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多変量解析とは?予測と要約で選ぶ手法一覧とビジネスでの使いどころ

多変量解析とは?予測と要約で選ぶ手法一覧とビジネスでの使いどころ

多変量解析は、売上・価格・広告費・顧客属性のように複数の変数を同時に扱い、変数どうしの関係を踏まえて「予測する」か「要約する」ための統計手法の総称です。重回帰分析や主成分分析は、その中の個別の手法にあたります。

この記事では、手法を目的変数の有無で2系統に分けて一覧にし、ビジネスの問いからどれを選ぶかを整理します。あわせて、論文でも起きている multivariate と multivariable の混同、標準化を忘れたときに主成分分析の結果がどう変わるかを実行結果で示し、Excel・R・Pythonでどこまでできるかをまとめます。

まとめ:多変量解析の選び方の要点

多変量解析の手法選びは、最初に「当てたい値(目的変数)があるか」で2つに分かれます。

  • 目的変数がある:重回帰分析、ロジスティック回帰分析、判別分析など。売上や解約の有無を予測し、どの要因が効いているかを見ます。
  • 目的変数がない:主成分分析、因子分析、クラスター分析、コレスポンデンス分析など。多数の項目を少数の軸に縮めたり、顧客をグループに分けたりします。
  • 目的変数がある場合は、その尺度(金額のような量か、買う・買わないのような区分か)で候補を絞り、データの分布や分析目的も確認して手法を選びます。
  • 「重回帰分析は多変量解析か」は、英語の用語では説明変数が複数の multivariable にあたり、目的変数が複数の multivariate とは区別されます。
  • 単位の違う変数を標準化せずに主成分分析に入れると、尺度の違いによって分散が突出した変数が主成分を支配することがあります。
  • Excelの分析ツールは重回帰分析に対応しますが、主成分分析・因子分析・クラスター分析の専用機能はありません。主成分分析や因子分析はR・Pythonか専用ソフトを使います。

以下、定義、手法一覧、選び方、ビジネスでの応用例、つまずきやすい点、ツールの順に説明します。

多変量解析とは|単変量解析・2変量解析との違い

統計ソフトMinitabの公式ヘルプは、多変量解析を「項目または被験者について複数の計測を行ったとき」にデータを分析する方法と説明し、用途として共分散構造を分析して次元を減らすこと、観測値をグループに割り当てること、カテゴリ変数の関係を調べることを挙げています。

扱う変数の数で並べると、違いがはっきりします。

区分 同時に見る変数 代表的な集計・手法 ビジネスでの問いの例
単変量解析 1つ 平均、中央値、ヒストグラム 客単価の分布はどうか
2変量解析 2つ 相関係数、クロス集計、単回帰 広告費と売上は連動するか
多変量解析 3つ以上 重回帰、主成分分析、クラスター分析 季節と価格を加味しても広告は効くか

2変量で見えた関係は、別の変数を加えると消えたり向きが変わったりします。広告を繁忙期に集中して出していれば、広告費と売上の相関には季節の影響が混ざります。季節を変数に加えると、その影響を調整した広告費と売上の関連を推定できます。ただし、未測定の交絡要因やモデルの誤指定があれば、広告の因果効果とは一致しません。多変量解析が必要になるのは、この「ほかの条件をそろえたうえでの関係」を知りたいときです。

ただし、現場の分析は単変量・2変量の集計から始めるのが基本です。分布の偏りや入力ミスを先に見つけておかないと、多変量の手法はそれらをそのまま結果に取り込みます。

多変量解析の種類|予測系と要約系の手法一覧

手法は、目的変数(外的基準)があるかどうかで2系統に分けると選びやすくなります。各手法の計算手順や結果の読み方は、表の下の説明文からリンクした個別記事で扱っています。

系統 手法 目的変数 できること
予測・要因 重回帰分析 量(売上・満足度点数) 複数要因から数値を予測
予測・要因 ロジスティック回帰分析 2値(購入の有無) 起きる確率を予測
予測・要因 判別分析 区分(優良・一般) どの群に属するか判定
予測・要因 コンジョイント分析 選好・評価 価格や機能の効き方を分解
要約・分類 主成分分析 なし 多数の項目を少数の軸に集約
要約・分類 因子分析 なし 回答の背後にある因子を推定
要約・分類 クラスター分析 なし 似た対象をグループ化
要約・分類 コレスポンデンス分析 なし クロス表の行と列を同じ図に配置
要約・分類 多次元尺度構成法 なし 類似度から位置関係を地図化

