Intel Arc Pro B70とArc Pro B65は、Battlemage世代の大型GPU「BMG-G31」(通称Big Battlemage)を載せたワークステーション向けグラフィックスカードです。どちらも32GBのGDDR6を積み、ローカルでのLLM推論を主な用途に据えています。B70は2026年3月25日に949ドルで発売されました。
本記事では、IntelのARK(製品仕様ページ)の数値、Intelが公表した比較値の測定条件、Phoronix・Puget Systems・PC Games Hardwareによる第三者の実測値をもとに、Battlemage世代の製品一覧、B65・B70の仕様・価格・LLM性能・ソフトウェアの対応状況と、B50・B60・B65・B70の選び方を整理します。情報は2026年10月16日時点のものです。
まとめ:Arc Pro B70/B65の要点
- B70は32 Xeコア・INT8 367 TOPS・32GB・608GB/s、Intel純正カードのTBPは230Wです。B65は20 Xeコア・197 TOPS・200Wで、メモリはB70と同じ32GB・608GB/sです。
- B65のXeコア数・XMXエンジン数・INT8性能はB60と同じです。B65はB60のメモリを24GBから32GBへ、帯域を456GB/sから608GB/sへ増やし、PCIeをx8からx16にしたモデルと捉えると選びやすくなります。
- 価格は発売時の949ドルから上がっており、米国のNeweggでは2026年10月16日時点でASRock製B70が1,299.99ドルです。国内のB70は税込224,800円前後で発売されましたが、10月中旬の販売店では税込26万〜38万円前後まで上がっています。
- Intelの「RTX PRO 4000比で最大2.2倍」は扱えるコンテキスト長(KVキャッシュ容量)の比較で、生成速度の比較ではありません。1ユーザーの通常の逐次生成はメモリ帯域に制約されやすく、Puget SystemsのLlama 3.1 8B・FP16の検証ではB70の実測値は約35 tok/sでした。
- 推論はIntelのLLM Scaler(vLLMのコンテナ)で動かすのが基本です。IPEX-LLMとIntel Extension for PyTorchは開発を終えてアーカイブされています。
- Battlemage最大のチップBMG-G31を使うゲーム向けカード(噂の「Arc B770」)は、2026年10月時点で発表されていません。B70とB65は2026年4月のドライバーからゲームにも正式対応し、B70のゲーム性能はArc B580より3〜4割高い水準です。
Battlemageの製品一覧:BMG-G21とBMG-G31の6モデル
Battlemageは、IntelのXe2アーキテクチャを使う単体GPUの開発コード名で、初代Arc(Alchemist)の次の世代にあたります。Battlemageの単体GPUチップは2種類で、小さいBMG-G21がゲーム向けのArc B580・B570とPro向けのB50・B60に、Xeコアを32基まで積める最大構成のBMG-G31がPro向けのB65・B70に使われています。G31はG21と同じXe2で、新しい機能は加わっていません。
| 製品 | GPU | Xeコア | INT8 | メモリ/帯域 | TBP | 発売 | 価格の目安 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Arc B570(ゲーム向け) | BMG-G21 | 18 | 203 TOPS | 10GB/380GB/s | 150W | 2025年1月 | 219ドル(発表時) |
| Arc B580(ゲーム向け) | BMG-G21 | 20 | 233 TOPS | 12GB/456GB/s | 190W | 2024年12月 | 249ドル(推奨価格) |
| Arc Pro B50 | BMG-G21 | 16 | 170 TOPS | 16GB/224GB/s | 70W | 2025年 | 299ドル(発表時) |
| Arc Pro B60 | BMG-G21 | 20 | 197 TOPS | 24GB/456GB/s | 120〜200W | 2025年 | 実売約660ドル(2026年3月) |
| Arc Pro B65 | BMG-G31 | 20 | 197 TOPS | 32GB/608GB/s | 200W | 2026年4月 | 909.99ドル(米国初掲載) |
| Arc Pro B70 | BMG-G31 | 32 | 367 TOPS | 32GB/608GB/s | 230W | 2026年3月 | 949ドル(発売時) |
