Intel 18Aは、Intelが自社工場で製造する1.8nmクラスの半導体プロセスです。これを最初に採用した製品が、2026年1月5日にCES 2026で発表されたノートPC向けCPU「Core Ultra シリーズ3」(開発コード名Panther Lake)です。
本記事では、18Aの中身と採用製品の時期を整理したうえで、型番ごとの構成、Arc搭載モデルだけに付く制約、公称性能の測定条件、デスクトップ版の有無までを、Intelの製品仕様ページと決算資料をもとに解説します。数値は2026年9月28日時点の公式情報です。
まとめ:Intel 18AとCore Ultra シリーズ3の要点
- Intel 18Aは、GAAトランジスタのRibbonFETと裏面電源供給のPowerViaを組み合わせたプロセスです。Intelの公称値はIntel 3比で「同一電力で最大18%高い性能、同一性能で38%低い消費電力、密度30%向上」です。
- Core Ultra シリーズ3は2026年1月6日に予約開始、1月27日から世界で順次発売されました。主にノートPC向けですが、一部の小型デスクトップにも採用可能です。ソケット式のデスクトップ版はありません。
- 18Aで作られているのはCPUの演算タイルです。Arc搭載の型番(X9・X7・338H)はGPUタイルがTSMC N3E、Intel Graphics搭載の型番はIntel 3で製造されています。
- Arc搭載の型番(X9・X7のArc B390、338HのArc B370)はLPDDR5X専用で最大96GBです。DDR5で128GBまで使いたいなら、386H・366H・356H・336HなどDDR5対応の型番を選び、PC側の上限も確認します。
- 「最大60%向上」は25W時のCinebench 2024でLunar Lake(Core Ultra 9 288V)と比べた値です。前世代のH系(Arrow Lake)との比較ではありません。
Intel 18Aの仕組みとIntel 3からの改善幅
「18A」の「A」はオングストローム(0.1nm)を指し、18Aは1.8nmクラスという位置づけです。ただし、この数字はトランジスタのどこかの寸法を実測した値ではなく、世代を示す名前です。TSMCやSamsungの「2nm」と数字だけを比べても、性能の上下は判断できません。
RibbonFETとPowerViaの役割
RibbonFETは、チャネルの四方をゲートで囲むGAA(Gate-All-Around)構造のトランジスタです。FinFETより電流を細かく制御できるので、低電圧でも性能を出しやすくなります。Intelは量産シリコンで、FinFET設計と比べて約0.5V時にCPU周波数が約30%高いと公表しています。
PowerViaは、電源の配線をウェハーの裏面へ移す技術です。表面を信号配線に使えるので配線の混雑が減り、Intelの公称値では配線済み設計でブロック面積を最大11%縮小し、最悪時の電圧降下を最大10分の1に抑えます。IntelはPowerViaを業界初の裏面電源供給の実装としています。
Intel 3比の公称値と派生版18A-P・18A-PT
Intel Foundryの18A製品ページが示す数値は次の通りです。いずれもIntel社内の比較値です。
| プロセス | 比較対象 | 性能 | 消費電力 | その他 |
|---|---|---|---|---|
| Intel 18A | Intel 3 | 同一電力で最大18%向上 | 同一性能で38%削減 | 密度30%向上 |
| Intel 18A-P | Intel 18A | 同一電力で9%超向上 | 同一性能で18%超削減 | 熱抵抗20〜40%低減 |
| Intel 18A-PT | Intel 3-T | – | 最大35%削減 | 密度最大25%向上 |
18A-Pは18Aの改良版で、Intelは2026年第2四半期の決算資料で「リスク生産に入った」と報告しました。採用製品について、PC Watchは2026年6月17日の記事で、Panther Lakeの後継やサーバー向けDiamond Rapidsなど2027年に出る製品になる見通しと報じています。Intelの正式な製品発表ではないため、時期は変わる可能性があります。18A-PTは、チップを縦に積む3D構成の土台(ベースダイ)向けの派生版で、シリコン貫通ビア(TSV)とハイブリッド接合を備えます。
外部の半導体メーカーから製造を請け負うファウンドリ事業としては、Intelは2024年にMicrosoftが18Aでのチップ設計を表明したと発表しました。ただし2025年度の年次報告書(Form 10-K)では、どのプロセスでも「重要な外部顧客」はまだ獲得できていないと開示しています。18Aで作られている製品は、現時点ではIntel自身のCPUが中心です。
Intel 18Aの量産時期と採用製品
18Aを使う製品は、2026年に入ってから順に出ています。最初の製品は2026年1月に発売されたCore Ultra シリーズ3です。
| 時期 | 製品 | 用途 |
|---|---|---|
| 2026年1月 | Core Ultra シリーズ3(Panther Lake) | ノートPC |
| 2026年第2四半期 | Core Ultra シリーズ3 エッジ向け | 産業機器・ロボット |