目的変数があるとき:予測と要因分析の手法

目的変数がある場合は、回帰分析や判別分析などから、予測対象と分析目的に合う手法を選びます。目的変数が金額や点数なら重回帰分析、購入した・しないのような2値ならロジスティック回帰分析、あらかじめ決まった群への振り分けなら判別分析です。回帰分析全体の考え方は回帰分析の解説にまとめています。

商品の属性(価格・容量・ブランド)の組み合わせを回答者に評価させ、各属性の効き方を分解するコンジョイント分析も、評価を目的変数に置く点でこの系統に入ります。潜在的な概念どうしの因果の経路を仮説として組み、まとめて検証したいときは共分散構造分析(SEM)を使います。

目的変数がないとき:要約と分類の手法

アンケートの設問が30項目ある、購買履歴の指標が数十ある、といった場面で「全体を少ない軸で見たい」なら主成分分析、「回答の背後にある共通の因子(価格重視・品質重視など)を取り出したい」なら因子分析です。主成分分析はデータの情報をできるだけ残して圧縮する計算、因子分析は観測値の背後に因子があるというモデルを置く計算で、目的が異なります。

顧客や店舗をグループに分けるのがクラスター分析で、階層的な方法ではデンドログラムを見てグループ数を決めます。ブランドとイメージ語のクロス表を1枚のマップにするならコレスポンデンス分析、「どれとどれが似ているか」の評価から位置関係を描くなら多次元尺度構成法(MDS)を使います。

数量化理論I類〜IV類との対応

日本の市場調査の報告書では、林知己夫が体系化した数量化理論の名前で手法が書かれていることがあります。数量化理論は、性別や職業のような質的な変数をそのまま扱えるように組み立てられた手法群で、欧米の手法とおおむね次のように対応します。

名称 目的変数 説明変数 近い手法
数量化I類 量 質 ダミー変数を使った重回帰分析
数量化II類 質 質 判別分析
数量化III類 なし 質 コレスポンデンス分析
数量化IV類 なし 類似度 多次元尺度構成法

報告書に「数量化III類で分析」とあれば、コレスポンデンス分析と同じ種類の図が出てくると考えて読めます。

多変量解析の選び方|問いとデータの尺度から決める手順

手法名から入ると迷います。次の順に、問いとデータの形を確認すると候補が1〜2個に絞れます。

  1. 当てたい値があるかを決める。あれば予測・要因系、なければ要約・分類系。
  2. 目的変数の尺度を確認する。金額や点数なら重回帰分析、2値ならロジスティック回帰分析、3群以上の区分なら判別分析や多項ロジスティック回帰。
  3. 説明変数に質的な変数(地域・性別など)が混ざるなら、ダミー変数に変換するか数量化I類・II類を使う。
  4. 要約・分類系なら、軸を作りたいのか(主成分・因子分析)、対象を分けたいのか(クラスター分析)、クロス表を図にしたいのか(コレスポンデンス分析)を決める。

尺度の区別は、名義尺度(性別・地域)、順序尺度(満足度の5段階)、間隔尺度(気温)、比率尺度(売上・購入回数)の4つです。5段階評価を等間隔の数値とみなすか、順序だけを使うかは、モデルの仮定と結果の解釈に関わるため、分析前に方針を決め、必要に応じて扱いを変えた結果も比較します。

多変量解析の組み合わせ|要約から分類・予測への接続

1つの手法で完結させず、前段で要約してから後段で分類・予測する流れが実務では多く使われます。

  • 因子分析からクラスター分析:価値観アンケートを因子に要約し、因子得点で顧客をセグメントに分ける。
  • 主成分分析から重回帰分析:互いに強く相関する説明変数を主成分にまとめ、多重共線性を避けてから回帰に入れる。ただし、寄与率の低い主成分にも予測に必要な情報があるため、残す主成分数は予測性能も見て決める。
  • クラスター分析から判別分析:分けたセグメントを判別式にし、新規顧客がどのセグメントに入るかを判定する。

前段の手法で作った軸やグループには解釈が入ります。予測性能を評価する場合は、先に学習用と評価用のデータを分け、標準化や主成分分析も学習用データだけで当てはめます。scikit-learnの公式文書も、StandardScalerやPCAを評価用データに適合させると情報漏洩が起きると説明しています。後段の結果を報告するときは、前段でどの変数をどうまとめたかも一緒に示さないと、第三者が検証できません。