B580とB570の数値はArc B580とArc B570のARKによります。B570の219ドルはASCII.jpが報じた北米の予想価格、B60の実売価格はB70発表時(2026年3月)のServeTheHomeの記載です。価格は時期と販路で大きく動くので、B70の最新の価格は後の価格の章で示します。
ゲーム向けArc B770の状況:2026年10月時点で未発表
G31を使うゲーム向けカードは、2026年10月時点でIntelから発表されていません。発売前は「Arc B770」の名前で噂されていましたが、G31は先にPro向けのB70・B65として製品化されました。ドイツのPC Games Hardwareは、B770が一度はロードマップに載ったのちに中止されたことを「公然の秘密」とし、背景にメモリ価格の高騰で利益率の高いプロ向けへ振り向けた事情があると見ています。いずれもIntelの公式発表ではありません。
Battlemageの次の世代についても、Intelは単体のゲーム向けGPUの計画を公表していません。公表が進んでいるのはデータセンター向けで、Xe3Pアーキテクチャの推論用GPU「Intel GPU D270」(開発コード名Crescent Island)を2026年のOCP Global Summitで詳しく紹介し、顧客へのサンプル出荷を始めています。Intel純正カードは160GBのLPDDR5X、パートナー製は最大480GB、消費電力は350Wです。G31でゲームをしたい場合は、Pro B70・B65をゲームに使うのが2026年10月時点での唯一の選択肢です。
Pro B70のゲーム性能:B580比でラスタライズ36%・レイトレーシング45%高速
Intelは2026年4月7日のWindows向けドライバー32.0.101.8629で、Arc Pro B70とB65をゲーム対応の対象に加えました(Igor’sLABの報道)。新しいゲーム向けカードの発表ではなく、Pro向けのカードを通常のゲーム向けドライバーの対象に含めた扱いです。
PC Games Hardwareのレビューでは、B70はB580に比べてラスタライズ20本の平均で36%、レイトレーシングで45%速く、Radeon RX 9060 XT 16GBを上回りました。GeForce RTX 5060 Ti 16GBには、少なくともレイトレーシングとパストレーシングで及びません。ブースト最大2.8GHzに対して、測定中の平均クロックは2.6GHz弱でした。949ドル以上のカードで5060 Ti級の性能なので、ゲームだけが目的ならB70は割高です。LLMの推論とゲームを1枚で兼ねる用途でも、購入前に遊ぶタイトル・解像度・画質設定で目標フレームレートを満たすかを確認します。
Arc Pro B70とB65の仕様:Big Battlemage(BMG-G31)の中身
G31を積む2モデルの公式仕様を、ARKの項目で並べます。
| 項目 | Arc Pro B70 | Arc Pro B65 |
|---|---|---|
| Xeコア/XMXエンジン | 32基/256基 | 20基/160基 |
| INT8ピーク性能 | 367 TOPS | 197 TOPS |
| FP32性能 | 22.94 TFLOPS | 12.28 TFLOPS |
| クロック(ARK記載) | Graphics Clock:2,280MHz/最大動的:2,800MHz | Graphics Clock:2,400MHz |
| メモリ | 32GB GDDR6(ECC対応) | 32GB GDDR6 |
| バス幅/帯域 | 256bit/608GB/s | 256bit/608GB/s |
| TBP(Intel仕様) | 230W(160〜290Wで設定可) | 200W |
| 接続/出力 | PCIe 5.0 x16/DP 2.1×4 | PCIe 5.0 x16/出力端子は製品別 |
| 製造プロセス | TSMC N5 | TSMC N5 |
出典はArc Pro B70とArc Pro B65のARKです。ARKでECC対応を明記しているのはB70だけで、B65のページにはECCの項目がありません。
B70とB65の仕様差:演算性能・クロック・TBP
B65のXeコア数はB70の62.5%、INT8性能は54%です。一方でメモリ容量・バス幅・帯域は同じです。LLMの推論のうち、プロンプトを読み込む段階(prefill)は演算性能に、1トークンずつ出力する段階(decode)はメモリ帯域に強く縛られます。したがって、1人で使って長い回答を生成する用途ならB65とB70の差は小さく、長いプロンプトや同時アクセスが多い用途ではB70の演算性能が効いてきます。これは仕様からの見立てで、B65とB70を同一条件で比べた第三者の実測は、2026年9月時点で見当たりません。
