tmux(ティーマックス)は、1つの端末の中で複数のシェルを動かし、端末を閉じても作業を残しておけるターミナルマルチプレクサです。最新の安定版は2026年8月17日公開の3.7cです。公式のtmuxはLinux・macOS・BSD系で動き、WindowsではWSLかMSYS2の上で使うか、tmux互換の別実装であるpsmuxを入れます。
この記事では、Windows・Mac・Linuxでの導入手順、セッションのデタッチと再接続、画面分割のキー、「閉じる」「抜ける」「削除」の操作の違い、.tmux.confの設定例を順に整理します。キー割り当てと既定値は、tmux 3.7cを実際に起動して確かめたものです。
まとめ:tmuxの使い方とWindowsでの導入の要点
- 読み方は「ティーマックス」。terminal multiplexerの略で、セッション・ウィンドウ・ペインの3層で画面を管理します。
- Windowsで公式のtmuxを使うならWSL。Ubuntuなら
sudo apt install tmuxで入ります。WSLを入れたくない場合は、PowerShell上で動くpsmux(winget install psmux)が選択肢です。 - 操作はすべてプレフィックスキーCtrl+bの後に1キーを押します。
%で左右、"で上下に分割し、dでデタッチ(切り離し)します。 - 作業を残して抜けるならデタッチ、完全に終えるならkill-session。
exitは今いるペインだけを閉じます。 - 再接続は
tmux attach -t 名前。SSHが切れても作業は続きますが、サーバー(OS)を再起動するとセッションは消えます。
tmuxとは:読み方とセッション・ウィンドウ・ペインの関係
tmuxはterminal multiplexer(端末多重化ソフト)の略で、日本語では一般に「ティーマックス」と読まれます。ライセンスはISCで、GitHubのtmux/tmuxで開発されています。
tmuxを起動すると、裏でtmuxサーバーが立ち上がり、端末はそのサーバーに接続する「クライアント」になります。端末ウィンドウを閉じたりSSHが切れたりしても、サーバー側のシェルやコマンドは動き続けます。後から別の端末で接続し直せば、同じ画面に戻れます。これがtmuxを使う一番の理由です。
| 単位 | 役割 | 例 |
|---|---|---|
| セッション | 作業の単位。デタッチと再接続の対象 | 案件ごとに1つ |
| ウィンドウ | セッション内のタブに当たる画面 | 編集用・ログ用 |
| ペイン | ウィンドウを分割した1区画 | 左に編集、右にテスト |
セッションが残るのはtmuxサーバーが動いている間だけです。OSの再起動やtmux kill-serverで、すべてのセッションとその中のプロセスが終了します。再起動後も配置を戻したい場合は、tmux-resurrectなどのプラグインか、起動スクリプトで組み直す必要があります。
Windowsでtmuxを使う方法:WSL・psmux・MSYS2の比較
tmuxのREADMEが挙げる対応OSはOpenBSD・FreeBSD・NetBSD・Linux・macOS・Solarisで、Windows向けの公式バイナリはありません。Windowsでtmuxを動かす方法は下の表の上3つで、4つ目のWindows Terminalは比較用に並べた端末アプリのペイン分割です。
| 方法 | 中身 | ペイン内のシェル | 向く人 |
|---|---|---|---|
| WSL+tmux | 公式tmux(Linux版) | bashなどLinuxのシェル | Linux向けの開発・サーバー運用 |
| psmux | tmux互換の別実装(Rust製) | PowerShell・cmd.exe・Git Bashなど | Windowsのシェルのまま使いたい人 |
| MSYS2+tmux | 公式tmux(MSYS2版) | MSYS2のbash | 既にMSYS2で開発している人 |
| Windows Terminal | 端末アプリのペイン分割 | 任意のプロファイル | 分割表示だけで足りる人 |
判断の軸は「ペインの中でどのシェルを使うか」です。Linuxのコマンドやサーバー作業が中心ならWSL、PowerShellのスクリプトやWindowsのコマンドが中心ならpsmuxを選びます。
WSL上のUbuntuにtmuxを入れる手順
WSLが未導入なら、管理者として開いたPowerShellでwsl --installを実行し、再起動します。既定ではUbuntuが入ります。その後、Ubuntuの端末で次を実行します。
sudo apt update
sudo apt install tmux
tmux -V
入る版はUbuntuのリリースで決まり、Ubuntu 24.04では3.4、Ubuntu 26.04では3.6aです。WSLそのものの仕組みや有効化の詳細はWSL2の仕組みとインストール方法の解説、開発環境としての整え方はWSLで開発環境を構築する手順で扱っています。
