ベニスアップデート(Venice Update)は、Googleが2012年2月の公式ブログで公開したローカル検索の改善です。SEOの世界では、「歯医者」「居酒屋」のように地域名を入れない検索でも近くの店舗や地域のページが並ぶようになった変化の呼び名として使われています。この記事では公式ブログの原文から何が変わったのかを確かめ、ピジョンアップデートとの違い、地域で結果が変わる検索語句の条件、市区町村ごとに順位を確認する方法、店舗サイトが避けるべき失敗までを整理します。
まとめ:ベニスアップデートの要点と今のSEOでの扱い
「Venice」はGoogleが2012年2月27日の公式ブログ「Search quality highlights: 40 changes for February」で付けたコードネームです。中身は、地図付きの店舗一覧(Local Universal)を検索結果に出すかどうかの判定に、通常の検索結果の順位をより強く使うという改善でした。同じ投稿には、利用者のいる都市の結果を見つけやすくする別の改善も載っており、「ベニスアップデート」として語られる内容を原文と照らすときは、この2つの項目を分けて読む必要があります。
実務で押さえるのは次の4点です。
- 地域差が出やすいのは「歯医者」「ATM」のように近くの場所を探す検索語句で、地域別の確認はこの型から優先する
- Googleは現在地をデバイスの位置情報、IPアドレス、過去の検索アクティビティ、保存した自宅や職場の住所から推定する
- Search Consoleの検索パフォーマンスは国単位までしか分けられないため、市区町村ごとの順位は地名入り検索や位置情報の上書きで確かめる
- 市区町村名だけを差し替えたページの量産は、Googleのスパムポリシーにある「誘導ページの不正使用」の例に当たる
以下、公式発表の原文から順に見ていきます。
ベニスアップデートの定義|2012年2月の公式発表と2つのローカル改善項目
コードネーム「Venice」が付いた項目の原文
2012年当時、Googleは検索品質の改善を月ごとに一覧で公開しており、2012年2月27日の回は40件と過去最多でした。Inside Searchブログの該当投稿にある1項目が次の記述です。
Improvements to ranking for local search results. [launch codename “Venice”]
This improvement improves the triggering of Local Universal results by relying more on the ranking of our main search results as a signal.
Local Universal resultsは、通常の検索結果の中に差し込まれる地図と店舗一覧の枠のことです。つまりVeniceの公式な説明は「その枠を表示するかどうかを、通常の検索結果でのランキングを手がかりに決めるようにした」というもので、自然検索の順位そのものを地域ごとに組み替えたとは書かれていません。
コードネームのない「Improved local results」との区別
同じ投稿の後半には、コードネームの付いていない次の項目があります。
Improved local results.
We launched a new system to find results from a user’s city more reliably. Now we’re better able to detect when both queries and documents are local to the user.
| 項目名 | コードネーム | 変わった対象 |
|---|---|---|
| Improvements to ranking for local search results | Venice | 地図と店舗一覧の枠の表示判定 |
| Improved local results | なし | 利用者の都市の結果の見つけやすさ |
「検索語句と文書の両方が利用者の地域に関係するかを判定する」という、地域名なしの検索で近くのページが出る仕組みに直接つながる説明は、コードネームのない後者のほうです。解説記事を読むときや社内で説明するときは、「Veniceという名前は前者に付いたもの」と押さえておくと、原文を確認されたときに食い違いません。
地域で結果が変わる検索語句|地域名なしでも近くの結果が出る条件
Google検索ヘルプは、現在地に強く依存する検索の例として「コーヒー ショップ」「バス停」「ATM」を挙げ、位置情報の利用許可をオンにすると役に立つ結果が得られると説明しています。共通点は、検索した人がその場所へ行く、または近くで用を済ませる前提があることです。
| 検索語句の例 | 地域別に確認する優先度 | 理由 |
|---|---|---|
| 歯医者/美容院/居酒屋 | 高 | 来店が前提の業種 |
| ATM/バス停/駐車場 | 高 | その場で使う施設 |
| リフォーム/不動産 査定 | 中 | 対応エリアが限られる |
| 確定申告 やり方 | 低 | 全国共通の手続きが中心 |
| ベニスアップデートとは | 低 | 用語の意味を調べる検索 |
優先度は、Google検索ヘルプが現在地に強く依存する例として挙げる検索との近さから付けた目安です。全国向けの情報記事や全国配送のECサイトは地域別の確認を後回しにしてよい型ですが、地域差が無いと決めつけず、主要な語句だけは2〜3地点で結果を見比べておきます。店舗の集客を検索に頼っている事業では、本社のある東京では上位でも大阪では表示されないという差が起こりえます。自社の主要キーワードをこの2つの型に先に仕分けておくと、順位の上下を誤読せずに済みます。
Googleが現在地を推定する4つの情報源