B70の消費電力と補助電源:純正は8ピン、国内のASRock・SPARKLE製は12V-2×6
Intel純正のB70はTBP 230Wで、補助電源は8ピン(ATX 2×4)が1基です。パートナー各社(AIB)はTBPを160〜290Wの範囲で設定でき、国内で発売されたASRockとSPARKLEのB70は12V-2×6コネクタを採用しています。SPARKLEは自社製品のTBPをブロワー版330W、パッシブ版275Wと公表しているので、電源はカードごとの公称値で選びます。
実際の消費電力は、PhoronixがUbuntu 26.04(Linux 7.0)上で測った値で、各種負荷の平均191W、ピーク237Wでした。B65はAIB製で提供され、Intelの公称TBPは200Wですが、SPARKLEのブロワー版は240Wです。
価格と発売日:949ドルは発売時の基準
B70の949ドルはIntel純正カードの発売時の価格です。B65についてIntelは希望価格を示しておらず、価格はAIBごとに決まります。
| 製品・販路 | 発売日 | 価格 |
|---|---|---|
| B70 Intel純正(米国) | 2026年3月25日 | 949ドル |
| B70 SPARKLE Blower/Passive(国内) | 2026年4月24日 | 税込224,800円前後 |
| B70 ASRock Creator(国内) | 2026年6月19日 | 税込224,800円 |
| B65(AIB各社) | 2026年4月中旬〜 | 希望価格なし |
| B65 ASRock Creator(米国初掲載) | 2026年6月 | 909.99ドル |
| B70 ASRock Creator(米国Newegg) | 2026年10月16日時点 | 1,299.99ドル |
| B70 ASRock Creator(国内ドスパラ) | 2026年10月16日時点 | 税込259,800円(在庫なし) |
| B70 SPARKLE Blower(国内アーク) | 2026年10月16日時点 | 税込376,800円 |
発売後は値上がりが続いています。VideoCardzは2026年8月17日の記事で、米国の販売価格が1,299.99ドルに達し、発売時の949ドルより約37%高いと報じました。NeweggのASRock B70 Creatorは10月16日時点でも1,299.99ドルのままです。国内では、発売時の想定売価だった税込224,800円に対し、10月16日時点でドスパラのASRock B70 Creatorは税込259,800円(在庫なし)、パソコンSHOPアークのSPARKLE B70 Blowerは税込376,800円でした。販売店ごとの差が10万円以上あるので、購入前に複数店の価格を見比べます。
B65は、ASRockの日本語サイトにB65 CreatorとB65 Passiveの製品ページがあるものの、国内の代理店による発売日・価格の告知は2026年10月16日時点で確認できていません。国内で買えるB65は並行輸入品の可能性があるため、保証の窓口を確かめてから選びます。
LLM推論性能:Intel公称値の条件と第三者の実測
Intel公称「2.2倍」「85%」の比較対象と測定条件
Intelは比較相手にNVIDIAのRTX PRO 4000 Blackwell(24GB GDDR7・672GB/s・145W)を選んでいます。Intelの性能表記の脚注によると、測定条件は次の通りです。
- 最大2.2倍のコンテキスト:Llama 3.1 8BをBF16・1枚・vLLMで動かし、メモリ不足になる手前のKVキャッシュ量を比べた値です。B70が93Kトークン、RTX PRO 4000が42Kトークンで、93÷42=2.2倍です。
- 最大85%高いスループット:Ministral 8B Instruct 2410で入力8K・出力1,024トークンを与え、同時ユーザーを増やしたときの合計スループットです。
- 最大6.2倍速い最初のトークン:同じ条件で同時リクエストを増やしたときの応答開始までの時間です。72同時の時点ではB70が7.8秒、RTX PRO 4000が42.5秒(5.4倍)でした。
コンテキスト長はメモリ不足に至る上限を、スループットと応答開始時間は同時リクエスト数を増やした条件を比較しています。帯域はRTX PRO 4000の672GB/sのほうが広いので、1ユーザーで短いやり取りをするだけならB70が速いとは限りません。B70が有利になるのは、長いコンテキストを扱う場合や、多くの同時リクエストをさばく場合です。
32GBに載るモデルと速度の上限を見積もるコード
