2026年1月12日、AppleとGoogleは「次世代のApple Foundation ModelsをGoogleのGeminiモデルとクラウド技術を基盤に作る」という複数年の提携を共同声明で発表しました。その成果は2026年9月14日(米国時間)配信のiOS 27で「Siri AI」として出ています。ただ、SiriがGeminiに置き換わったわけではありません。この記事では、公式文書の文言を時系列で比べながら、Geminiがどこまで関わっているのか、データはGoogleに渡るのか、日本語ではいつ使えるのかを整理します。
まとめ:AppleのGemini採用の要点(2026年10月時点)
- 2026年1月12日の共同声明で、次世代のApple Foundation Models(AFM)をGeminiモデルとGoogleのクラウド技術を基盤に作ると発表されました。契約額やモデル規模は公表されておらず、「年10億ドル規模」「1.2兆パラメータ」は報道の数字です。
- WWDC26(2026年6月8日)で第3世代のAFMが発表されました。5つのモデルで構成され、Appleは「GoogleおよびGeminiモデルとの協業で独自に構築した(custom-built in collaboration with Google and its Gemini models)」と説明しています。
- Siri AIはAppleのアシスタントで、中身はAFMです。Googleの「Gemini」アプリとは別物です。
- 処理は端末内とPrivate Cloud Compute(PCC)で行われます。最上位のAFM 3 Cloud Proだけは、Google Cloud内のNVIDIA GPUへ広げたPCCで動きます。
- Siri AIは英語のベータ版から提供が始まりました。日本語についてはニュースリリースが「10月」、日本の製品ページが「年内」としています。対応iPhoneは15 Pro・15 Pro Max、16以降のモデル、Air、Duoです。
以下、発表から配信までの経緯、Geminiの関与の範囲、データの流れ、日本での使い方の順に見ていきます。
2026年1月の共同声明で合意された内容
共同声明はGoogleの公式ブログに2026年1月12日付で載り、本文は4文だけです。合意の中身は次の3点に絞られます。
- 複数年の協業として、次世代のApple Foundation ModelsをGoogleのGeminiモデルとクラウド技術を基盤にする(”will be based on Google’s Gemini models and cloud technology”)
- これらのモデルは、年内に出る「よりパーソナルなSiri」を含むApple Intelligenceの機能を支える
- Apple Intelligenceは引き続きApple製デバイスとPrivate Cloud Compute上で動き、Appleのプライバシー基準を守る
選んだ理由についてAppleは、慎重な評価の結果、GoogleのAI技術がApple Foundation Modelsにとって最も有能な基盤(”the most capable foundation”)だと判断した、と述べています。契約金額、契約期間の年数、使うGeminiの世代は書かれていません。
報道ベースの数字と公式発表の線引き
日本語記事でよく見かける「年間約10億ドル」「1.2兆パラメータのカスタムGemini」は、2025年11月にBloombergが報じた数字です。同じ報道は、契約締結に向けた交渉が最終段階にあるとも伝えていました。どれもAppleとGoogleが公式に確認した数字や説明ではありません。
発表からiOS 27配信までの経緯
「よりパーソナルなSiri」はWWDC24(2024年6月)で予告された機能です。Appleは2025年3月に提供の遅れを認めており、共同声明はその約10か月後に出ています。
| 時期 | 出来事 | 根拠 |
|---|---|---|
| 2024年12月 | iOS 18.2でChatGPT連携を開始 | Apple発表 |
| 2025年3月 | パーソナルなSiriの延期を表明 | Apple声明 |
| 2025年11月 | Gemini採用・年10億ドル規模と報道 | Bloomberg |
| 2026年1月12日 | 複数年提携の共同声明 | blog.google |
| 2026年3月24日 | iOS 26.4配信(新Siriは含まれず) | Appleリリースノート |
