackを勧めないのは次のような組織です。ConfluenceやBitbucketなどAtlassian製品で情報基盤を統一していて、ページと課題の相互リンクを日常的に使っている場合、YouTrackへ移ると連携を作り直すことになります。Atlassian Marketplaceのアプリ(テスト管理や工数集計など)を業務の前提にしている場合も、YouTrackのアプリで代替できるかを1本ずつ確かめる必要があります。取引先や親会社がJiraを指定している受託開発でも、YouTrackを入れると二重管理になります。
Jiraから移行するときに引き継げないデータ
YouTrackにはJiraからのインポート機能があり、プロジェクト・課題・コメント・作業記録・履歴・ウォッチャー・ユーザーとグループを取り込めます。一方で、ボード、ダッシュボード、ロードマップ、レポートは移行されません。移行後にボードとレポートを作り直す工数を見込んでください。
前提条件もあります。取り込むプロジェクトはJiraのバージョン5以降で作成されていること、接続に使うJiraアカウントに管理者権限があること、リモートAPI呼び出しが許可されていることが必要です。Jira Cloudから移行する場合は、Atlassian管理画面からユーザーデータをCSVで書き出して先にアップロードしておきます。
YouTrackの始め方:プロジェクトテンプレートの選択とServer版の構築
Cloud版はJetBrainsのサイトでインスタンスを登録すると、https://<会社名>.youtrack.cloud のアドレスで使い始められます。登録直後から10ユーザー・3エージェントの無料ライセンスが付与されます。
用途別のプロジェクトテンプレートの選び方
プロジェクトの作成時に選ぶテンプレートで、ボードやワークフローの初期設定が決まります。既定のテンプレートの設定は読み取り専用で、作成後にプロジェクト側を変更する形です。
| テンプレート | 向く用途 |
|---|---|
| Scrum | スプリントで開発するチーム |
| Kanban | 継続的に流す保守・運用 |
| Default | 標準的なバグ・課題管理 |
| Helpdesk | 社外からの問い合わせ対応 |
| Project Management | マイルストーン付きの計画 |
| Task Management | 部署や個人のタスク管理 |
| Marketing | キャンペーンの進行管理 |
| Demo | サンプル課題で操作を学ぶ |
Scrumを選ぶと、開発用とプロジェクト管理用の2つのアジャイルボードが作られ、スクラムボード向けのワークフローが自動で付きます。スプリントとバックログの考え方はスクラム開発の役割とイベントの解説、WIP制限を含むボード運用はカンバン方式のタスク管理の解説が参考になります。迷ったら最初にDemoを作り、サンプル課題で検索とコマンドを試してから本番のプロジェクトを作ると、設定のやり直しを減らせます。
Server版をDockerで構築する手順
Server版は公式のDockerイメージで配布されています。Linuxでは、データ・設定・ログ・バックアップの4つのディレクトリを作り、コンテナ内のユーザー(UID 13001)に所有権を渡してから起動します。タグは2026年10月21日に公開された2026.2の最新ビルドです。
sudo mkdir -p -m 750 /opt/youtrack/data /opt/youtrack/conf /opt/youtrack/logs /opt/youtrack/backups
sudo chown -R 13001:13001 /opt/youtrack
docker pull jetbrains/youtrack:2026.2.19656
docker run -it --name youtrack-server \
-v /opt/youtrack/data:/opt/youtrack/data \
-v /opt/youtrack/conf:/opt/youtrack/conf \
-v /opt/youtrack/logs:/opt/youtrack/logs \
-v /opt/youtrack/backups:/opt/youtrack/backups \
-p 8080:8080 \
jetbrains/youtrack:2026.2.19656
初回起動時はWebの設定ウィザードが立ち上がり、ログに ?wizard_token= 付きのURLが出力されます。このワンタイムトークン付きのURLをブラウザで開いて初期設定を終えます。8080番ポートはリバースプロキシでTLSを終端する前提の構成で、YouTrack自身にTLSを持たせる場合は8443番を使います。Docker Hubには2026.1・2025.3の更新ビルドも同じ日に出ているので、latest に頼らず版を固定したタグで起動してください。
YouTrackの使い方:検索クエリとコマンドによる課題操作