重みのサイズとKVキャッシュ容量は概算できます。生成速度は、1トークンごとに全重みを読み出す通常の逐次生成を仮定し、KVキャッシュの読み出しや演算時間を省いた帯域上の目安として計算します。次のコードは、Llama 3.1 8BをFP16で載せた場合を計算します。
# Arc Pro B70(32GB・608GB/s)で「載るか」「1ユーザーの生成速度の上限」を見積もる
GIB = 1024 * 1024 * 1024
def estimate(params_b, bytes_per_param, layers, kv_heads, head_dim,
vram_gib=32, bw_gbs=608, mem_util=0.9, overhead_gib=2.0, kv_bytes=2):
weights = params_b * 1e9 * bytes_per_param # 重みのバイト数
kv_per_token = 2 * layers * kv_heads * head_dim * kv_bytes # K と V の2本
free = vram_gib * GIB * mem_util - weights - overhead_gib * GIB
kv_tokens = max(free, 0) / kv_per_token # KVキャッシュに置けるトークン総数
ceiling_tps = bw_gbs * 1e9 / weights # 1トークンごとに重みを全読み出しする前提
return weights / GIB, kv_per_token / 1024, kv_tokens, ceiling_tps
# Llama 3.1 8B(32層・KVヘッド8・head_dim 128)を FP16 で載せた場合
for name, vram, bw in [("Arc Pro B70", 32, 608), ("RTX PRO 4000", 24, 672)]:
w, kv, tokens, tps = estimate(8.03, 2, 32, 8, 128, vram_gib=vram, bw_gbs=bw)
print(f"{name}: 重み {w:.1f}GiB / KV {kv:.0f}KiB/token / "
f"KV上限 約{tokens/1000:.0f}Kトークン / 生成上限 約{tps:.0f} tok/s")
macOSのPython 3.9で実行した結果は次の通りです。
Arc Pro B70: 重み 15.0GiB / KV 128KiB/token / KV上限 約97Kトークン / 生成上限 約38 tok/s
RTX PRO 4000: 重み 15.0GiB / KV 128KiB/token / KV上限 約38Kトークン / 生成上限 約42 tok/s
KVキャッシュの上限はIntelの実測値(93K/42K)とほぼ一致し、生成速度の上限は次に示すPuget Systemsの実測値35.4 tok/sの少し上に来ます。固定のオーバーヘッドを2GiBと置いた概算ですが、同じ方式でKVキャッシュを持つ密なモデルなら、パラメータ数・重みとKVのデータ型・層数・KVヘッド数・head_dimを変更することで、買う前に「載るか」「どの程度の速度か」の見当が付きます。
1枚での実測:8BモデルのFP16で約35 tok/s
Puget Systemsの検証(2026年6月公開・9月に一部訂正)は、IntelのLLM Scalerコンテナ(0.14.0-b8.2.1)を使い、FP16・入力500トークン・出力500トークンで測っています。
| モデル(B70 1枚) | 1ユーザー | 8同時(合計) | 応答開始(1ユーザー) |
|---|---|---|---|
| Qwen2.5 3B Instruct | 72.9 tok/s | 526 tok/s | 48ms |
| Llama 3.1 8B Instruct | 35.4 tok/s | 256 tok/s | 86ms |
| Qwen3 8B | 34.7 tok/s | 255 tok/s | 69ms |
1ユーザーでの速度は見積もりどおり帯域で頭打ちになり、同時リクエストを8本にすると合計スループットは約7倍に伸びます。同じ検証でRTX 5090(1,792GB/s)は8BのFP16で140〜200 tok/sと、1枚あたり4〜5倍速い結果でした。1人で使う速さを求めるなら、B70は第一候補になりません。
llama.cppでは結果が割れています。Phoronixの比較では、SYCLバックエンドのプロンプト処理がDeepSeek R1 Llama 8Bで旧世代のRadeon PRO W7900(48GB)と同程度でした。一方、GPT-OSS 20Bは伸びず、Vulkanバックエンドではプロンプト長1,024・2,048で性能が大きく落ちています。