| 2026年第2四半期 | Intel Core シリーズ3(Wildcat Lake) | 低価格ノートPC |
| 2026年第2四半期 | Arc Gシリーズ | 携帯ゲーム機 |
| 2026年第2四半期 | Xeon 6+(Clearwater Forest) | サーバー |
18Aの大量生産は、Intelの年次報告書によると2025年後半に始まりました。製造拠点は米アリゾナ州チャンドラーのFab 52で、IntelはPanther LakeとClearwater Forestをここで作ると説明しています。Xeon 6+は2026年6月1日に発表された最大288基のEコアを持つサーバー向けCPUで、Intelは7月23日の決算発表で「18Aで作った初のサーバー向け製品」と位置づけました。同じ資料では、Panther Lakeの一部をASMLの高NA EUV露光装置(EXE)で量産し始めたことにも触れています。
Core Ultra シリーズ3のタイル別製造プロセス
Core Ultra シリーズ3は、役割ごとに分けた複数のタイル(チップレット)を1つのパッケージにまとめた構成です。「18A採用」と書かれていても、すべてのタイルが18Aで作られているわけではありません。IntelのARK(製品仕様ページ)には、CPUとGPUの製造プロセスが別々に記載されています。
| 型番の区分 | CPUタイル | GPUタイル | GPU名 |
|---|---|---|---|
| X9・X7(例:388H) | Intel 18A | TSMC N3E | Arc B390 |
| Ultra 5 338H | Intel 18A | TSMC N3E | Arc B370 |
| X無しH系(338Hを除く) | Intel 18A | Intel 3 | Intel Graphics |
| 無印3桁(例:365) | Intel 18A | Intel 3 | Intel Graphics |
| Core 7 360(Wildcat Lake) | Intel 18A | Intel 18A | Intel Graphics |
最上位の内蔵GPUであるArc B390は、TSMCのプロセスで作られています。「18Aの性能」としてGPUの伸びを語る記事がありますが、GPUの伸びはXe3アーキテクチャとTSMC N3Eの組み合わせによるもので、18Aの効果とは切り分けて読む必要があります。18Aの効果が直接出るのは、CPUの電力効率とクロックです。
Core Ultra シリーズ3の型番とコア構成
型番は「X9 388H」「7 365」のように、ブランド階層、3で始まる3桁の数字、末尾のHの有無で構成されます。IntelのARKに載っている主な型番は次の通りです。
| 型番 | コア(P+E+LPE) | 最大クロック | 最大ターボ電力 | GPU | NPU |
|---|---|---|---|---|---|
| X9 388H | 16(4+8+4) | 5.1GHz | 80W | Arc B390 | 50TOPS |
| X9 378H | 16(4+8+4) | 5.0GHz | 80W | Arc B390 | 50TOPS |
| X7 368H | 16(4+8+4) | 5.0GHz | 80W | Arc B390 | 50TOPS |
| X7 358H | 16(4+8+4) | 4.8GHz | 80W | Arc B390 | 50TOPS |
| 9 386H | 16(4+8+4) | 4.9GHz | 80W | Intel Graphics | 50TOPS |
| 7 356H | 16(4+8+4) | 4.7GHz | 80W | Intel Graphics | 50TOPS |
| 5 338H | 12(4+4+4) | 4.7GHz | 65W | Arc B370 | 47TOPS |
| 5 336H | 12(4+4+4) | 4.6GHz | 65W | Intel Graphics | 47TOPS |
| 7 365 | 8(4+0+4) | 4.8GHz | 55W | Intel Graphics | 49TOPS |
| 5 325 | 8(4+0+4) | 4.5GHz | 55W | Intel Graphics | 47TOPS |
| 5 322 | 6(2+0+4) | 4.4GHz | 55W | Intel Graphics | 46TOPS |
GPUのXe-core数は、Arc B390が12基、Arc B370が10基です。Intel Graphicsは型番によって異なり、332・322は2基、それ以外の掲載型番は4基です。ベース電力は全型番とも25Wです。コアはPコアのCougar Cove、EコアのDarkmont、低消費電力EコアのLP Eコアの3種類で、ハイパースレッディングは無く、スレッド数はコア数と同じです。388Hは16コア16スレッドになります。X9 378Hは1月の発表時の一覧には無く、後から追加された型番です。
末尾Hと数字だけの型番の違い
末尾がHの型番は、演算タイルが4+8+4(または4+4+4)の大きい構成で、最大ターボ電力は65〜80Wです。薄型から中型のノートPCで性能を優先する設計に使われます。数字だけの365・355・335・325・332・322は、Eコアを持たない4+0+4または2+0+4の小さい構成で、最大ターボ電力は55Wに抑えられています。事務用途の薄型機に多い区分です。
