Neural Engine(ニューラルエンジン、ANE)は、AppleがiPhoneやMacのチップに組み込んでいるAI推論専用のブロックです。顔認証や写真の被写体認識、文字認識といった機械学習の推論を、低い消費電力でこなすために設計されています。スペック表の「16コアNeural Engine」はこのANEのコア数で、A14 BionicとM1から長く16コアのままでした。ところが2026年8月のM6と9月のA20 Proで「デュアル16コアNeural Engine(合計32コア)」に変わり、GPUの各コアに入ったNeural Acceleratorとの分担も進んでいます。この記事では、ANEの役割、スペック表の読み方、Appleが公表した世代別の演算性能、Neural Acceleratorとの違い、開発でANEを使う条件までを、2026年10月時点のApple一次情報で解説します。
まとめ:Neural Engineの役割と2026年のデュアル化・GPU側との分担
Neural Engineは、学習済みモデルで推論するためだけの回路です。初搭載は2017年のA11 Bionicで、Appleの公表値は毎秒最大6,000億回でした。2024年のM4では毎秒38兆回まで伸びています。
「16コア」はA14・M1以降の標準構成ですが、どのチップにも当てはまるわけではありません。M1 UltraとM5 Ultraは32コアで、2026年のM6とA20 Proは16コアのエンジンを2基積んだデュアル構成です。コア数が同じでも世代が違えば性能は違うので、比べるならチップの世代を見ます。
M5(2025年10月)以降は、GPUの各コアにNeural Acceleratorという行列演算ユニットが入りました。省電力で回したい推論はANE、LLMの初回トークン生成のような重い行列演算はGPUのNeural Acceleratorという分担が基本です。開発者はCore MLやiOS 27で加わったCore AIを通して使い、どの演算がANEで動くかはMLComputePlanやXcodeのパフォーマンスレポートで確かめられます。
Neural Engine(ANE)とは:Apple Silicon内蔵のAI推論専用ブロック
Neural Engineは、Apple Siliconの中に置かれた「ニューラルネットワークの推論を担う専用ブロック」です。正式名はApple Neural Engine、略してANEです。CPUやGPUと同じチップに載っていますが、学習済みモデルに入力を流して結果を得る推論の処理に特化しています。モデルの学習はANEの役割ではありません。他社のチップでいうNPU(Neural Processing Unit)にあたるもので、NPU全般との比較はNPUとは?CPU・GPUとの役割分担とTOPSの実効性能・採用判断【2026年版】で扱っています。
最初のANEは2017年のiPhone XのA11 Bionicに入った2コア構成でした。Macに載ったのは2020年のM1からです。Appleの機械学習研究ブログは、A11の初代ANEをFP16(16ビット浮動小数点)で0.6TFLOPS、2021年のA15 Bionicの16コアANEを15.8TFLOPSと説明し、4年で26倍になったと書いています。
専用回路にする目的は電力効率です。畳み込みや行列積のように、ニューラルネットワークで同じ形の演算が続く処理を回路に組み込み、少ない電力で推論できるようにしています。たとえばFace IDでは、Appleのサポート文書によると、TrueDepthカメラが作った顔の深度マップと赤外線画像を、Secure Enclaveで保護されたNeural Engineの一部が数学的モデルに変換し、登録済みの顔のデータと照合しています。
Neural Engineは何に使われるのか:Face ID・写真検索・Apple Intelligence
iPhone・Macの標準機能での使われ方
ANEはOSの標準機能の裏で動いています。Appleが製品発表で挙げてきた用途は次のとおりです。
- Face ID:顔の深度マップと赤外線画像の照合。
- 写真の被写体認識と検索、Live Text(写真やカメラ映像の文字の読み取り)。
- カメラのポートレートモードやコンピュテーショナルフォトグラフィ。A20 Proの発表文も、Neural Engineの用途に「on-device AI models and computational photography」を挙げています。
- Apple Intelligence:M5の発表では、より高速なNeural EngineとユニファイドメモリでImage Playgroundなどのオンデバイス機能が速くなると説明しています。