4枚構成(128GB)で動く27B〜35Bモデル
32GBの壁を越えるには、複数枚でテンソル並列(TP)を組みます。Puget Systemsの4枚構成では、1枚に載らないモデルが次の速度で動きました。
- Qwen3.6-27B(密なモデル・FP16で約54GB):1ユーザー13.1 tok/s、8同時95.9 tok/s
- Qwen3.6-35B-A3B(MoE・FP16で約70GB):1ユーザー16.3 tok/s、8同時122 tok/s
- Llama 3.1 8B:1枚の35.4から4枚で70.3 tok/s(1.99倍)
- Qwen2.5 3B:4枚にすると62.6 tok/sへ下がる(0.86倍)
この検証のQwen2.5 3Bでは、4枚への分割で速度が低下しました。小さいモデルでは通信の負担が計算の削減分を上回る場合があります。4枚のGPUの消費電力は合計でピーク632Wで、ホスト側に約300Wを見込む必要があります。Pugetは、GPU間の通信をPCIeの直接転送でなくホストのメモリ経由にする設定(CCL_TOPO_P2P_ACCESS=0)で動かしています。Qwen3.6-35B-A3Bを量子化して1枚に収める場合のサイズはQwen3.6-35B-A3Bとは|必要VRAM・GGUFサイズ・Ollama/vLLMの動かし方とベンチ比較で扱っています。
ソフトウェア対応:LLM Scaler・PyTorch XPUの現状(2026年10月)
B70でLLMを動かす経路は、2026年に大きく入れ替わりました。
- LLM Scaler:Intelが公開するvLLMベースのDockerイメージです。B70への対応は2026年5月の1.4(0.14.0-b8.2.1)からで、2026年10月16日時点の最新は9月9日公開の0.26.0-b2です。実行時のFP8・INT4量子化と、AWQ・GPTQ形式のモデルの自動判別に対応しています。READMEが対象として名前を挙げているのはArc Pro B60とB70で、B65は明記されていません。
- IPEX-LLM:2026年1月28日にアーカイブされ、保守と更新を終えています。
- Intel Extension for PyTorch:2.8を最後に開発を終え、2026年3月30日にアーカイブされました。Intel GPUの対応はPyTorch本体のXPUバックエンドへ移っており、PyTorch 2.14のXPU導入ガイドはArc B-Series(Battlemage)を検証済みのハードウェアに挙げています。Pugetの検証でも、ComfyUIがPyTorch 2.10.0+xpuでB70をそのまま認識しました。
制約もあります。BattlemageはFP4の演算に対応していないので、NVIDIAのNVFP4向けに量子化されたモデルはそのまま速くはなりません。Pugetの6月の検証では、bfloat16が必須のGemma 2 9BがLLM Scaler 0.14.0-b8.2.1で起動しませんでした。その後の0.21.0-b1(2026年7月)でGemma 4への対応が加わっているので、使いたいモデルがLLM Scalerの対応モデル表に載っているかを先に確かめます。
LLM Scalerでの起動手順
公式READMEの手順は、Ubuntu 24.04にIntelのオフラインインストーラー(26.18.8.2)でドライバーを入れ、コンテナを起動する流れです。次はREADMEを基にしたB70×4枚の起動例で、この構成での実機動作は未確認です。Dockerをsudoなしで利用できる設定と、ホストの/home/intel/LLM/Qwen3.6-27B-FP8へのモデル一式の配置を前提にしています。
docker pull intel/llm-scaler-vllm:0.26.0-b2
docker run -td --privileged --net=host --device=/dev/dri \
--name=lsv-container -v /home/intel/LLM:/llm/models/ \
--shm-size="32g" --entrypoint /bin/bash intel/llm-scaler-vllm:0.26.0-b2
docker exec -it lsv-container bash
# コンテナ内:GPUが見えているかを先に確認する(4枚なら 4)
python3 -c "import torch; print(torch.xpu.device_count())"
VLLM_WORKER_MULTIPROC_METHOD=spawn vllm serve \