Arc搭載型番(X9・X7・338H)のメモリ上限と購入前の確認点
X9・X7と5 338HはGPUが強い代わりに、メモリとI/Oに制約があります。ARKの記載を並べると差ははっきりしています。
| 項目 | X9 388H | 9 386H | 7 365 |
|---|---|---|---|
| メモリ規格 | LPDDR5X-9600のみ | LPDDR5X-9600/DDR5-7200 | LPDDR5X-7467/DDR5-6400 |
| 最大メモリ | 96GB | 128GB | 128GB |
| PCIeレーン数 | 12 | 20 | 12 |
| GPU INT8 | 122TOPS | 40TOPS | 40TOPS |
| 内蔵Thunderbolt | 4 | 4 | 4 |
Arc搭載の型番はDDR5に非対応です。LPDDR5Xは基板に直付けする機種のほか、Framework Laptop 13 Proのように交換可能なLPCAMM2モジュールで載せる機種もあります。CPUの対応上限は96GBで、購入後の交換可否と搭載可能容量はPCメーカーの仕様で確認します。ローカルでLLMを動かす目的で100GBを超えるメモリが要るなら、Arc搭載の型番は候補から外れます。逆に、GPUを外付けしたゲーミングノートや、DDR5のSO-DIMMで後から増設したい機種なら、PCIeが20レーンある386H・366H・356H・336HのIntel Graphics搭載H系が合います。
ARKの注記によると、Arcの名前でGPUを表示するには、デュアルチャネルで16GB以上のメモリを積むなどの条件を満たす必要があります。条件を外れた構成ではGPUが「Intel Graphics」として表示されるので、Arc搭載の型番でも、メモリが少ない下位構成はスペック表のGPU名を確認してから買うのが安全です。なお、CPUに内蔵されているのはThunderbolt 4までで、Thunderbolt 5はPCメーカーが別チップを載せた機種だけが対応します。
公称性能「最大60%向上」の測定条件
CES 2026のプレスリリースは、上位SKUについて「マルチスレッド性能最大60%向上」「ゲーム性能77%超向上」「最大27時間のバッテリー駆動」をうたっています。脚注にある測定条件は次の通りです。
- マルチスレッド60%:Core Ultra X9 388HとLunar LakeのCore Ultra 9 288Vを、25W時のCinebench 2024 Multi Coreで比べた値
- ゲーム77%:同じ2機種を、45タイトル・1080p High設定(対応タイトルは2倍アップスケール有効)の平均フレームレートの幾何平均で比べた値。どちらもIntelの参照機
- バッテリー27.1時間:Lenovo IdeaPadの参照設計に388Hを載せ、Edgeで1080pのNetflixを再生し続けた値
比較相手のCore Ultra 9 288Vは、8コアで薄型機向けの省電力CPUです。388Hは16コアで、コア構成もアーキテクチャも異なります。60%は同じ25Wでの差ですが、コア数の差を含んだ数字として読む必要があります。Arrow LakeのH系(Core Ultra 200H)から乗り換える場合の伸びは、この数字からは読めません。バッテリー時間も動画再生という軽い負荷の値で、ブラウザやOfficeを並行して使うときの駆動時間は短くなります。
AI性能の公称値は、NPUが最大50TOPS、Arc B390のGPUが122TOPS(いずれもINT8)です。NPUはLunar Lakeの最大48TOPSとほぼ同じ水準です。ただし、AI処理の実効性能はモデルや実行デバイスによって異なり、TOPSだけでは伸びを判断できません。NPUとGPUの使い分けはNPUとは?CPU・GPUとの役割分担とTOPSの実効性能・採用判断【2026年版】で詳しく扱っています。
「Core Ultra 3」「Core シリーズ3」との名前の違い
Intelの製品名では、「Core Ultra シリーズ3」のシリーズ番号と「Core Ultra 3 205」のグレードを区別する必要があります。2026年9月時点で紛らわしい名前は次の4つです。
| 名前 | 正体 | 製造 |
|---|---|---|
| Core Ultra シリーズ3 | Panther Lake(本記事の対象) | Intel 18A |
| Core シリーズ3(Ultra無し) | Wildcat Lake(低価格ノート向け) | Intel 18A |
| Core Ultra 3 205 | Arrow Lakeのデスクトップ向け | TSMC |
| Core Ultra 200S Plus | Arrow Lake Refresh(デスクトップ) | TSMC |
「Core Ultra 3 205」の「3」はシリーズ番号ではなく、Ultra 5・7・9と並ぶグレードの最下位を表します。205はLGA1851ソケットのデスクトップ向けで、シリーズ2の世代に属します。一方、2026年4月に出た「Intel Core シリーズ3」はUltraを外した低価格帯で、Core 7 360はPコア2基とLP Eコア4基の6コア、ベース電力15W、NPU 17TOPS、最大メモリ64GBです。Copilot+ PCの要件(NPU 40TOPS以上)を満たさない点が、Core Ultra シリーズ3との一番大きな差です。
