Amazon Chimeは2026年2月20日にサポートを終了し、会議の開催もユーザー管理もできなくなりました。一方で、開発者向けのAmazon Chime SDKは終了の対象外で、いまも自社アプリに音声・映像通話を組み込む部品として提供されています。終了した機能と残った機能の境界、CreateMeetingとCreateAttendeeによるサーバー側の実装、ブラウザで会議に参加させるコード、旧Chime名前空間からの移行、参加者1分あたりの料金試算までを、公式ドキュメントに沿って扱います。
まとめ:Amazon Chimeアプリは終了、Chime SDKは継続という境界線
会議ツールとしてのAmazon Chimeは、2025年2月19日に新規受付を止め、2026年2月20日に終了しました。社内会議の置き場所を探しているなら、AWSが案内しているAWS Wickr、Zoom、Webex、Slackなどの既製サービスへ移るのが筋で、Chime SDKで作り直す理由はありません。
Chime SDKが向くのは、遠隔接客やオンライン診療のように、自社の業務画面の中に通話を埋め込みたい場合です。サーバー側で会議と参加者を作り、ブラウザ側のライブラリで接続する2層構成になります。料金は参加者1人1分0.0017ドルの従量課金で、1会議250人までという上限があります。古いサンプルコードのChime名前空間は使わず、ChimeSDKMeetingsなどの専用名前空間で書いてください。
Amazon Chimeの提供終了で止まった機能とChime SDKに残った機能
「Amazon Chime」という名前は、会議アプリと開発者向けSDKの両方に付いています。終了したのは前者だけです。
2026年2月20日に止まった会議開催・ユーザー管理・Business Calling
AWSの告知ブログは、2026年2月20日以降はChimeの会議を開けず、ユーザーも管理できず、Business Callingの機能も使えなくなると書いています。新規顧客の受付は1年前の2025年2月19日に止まっていました。終了の日付を過ぎると、Amazon Chimeのコンソールやアプリのリソースにもアクセスできません。
移行期間中、AWSは管理者向けに移行支援の機能を用意していました。移行機能のガイドによると、利用者ごとの参加・主催会議数や送信メッセージ数を週次CSVでS3へ出す使用状況レポート、チャットルームのメンバー一覧の書き出し、個人の連絡先(最大100件)の書き出し、Business Callingの電話番号を他社へ移すポートアウトの4つです。終了日までにデータを消せなかった場合は、AWSサポートへ連絡するよう案内されていました。
Chime SDKがChimeアプリの管理者アカウントと独立して動く根拠
Chime SDKの開発者ガイドは、SDKはAmazon Chimeの管理者アカウントとは独立して動き、Chimeで開催される会議にも影響しないと明記しています。SDKはAWSアカウントとIAMの権限だけで使える部品で、Chimeアプリの契約は最初から前提になっていません。
終了告知にも「Chime SDKサービスの提供には影響しない」という一文があります。ただし、Chimeアプリを会議基盤として使っていた社内システム、たとえば会議URLを自動で発行してカレンダーに入れる仕組みは、終了と同時に動かなくなりました。この種の連携を持っていた組織は、移行先サービスのAPIで作り直すか、Chime SDKで会議機能そのものを自前で持つかの二択になります。
Chime SDKで会議機能を組み込むサーバー側の構成とAPI実装手順
Chime SDKの会議は、サーバーアプリとクライアントアプリの2つで成り立ちます。サーバーがAWSのAPIを呼び、クライアントは受け取った情報でメディアに接続する分担です。
サーバーとクライアントの役割分担とJoinTokenを安全に渡す経路
開発者ガイドの構成説明では、サーバーアプリがIAMロールの権限で会議と参加者を作り、その情報をクライアントへ渡します。参加者ごとに発行されるJoinTokenは、参加を許可された本人のクライアントだけに安全に渡すべき秘密鍵と位置付けられています。クライアントはこのトークンでメディアサービスに認証し、WebSocketとDTLSで音声・映像をやり取りする仕組みです。
実装上の結論は明快です。ブラウザにAWSの認証情報を持たせず、自社のログイン処理を通った利用者にだけ、サーバーがJoinTokenを返します。IAMはAWS管理ポリシーAmazonChimeSDKで始められますが、本番では会議作成と参加者作成に絞ったポリシーを書くほうが安全です。ポリシーの絞り方はAWS IAMのユーザー・ロール・ポリシーの違いと権限設計で整理しています。
AWS CLIのchime-sdk-meetingsで会議と参加者を作る最小手順
コードを書く前に、CLIで会議を1つ作ると応答の形がつかめます。CreateMeetingのAPIリファレンスでは、ClientRequestToken・ExternalMeetingId・MediaRegionが必須です。CLI自体の導入がまだなら、AWS CLI v2の設定と運用から始めてください。
# 東京リージョンの制御エンドポイントで、東京のメディアに会議を作る
$ aws chime-sdk-meetings create-meeting \
--region ap-northeast-1 \
--client-request-token room-20260927-001 \