--model /llm/models/Qwen3.6-27B-FP8 --dtype=float16 \
--enforce-eager --gpu-memory-util=0.9 --max-model-len=8192 \
--port 8000 -tp=4
GPUの数が0と出る場合は、ホスト側の認識、デバイスのコンテナへの公開、権限、ドライバーの整合性を順に確認します。ドライバー競合は原因の一例です。Pugetは、Intelの別イメージ(intel/vllm:0.17.0-xpu)に同梱されたOpenCLのICDがB70用のドライバーと競合し、torch.xpuが1台も認識しない事例を報告しています。vLLMの仕組みやオプションの意味はvLLMとは?PagedAttentionの仕組み・使い方とOllama・TensorRT-LLMとの違いを実装者目線で解説にまとめています。
ドライバーは、WindowsではArc Pro向けの32.0.101.8515(2026年3月25日)でB70・B65に対応し、10月16日時点のArc Pro Bシリーズ向けの最新版は9月25日公開の32.0.101.8976です。GPUを仮想マシンに分けるSR-IOVは、Linuxをホストにした構成だけが対象です。
B50・B60・B65・B70の選び分け
4モデルの仕様と価格の目安は、冒頭のBattlemageの製品一覧の表に並べています。ここでは用途から選ぶ観点を整理します。
B65はB60のメモリ増量版
ARKを並べると、B60とB65のXeコア数・XMXエンジン数・INT8性能・TBPはすべて同じです。主な違いはメモリの24GB(192bit・456GB/s)と32GB(256bit・608GB/s)ですが、PCIe接続もB60の5.0 x8からB65の5.0 x16へ変わっています。8BモデルのFP16なら、先の見積もりコードでB60の生成上限は約28 tok/s、B65は約38 tok/sになります。B60からB65へ乗り換える価値は、この帯域の33%増と8GBの容量増にあると言えます。
B65の米国掲載価格909.99ドルと、Intel純正B70の発売時希望価格949ドルとの差は約39ドルですが、メーカー・時期・価格種別が異なるため、購入時は同時点の実売価格で比べます。そのときB65のほうが安く、1ユーザーでの生成が中心なら、B65を候補にできます。使うモデルと推論ソフトウェアで必要な生成速度が出るかは、購入前に確かめます。
Arc Pro B50・B60・B65・B70の用途別選定
- B50:70Wで補助電源が要らない帯のカードです。CADや軽い推論向けで、8Bクラスのモデルを8bit以下に量子化して16GBに収める使い方が目安になります。
- B60:Intelが構想として示したProject Battlematrixは、B60を最大8枚・VRAM合計192GBで束ねる構成です。24GBで足りるモデルを複数枚で回すなら、B60・B65・B70の購入時の実売価格を比較し、B60が安ければ導入費を抑えられます。
- B65:32GBが必要で、同時アクセスが少ない個人や小規模チームの推論向けです。
- B70:社内の複数人が同時に使う推論サーバーや、長いコンテキストを扱うRAGに向きます。4枚で128GBを組み、プロンプト処理や同時アクセスの性能を重視するなら、演算性能の高いB70を候補にします。社内データを外に出さないオンプレミスの生成AI基盤として検討する場合は、生成AI導入支援で構成の選定から相談できます。
32GB級の他社製品と比べる場合、AMDのRadeon AI PRO R9700は32GB・640GB/s・300WでMSRPは1,299ドルです。NVIDIAの32GB版であるRTX PRO 4500 Blackwellの性能はRTX PRO 4500 Blackwellのベンチマーク性能と選び方|32GB GDDR7を前世代・上位モデル・民生GPUと比較で比較しています。
B70を選ぶべきでない条件
次に当てはまる場合は、B70を候補から外したほうが安全です。
- TensorRT-LLMなど、CUDA専用のツールを前提にした推論基盤がすでにある場合
- NVFP4形式のモデルを速く動かしたい場合(BattlemageはFP4非対応)
- 1ユーザーでの生成速度を最優先する場合(RTX 5090はPugetの実測で1枚あたり4〜5倍速い)
- Windowsだけで複数枚のLLM推論を組みたい場合(LLM ScalerのvLLMイメージはUbuntu 24.04が前提)
KVキャッシュがVRAMをどれだけ使うかは、KVキャッシュとは?LLM推論を高速化する仕組みとメモリ削減・実装判断を実装者向けに解説【2026年版】で詳しく扱っています。
よくある質問
Intel Arc Pro B70の価格はいくらですか?
