Amazon Nova Canvasは2026年9月30日にEOL|使い方と移行先の判断【2026年7月時点】
Amazon Nova Canvasは、Amazon Bedrock上で動く画像生成モデルです。専用の画像編集アプリでもノーコードのWebエディタでもなく、InvokeModel APIにJSONを投げて画像のBase64文字列を受け取る、それだけのモデルです。そしてこのモデルは、AWSのモデルライフサイクル表で2026年3月30日にLegacy、2026年9月30日にEOL(提供終了)が確定しています。Legacy中は新規顧客が利用できず、EOL後は呼び出しが失敗します。これから画像生成をBedrockで始める人にとって、Nova Canvasはもう入口ではありません。すでに本番で叩いている人にとっては、残り約2か月半の移行計画がすべてです。この記事では確定仕様・実装の要点・移行先の判断を一次情報で整理します。
まとめ
- 実体:Bedrockの画像生成モデル。モデルIDは
amazon.nova-canvas-v1:0、対応リージョンは東京・アイルランド・バージニア北部の3つ。専用UIや編集履歴機能は存在しない。 - 期限:Legacy 2026年3月30日 → EOL 2026年9月30日。新規顧客は利用不可、既存ユーザーも15日間使わないとアクセスを失う可能性がある。移行は自動では行われない。
- 仕様の上限:プロンプトは英語1〜1024文字、出力解像度は各辺320〜4096px・16の倍数・総画素419万未満。
- 移行先:AmazonブランドではNova 2 Omniが画像の生成・編集を持つが2026年7月時点でプレビュー。EOLに間に合う前提では計画できず、実務の移行先はBedrock上のStability AI系(背景除去やインペイントが1回0.07ドル)になる。
- 今から新規採用する理由はない。既存ワークロードは taskType 単位で置換先を対応付けて、9月30日までに切り替える。
Amazon Nova Canvasの実体:Bedrock上のAPI専用画像生成モデル
Nova Canvasを「Amazon版のCanva」や「Web上のお絵かきツール」と説明する記事が見られますが、実体は違います。Nova CanvasはAmazon Nova ファミリーの画像生成モデルであり、提供形態はBedrockのモデル呼び出しAPIだけです。BedrockコンソールのImage playgroundから手動で試すことはできますが、それはモデルの動作確認用の画面であって、レイヤーや編集履歴を持つ画像編集アプリではありません。
確定仕様(AWS公式モデルカード)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| モデルID | amazon.nova-canvas-v1:0 |
| 入力/出力 | テキスト・画像 / 画像 |
| プロンプト上限 | 1024文字 |
| 最大出力解像度(生成) | 約419万ピクセル(2048×2048、2816×1536 など) |
| 最大出力解像度(編集) | 長辺4096px以内・アスペクト比1:4〜4:1・総画素419万以内 |
| 入力画像形式 | PNG、JPEG |
| 対応言語 | 英語のみ |
| 提供リージョン | ap-northeast-1(東京)、eu-west-1、us-east-1 |
| ファインチューニング | 可(Legacy入り後は新規ジョブ不可) |
| プロビジョンドスループット | モデルカードは「非対応」、BedrockのPT対応モデル表には掲載あり(記述が食い違う)。いずれにせよLegacy中は新規作成不可 |
なお、モデルカードが最大解像度の例として挙げる 2816×1536 は、下で述べる「総画素4,194,304未満」の条件を満たしません。AWSの原典どうしが食い違っているため、実装では例示値をそのまま使わず、後述の4条件を満たす値で必ず検証してください。
実務で効くのは「対応言語は英語のみ」の1行です。日本語プロンプトを渡しても弾かれはしませんが、モデルが解釈対象としているのは英語であり、構図がプロンプトどおりにならないときはまずここを疑う必要があります。日本語UIのアプリに組み込むなら、プロンプトを英訳する層を挟むのが前提設計になります。
2026年9月30日EOL:新規顧客はすでに使えない
AWSのモデルライフサイクル表に、Nova Canvasは次のとおり掲載されています。Nova Reel(動画生成)も同日付です。
| モデル | Legacy日 | EOL日 | 公開延長アクセス開始日 |
|---|---|---|---|
| Nova Canvas(amazon.nova-canvas-v1:0) | 2026-03-30 | 2026-09-30 | 未設定 |
| Nova Reel(amazon.nova-reel-v1:0 / v1:1) | 2026-03-30 | 2026-09-30 | 未設定 |
| Nova Premier | 2026-03-13 | 2026-09-14 | 未設定 |
| 初代 Nova Sonic | 2026-03-13 | 2026-09-14 | 未設定 |
Legacy期間中に効いている4つの制約