--external-meeting-id support-room-001 \
--media-region ap-northeast-1
# 返ってきた MeetingId を使って参加者を1人作る
$ aws chime-sdk-meetings create-attendee \
--region ap-northeast-1 \
--meeting-id 11111111-2222-3333-4444-555555555555 \
--external-user-id user-0001
create-meetingの応答にはMeetingIdと、SignalingUrlやAudioHostUrlなどを含むMediaPlacementが入ります。create-attendeeの応答はAttendeeIdとJoinTokenです。CreateAttendeeのリファレンスによればExternalUserIdは2〜64文字で、aws:で始まる値は予約済みのため使えません。
Node.jsとAWS SDK v3で会議と参加者を発行するAPIの実装例
アプリに組み込むときは、同じ処理をAWS SDK for JavaScript v3で書きます。npmレジストリで確認した2026年9月時点の@aws-sdk/client-chime-sdk-meetingsは3.1141.0でした。
// npm install @aws-sdk/client-chime-sdk-meetings
import {
ChimeSDKMeetingsClient,
CreateMeetingCommand,
CreateAttendeeCommand,
} from "@aws-sdk/client-chime-sdk-meetings";
import { randomUUID } from "node:crypto";
const client = new ChimeSDKMeetingsClient({ region: "ap-northeast-1" });
// roomName は自社システムの予約ID、userId はログイン済み利用者のID
export async function joinRoom(roomName, userId) {
const meeting = await client.send(new CreateMeetingCommand({
ClientRequestToken: randomUUID(),
ExternalMeetingId: roomName,
MediaRegion: "ap-northeast-1",
}));
const attendee = await client.send(new CreateAttendeeCommand({
MeetingId: meeting.Meeting.MeetingId,
ExternalUserId: userId,
}));
// この2つをそのままブラウザへ返す(JoinToken を含むのでログに出さない)
return { meeting, attendee };
}
この例は呼ぶたびに新しい会議を作ります。2人目以降の参加者を同じ部屋に入れるには、最初に作ったMeetingIdを予約IDと対応付けてDBに保存し、2回目からはCreateAttendeeだけを呼ぶ形に分けてください。ExternalUserIdは冪等性のトークンを兼ねるため、自社の利用者IDを入れておくと、どの参加者が誰かを後から突き合わせられます。
ブラウザでamazon-chime-sdk-jsを使い会議へ参加させる実装手順
クライアント側はAmazon Chime SDK for JavaScriptを使います。npmの最新は2026年7月15日公開の3.32.0で、ビルドにはNode.js 18以上(推奨は20)が必要です。
MeetingSessionConfigurationの生成と音声開始の実装例
npm installでライブラリを導入したら、サーバーから受け取った2つの応答をMeetingSessionConfigurationに渡し、セッションを作ります。コンストラクタは{ Meeting: ... }の入れ子形式もそのまま受け付けるので、サーバー側で中身を取り出す必要はありません。
// npm install amazon-chime-sdk-js --save
import {
ConsoleLogger,
DefaultDeviceController,
DefaultMeetingSession,
LogLevel,
MeetingSessionConfiguration,
} from "amazon-chime-sdk-js";
const res = await fetch("/api/rooms/support-room-001/join", { method: "POST" });
const { meeting, attendee } = await res.json();
const logger = new ConsoleLogger("chime", LogLevel.WARN);
const deviceController = new DefaultDeviceController(logger);
const configuration = new MeetingSessionConfiguration(meeting, attendee);