YouTrackの操作で最初に覚えたいのが、検索クエリとコマンドの2つです。検索の属性条件は「項目名: 値」、更新コマンドは「項目名 値」のように書きます。どちらも入力中に候補が補完されます。
検索クエリの基本構文
検索には、候補から条件を選ぶシンプル検索と、クエリ構文で書く高度な検索があります。既定の保存済み検索「自分に割り当て」の中身は for: me で、for は担当者(Assignee)の別名、me は自分を指すキーワードです。よく使う形は次のとおりです。
for: me #Unresolved
Type: Bug State: Unresolved sort by: Priority asc
#Critical updated: {This week}
in: MYPROJ has: votes sort by: votes
#Unresolved は未解決の課題だけに絞るキーワードです。既定ではFixed・Won't fix・Duplicate・Incomplete・Obsolete・Can't reproduceの状態が解決済みとして扱われ、それ以外が未解決になります。Today・Yesterday・{This week} のような定義済みの期間を指定でき、This week のように空白を含む値は波括弧で囲みます。has: はコメント・添付・作業記録などの有無で絞る条件です。書いたクエリは保存済み検索として共有でき、後述のワークフローやREST APIにもそのまま渡せます。
コマンドによる複数課題の一括更新
コマンドは、担当者・状態・優先度・タグ・リンクなどの変更を1回の入力で適用する機能です。課題を開いて Ctrl + Alt + J(既定のホットキー設定の場合)を押すとコマンドダイアログが開きます。たとえば for me state in progress と入力すると、自分を担当者にして状態を「進行中」に変える2つの更新が同時に適用されます。課題一覧で複数の課題を選んでから実行すれば、まとめて更新できます。
ワークフローによる課題更新の自動化
担当者の自動割り当て、期限切れの通知、状態遷移の制限といった定型処理は、ワークフローで組みます。ワークフローはルールの集まりで、プロジェクト単位で有効にします。作り方はコード不要のワークフローコンストラクターと、JavaScriptで書く方法の2通りです。
ワークフロールールの実行タイミングと用途
ルールの種類で、いつ実行されるかが決まります(ワークフローのルール種別)。
| ルール | 実行のタイミング | 使う場面の例 |
|---|---|---|
| on-change | 課題・記事の作成と変更 | 担当者の自動割り当て |
| on-schedule | cron式の日時 | 期限切れの通知 |
| action | 利用者がメニューやコマンドで実行 | 定型の一括操作 |
| state-machine | 状態の遷移 | 許可する遷移の制限 |
on-changeはバージョン2024.2から、課題に加えてナレッジベースの記事の変更にも反応するようになりました。共通の関数を置くカスタムスクリプトという種類もあり、複数のルールから呼び出せます。
コード不要のワークフローコンストラクター
ワークフローコンストラクターは、条件とアクションのブロックをドラッグして組む画面です。「管理 > ワークフロー」で新しいワークフローを作るときに選び、on-change・on-schedule・actionのルールを作れます。state-machineのルールも作れますが、対象はstate型かenum型の単一値フィールドに限られます(状態遷移ルールの作り方)。操作にはプロジェクトの更新権限が要ります。
注意したいのは「コードに変換」の操作が一方向なことです。変換したワークフローは、それ以降JavaScriptのエディターでしか編集できず、コンストラクターには戻せません(ワークフローコンストラクターの説明)。プログラムを書かない担当者が保守する予定なら、変換せずにブロックの範囲で済ませてください。
JavaScriptで変更時ルールを書く例
次の例は、担当者が空でサブシステムが設定されている課題が更新されたときに、そのサブシステムの責任者を担当者に入れるon-changeルールです。公式のサンプルを基に、メッセージ表示と変更対象を限定する条件を省き、報告済み課題の更新全般で担当者の空欄を補う形に変更しています。
const entities = require('@jetbrains/youtrack-scripting-api/entities');
exports.rule = entities.Issue.onChange({
title: 'サブシステムの担当者を自動で割り当てる',
guard: (ctx) => {
const fs = ctx.issue.fields;
return ctx.issue.isReported && !fs.Assignee && fs.Subsystem;
},
action: (ctx) => {
const fs = ctx.issue.fields;
const owner = fs.Subsystem.owner;