Legacyは「まだ使える」という意味ですが、使い方に制限が入ります。新規顧客はLegacyモデルを利用できません。既存ユーザーであっても、15日間呼び出しがないとアクセスを失う可能性があるとAWSは明記しています。検証環境を長期間止めたまま放置すると、この15日ルールに触れてアクセスを失う経路があるということです。加えてプロビジョンドスループットの新規作成不可、ファインチューニングジョブの新規作成不可。ただしLegacy入り前にカスタマイズ済みのモデルであれば、オンデマンド推論用デプロイの新規作成と、既存プロビジョンドスループットの継続利用は認められています。EOL日以降はリクエストが失敗し、別モデルへの自動移行は行われません。アプリケーション側のコードを書き換える必要があります。
料金ページから単価が消えている
2026年7月時点のAmazon Bedrock料金ページに、Nova Canvasの1枚あたり単価は掲載されていません。Amazon Nova の料金ページにもモデルの説明文があるだけで価格表はありません。「Nova Canvasは安い」を前提にコスト試算をしていた場合、その前提はもう公開情報として確認できない状態です。現行の単価を知る手段はAWSコンソールの請求・コスト管理(実際に発生した課金)だけで、これから見積もりを作るなら移行先の単価で組み直すのが実務的です。
なお、EOL日が2026年2月1日より後のモデルは、Legacy入りから最短3か月後に「公開延長アクセス」期間へ移り、そこで値上げされ得るという規定があります。Nova CanvasのLegacy入りは3月30日なので最短の3か月は6月30日に過ぎていますが、ライフサイクル表の「公開延長アクセス開始日」は未設定(「—」)のままです。値上げが確定したとも、Nova Canvasには公開延長アクセス期が設定されないとも、現時点の公開情報からは断定できません。
使い方:InvokeModelのリクエスト構造
Nova Canvasの呼び出しは、taskType で何をするかを選び、タスク別のパラメータブロックと共通の imageGenerationConfig を渡す形です。テキストから画像を生成する最小構成は次のとおりです。
import base64, json, boto3
from botocore.config import Config
# 高解像度・複数枚生成はSDK既定の60秒タイムアウトを超えるため延長する
client = boto3.client(
"bedrock-runtime",
region_name="ap-northeast-1",
config=Config(read_timeout=300),
)
body = {
"taskType": "TEXT_IMAGE",
"textToImageParams": {
"text": "a ceramic coffee cup on a walnut desk, morning light",
"negativeText": "mirrors, text, watermark",
"style": "PHOTOREALISM"
},
"imageGenerationConfig": {
"width": 1024,
"height": 1024,
"quality": "standard",
"cfgScale": 6.5,
"numberOfImages": 1,
"seed": 42
}
}
res = client.invoke_model(
modelId="amazon.nova-canvas-v1:0",
body=json.dumps(body),
)
payload = json.loads(res["body"].read())
with open("out.png", "wb") as f:
f.write(base64.b64decode(payload["images"][0]))
style に指定できるのは8種類の固定値です:3D_ANIMATED_FAMILY_FILM、DESIGN_SKETCH、FLAT_VECTOR_ILLUSTRATION、GRAPHIC_NOVEL_ILLUSTRATION、MAXIMALISM、MIDCENTURY_RETRO、PHOTOREALISM、SOFT_DIGITAL_PAINTING。任意の文字列は受け付けません。
解像度は「16の倍数」制約でValidationExceptionを踏む
出力解像度は好きな値を入れられるわけではなく、4つの条件をすべて満たす必要があります。各辺が320〜4096ピクセル、各辺が16で割り切れる、アスペクト比が1:4〜4:1の範囲、総画素数が4,194,304未満。実装時のValidationExceptionは、この「16で割り切れる」を外して1000×1000や1920×1080(1080は16の倍数ではない)を渡した場合に集中します。入力画像側には16の倍数の条件は適用されません。
読み取りタイムアウトは300秒へ延ばす
AWS SDKの既定 read_timeout は60秒です。解像度・生成枚数・quality(standard/premium)はいずれも生成時間を押し上げるため、2048×2048をpremiumで複数枚といった指定は簡単に60秒を超えます。公式ドキュメントは300秒以上への延長を推奨しています。散発的にタイムアウトするなら、モデル側の障害を疑う前にこの既定値を確認します。