地域で結果が変わる度合いは、Googleが検索した人の位置をどう推定するかで決まります。Googleの位置情報に関するポリシーと検索ヘルプが挙げる情報源は次の4つです。
- デバイスの位置情報:スマートフォンやパソコンが把握する正確な現在地。ブラウザやOSで利用許可を与えた場合に使われる
- IPアドレス:インターネット接続に割り当てられる番号から推定する大まかな地域
- 過去の検索アクティビティ:ログアウト中は「検索のカスタマイズ」をオフにすると現在地の推定に使われなくなる。ログイン中の履歴はアカウントの設定で管理する
- 保存した自宅や職場の住所:Googleアカウントに登録した住所で、付近の検索結果の表示に使われる
どの情報源で推定されたかは、検索結果ページの下部に表示されます。「自分の画面では上位なのに、お客様からは見つからないと言われる」という食い違いは、まずここを見て原因を切り分けます。
ピジョンアップデートとの違い|2014年の変更と名前の出どころ
ベニスと並べて語られるピジョンアップデート(Pigeon Update)は、2014年7月24日にSearch Engine Landが報じたローカル検索の変更です。同記事は、ローカル検索の結果が従来のウェブ検索のランキングシグナルとより密接に結びつき、変化はGoogleマップとウェブ検索の両方に表れると伝え、「We’ve named this update the Pigeon update.」と、名前は同サイトが付けたものだと明記しています。
| 名称 | 時期 | 名前の出どころ | 説明の一次情報 |
|---|---|---|---|
| Venice | 2012年2月 | Google公式ブログのコードネーム | Inside Searchブログ |
| Pigeon | 2014年7月 | Search Engine Landの命名 | 同サイトの報道記事 |
どちらの名前も、Google検索セントラルの「Google 検索ランキング システムのご紹介」には載っていません。廃止済みシステムの一覧にも両者の記載はありません。今のローカル検索の順位について、Googleが公式に説明している場所はGoogleビジネスプロフィールのヘルプです。
市区町村ごとの順位を確認する方法|Search Consoleでは見えない差
Search Consoleの地域別集計の範囲
Search Consoleの検索パフォーマンスレポートで選べるディメンションは、検索キーワード、ページ、国、デバイス、検索での見え方、日付の6つです。市区町村の軸はありません。ヘルプにも、同じ検索語句で自分のサイトが見えないことがあるのは、検索結果が検索した時間、場所、デバイス、直近の履歴によって変わるためだと書かれています。
Search Consoleの平均掲載順位は、表示回数が記録された検索だけの平均です。表示されなかった地域の「圏外」は計算に入らないため、平均掲載順位が10位でも、店舗から離れた地域ではそもそも表示されていない可能性があります。地域で結果が変わる語句は、平均掲載順位だけで良し悪しを判断しないでください。
地名入り検索とChrome DevToolsの位置情報上書き
いちばん手軽なのは、Google検索ヘルプが案内しているとおり「渋谷のコーヒーショップ」のように地名を入れて検索する方法です。ただし地名を入れた検索と、その地点で地名なしに検索した結果が同じになるとは限りません。地名なしの順位を特定の地点で見たいときは、Chromeの開発者ツールで位置情報を上書きします。
- Chromeでシークレットウィンドウを開き、開発者ツールを起動する
- コマンドメニューで「sensors」と入力し、Sensorsパネルを表示する
- Geolocationの一覧から Tokyo などのプリセットを選ぶか、Custom location で緯度と経度を指定する
- google.comへの位置情報の利用を許可して検索し、結果ページ下部で推定元と地名が指定地点に対応するかを確認する。違う場合は現在地を更新して再検索する
上書きされるのはブラウザがWebサイトへ渡す位置情報だけで、IPアドレスは変わりません。Googleに位置情報の利用を許可していなければ、IPアドレスや過去のアクティビティなど別の情報源から推定されるため、手順4を省くと、上書きしたつもりで自分の地域の結果を見続けることになります。
ベニスアップデート後に店舗サイトが取るべき対応と失敗パターン
ローカル検索の3要因と事業者が動かせる範囲
Googleビジネスプロフィールのヘルプは「ローカル検索結果は、主に関連性、距離、知名度に基づいて表示されます。」と説明しています。関連性はプロフィールが検索内容とどれだけ合っているか、距離は検索した人から店舗までの距離、知名度はそのビジネスがどれだけ広く知られているかです。同じページには「Google では、ランキングを上げるためのリクエストや金銭の受け取りには一切応じておりません。」ともあります。
距離は店舗の場所で決まるため、事業者が手を入れられるのは関連性と知名度です。プロフィールの登録から運用までの手順はMEO対策の基本と費用相場で、地図枠と自然検索のどちらに工数を割くかはMEO対策とSEO対策の違いで扱っています。
店舗ページに書く所在地情報とLocalBusiness構造化データ
サイト側では、店舗ごとのページに店名、住所、電話番号、営業時間を、Googleビジネスプロフィールと同じ表記で載せます。検索エンジンに機械的に伝えるには、Google検索セントラルが案内するLocalBusinessの構造化データを使います。必須プロパティは name と address の2つで、geo、openingHoursSpecification、telephone、url などが推奨です。
<script type="application/ld+json">
{
"@context": "https://schema.org",
"@type": "Dentist",