ANEが担うのは、こうした機能のうち端末内で行う推論の部分です。機能全体がすべて端末で完結するとは限らず、たとえば写真の「拡張ビジュアル検索」は、端末内のモデルで写真の該当部分を埋め込み(数値の表現)に変え、暗号化してAppleのサーバーと照合します。端末内でAIを動かす考え方そのものは、オンデバイスAIとは?端末内で動くAIの仕組みと業務導入の判断基準【2026年版】で整理しています。
MacでANEが動いているかを確かめる方法
Macのアクティビティモニタには、CPUやGPUのように使用率を見る欄がANEにはありません。手元で確かめたいときは、macOS標準のpowermetricsを使います。macOS 26.6.2のman powermetricsには、CPU・GPU・ANE(Apple Neural Engine)といったSoCの各部の推定電力を表示できると書かれています。
sudo powermetrics -i 1000 -n 5 | grep -i "ANE"
Apple siliconのMacで、写真の検索や文字認識などANEを使う処理の前後に実行し、ANEの行の値が上がるかを見ます。ただし同じmanページには、表示される電力は推定値で不正確な場合があり、機種どうしの比較には使わないようにとも書かれています。アプリの省電力化に使う目安と考えてください。Intel MacにはANEが無いので、ANEの電力は表示されません。
16コアNeural Engineとは:スペック表の読み方と、デュアル16コア・32コアの違い
仕様表の「10コアCPU、10コアGPU、16コアNeural Engine」のような並びの最後がANEのコア数です。CPUやGPUのコア数とは別に数えます。A14 BionicとM1から、iPhoneのAシリーズもMacのMシリーズも、ANEは長く16コアでした。そのため「16コア」と書かれていても、世代が違えば性能は違います。
例外が2種類あります。1つはUltraです。M1 Ultraの発表文は32コアNeural Engineで毎秒最大22兆回と書いており、2026年のM5 Ultraも32コアNeural Engineです。もう1つが、2026年に始まったデュアル構成です。M6の発表文は「Dual 16-core Neural Engine」を前世代比で最大2倍のピーク演算性能とし、システムのフレームワークが2基のエンジンを自動で同時に使うと説明しています。A20 Proも同じ構成で、合計32コア、A19 Pro比で2倍のAI処理能力としています。
| 仕様表の表記 | 該当する主なチップ |
|---|---|
| 8コアNeural Engine | A12・A13 Bionic |
| 16コアNeural Engine | A14〜A19 Pro、M1〜M5(Ultraを除く) |
| 32コアNeural Engine | M1・M2・M3・M5のUltra |
| デュアル16コアNeural Engine | M6、A20 Pro(2026年〜) |
日本語の仕様ページでも、iPhone 18 ProとM6搭載Mac miniは「デュアル16コアNeural Engine」、M5 Ultra搭載Mac Studioは「32コアNeural Engine」と書き分けられています。合計はどちらも32コアです。
CPU・GPU・Neural Engineの違いと役割分担
3つとも計算をするユニットですが、得意な処理が違います。
| ユニット | 得意な処理 | AI推論の電力効率 | 扱える演算の幅 |
|---|---|---|---|
| CPU | 汎用・逐次処理 | 低い | 最も広い |
| GPU | 大量データの並列演算 | 中〜高 | 広い |
| Neural Engine | 決まった形のNN推論 | 最も高い | 狭い |
表の電力効率は、ANEが扱える演算に限った一般的な傾向です。ANEは演算の種類と形が限られる代わりに、ニューラルネットワークの推論を省電力で処理できます。ただし処理が小さい場合は、ANEを起動せずにCPUで済ませる方が電力を節約できることもあります。
CPU側にも機械学習用の回路があります。2020年のA14 Bionicの発表文は、CPUに第2世代の機械学習アクセラレータを載せたと書いています。A18 Proの発表文は、次世代のCPU側の機械学習アクセラレータが、Neural Engineを起動せずに低遅延の計算をこなして電力を節約すると説明しています。A20 Proでは、6コアCPUにNeural Acceleratorが統合されました。どのユニットで動かすかはCore MLやCore AIが決めるので、アプリ側で振り分けを書く必要はありません。