| 2026年6月8日 | WWDC26でSiri AIと第3世代AFMを発表 | Apple Newsroom |
| 2026年9月14日 | iOS 27配信、Siri AIを英語ベータで提供 | Apple Newsroom |
| 2026年10月 | 日本語ほか4言語に対応予定 | Apple Newsroom |
共同声明は新しいSiriを「年内」としており、春のiOS 26.4での提供を予想する報道もありました。実際に26.4に入ったのはApple Musicとアクセシビリティの更新で、Siri AIはiOS 27まで持ち越されています。WWDC26の発表全体はWWDC26まとめにまとめています。
Siri AIの中身はGeminiか:第3世代Apple Foundation Modelsの構成
「SiriはGeminiになったのか」という疑問には、Appleの文書だけで答えられます。ポイントは、1月の共同声明と6月以降のAppleの発表で、Geminiの位置づけの書き方が変わっていることです。
公式文書ごとのGoogle・Geminiの書き方
| 日付 | 文書 | Google・Geminiの記述 |
|---|---|---|
| 2026-01-12 | 共同声明 | based on Gemini models and cloud technology |
| 2026-06-08 | Apple Intelligenceの発表 | in collaboration with Google and its Gemini models |
| 2026-06-08 | Apple研究ブログ(AFM 3) | in collaboration with Google(Geminiの語なし) |
| 2026-09-14 | Siri AI提供開始の発表 | in collaboration with Google and its Gemini models |
| 2026-09-14 | OS配信の総合リリース | Google・Geminiとも記載なし |
原文は6月のApple Intelligenceの発表、Appleの研究ブログ、9月のSiri AI提供開始の発表で確認できます。1月の共同声明は「Geminiモデルを基盤にする(based on)」と書きましたが、6月以降のAppleの製品発表は一貫して「GoogleおよびGeminiモデルとの協業で独自に構築した(custom-built)」という表現です。技術を説明する研究ブログは「Googleと協力して」とだけ書き、Geminiの名前を出していません。Geminiをどう使ったか(蒸留か、追加学習か)の説明もありません。そのため本記事は「SiriはGeminiで動く」とは書かず、「GoogleとGeminiモデルとの協業で作られたAppleのモデルで動く」と書きます。協業の技術的な中身は、Appleが予告した技術レポートが出るまで確定できません。
5つのモデルと動作場所
| モデル | 動作場所 | 規模・役割 |
|---|---|---|
| AFM 3 Core | 端末内 | 30億パラメータの密モデル |
| AFM 3 Core Advanced | 端末内 | 200億パラメータ・都度10〜40億を活性化 |
| AFM 3 Cloud | PCC(Apple silicon) | サーバー側の主力 |
| ADM 3 Cloud (Image) | PCC(Apple silicon) | 画像生成・編集 |
| AFM 3 Cloud Pro | PCC(Google Cloud内のNVIDIA GPU) | エージェント的なツール利用・複雑な推論 |
推論時の動作場所としてGoogle Cloudが明記されているのはAFM 3 Cloud Proです。研究ブログによると、ほかの4モデルはApple silicon向けに設計されています。ただし、AFM 3 Core Advancedと、それを使う表現力の高い音声や高度な音声入力は、iPhone 17 Pro・17 Pro Max・Air・18 Pro・18 Pro Max・Duoと、12GB以上のユニファイドメモリを持つM4以降のiPad、M3以降のMacなどに限られます。Appleが実施した人による並べ比べ評価(一般的なテキスト能力)では、AFM 3 Coreの回答が好まれた割合は45.6%(2025年版は23.3%)、AFM 3 Cloudは64.7%(2025年版のサーバーモデルは8.7%)でした。開発者がアプリからこれらのモデルを呼ぶ方法は、Foundation Models Frameworkの解説で扱っています。