多変量解析のビジネス応用例|部門別の問いと手法

ビジネスで使う場面は、部門ごとの定番の問いに置き換えると見つけやすくなります。下の表は、問いと手法、そろえておくべきデータの対応です。

部門 問い 手法 必要なデータ
マーケティング 顧客をどう分けるか 因子分析とクラスター分析 価値観・購買行動のアンケート
マーケティング ブランドの位置づけ コレスポンデンス分析 ブランドとイメージ語のクロス表
商品企画 価格と機能の優先度 コンジョイント分析 属性の組み合わせへの評価
営業・販促 売上を動かす要因 重回帰分析 店舗別の売上・立地・販促費
CRM 解約しそうな顧客 ロジスティック回帰分析 利用履歴と解約の有無
製造・品質 不良につながる工程条件 主成分分析と判別分析 工程センサー値と良否
人事 従業員満足の構造 因子分析 従業員サーベイの回答

どの行でも、先に決めるのは「分析結果を受けて何を変えるか」です。解約予測なら、確率の高い顧客に誰がどの施策を打つかまで決まっていないと、精度の良いモデルができても業務は変わりません。

なお、Webマーケティングで言う多変量テスト(LPの見出しと画像など複数要素を同時に出し分ける実験)は、ここで扱う統計手法の総称とは別物です。実験の設計と判定はA/Bテストの解説が扱う領域になります。

重回帰分析は多変量解析か|multivariateとmultivariableの混同

日本語の入門書やWeb記事では、重回帰分析を多変量解析の代表として紹介するのが一般的で、この記事の一覧も同じ扱いにしています。一方、英語の統計用語では2つの語が区別されます。

Hidalgo と Goodman が American Journal of Public Health(2013年、103巻1号、39-40頁)に書いた論説Multivariate or Multivariable Regression?は、multivariate analysis を「2つ以上の従属変数(目的変数)を持つモデル」、multivariable analysis を「複数の独立変数を持つモデル」と定義しています。目的変数が1つで説明変数が複数の重回帰分析は、この定義では multivariable です。

同じ論説は、同誌の2010年12月から2011年11月の論文で統計手法を multivariate と書いていた30本を1本ずつ確認しています。定義どおりの multivariate モデルは5本(17%)で、残り25本(83%)は multivariable の分析でした。最も多かったのはロジスティック回帰の21本(70%)です。

実務で問題になるのは、英語の論文や海外ツールの資料を読むときです。multivariate regression と書かれていれば、本来は売上と利益のように複数の目的変数を同時に予測するモデルを指します。単に説明変数が多い回帰のことだと読むと、手法を取り違えます。日本語で報告書を書く側は、「多変量解析(重回帰分析)」のように手法名を必ず併記しておくのが安全です。

標準化を忘れた主成分分析|実行結果で見る失敗パターン

要約系の手法では、単位の違う変数をそのまま入れると、尺度の違いが結果を左右することがあります。scikit-learn に付属するワインの成分データ(178件、13変数)で、標準化の有無だけを変えて主成分分析を実行しました。

from sklearn.datasets import load_wine
from sklearn.decomposition import PCA
from sklearn.preprocessing import StandardScaler

X, _ = load_wine(return_X_y=True, as_frame=True)
print(X.shape)
print(X.var().sort_values(ascending=False).head(3).round(1))

raw = PCA(n_components=2).fit(X)
std = PCA(n_components=2).fit(StandardScaler().fit_transform(X))

print("標準化なし:", raw.explained_variance_ratio_.round(3))
print("標準化あり:", std.explained_variance_ratio_.round(3))
top = abs(raw.components_[0]).argmax()
print("標準化なしの第1主成分で最大の重み:", X.columns[top], round(raw.components_[0][top], 3))

scikit-learn 1.6.1 での出力は次のとおりです。

(178, 13)
proline              99166.7
magnesium              204.0
alcalinity_of_ash       11.2
dtype: float64
標準化なし: [0.998 0.002]
標準化あり: [0.362 0.192]
標準化なしの第1主成分で最大の重み: proline 1.0

標準化しない場合、第1主成分は元の尺度で計算した総分散の99.8%を説明します。この値は、各変数を同等に扱った情報量や予測精度を表すものではありません。しかし中身はプロリンという1成分の重みが1.0で、分散が約9.9万と他の変数より桁違いに大きいために、その変数を言い換えただけの軸になっています。標準化すると第1主成分は36.2%、第2主成分は19.2%で、複数の成分を組み合わせた軸が得られます。