psmuxでWSLなしに使う手順と注意点
psmuxは、WindowsのConPTYを直接使って動くRust製のターミナルマルチプレクサです。tmuxのコマンド体系で操作でき、既存の.tmux.confも読み込みます。最新版はv3.3.8(2026年8月18日)、ライセンスはMITです。動作要件はWindows 10/11で、PowerShell 7以上が推奨されています。
winget install psmux
psmux new -s work
wingetのほか、Scoop・Chocolatey・cargo install psmuxでも入ります。psmuxのほかにtmuxという名前のコマンドも入るので、Linuxと同じ打ち方で起動できます。
注意点は、psmuxがtmux開発元のソフトではなく、第三者による別実装であることです。README自身が「移植でもラッパーでもない」と説明しており、互換表には意図的に挙動を変えたコマンド(複数ソケットでのkill-serverなど)が載っています。tmuxの記事やプラグインがそのまま動くとは限らないため、.tmux.confが複雑な場合は互換表(docs/compatibility.md)を先に確認してください。
MSYS2・Cygwinでtmuxを使う場合
MSYS2のmsysリポジトリにはtmux 3.7cが登録されており、MSYS2の端末でpacman -S tmuxを実行すると入ります。動くのはMSYS2のbashの中で、使い勝手はLinuxのtmuxに近くなります。Cygwinにもtmuxのパッケージはありますが、2026年9月時点で安定版は3.3a(2024年1月)のままで、3.7b-1はテスト扱い、メンテナーも不在(ORPHANED)です。これからWindowsで環境を作るなら、Linuxと同じパッケージが揃うWSLのほうが手間は少なく済みます。
Windows Terminalのペイン分割との違い
Windows Terminalにもペイン分割があり、Alt+Shift++で左右、Alt+Shift+-で上下に分かれ、Ctrl+Shift+Wで閉じます。画面を分けるだけならこれで十分です。
違いはセッションの永続化です。Windows Terminalのペインは、ウィンドウを閉じるとその中のプロセスも終了します。起動時の設定をpersistedWindowLayoutにすると、次回起動時にタブとペインの配置が戻り、v1.21以降は画面に出ていた文字も復元されます。ただし戻るのは表示だけで、中で動いていたプロセスは終了したままです。tmuxはデタッチしても裏で動き続け、SSH先のサーバーでも同じことができます。両方の利点がほしい場合は、Windows Terminalの中でWSLのtmuxやpsmuxを起動します。
Linux・macOSへのtmuxのインストールと版の確認
公式Wikiのインストール手順どおり、各OSのパッケージマネージャーで入ります。
# Ubuntu / Debian
sudo apt install tmux
# Fedora / RHEL系
sudo dnf install tmux
# macOS(Homebrew)
brew install tmux
# 版の確認
tmux -V
ディストリビューションが配る版は上流より古いことがあります。2026年9月時点の主な版は次のとおりです。
| 配布元 | tmuxの版 |
|---|---|
| 上流(GitHub) | 3.7c(2026-08-17) |
| Homebrew | 3.7c |
| MSYS2 | 3.7c |
| Ubuntu 26.04 | 3.6a |
| Debian 13 | 3.5a(backportsは3.6b) |
| Ubuntu 24.04 | 3.4 |
Macの標準ターミナルもCommand+Dでウィンドウを2つのペインに分割できますが、これは同じ画面の別の位置を見比べるための分割で、ペインごとに別のシェルは動きません。デタッチして後から戻る機能もありません。
iTerm2とtmuxの違いは、iTerm2がMacの端末アプリで、tmuxはその中で動くソフトだという点です。iTerm2単体でもシェルを並べて分割できますが、iTerm2を閉じれば中のシェルも終わります。SSH先の作業を残したいならtmuxを併用します。iTerm2を使っている場合は、tmux -CCで起動するとtmuxのウィンドウとペインがiTerm2のタブと分割としてそのまま表示されます(tmux統合モード)。iTerm2側の設定はiTerm2の使い方とインストールの解説を参照してください。
セッション操作:作成・デタッチ・再接続・削除のコマンド
セッションの操作は、シェルから打つコマンドと、tmuxの中で押すキーの2通りがあります。キーはすべて、プレフィックスキー(既定はCtrl+b)を押して離してから次のキーを押します。
tmux new -s work # 名前付きでセッションを作成