否定語はtextではなくnegativeTextに書く
cfgScale は1.1〜10で既定6.5。8以上にするとプロンプト追従は強まりますが彩度が上がり不自然になりやすい、と公式が明記しています。もう一つ、公式が繰り返し警告しているのが否定語の扱いです。「鏡を映さないで(no mirrors)」のように text に否定形を書くと、モデルは「mirrors」に反応します。除きたい要素は否定形にせず、単語として negativeText に置きます。上のコード例で negativeText に “mirrors” とだけ書いているのはそのためです。
画像編集タスク:マスクの色が逆になる罠
Nova Canvasは生成だけでなく編集タスクを持ちます。INPAINTING(マスク領域を描き替える)、OUTPAINTING(マスク領域の外へ背景を拡張する)、BACKGROUND_REMOVAL(背景を透過PNGに)、IMAGE_VARIATION(1〜5枚の参照画像から派生)、COLOR_GUIDED_GENERATION(最大10色のhexパレット指定)、VIRTUAL_TRY_ON(衣服の試着合成)です。
インペインティングとアウトペインティングでマスクの白黒は逆
どちらも maskPrompt(自然言語でマスク領域を指示)か maskImage(純黒と純白だけで塗り分けた2値画像)のどちらか一方を渡します。両方は指定できません。色の意味については、公式が「インペインティングとアウトペインティングでマスク画像の色の要件は逆になる」と明示的に注意喚起しており、次のように書き分けられています。
| タスク | 書き換わる領域 | 保持される領域 |
|---|---|---|
| INPAINTING | 純黒(=マスクの内側) | 純白 |
| OUTPAINTING | 純白(=マスクの外側) | 純黒 |
つまり被写体を純黒で塗ったマスクをインペインティングに渡せば被写体が描き替わり、同じマスクをアウトペインティングに渡せば被写体が残って背景側が描き替わります。「背景を差し替えたつもりが被写体が消えた」はこの反転を見落とした結果です。マスクにJPEGを使う場合は品質100%で圧縮しないと、圧縮で純黒・純白以外の画素が混ざって弾かれます。アウトペインティングの outPaintingMode は、既定の DEFAULT が元の背景色を引き継いで馴染ませる代わりに、背景を大きく変えるプロンプトではハロー(縁の輪)が出ます。背景を丸ごと差し替えるなら PRECISE を選びます。なお INPAINTING・OUTPAINTING・VIRTUAL_TRY_ON では imageGenerationConfig の width/height を指定してはいけません。TEXT_IMAGE用の設定オブジェクトを使い回すとここで落ちます。
VIRTUAL_TRY_ONは3種類のマスク指定を持つ
ECの商品画像用途で追加されたタスクです。maskType は IMAGE/GARMENT/PROMPT の3種類。GARMENT を選ぶと garmentBasedMask の下の garmentClass(UPPER_BODY、LONG_DRESS、SHOES など18種)で衣服の種類を指定でき、袖の上げ下げ・裾のタックイン・アウターの前開きまで garmentStyling で制御します。maskExclusions で顔・手・ポーズを再生成させず保持する指定も可能です。合成方式は mergeStyle で選び、BALANCED(非マスク領域を完全保持するがマスク形状の境目が見えることがある)、SEAMLESS(継ぎ目は出ないが全画素がわずかに変化する)、DETAILED(マスク部分を高解像度で処理しロゴや文字の再現性を上げるが、BALANCED同様に継ぎ目が見えることがある)の3つです。
移行先:Nova 2 Omniはプレビュー、実務の受け皿はStability AI系
ここが一番の判断どころです。AmazonブランドでNova Canvasの機能を引き継ぐ位置にいるのは、2025年12月発表のNova 2 Omniです。自然言語での画像生成と編集(キャラクターの一貫性維持、画像内テキストの描画、オブジェクトや背景の編集)を公式に掲げています。ただし2026年7月時点でプレビュー段階にとどまり、早期アクセスはNova Forge顧客に提供され、利用にはAWSアカウントチームへの連絡が必要です。GA時期は示されていません。9月30日のEOLに間に合う保証がない以上、「Nova 2 OmniのGAを待つ」を移行計画の前提にはできません。
したがって実務上の受け皿はBedrock上の他プロバイダ、実質的にStability AI系のモデル群になります。2026年7月時点のBedrock料金ページに単価が載っているのは以下の編集操作で、いずれも米国リージョン基準の1回あたり価格です。
| 操作 | 1回あたり | Nova Canvasでの対応taskType |
|---|---|---|
| Remove Background | 0.07ドル | BACKGROUND_REMOVAL |
| Inpaint | 0.07ドル | INPAINTING |