if (owner && ctx.Assignee.values.has(owner)) {
fs.Assignee = owner;
}
},
requirements: {
Assignee: { type: entities.User.fieldType },
Subsystem: { type: entities.OwnedField.fieldType }
}
});
guard が実行の条件、action が実際の変更です。isReported で下書きの課題を除いています。requirements に書いたフィールドがプロジェクトに無いと、ワークフローの一覧にエラーが出て有効にできません。責任者が担当者の候補に入っていない場合は、values.has の判定で何もしないようにしています。
スケジュール時ルールのcron式で間違えやすい点
on-scheduleルールの cron はQuartzの形式で書きます。Linuxのcrontabと違い、秒・分・時・日・月・曜日の6項目が必要で、曜日は1が日曜日です。平日9時の実行なら 0 0 9 ? * MON-FRI のように書きます。5項目で書いたり、0を日曜日として書いたりすると、意図どおりに解釈されません(スケジュール時ルールの説明)。
時刻はYouTrackサーバーのタイムゾーンで評価され、ルールは権限をすべて持つ専用のワークフローユーザーで実行されます。期日(Due Date)フィールドはUTCの12:00として保存されるので、日本時間で「期日の2日前」を判定する場合は時差の分をずらして計算します。
開発ツールとの連携:GitHubのコミットとJetBrains IDE
YouTrackはGitHub(github.comとGitHub Enterprise)、GitLab、Bitbucketなどのリポジトリをプロジェクトに紐づけられます。紐づけると、課題IDを含むコミットが課題のアクティビティに表示され、プルリクエストのタイトルか説明に課題IDがあればその状態も課題側に出ます。GitLab側の課題とマージリクエストの運用はGitLabの使い方の解説で扱っています。
コミットメッセージによる課題の更新
コミットメッセージに #課題ID コマンド の形式で書くと、YouTrackを開かずに課題を更新できます。複数の課題は括弧でまとめられます。
RD-2677 記事の書式を修正
#RD-2677 Ready
(#TST-12, #TST-324, #TST-433) Fixed
1つ目は課題RD-2677の状態をReadyに、2つ目は3件の課題をまとめてFixedにします。ただし、次の場合はコマンドが無視されます。
- コマンドをプルリクエストのタイトルや説明に書いた場合
- 課題IDをブランチ名にだけ含め、コミットメッセージで課題に触れていない場合
- コミットの作者が、連携設定の「Committers」グループに入っていない場合(コミット自体は課題に紐づきます)
コミットの作者はYouTrackのユーザーと照合され、そのユーザーの権限でコマンドが実行されます。「No Ticket, No Commit」のようにコミットと課題を必ず結びつける運用はチケット駆動開発(TiDD)の解説で扱っています。GitHub Issuesで足りるかを比べたい場合はGitHub Issueの使い方の解説も参照してください。
JetBrains IDEからの課題操作
IntelliJ IDEAなどのJetBrains IDEには課題管理(Task Management)の機能が組み込まれており、追加のプラグインなしでYouTrackに接続できます。コミットメッセージ中の課題IDをリンクに変える、課題をIDE上のタスクとして開くといった操作がこれで使えます。YouTrack Integrationプラグインを入れると、IDEのツールウィンドウで課題の一覧・検索・更新まで行えるようになります。
REST APIとMCPサーバーによる外部連携
YouTrackのREST APIはJSONでやり取りし、認証には永続トークン(Permanent Token)を Authorization: Bearer ヘッダーで渡す方式が推奨されています。トークンはプロファイルの「アカウントのセキュリティ」(Account Security)タブで発行し、スコープを選びます。2026.1からは、従来Hub REST APIでのみ扱えたユーザー・グループ・ロール関連の多くの操作を、YouTrack REST APIでも実行できるようになりました。
REST APIで課題一覧を取得する例
課題一覧は GET /api/issues で取得し、返す項目を fields、絞り込みを query で指定します。query には画面の検索クエリをそのまま渡せます。次の例は、JetBrainsの公開トラッカーでプロジェクトJTの未解決課題を新しい順に3件取得するもので、公開プロジェクトなのでトークンなしで実行できます。
curl -s -G "https://youtrack.jetbrains.com/api/issues" \
-H "Accept: application/json" \