世代別のNeural Engine性能:Appleが公表した演算回数の一覧
ANEの性能は「毎秒何兆回の演算ができるか」で公表されてきました。下の表は、Apple Newsroomの発表文に書かれた値だけをまとめたものです。発表文に回数が無い世代は、Appleの表現をそのまま載せています。
| チップ | 発表 | コア数 | Appleの公表値 |
|---|---|---|---|
| A11 Bionic | 2017年 | 2 | 毎秒最大6,000億回 |
| A12 Bionic | 2018年 | 8 | 毎秒最大5兆回 |
| A14 Bionic | 2020年 | 16 | 毎秒最大11兆回 |
| M1 | 2020年 | 16 | 毎秒11兆回 |
| A15 Bionic | 2021年 | 16 | 毎秒15.8兆回 |
| M1 Ultra | 2022年 | 32 | 毎秒最大22兆回 |
| M2 | 2022年 | 16 | 毎秒最大15.8兆回 |
| A16 Bionic | 2022年 | 16 | 毎秒約17兆回 |
| A17 Pro | 2023年 | 16 | 前世代比最大2倍(回数の記載なし) |
| M3 | 2023年 | 16 | M1比で最大60%高速(回数の記載なし) |
| M4 | 2024年 | 16 | 毎秒38兆回 |
| M5 | 2025年 | 16 | 「より高速」(回数の記載なし) |
| M6 | 2026年 | デュアル16 | 前世代比で最大2倍のピーク演算性能 |
| A20 Pro | 2026年 | デュアル16 | A19 Pro比2倍のAI処理能力 |
数字を比べるときの注意が2つあります。1つ目は演算の精度です。Appleは発表文で、何ビットの演算で数えたかを書いていません。A11とA15の値は、Appleの研究ブログがFP16での値だと明記しています。一方でM4の38兆回には精度の説明がありません。M2の15.8兆回からM4の38兆回への伸びを、そのまま2.4倍の性能差と読める保証はありません。
2つ目は、A17 Pro・M3・A18 Pro・M5の発表文に回数が無いことです。ネット上の比較表に載っているこれらの世代の兆回数は、Newsroomの発表文では確認できません。M5の発表文が数字で示しているのは、GPU側のピーク演算性能(M4比4倍超)です。
Neural EngineとNeural Acceleratorの違い:M5以降のGPU内蔵AI
Neural Acceleratorの位置づけと搭載チップ
Neural Acceleratorは、2025年のA19・A19 ProとM5から入った行列演算のユニットです。ANEのような独立したブロックではなく、GPUの各コアの中にあります。Appleの研究ブログは、M5のNeural Acceleratorを「専用の行列乗算演算を提供する」ものと説明しています。
| 比較軸 | Neural Engine | Neural Accelerator |
|---|---|---|
| 置き場所 | 独立したブロック | GPUの各コアの中 |
| 向く処理 | 省電力で回したい推論 | 大きな行列積・LLM |
| 強み | 電力効率 | GPU全体での処理量 |
| 主な入口 | Core ML・Core AIなど | MLX・Metal 4など |
搭載チップは、A19(iPhone 17の5コアGPU)、A19 Pro(iPhone 17 Proは6コアGPU、iPhone Airは5コアGPU)、M5、M5 Pro(最大20コアGPU)、M5 Max(最大40コアGPU)、M5 Ultra(最大80コアGPU)、M6(12コアGPU)です。A20 ProはGPUに加えてCPUの各コアにもNeural Acceleratorを統合しました。どのチップもNeural Engineは残したままで、Neural AcceleratorはANEの代わりではありません。
M5とM4の比較:初回トークンは約4倍、2トークン目以降は約1.2倍
Appleの研究ブログは、24GBメモリのMacBook ProでM5とM4を比べた結果を公表しています。条件はMLXのmlx_lm.generate、プロンプト4,096トークン、追加生成128トークンです。
| モデル | TTFTの高速化(M4比) | 生成速度(M4比) |
|---|---|---|
| Qwen3-1.7B(BF16) | 3.57倍 | 1.27倍 |
| Qwen3-8B(BF16) | 3.62倍 | 1.24倍 |
| Qwen3-8B(4bit) | 3.97倍 | 1.24倍 |
| Qwen3-14B(4bit) | 4.06倍 | 1.19倍 |