| Erase Object | 0.07ドル | INPAINTING(textを省略=要素削除) |
| Outpaint | 0.06ドル | OUTPAINTING |
| Search and Replace / Search and Recolor | 0.07ドル | INPAINTING(maskPrompt利用) |
| Control Structure / Control Sketch | 0.07ドル | TEXT_IMAGE(conditionImage利用) |
| Style Guide | 0.07ドル | textToImageParams.style |
| Style Transfer | 0.08ドル | IMAGE_VARIATION(近い用途) |
| Fast / Conservative / Creative Upscale | 0.03 / 0.40 / 0.60ドル | 該当なし |
設計上の差分を1つ挙げておきます。Nova Canvasは1つのモデルIDに taskType を切り替えて全機能を載せる設計でしたが、Stability AI側は操作ごとにモデル/エンドポイントが分かれます。移行はモデルIDの置換ではなく、taskType 分岐を操作別の呼び出しに割り直す作業になります。バーチャル試着に相当する単一操作が用意されていない点も、ECの商品画像パイプラインでは効いてきます。Bedrock全体の呼び出し設計はAmazon Bedrock超入門:初心者向けの完全ガイド、Nova 2世代を含むテキスト系モデルの現況はAmazon Novaの性能と料金:Nova 2世代のモデル比較と選び方【2026年7月時点】で扱っています。
今からNova Canvasを選ぶべきでない場面と、それでも触る価値がある場面
結論を先に言えば、新規プロジェクトでNova Canvasを採用する理由は現時点で1つもありません。新規顧客はそもそも有効化できず、仮に既存アカウントで動かせても9月30日で止まります。「AWSの中で完結する画像生成」という要件でも、AmazonブランドはNova 2 Omniのプレビューしかない以上、Bedrock上のStability AI系か、他クラウド/自社ホストのモデルを比較検討することになります。ローカル運用まで含めた選択肢はMidjourneyなど他の画像生成AIとStable Diffusionの比較ポイントが参考になります。
例外は既存ワークロードの延命だけです。EOLまでに移行が間に合わない場合は、(1) 15日以上呼び出しを止めない(アクセス喪失を防ぐ)、(2) プロビジョンドスループットとファインチューニングの新規作成は諦める、(3) 公開延長アクセス期間に入った際の値上げ通知を受け取れるようAWSからの通知先を確認する、の3点を守りつつ、切り替え先の実装を並行で進めるのが現実解です。
安全性:透かしとモデレーションは無効化できない
Nova Canvasが生成したすべての画像には、不可視の電子透かしが埋め込まれます。これはオプションではなく常時適用で、Content Credentials Verify のような公開ツールでNovaモデル由来かを検証できます(メタデータを除去された場合を除く)。加えてAWSの責任あるAI(RAI)ポリシーによるモデレーションが生成後に走り、ポリシーに反した画像はレスポンスから除外されます。このため numberOfImages に指定した枚数より少ない枚数しか返らないことがあり、その場合はレスポンスに error フィールドが入ります。返却枚数を固定前提でループを書くと、ここで落ちます。
よくある質問
Amazon Nova Canvasの料金はいくらですか?
2026年7月時点のAmazon Bedrock料金ページおよびAmazon Nova料金ページに、Nova Canvasの1枚あたり単価の掲載はありません。現行の単価を知る手段はAWSコンソールの請求・コスト管理(実際に発生した課金)のみです。これから見積もりを作る場合は、移行先となるモデルの単価で組み直してください。
日本語のプロンプトは使えますか?
公式モデルカードの対応言語は英語のみです。日本語文字列を渡してもエラーにはなりませんが、意図した構図やスタイルが得られる保証はありません。日本語入力を受け付けるアプリに組み込む場合は、Bedrock上のテキストモデルで英訳してから画像生成に渡す2段構成にします。
東京リージョンで使えますか?
使えます。対応リージョンは ap-northeast-1(東京)、eu-west-1(アイルランド)、us-east-1(バージニア北部)の3つです。ただしEOL(2026年9月30日)は全リージョン共通で、東京だけ延長されることはありません。
EOL後もモデルを呼び出し続けることはできますか?
できません。EOL日以降はすべてのAWSリージョンで利用不可となり、リクエストは失敗します(プロバイダとの個別契約がある場合を除く)。新しいモデルへの自動移行は行われないため、EOL日までにアプリケーションのコードを書き換える必要があります。
生成した画像に電子透かしは必ず入りますか?
入ります。Nova Canvasが生成する全画像に不可視の透かしが付与され、Amazonのモデルが生成した画像かどうかを検出できるようになっています。透かしの付与をオフにする設定は提供されていません。