--data-urlencode "query=project: JT #Unresolved sort by: created desc" \
--data-urlencode "fields=idReadable,summary,created" \
--data-urlencode '$top=3'
実行すると、idReadable(画面に表示される課題ID)・summary・created(と型名の $type)を持つ3件のJSON配列が返ります。created はUNIX時間のミリ秒です。自社のインスタンスでは、URLを https://<会社名>.youtrack.cloud/api/issues に替え、-H "Authorization: Bearer <トークン>" を足します。# や空白を含むクエリは、--data-urlencode でエンコードすると、エンコード漏れによるエラーを避けられます。
AIツールからMCPサーバーで接続する方法
YouTrackはMCP(Model Context Protocol)サーバーを内蔵しており、Cloud版のエンドポイントは https://<会社名>.youtrack.cloud/mcp です。AIツールは課題やコメントの検索・作成・更新を、接続に使ったアカウントの権限の範囲で行います。OAuthとCIMDの両方に対応したクライアントは、管理者が自動クライアント登録(CIMD)を有効にすればサインインだけで接続できます。CIMD非対応のクライアントは、管理者が手動で作成したOAuthクライアントを使います。OAuth非対応のクライアントは永続トークンを Authorization ヘッダーで渡します(MCPサーバーの設定手順)。
Claudeの公式コネクタは、YouTrack 2026.2.18687以降のCloudインスタンスが対象です。AIツールには課題の本文が渡るため、接続用のアカウントは参照できるプロジェクトを絞ったものを用意してください。YouTrack内蔵のAIアシスタントと違い、どのAIサービスにデータが渡るかは接続するツールの側で決まります。
YouTrackの導入判断:向くチームと費用の目安
YouTrackが最も合うのは、10人以下の開発チームと、開発課題と顧客の問い合わせを同じ場所で管理したいチームです。無料枠にヘルプデスク3エージェントとAIアシスタントまで含まれるため、小さなSaaS事業なら課題管理と問い合わせ窓口の費用をゼロで始められます。オンプレミスが必須の組織にとっては、Jira Data Centerの新規顧客向け販売終了後も、新規で導入できる選択肢の1つになります。
注意したいのは11人目の壁です。10人までは0ドルですが、11人になると月払いで月額59.40ドル(11×5.40ドル)が発生します。人数が10人前後で推移するチームは、年払いに切り替えると月あたり49.50ドル相当になります。
ツールを入れただけでは課題の粒度や状態の定義はそろいません。ワークフローで何を自動化するかは、先に運用ルールを決めてから組むほうが手戻りが少なくなります。選定の全体の考え方は中小企業のプロジェクト管理ツールの選び方で整理しています。ツール選定から進捗管理のルール作りまでを外部に任せたい場合は、要件定義・PMO支援で相談を受け付けています。
よくある質問
YouTrackとは何ですか?
JetBrainsが開発する課題管理・プロジェクト管理ツールです。課題の追跡、スクラム・カンバンのボード、ガントチャート、ナレッジベース、ヘルプデスクを1つの製品で扱えます。クラウド版(YouTrack Cloud)と自社サーバー版(YouTrack Server)があり、最新版は2026.2です。
YouTrackは無料で使えますか?
10ユーザーまで無料です。ヘルプデスクのエージェントは3人まで、保存容量は30GBまでで、機能の制限はカスタムロゴだけです。Cloud版とServer版のどちらも10ユーザー・3エージェントまで無料です(30GBの容量上限はCloud版の条件です)。
YouTrackは日本語で使えますか?
使えます。日本語はJetBrainsが公式にサポートする9言語の1つで、バージョンアップのたびに翻訳も更新されます。表示言語は各ユーザーがプロファイル設定で選びます。
YouTrackとJiraの違いは何ですか?
無料枠の保存容量(YouTrack 30GB、Jira 2GB)、自社運用の継続性(Jira Data Centerは新規顧客向け販売を2026年3月30日に終了)、ヘルプデスクが同じ製品に入っているかどうかが主な違いです。Atlassian製品で基盤を統一している組織ではJiraのほうが連携の手間が少なくなります。
YouTrackのAPIやMCPでは何ができますか?
REST APIでは課題の作成・更新・検索、プロジェクトやカスタムフィールド、アジャイルボードの操作ができ、課題の絞り込みには画面と同じ検索クエリを使えます。MCPサーバーに接続したAIツールからは、接続したアカウントの権限の範囲で課題やコメントを検索・作成・更新できます。