Siri AIとGeminiアプリの違い
Siri AIはiPhoneのサイドボタンや「Siri」アプリから使うAppleのアシスタントです。Googleアカウントは要りません。会話履歴はiCloudで同期され、アプリ操作はApp Intentsを経由します。Googleの「Gemini」アプリは別のアプリです。一部の機能はログインなしでも使えますが、追加の機能やアクティビティの保存にはGoogleアカウントが必要で、データの扱いにはGoogleの規約が適用されます。iPhoneでGeminiアプリを使う方法はGeminiの使い方を参照してください。「SiriでGeminiを呼ぶ」設定は、2026年10月時点のAppleの公式ページには見当たりません。
Siri AIのデータ処理とPCCのプライバシー保護
Appleの説明では、Siri AIのリクエストは端末内のモデルか、PCC上のサーバーモデルで処理されます。研究ブログは、PCCではユーザーデータが保存されず、Appleを含む誰とも共有されないとしています。共同声明の「Apple Intelligenceは引き続きApple製デバイスとPCCで動く」という一文も同じ趣旨です。GeminiのAPIへリクエストを送る構成ではありません。
ただし、物理的な置き場所は変わりました。AFM 3 Cloud Proについて、Appleは「GoogleとNVIDIAと協力し、Google Cloud内のNVIDIA GPUへPCCを拡張した」と書いています。Googleのデータセンターで、Appleの保証(データを残さない、特権アクセスを許さない、第三者が検証できる)を維持する設計です。言い換えると、Googleにデータを渡さないことの根拠は、置き場所ではなくPCCの仕組みにあります。業務端末で機密情報を扱う組織は、Appleのセキュリティ研究サイトにあるPCCの技術文書で、Google Cloud上の構成がどう検証できるかを確かめてから、利用の範囲を決めてください。
サーバーモデルを使う機能には1日の利用上限があります。Appleは対象としてSiri AI、写真の編集ツール、Image Playground、ショートカットのAFM 3 Cloudモデルを挙げ、上限を超えた利用を将来は有料で提供するとしています。AIで生成・編集した画像を見分けられるよう、Google DeepMindの電子透かし技術SynthIDへの対応も、年内のソフトウェアアップデートで予定されています。
日本でSiri AIを使う条件:対応機種と日本語の提供時期
Apple IntelligenceとSiri AIの対応機種
Apple IntelligenceとSiri AIの対象は、iPhone 16以降、iPhone 15 Pro・15 Pro Max、iPhone Air、iPhone Duo、M1以降のiPadとMac、A17 Pro搭載のiPad mini、A18 Pro搭載のMacBook Neo、Apple Vision Pro、Apple Watch Series 9以降・Apple Watch Ultra 2以降・Apple Watch SE 3(Apple Intelligenceを有効にした対応iPhoneとペアリングした場合)です。一部のWatch機能ではiPhoneが近くにある必要があります。iOS 27自体はもっと古い機種にも入りますが、iPhone 15・15 Plusとそれ以前のモデルではSiri AIを使えません。iOS 27の対応機種一覧はiOS 27の解説にあります。
日本語の提供時期と地域の制限
9月14日のニュースリリースでは、Siri AIは英語のベータ版から始まり、10月にフランス語・日本語・韓国語・ポルトガル語・スペイン語へ広がると書かれています。一方、日本向けの製品ページ(apple.com/jp/apple-intelligence)は「年内に日本語でも利用できる」としています。2026年10月5日時点で、Appleは日本語版の配信日を示していません。業務で日本語のSiri AIを前提にするなら、実際に配信されてから端末で確かめるのが確実です。
地域による制限もあります。EUではiOS・iPadOS・watchOSでの提供が当初は見送られ(MacとVision Proは利用可)、中国では規制対応が済むまで使えません。13歳未満も使えません。
ChatGPT連携と他社AIの位置づけ