# Ctrl+b → d # デタッチ(セッションは残る)
tmux ls # セッション一覧
tmux attach -t work # 再接続(tmux a -t work でも同じ)
tmux rename-session -t work dev # 名前を変更
tmux kill-session -t dev # セッションを削除
tmux kill-server # 全セッションを削除
tmuxの中では、Ctrl+b→sでセッションの一覧から選んで切り替え、Ctrl+b→$で今のセッション名を変更できます。
tmuxを抜ける・閉じる・終了する操作の違い
「抜ける」「閉じる」は、残すものによって使う操作が変わります。取り違えると、動かしていたコマンドまで止めてしまいます。
| やりたいこと | 操作 | 中のプロセス |
|---|---|---|
| 作業を残して抜ける | Ctrl+b→d | 動き続ける |
| 今のペインを閉じる | exitまたはCtrl+b→x |
そのペインだけ終了 |
| 今のウィンドウを閉じる | Ctrl+b→& | ウィンドウ内が全部終了 |
| セッションを削除する | tmux kill-session -t 名前 |
セッション内が全部終了 |
| tmuxを完全に終了する | tmux kill-server |
全セッションが終了 |
Ctrl+b→xとCtrl+b→&は確認のプロンプトが出るので、yで確定します。ウィンドウに残った最後のペインでexitするとそのウィンドウが閉じ、セッションに残った最後のウィンドウだった場合はセッションも終了します。
画面分割とウィンドウ操作のキー一覧
tmux 3.7cの既定のキー割り当てから、よく使うものを抜き出しました。すべてCtrl+bの後に押します。
| キー | 動作 |
|---|---|
% |
左右に分割 |
" |
上下に分割 |
| 矢印キー | ペインを移動 |
o |
次のペインへ移動 |
z |
ペインの最大化と解除 |
c |
新しいウィンドウ |
n/p |
次/前のウィンドウ |
0〜9 |
番号でウィンドウを選ぶ |
w |
ウィンドウ一覧から選ぶ |
, |
ウィンドウ名を変更 |
? |
キー一覧を表示 |
分割の向きは名前が紛らわしい点に注意してください。%が実行するのはsplit-window -h(horizontal)ですが、ペインは左右に並びます。「水平分割」「縦分割」と検索したときに逆の説明を見かけるのはこのためで、実際にどちらに並ぶかで覚えるのが確実です。
ペインのサイズ変更・入れ替え・レイアウト
Ctrl+bを押した後、Ctrlを押したまま矢印キーを押すと、その方向にペインの境界が1セルずつ動きます。{と}でペインを前後と入れ替え、Space(スペースキー)で左右均等・上下均等などのレイアウトを順に切り替えます。ペインを独立したウィンドウに切り出すのは!です。
コピーモードでのスクロールとコピー
tmuxの中ではマウスホイールでの遡りが効かないことがあり、過去の出力はコピーモードで見ます。Ctrl+b→[でコピーモードに入り、矢印キーやPageUpでスクロールし、qで抜けます。遡れる行数は既定で2000行です。
コピーモードのキーは既定でEmacs風です。環境変数VISUALかEDITORに「vi」を含むときだけvi風に切り替わります。明示的にvi風にするなら、.tmux.confにset -g mode-keys viを書きます。マウスでスクロール・選択したい場合はset -g mouse onを有効にします。
.tmux.confの設定例と反映方法
tmuxは起動時に~/.tmux.confを読み、無ければ$XDG_CONFIG_HOME/tmux/tmux.confか~/.config/tmux/tmux.confを読みます。よく使われる設定をまとめた例です。
# プレフィックスをCtrl+aに変更
set -g prefix C-a
unbind C-b
bind C-a send-prefix
# マウス操作を有効化
set -g mouse on
# ウィンドウとペインの番号を1から始める
set -g base-index 1
setw -g pane-base-index 1
# スクロールで遡れる行数を増やす(既定は2000)
set -g history-limit 50000
# 分割したペインを今いるディレクトリで開く
bind % split-window -h -c "#{pane_current_path}"
bind '"' split-window -v -c "#{pane_current_path}"
# プレフィックス → r で設定を再読み込み
bind r source-file ~/.tmux.conf \; display "reloaded"