| gpt-oss-20b(MXFP4) | 3.33倍 | 1.24倍 |
| Qwen3-30B-A3B(4bit) | 3.52倍 | 1.25倍 |
差が大きいのは、計算量で速度が決まる初回トークンだけです。2トークン目以降はメモリ帯域で速度が決まるため、19〜27%の向上にとどまります。研究ブログはその理由を、メモリ帯域がM4の120GB/sからM5の153GB/sへ28%増えたことで説明しています。「Neural Acceleratorで何でも4倍」ではなく、長いプロンプトを読み込む待ち時間が縮む、と読むのが正確です。
Neural Acceleratorを使うためのソフトウェア要件
Neural Acceleratorは、対応したソフトウェアでないと効きません。MLXはv0.30.0のリリースノートで「Support for Neural Accelerators on M5 (macOS >= 26.2)」と書いており、macOS 26.2以上が条件です。中身はMetal 4のTensor OperationsとMetal Performance Primitivesで、自前のMetalカーネルからも使えます。MLXの導入手順はMLXとは?Apple SiliconでLLMを動かすmlx-lmの導入手順と採用判断にまとめています。
LLMはNeural Engineで動かすべきか:ANEが向く処理と向かない処理
数B(数十億)パラメータ級のLLMを手早く動かすなら、GPU(M5以降はNeural Accelerator)が第一候補です。ANEへの移植を検討するのは、省電力にしたい、GPUを描画やカメラのために空けておきたい、といった目的があるときです。その場合も、対象の端末でGPUとANEの両方を測って決めます。理由はAppleの資料にあります。
Appleの研究ブログ「Deploying Transformers on the Apple Neural Engine」は、TransformerをANEで速く動かすための4つの原則を挙げています。データの形を(B, C, 1, S)の4次元にする、大きな中間テンソルを分割する、reshapeやtransposeによるメモリコピーを避ける、の3つに加え、4つ目が帯域律速への対処です。系列が短いと、大きな重みをメモリから読んでも少ない入力にしか使われず、ANEでも速度がメモリ帯域で頭打ちになると書いています。一般的なPyTorch実装をそのまま変換しても、ANEの得意な形にはなりません。
もう1つの理由は、ANEに対応した演算でもANEで動くとは限らない点です。Core MLのドキュメントは、実行先を演算速度だけで決めておらず、ユニット間のデータ移動のコストやユニットの立ち上がり時間も考えると説明しています。その結果、ANEに対応した演算がCPUで動くこともあります。ANEに載らない演算が混ざると、許可したユニットの範囲でCPUやGPUに割り当てられ、ユニット間のデータ移動が増えることがあります。
判断の目安は次のとおりです。
- ANEが向く:画像分類・物体検出・音声認識・小型のテキスト分類など、入力の形が固定され、常時または頻繁に動く処理。
- GPUが向く:数B(数十億)パラメータ以上のLLMの生成、画像生成、入力の長さが毎回変わる処理。M5以降はNeural Acceleratorが効きます。
- OSのモデルで足りる:文章の要約や抽出なら、自前のモデルを用意せずFoundation Models Frameworkとは?Apple基盤モデルの性能・使い方とiOS 27の変更点でApple Intelligenceの基盤モデルを呼ぶ方が早く済みます。
失敗しやすいのは、MacのLLMアプリで「ANEを使えば速くなる」と考えて、測らずにCore MLへ変換し.cpuAndNeuralEngineを指定する進め方です。上のM5とM4の比較はMLXでGPU同士を比べたもので、ANEとGPUの比較ではありません。ただ、2トークン目以降の生成はメモリ帯域に左右されるという性質はANEでも同じで、Apple自身もANEで帯域律速になる場合を挙げています。速度目的で移植するなら、変換前に同じ端末でGPU版と比べてください。
開発でNeural Engineを使う:Core ML・Core AIの指定と確認方法
ANEには、アプリから直接呼べる公開APIがありません。正規の入口は、Core ML、iOS 27で加わったCore AI、その上に乗るVisionなどのフレームワークです。実行先はフレームワークが決め、開発者は許可するユニットを指定します。Core MLそのものの使い方はCore MLとは?Create ML・coremltools 9でのモデル作成とSwift推論、Core AIとの使い分けで解説しています。