Intel純正カードは2026年3月25日に949ドルで発売されましたが、10月16日時点の米国NeweggではASRock製が1,299.99ドルです。国内ではSPARKLE製(4月24日)とASRock製(6月19日)が税込224,800円前後で発売され、10月中旬の販売店では税込26万〜38万円前後に上がっています。B65はIntelの希望価格がなく、国内の代理店による発売告知も確認できていません。
Arc Pro B65とB70の違いは何ですか?
Xeコアが20基と32基、INT8性能が197 TOPSと367 TOPS、TBPが200Wと230W(いずれもIntelの公称値)です。メモリは両方とも32GB・608GB/sで同じです。仕様上は、長いプロンプトや同時アクセスを重視するならB70が候補です。1ユーザーでメモリ帯域が律速になる条件ではB65との差が小さいと予想できますが、同条件での実測結果ではありません。
Arc Pro B70のLLMベンチマークはどのくらいですか?
Puget Systemsの実測では、Llama 3.1 8BをFP16で動かして1ユーザー35.4 tok/s、8同時で合計256 tok/sでした。4枚構成ではQwen3.6-27Bが1ユーザー13.1 tok/sで動いています。
Arc B770は発売されますか?Pro B70でゲームはできますか?
BMG-G31を使うゲーム向けのArc B770は、2026年10月時点でIntelから発表されていません。Pro B70とB65は2026年4月7日のドライバー32.0.101.8629からゲームにも正式に対応しており、PC Games Hardwareの測定ではB70がArc B580よりラスタライズで36%、レイトレーシングで45%速い結果でした。
32GBのArc Pro B70 1枚でどのサイズのLLMが動きますか?
FP16なら重みが約16GBの8Bクラスまでが、KVキャッシュの余裕を残して動く目安です。LLM Scalerの実行時INT4量子化を使えば、重みは1パラメータあたり約0.5バイトになり、より大きなモデルも載せられます(量子化方式の違いはLLM量子化とは?仕組みとGPTQ・AWQ・GGUFの違い・企業の採用判断を解説【2026年版】を参照)。Puget Systemsは27B〜35BのモデルをFP16・4枚構成で検証していますが、必要枚数はモデルの重み、KVキャッシュ容量、並列化方式によって変わります。
関連記事
- RTX PRO 4500 Blackwellのベンチマーク性能と選び方|32GB GDDR7を前世代・上位モデル・民生GPUと比較
- vLLMとは?PagedAttentionの仕組み・使い方とOllama・TensorRT-LLMとの違いを実装者目線で解説
- KVキャッシュとは?LLM推論を高速化する仕組みとメモリ削減・実装判断を実装者向けに解説【2026年版】
- AMD Ryzen AI Haloとは|3,999ドルで128GBローカルLLMを動かす開発機の実力と選び方
- Intel Core Ultra シリーズ3(Gen 3)とは?Panther Lakeの型番・性能・発売日とIntel 18A