売上(円)と来店回数(回)と満足度(5段階)を並べる顧客データでも同じことが起きます。単位の違う変数を混ぜるときは、標準化するか相関行列にもとづく分析を選ぶ、と覚えておけば避けられます。寄与率が極端に高い場合は、尺度の違いによる支配なのか、変数間の強い相関を反映した結果なのかを、分散と主成分の重みから確認します。

多変量解析のツール|Excel・R・Pythonでできる範囲

ツールの選び方は、使いたい手法がそのツールに標準で入っているかで決まります。

ツール 回帰 主成分 因子 クラスター 費用
Excel 分析ツール ○ × × × Excelに付属
R(stats) lm, glm prcomp factanal kmeans, hclust 無料
Python(scikit-learn) LinearRegression PCA FactorAnalysis KMeans 無料

Excelの分析ツール(アドイン)でMicrosoftが案内している機能は、分散分析、相関、共分散、基本統計量、回帰分析、t検定など15種類で、主成分分析・因子分析・クラスター分析は含まれません。重回帰分析まではExcelで完結しますが、要約・分類系の手法を使う段階でRかPythonへ移ることになります。

Rは標準で読み込まれる stats パッケージだけで、回帰(lm、glm)、主成分分析(prcomp)、因子分析(factanal)、クラスター分析(kmeans、hclust)、多次元尺度構成法(cmdscale)までそろいます。Pythonでは scikit-learn に同等のクラスがあり、判別分析は LinearDiscriminantAnalysis で扱えます。

多変量解析の適用を見送る条件

多変量解析は、条件がそろわないと見た目だけ精密な誤った結論を出します。次の場面では、手法を足す前に問いかデータを見直す方が得策です。

  • 件数に対して変数が多すぎる:20件の店舗データに15個の説明変数と切片を入れた重回帰では、完全な多重共線性がなければ残差の自由度は4しかなく、推定や予測が不安定になるおそれがあります。変数を減らすか件数を増やします。
  • 因果を断定したい:観察データの回帰係数は、入れていない要因の影響を含みます。施策の効果を確かめたいなら、比較実験や因果推論の手法を検討します。
  • 2変量の集計で答えが出る:地域別の売上差を知りたいだけなら、クロス集計と平均の比較で足ります。結果を受け取る側が読めない手法を使う理由はありません。
  • 外れ値や入力ミスを確認していない:平均や分散を使う手法は、極端な値1件で軸の向きが変わります。散布図と基本統計量の確認を先に済ませます。

よくある質問

多変量解析と重回帰分析の違いは何ですか?

多変量解析は複数の変数を同時に扱う手法の総称で、重回帰分析はその中の1手法です。重回帰分析は1つの目的変数を複数の説明変数で予測します。英語では、目的変数が複数のものを multivariate、説明変数が複数のものを multivariable と区別する定義があり、重回帰分析は後者にあたります。

多変量解析の具体例にはどのようなものがありますか?

店舗の立地・販促費・競合数から売上を予測する重回帰分析、利用履歴から解約確率を出すロジスティック回帰分析、価値観アンケートで顧客を分けるクラスター分析、ブランドとイメージ語の関係を図にするコレスポンデンス分析などがあります。

多変量解析ができる無料ソフトはありますか?

RとPythonが代表的です。Rは標準の stats パッケージで重回帰分析・主成分分析・因子分析・クラスター分析を実行でき、Pythonは scikit-learn などのライブラリで同じ種類の分析ができます。コードを書かずに使いたい場合は、Excel上で動くフリーの統計分析プログラムHAD(清水裕士)、無償の統計ソフトJASPやjamoviも選択肢です。JASPの公式機能一覧には主成分分析と探索的・確認的因子分析が掲載されています。

Excelで多変量解析はできますか?

Excelの分析ツールには回帰分析が含まれるため、重回帰分析はできます。主成分分析・因子分析・クラスター分析は標準の分析ツールに無いため、RやPythonなど別のツールを使います。

LPOの多変量テストと多変量解析は同じものですか?

別物です。多変量テストはLPの複数要素を同時に出し分けて成果を比べる実験の方式で、多変量解析は集めたデータを分析する統計手法の総称です。LP改善での使いどころはLPOの解説で扱っています。

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