「第3世代」はシリーズ3と同じ意味で使われています。Core Ultraの世代は、シリーズ1(Meteor Lake・2023年)、シリーズ2(Lunar LakeとArrow Lake・2024年)、シリーズ3(Panther Lake・2026年)と数えます。Core iシリーズは第14世代で終わっており、「第16世代」という公式の呼び方はありません。
Core Ultra シリーズ3のデスクトップ版の有無
Core Ultra シリーズ3は基板に直付けするBGAパッケージだけで、IntelのARKに載っている型番はすべてモバイル向けです。Intelは一部の型番を小型デスクトップ機にも使えるとしていますが、ソケット式のデスクトップ版はありません。2026年9月時点でデスクトップの最新は、2026年3月26日に出たCore Ultra 200S Plus(Arrow Lake Refresh)です。Core Ultra 7 270K Plusは8P+16Eの24コアで、米国での発売時価格は299ドルでした。3月11日に発表され、演算タイルはTSMC製で18Aは使っていません。
次の世代は開発コード名Nova Lakeで、Intelは2025年第4四半期の決算説明(2026年1月)で、Nova Lakeを2026年末に投入すると説明しました。ただし、この説明ではデスクトップ版とノートPC版の同時投入までは明言していません。正式な製品名と発売日は、2026年9月28日時点でIntelから発表されていません。ソケット式で新しいIntelのCPUを使いたいなら、Nova Lakeの正式発表を待つことになります。
購入後にCPUとNPUを確認する手順
搭載PCを手に入れたら、型番とAI処理用のデバイスがOSから見えているかを確認しておくと、ドライバーの入れ忘れに気づけます。WindowsのPowerShellでは、次のコマンドで型番とコア数を表示できます。
Get-CimInstance Win32_Processor | Select-Object Name, NumberOfCores, NumberOfLogicalProcessors
Panther Lakeはハイパースレッディングが無いので、NumberOfCoresとNumberOfLogicalProcessorsが同じ値(388Hなら16)になるのが正常です。
OpenVINOがNPUやGPUを認識しているかは、デバイス一覧で確認できます。使用するAIモデルを実行できるかどうかは、別途モデルのコンパイルと推論で確認します。pip install openvino の後に、次のPythonを実行します。
import openvino as ov
core = ov.Core()
for device in core.available_devices:
print(device, core.get_property(device, "FULL_DEVICE_NAME"))
NPUドライバーとGPUドライバーが入っていれば、CPUに加えて「GPU」と「NPU」が一覧に出ます。NPUが出ない場合は、PCメーカーのサポートページかIntelのダウンロードセンターからNPUドライバーを入れ直します。このコードはmacOS上のOpenVINO 2025.3で動作を確かめており、Intel Macでは「CPU」だけが表示されます。2026年9月時点の最新版は2026.4.0で、Python 3.10以上が必要です。OpenVINOの導入手順はOpenVINOとは|ライセンス(Apache 2.0)・対応ハードウェアとインストール・使い方を解説にまとめています。
よくある質問
Intel 18Aは何nmですか?
1.8nmクラスです。「A」はオングストローム(0.1nm)を表しますが、特定の寸法を測った値ではなく世代の名前です。他社の2nmや3nmと数字だけで性能を比べることはできません。
Intel 18AのCPUはいつ発売されましたか?
最初の製品であるCore Ultra シリーズ3は2026年1月5日に発表され、1月6日に予約開始、1月27日から世界で順次発売されました。サーバー向けのXeon 6+は2026年6月1日に発表されています。
Intel 18AはデスクトップPC向けですか?
2026年9月時点で、18Aを使ったソケット式のデスクトップ向けCPUは発売されていません。Core Ultra シリーズ3はノートPCと小型機向けで、デスクトップ向けは次世代のNova Lakeとして2026年末の投入が予告されています。
Core Ultra シリーズ3は第何世代ですか?「16世代」と呼びますか?
Core Ultraの第3世代です。IntelはCore Ultraから「第○世代」の呼び方をやめ、シリーズ番号で世代を示しています。「第16世代」は公式の名称ではありません。
「Core Ultra」の読み方は?
「コア ウルトラ」と読みます。Panther Lakeは「パンサーレイク」、Arc B390は「アーク ビー390」です。