編集した設定は、起動中のtmuxでtmux source-file ~/.tmux.confを実行すると反映されます。~/.config/tmux/tmux.confに置いた場合は、このコマンドと設定例のbind rの行もそのパスに書き換えてください。プレフィックスをCtrl+aに変えると、シェルの「行頭へ移動」やGNU screenの操作と重なります。どちらを優先するか決めてから変更してください。
tmux 3.6〜3.7の主な変更点
公式のCHANGESから、日常の操作に関わる変更を抜き出しました。3.8は2026年9月9日にrc2が出ており、まだ安定版ではありません。
| 版 | 公開日 | 主な変更 |
|---|---|---|
| 3.7c | 2026-08-17 | スクロールバーの初期表示などの修正 |
| 3.7 | 2026-06-26 | フローティングペイン(Ctrl+b→*)を追加 |
| 3.6b | 2026-05-20 | 3.6系の修正版 |
| 3.6 | 2025-11-26 | ペインごとのスクロールバーを追加 |
| 3.5a | 2024-10-05 | 3.5系の修正版 |
3.7のフローティングペインは、レイアウトの上に重ねて置けるペインです。CHANGESは初期実装と明記しており、移動とサイズ変更はマウスでしかできません。ほかに3.7では、コピーモードの行番号表示(copy-mode-line-numbers)と、セッショングループをまとめて消すkill-session -gが加わりました。
tmuxが向く場面と向かない場面
tmuxが最も効くのは、SSH先で時間のかかる処理を動かす場面です。ビルドやデータ移行をtmuxの中で始めてデタッチすれば、回線が切れても処理は止まりません。SSH接続そのものの設定はSSH接続の仕組みと安全な運用設定の解説で扱っています。
AIコーディングエージェントの並列実行にも使われます。Claude CodeのAgent Teamsで、エージェントごとに画面を分ける表示モードを使うには、tmuxか、it2 CLIを入れたiTerm2が必要です。公式ドキュメントはWindows Terminal・VS Codeの統合ターミナル・Ghosttyを非対応としており、WindowsではpsmuxがREADMEでAgent Teamsへの対応を明記しています。仕組みはClaude Code Agent Teamsの協調開発の解説を参照してください。
逆に、ローカルPCで画面を分けたいだけなら、tmuxを入れる必要はありません。Windows TerminalやiTerm2、WezTermのペイン分割で足ります。tmuxのキー操作を覚える手間に見合うのは、「接続が切れても作業を残したい」場面があるときです。
tmuxでよく出るエラーと対処
- sessions should be nested with care, unset $TMUX to force:tmuxの中でさらにtmuxを起動しようとしたときのエラーです。
tmux attachではなく、Ctrl+b→sで切り替えます。 - no server running on …:動いているセッションが無い状態で
tmux attachやtmux lsを実行したときに出ます。OSの再起動などでサーバーが終了しているので、tmux newで作り直します。 - Vimなどで色が崩れる:
default-terminalの既定値はビルド時に使えたterminfoで決まり(tmux-256colorが最優先)、Homebrew版3.7cではtmux-256colorでした。tmuxの中からSSHで入った先のサーバーにこのterminfoが無いと表示が乱れるため、set -g default-terminal "screen-256color"に切り替えます。
よくある質問
tmuxの読み方は?
一般に「ティーマックス」と読みます。terminal multiplexer(ターミナルマルチプレクサ)の略です。
Windowsでtmuxは使えますか?
Windows向けの公式版はありません。WSLのUbuntuにsudo apt install tmuxで入れるか、MSYS2でpacman -S tmuxを実行します。PowerShellのまま使いたい場合は、tmux互換の別実装であるpsmuxをwinget install psmuxで入れます。
tmuxのセッションを削除するには?
tmux kill-session -t セッション名で1つずつ削除し、tmux kill-serverですべてを削除します。削除すると中で動いていたプロセスも終了します。作業を残して抜けるだけなら、Ctrl+b→dでデタッチします。
tmuxで画面を分割するキーは?
Ctrl+bを押した後、%で左右、"で上下に分割します。分割したペインは、Ctrl+bの後に矢印キーを押して移動します。
tmuxの画面をスクロールするには?
Ctrl+b→[でコピーモードに入り、矢印キーやPageUpで遡ります。qで元に戻ります。マウスのホイールで遡りたい場合は、.tmux.confにset -g mouse onを書きます。