Core MLのcomputeUnitsとML Program変換時の既定精度
Core MLでは、MLModelConfigurationのcomputeUnitsで使うユニットを決めます。値は.all・.cpuAndNeuralEngine・.cpuAndGPU・.cpuOnlyの4つです。.cpuAndNeuralEngineはiOS 16・macOS 13で加わりました。ANEに載らない演算は、この指定でもCPUで動きます。
精度はFP16が既定です。coremltoolsのドキュメントは、5.0b3以降のML Program形式は既定でFP16のモデルを作ると書いています。coremltools 9.0で、compute_precisionを指定せずに畳み込みのモデルを変換して中身を確かめると、FP32の入力の直後とFP32で返す出力の直前にcast演算が入り、内部はFP16で計算されていました。
MLComputePlanによる演算ごとの推奨実行先・対応ユニットの確認
Xcodeのパフォーマンスレポートを開けば、演算ごとにCPU・GPU・Neural Engineのどれで動いたかが表示されます。CIなどでコードから確かめたいときは、iOS 17.4・macOS 14.4で加わったMLComputePlanを使います。モデルを動かす前に、演算ごとの推奨ユニットと対応ユニットを取り出せます。
import CoreML
import Foundation
func name(_ d: MLComputeDevice) -> String {
switch d {
case .cpu: return "CPU"
case .gpu: return "GPU"
case .neuralEngine: return "ANE"
@unknown default: return "?"
}
}
// 端末にANEがあるかを確認する
for device in MLComputeDevice.allComputeDevices {
if case .neuralEngine(let ane) = device {
print("Neural Engine:", ane.totalCoreCount, "cores")
}
}
// .mlpackage をコンパイルし、演算ごとの実行先を取り出す
let compiled = try await MLModel.compileModel(at: URL(fileURLWithPath: CommandLine.arguments[1]))
let config = MLModelConfiguration()
config.computeUnits = .cpuAndNeuralEngine
let plan = try await MLComputePlan.load(contentsOf: compiled, configuration: config)
guard case let .program(program) = plan.modelStructure,
let main = program.functions["main"] else { fatalError("ML Program ではありません") }
for op in main.block.operations where op.operatorName != "const" {
guard let usage = plan.deviceUsage(for: op) else {
print(op.operatorName, "→ 判定できず")
continue
}
let supported = Set(usage.supported.map(name)).sorted().joined(separator: ",")
print(op.operatorName, "→", name(usage.preferred), "対応:", supported)
}
このコードをswift plan.swift tiny.mlpackageのように実行すると、main関数の最上位ブロックにあるconst以外の演算が1行ずつ出力されます(分岐やループの内側、別の関数は走査しません)。次は、macOS 26.6.2(Swift 6.3.3)のIntel Mac(Intel UHD Graphics 630とRadeon Pro 5500Mを搭載)で実行した結果です。モデルはcoremltools 9.0のMIL Builderで作った、入力形状(1, 3, 64, 64)、出力16チャネルの3×3畳み込み・ReLU・平均プーリング・k=3のtopkだけの小さなものです。
cast → 判定できず
conv → CPU 対応: CPU,GPU