const session = new DefaultMeetingSession(configuration, logger, deviceController);
// マイクを選んで音声を流し、相手の音声を audio 要素で鳴らす
const mics = await session.audioVideo.listAudioInputDevices();
await session.audioVideo.startAudioInput(mics[0].deviceId);
await session.audioVideo.bindAudioElement(document.getElementById("meeting-audio"));
session.audioVideo.start();
映像を足すときは、listVideoInputDevices()でカメラを選んでstartVideoInput()を呼び、startLocalVideoTile()で送信を始めます。映像の表示先は、オブザーバーのvideoTileDidUpdateで渡されるタイルIDごとにbindVideoElement()で結び付ける流れです。
対応ブラウザとiOS・Androidで画面共有が使えない制約
開発者ガイドのシステム要件では、WindowsとmacOSのChrome・Firefox・Edge・Safari・Operaは直近3バージョンが対象です。iOSとAndroidのブラウザは「音声と映像のみ、コンテンツ共有なし」と書かれており、スマートフォンから画面共有を出す機能は作れません。iOSのWKWebViewは14.3以降が対象です。
映像は1会議で同時25本まで送信でき、JavaScript版は1280×720・30fpsまで扱えます。サイマルキャストを有効にすると15fpsに下がる点は、画質の要件を決める段階で押さえておきます。仕組みとしてはSFU型で、各参加者の映像を選んで転送する方式です。SFUとP2Pの違いはWebRTCの仕組みとSFU選定で解説しています。
旧Chime名前空間のコードを専用エンドポイントへ移すときの注意点
Chime SDKの古いサンプルやブログ記事は、new AWS.Chime()のようにChime名前空間で書かれているものが少なくありません。今から書くなら使いません。
Chime名前空間のSDK APIが2024年にAWS SDKから削除された経緯
SDKのGitHubに2023年6月29日付で立てられた告知Issueによると、AWS SDKのChime名前空間にあるChime SDKのAPIは同日に「サポート対象外」となり、2024年4月1日にAWS SDKから削除されました。共有エンドポイントからの削除は2024年6月30日の予定とされ、それまでに専用エンドポイントへ移るよう求めていました。
当初、Chime SDKはChimeアプリと同じ1つのエンドポイントを共有していた経緯があります。名前空間の移行ガイドが挙げる専用名前空間は、ChimeSDKMeetings・ChimeSDKMessaging・ChimeSDKMediaPipelines・ChimeSDKVoice・ChimeSDKIdentityの5つです。エンドポイントもmeetings-chime.ap-northeast-1.amazonaws.comのようにサービスごとに分かれ、東京リージョンを直接指定できます。
ListMeetingsなど専用名前空間に後継が無いAPIの置き換え方
同じ移行ガイドの対応表では、ListMeetings・CreateMeetingDialOut・TagAttendeeなどは「利用できなくなったAPI」とされ、専用名前空間に後継がありません。TagMeetingはTagResourceへ名前が変わっています。
ListMeetingsで「いま開いている会議の一覧」を取っていたコードは、自社のDBに会議IDと状態を持つ設計へ変えるしかありません。CreateMeetingのNotificationsConfigurationか既定のEventBridgeで会議や参加者のイベントを受け取り、開始と終了をDBへ書き込めば、一覧はそこから引けます。移行の見積もりでは、APIの呼び替えよりも、この状態管理を作り直す工数のほうが大きくなりがちです。
Chime SDKの料金を参加者分数で見積もる試算例とクォータの上限値
Chime SDKには月額の固定費がなく、会議にいた参加者の人数と時間で課金されます。
参加者1人1分0.0017ドルで月額を出す試算と6秒単位の課金
Chime SDKの料金ページでは、WebRTCの会議は参加者1人1分あたり0.0017ドルで、6秒単位(最低6秒)の課金です。録画にあたるメディアキャプチャは1080p合成で1分0.0125ドル、ライブ配信へ流すライブコネクターは1分0.09ドルと、オプションは桁が1つ上がります。
| 利用パターン | 参加者分数(月) | 会議の料金(月) |
|---|---|---|
| 1対1の遠隔接客・30分×月200件 | 12,000分 | 約20.4ドル |
| 4人の打ち合わせ・60分×月40回 | 9,600分 | 約16.3ドル |
| 30人の研修・90分×月8回 | 21,600分 | 約36.7ドル |
| 30人の研修+全8回を録画(720分) | 21,600分 | 約45.7ドル |
表の金額は会議の参加者課金だけで、サーバーを動かすLambdaやAPI Gateway、録画を置くS3の料金は別に掛かります。1対1の接客を月200件こなしても会議料金は数十ドルにとどまるため、費用の大半は開発と運用の人件費になる、というのが見積もりの実態です。