iOS 18.2から続くChatGPT連携は、Siriが答えられない質問をユーザーの承認を得てChatGPTに渡す仕組みでした。Geminiの採用はこれとは層が違います。ChatGPTは外部へ渡す先で、AFMはSiriそのものの頭脳です。iOS 27の配信リリースとApple Intelligenceの製品ページには、ChatGPTの記載がありません。iOS 27のベータでClaudeやGeminiも選べる拡張の仕組みが見つかったという報道はありますが、Appleは発表していないため、本記事では提供済みとして扱いません。
開発者向けには、iOS 27のFoundation Models FrameworkにLanguageModelプロトコルが加わり、準拠した他社モデルを同じAPIで扱えるようになりました。Googleは、Firebase AI Logic経由でGeminiのクラウドモデルをこの枠組みから呼ぶ統合をプレビューで提供しています。こちらはSiri AIと違い、リクエストがFirebaseを通ってGoogleのGeminiへ送られる構成です。アプリで同じAPIを使っていても、Appleのモデルを選ぶかGeminiを選ぶかでデータの行き先が変わります。Siri AIにアプリの機能を使わせる場合は、App Intentsで操作を公開する必要があります。
AppleがGoogleと組んだ理由と、独自開発の行方
判断の軸ははっきりしています。Appleが外部に頼ったのはモデルを作る段階とサーバーの計算資源で、ユーザー体験・端末内処理・プライバシーの仕組みは手放していません。端末内のAFM 3 Core Advancedは、研究ブログが「Appleの研究にもとづく」と強調する独自設計の疎モデルです。自社のAIサーバー向けチップ開発も報じられています(Apple Baltra)。今回の提携は、SiriをGoogleに明け渡すものではなく、時間を買うための調達と見るのが妥当です。
そのうえで、避けたい判断を2つ挙げます。1つ目は、「SiriはGeminiだからGeminiと同じ答えが返る」と考えてアプリや業務を設計することです。AFMはAppleが調整したモデルで、ふるまいはGemini APIと一致しません。2つ目は、「Googleのデータセンターで動くからデータがGoogleに渡る」と決めつけて、Siri AIを一律に禁止することです。判断の材料はPCCの技術文書と、MDMで管理できる項目にあります。報道の数字や事業者の名前ではありません。
よくある質問
AppleのSiriはGeminiになったのですか?
なっていません。Siri AIはAppleのアシスタントで、GoogleとGeminiモデルとの協業で作られた第3世代Apple Foundation Modelsで動きます。9月のSiri AI提供開始の発表は、モデルを「GoogleおよびGeminiモデルとの協業で独自に構築した」と説明しており、Geminiそのものを載せたとは書いていません。
GeminiとSiriの違いは何ですか?
Gemini(ジェミニ)はGoogleの生成AIモデル群と、同じ名前のチャットアプリです。一部機能はログインなしでも利用でき、追加機能やアクティビティの保存にはGoogleアカウントが必要です。データの扱いにはGoogleの規約が適用されます。Siri AIはApple製品に組み込まれたアシスタントで、端末内とPrivate Cloud Computeで処理され、iCloudで会話履歴を同期します。
Apple IntelligenceのGemini連携はいつから使えますか?
Googleとの協業で作られたモデルで動くSiri AIは、2026年9月14日(米国時間)配信のiOS 27から英語のベータ版で提供されています。日本語はニュースリリースで「10月」、日本の製品ページで「年内」とされ、配信日は2026年10月5日時点で発表されていません。
Siri AIはどのiPhoneで使えますか?
iPhone 16以降、iPhone 15 Pro・15 Pro Max、iPhone Air、iPhone Duoです。iOS 27を入れられても、iPhone 15・15 Plusとそれ以前のモデルでは使えません。
Siri AIを使うと個人データはGoogleに渡りますか?
Appleは、処理は端末内とPrivate Cloud Computeで行われ、PCCでのリクエスト処理では個人データを保存せず、Appleや第三者がアクセスできないと説明しています。これは、Siriアプリの会話履歴をiCloudで同期する仕組みとは区別されます。最上位のAFM 3 Cloud ProはGoogle Cloud内のNVIDIA GPUで動きますが、AppleはPCCと同じ保証を維持するとしています。