"name": "サンプル歯科医院",
"address": {
"@type": "PostalAddress",
"streetAddress": "サンプル町1-2-3",
"addressLocality": "新宿区",
"addressRegion": "東京都",
"postalCode": "123-4567",
"addressCountry": "JP"
},
"telephone": "+81-3-1234-5678",
"url": "https://www.example.com/shinjuku/",
"geo": {
"@type": "GeoCoordinates",
"latitude": 35.69384,
"longitude": 139.70355
},
"openingHoursSpecification": [
{
"@type": "OpeningHoursSpecification",
"dayOfWeek": ["Monday", "Tuesday", "Wednesday", "Thursday", "Friday"],
"opens": "09:00",
"closes": "18:00"
}
]
}
</script>
コードは架空の店舗の例です。公開時は店名、住所、電話番号、URL、座標、営業時間を実店舗の情報に置き換え、ページ本文やプロフィールと内容をそろえます。緯度と経度は、Googleの仕様が求める小数点以下5桁以上の精度で実店舗の位置を指定します。住所の番地や電話番号に誤りがないかを確認し、移転や番号変更があった場合は各掲載先を更新します。
地名だけを差し替えた地域ページの誘導ページリスク
地域化への対策としてよく見かけるのが、「新宿の外壁塗装」「渋谷の外壁塗装」のように地名だけを入れ替えた同じ内容のページを大量に作る方法です。これはやめるべきです。Googleのスパムポリシーは「誘導ページの不正使用」の例として、「特定の地域や都市を対象としたドメイン名やページを複数持ち、それらのドメインから 1 つのページにユーザーを誘導する」ことを挙げています。
地域ページを作ってよいのは、その地域に実店舗がある、施工事例や料金、所要時間が地域ごとに違うなど、ページごとに固有の情報を書ける場合です。書ける内容が地名しかないなら、対応エリアを1ページにまとめて一覧にするほうが安全です。
Googleビジネスプロフィールで停止や削除につながる行為
プロフィール側にも、地域名で順位を取ろうとして違反になる行為があります。ビジネス名に実際の名称にない地域名やサービス名を足すことについて、ガイドラインは「ビジネス名に不要な情報を含めることはできません。含めると、ビジネス プロフィールが停止される場合があります。」としています。割引や無料サービスと引き換えにクチコミを依頼することも「虚偽のエンゲージメントと見なされ、固く禁じられています。」と明記されています。
クチコミを増やしたい場合は、来店後の案内カードや予約完了メールで投稿先を知らせるなど、見返りを伴わない依頼に限ります。依頼文面と低評価への返信の組み立てはMEO対策の口コミ管理と返信にまとめています。
よくある質問
ベニスアップデートとヴェニスアップデートは違うものですか?
同じものです。英語の Venice を日本語でどう書くかの違いで、「ベニス」「ヴェニス」の両方の表記が使われています。どちらも、Googleが2012年2月27日の公式ブログ「Search quality highlights: 40 changes for February」で公開したローカル検索の改善を指します。検索でも両方の表記で調べられていますが、指している内容に差はありません。
ベニスアップデートとピジョンアップデートの違いは?
Veniceは2012年2月にGoogle自身が公式ブログでコードネームとして示した改善で、地図と店舗一覧の枠を出すかどうかの判定に通常の検索結果の順位を使うというものです。Pigeonは2014年7月にSearch Engine Landが報じた変更に同サイトが付けた名前で、ローカル検索の結果が従来のウェブ検索のランキングシグナルとより強く結びついたと伝えられました。現在のGoogleのランキングシステムガイドには、どちらの名前も載っていません。
全国向けのサイトもベニスアップデートの影響を受けますか?
影響が大きいのは近くの場所やサービスを探す検索語句で、実店舗や対応エリアのある業種が中心です。全国向けの情報記事や商品ページは地域別に確認する優先度を下げてよいものの、地域差が無いと決めつけず、主要な語句だけは複数の地点で結果を見比べておきます。自社サイトに両方の型のキーワードが混ざっている場合は、地域で変わる語句だけを地名入り検索や位置情報の上書きで確認し、残りもSearch Consoleの表示回数、クリック数、平均掲載順位を併せて追います。
ベニスアップデートとMEO対策の関係は?
公式発表でVeniceと名付けられたのは、地図と店舗一覧の枠を出す判定の改善です。利用者の都市に合う結果を見つける改善は、同じ2012年2月の投稿の別項目です。MEO対策は、その枠やGoogleマップでの表示を狙ってGoogleビジネスプロフィールを整える施策を指します。店舗ビジネスでは、地図枠を狙うプロフィールの整備と、自然検索を狙う店舗ページの整備を並行して進めるのが基本です。どちらに先に工数を割くかは、商圏の広さと業種で決まります。
アルゴリズムアップデートとは何ですか?
Googleが検索結果の順位を決める仕組みに加える変更のことです。2012年当時は、ベニスを含む数十件の改善を月ごとの一覧で公開していました。現在は、コアアップデートやスパムアップデートのような影響の大きい変更を、Google検索セントラルの「ランキングの更新情報」で告知しています。個々のシステムの役割と順位を決める要因の全体像は検索アルゴリズムの解説記事で整理しています。