1会議250人・映像25本・API毎秒10回のクォータが効く場面
エンドポイントとクォータの一覧では、1会議の参加者は250人で、この値は引き上げできません。同時に開ける会議数は既定250で、申請により引き上げ可能です。CreateMeetingとCreateAttendeeはどちらも既定で毎秒10リクエストです。
設計に響くのは参加者数の上限です。全社集会のように数百人以上へ届けたい場合、1会議のまま人数を増やすことはできません。発言者だけを会議に入れ、視聴者には配信で届ける構成に分けます。朝9時に数百人が一斉に入室する研修では、CreateAttendeeの毎秒10回に当たるため、サーバー側で再試行と待ち行列を用意してください。
Chime SDKを採用する条件と既製のWeb会議サービスで済ませる場面
Chime SDKは会議アプリの完成品ではなく、会議を作るための部品です。この前提から判断を分けます。
社内会議の置き換えにChime SDKを使わず既製サービスへ移る条件
旧Chimeの代わりを探している目的が社内の打ち合わせなら、Chime SDKでは作りません。予定表との連携、録画の管理、入退室の権限、スマートフォンアプリまでを自前で持つことになり、既製サービスの月額を大きく上回る開発費が掛かります。AWSの告知が挙げたWickr・Zoom・Webex・Slackなどから、既存のIDとの連携や保存要件で選べば、移行の期間は短く済む。Web会議ツールそのものの選び方はWeb会議の仕組みと選び方にまとめています。
見送るべきもう1つの場面は、チャット履歴を国内に置く要件がある場合です。リージョン一覧では、会議の制御とメディアは東京リージョンに置けますが、SDKのメッセージング機能はバージニア北部とフランクフルトにしかありません。チャットまでChime SDKで揃えると、メッセージは海外に保存されます。
業務アプリに通話を埋め込む遠隔接客・オンライン診療で採用する基準
採用するのは、通話が業務画面の一部である場合です。予約システムから診察室に入るオンライン診療、保険や不動産の遠隔接客、コールセンターの画面で顧客情報を見ながら話す構成などが当てはまります。外部の会議URLへ飛ばすと、本人確認や記録の紐付けが途切れるからです。条件は3つあり、1会議250人以下で収まること、利用者の認証を自社システムが持っていること、AWS上で運用できる体制があることです。
AWSに依存したくない場合は、オープンソースのSFUを自前で運用する選択肢もあります。LiveKitの特徴と料金や、SDKの比較軸を並べたボイスチャットの実装手順とSDK選定と並べて比べてください。Chime SDKで会議機能を組み込むときのIAM設計、東京リージョンでの構成、Lambdaとイベント連携を含めた基盤づくりは、AWSを中心としたインフラ構築として設計から引き受けています。
よくある質問
Amazon Chimeの終了とChime SDKの利用について、問い合わせの多い点に公式ドキュメントの記述をもとに答えます。
Amazon Chimeは今も使えますか?
会議アプリとしてのAmazon Chimeは使えません。2026年2月20日にサポートが終わり、会議の開催、ユーザー管理、Business Callingのいずれも利用できなくなりました。新規の申し込みは2025年2月19日に締め切られています。開発者向けのAmazon Chime SDKは終了の対象外で、AWSアカウントがあれば今も利用できます。
Amazon ChimeとAmazon Chime SDKは何が違いますか?
Amazon Chimeは、アプリをインストールしてすぐ会議やチャットを始められる完成品のサービスでした。Chime SDKは、自社のWebアプリやスマートフォンアプリに音声・映像通話を組み込むための部品で、画面もログインも開発者が作ります。SDKはChimeの管理者アカウントとは独立しており、Chimeの終了による影響を受けていません。
Amazon Chimeの代わりになる会議サービスは何ですか?
AWSは移行先として、自社のAWS Wickrと、パートナー製品のZoom・Webex・Slackを挙げています。どれを選ぶかは、社内で使っているIDの基盤との連携、録画やチャットの保存期間の要件、既存の契約で決めるのが現実的です。社内会議の置き換えであれば、Chime SDKで作り直すより既製サービスのほうが費用も期間も小さく済みます。
Chime SDKに無料枠はありますか?
2026年9月時点の料金ページに、Chime SDK独自の無料枠は記載されていません。会議は参加者1人1分0.0017ドルの従量課金で、6秒単位で計算されます。4人で1時間話すと240分ぶんで約0.41ドルです。検証の段階なら数ドルで収まりますが、録画やライブ配信を足すと単価が上がるので、試す機能を決めてから始めてください。
Chime SDKの会議は東京リージョンで動かせますか?
動かせます。東京リージョン(ap-northeast-1)は、会議を作るAPIの制御リージョンと、実際に音声・映像を中継するメディアリージョンの両方に対応しています。CreateMeetingのMediaRegionにap-northeast-1を指定してください。ただしSDKのメッセージング機能はバージニア北部とフランクフルトのみで、東京には置けません。
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