relu → 判定できず
reduce_mean → CPU 対応: CPU,GPU
topk → CPU 対応: CPU
cast → CPU 対応: CPU,GPU
Intel MacにはANEが無いので、allComputeDevicesにNeural Engineが出ません。さらに.cpuAndNeuralEngineでGPUを許可していないため、推奨先が取れた演算はすべてCPUになりました。対応ユニットの表示は端末・OS・実行環境によって変わります。Apple siliconの端末では、ANEに対応する演算について対応ユニットにANEが加わり、推奨先との違いを一覧で見られます。推奨先がANEでなくても、それだけで設計を変える必要はありません。Xcodeのパフォーマンスレポートなどで予測時間を測り、遅い原因がそこにあると分かった場合に、演算の置き換えやモデルの見直しを検討します。deviceUsage(for:)は実行先を判定できないとnilを返す仕様なので、nilの行も残して確認してください。
iOS 27のCore AIとバックグラウンド推論
iOS 27・macOS 27で、AIモデルを端末で動かす新しいフレームワークCore AIが加わりました。Appleの開発者向けページは、LLMなどの生成モデルはCore AIを、決定木や回帰のような従来の機械学習モデルはCore MLを使うよう案内しています。Core AIはモデルを.aimodel形式に変換して使い、読み込み時に端末のCPU・GPU・Neural Engineに合わせて最適化します。ANEで動いたかの確認には、XcodeのCore AIデバッグゲージと、InstrumentsのCore AIテンプレートを使います。
もう1つ、iOS 27からBackground Inferenceというentitlementが加わりました。ドキュメントは、アプリがバックグラウンドにある間にNeural Engineを使うにはこのentitlementが必要で、Core AI・Core ML・Metal Performance Shaders Graphのどれで推論しても対象になると書いています。バックグラウンドで推論を続けるアプリは、iOS 27向けのビルドで見直しが必要です。ANEを前提にしたiOSアプリの設計や改修は、iOSアプリ開発でもご相談いただけます。
Neural Engineのよくある質問
Neural Engine(ニューラルエンジン)とは何ですか?何に使うのですか?
Neural Engine(ANE)は、Appleのチップに入っているAI推論専用のブロックです。Face IDの顔照合、写真の被写体認識と検索、Live Textの文字認識、カメラの画像処理、Apple Intelligenceのオンデバイス処理に使われています。処理は端末の中で完結し、同じ処理をCPUで回すより少ない電力で済みます。
16コアNeural Engineとは何ですか?コア数が多いほど速いのですか?
ANEに処理コアが16個あるという意味で、A14 BionicとM1以降のiPhone・Macの標準構成です。同じ16コアでも世代が新しいほど速く、Appleの公表値はM1が毎秒11兆回、M4が毎秒38兆回です。M1 UltraやM5 Ultraは32コア、2026年のM6とA20 Proは16コアを2基積んだデュアル16コアです。
Neural EngineとNeural Acceleratorの違いは何ですか?
Neural Engineはチップの中の独立したブロックで、常に動く軽い推論を省電力でこなします。Neural Acceleratorは、A19・M5以降のGPUの各コアに入った行列演算のユニットで、LLMの初回トークン生成のような大きな行列積を速くします。M5のNeural Acceleratorを使うには、MLX 0.30.0以降とmacOS 26.2以降などの対応が必要です。
M5のNeural Engineは何TOPSですか?
AppleはM5のNeural Engineの毎秒演算回数を公表していません。発表文は「より高速な16コアNeural Engine」と書き、AIの性能としてはGPUのピーク演算性能がM4比で4倍超としています。この記事の表で毎秒の演算回数を載せたチップのうち、最も新しいのはM4の38兆回です。
Neural Engineはいつから搭載されていますか?
最初の搭載は2017年のA11 Bionic(iPhone 8・iPhone X)で、2コア・毎秒最大6,000億回でした。Macでは2020年のM1から搭載されています。2018年のA12で8コア、2020年のA14とM1で16コアになり、2026年のM6とA20 Proでデュアル16コアに増えました。