IVR(自動音声応答)の費用は、初期費用と月額基本料だけを比べても見積もりの実態に届きません。クラウドIVRの多くは初期費用0円・月額3千円台から始められますが、請求額の大半を占めるのは、着信の通話料と、担当者の電話へつないだときの転送料です。この記事では、fondesk IVRやIVRyなどの公式料金をもとに費用を5項目に分け、月300件と月3,000件の窓口で3年総額を試算しました。あわせて、Amazon ConnectやTwilioで自社構築する場合の料金の組み立て方と、費用面で自社構築が見合う条件を示します。
まとめ:IVRの費用は月額基本料より転送料と通話分数の積み上げで3年総額が決まる
IVRの請求は、席数ではなく「着信件数×通話分数」で増えます。とくに効くのは転送料です。fondesk IVRの公式料金では着信が1分3円なのに対し、固定電話への転送は1分13円、携帯電話への転送は1分28円で、転送した通話には着信と転送の両方の料金がかかります。月300件・7割転送の窓口では、月額基本料2,980円に対して従量料金が約1.1万円になり、3年総額は約50万円です。
自社構築は、従量単価の差で開発費を回収できるかで判断します。Twilioの公表単価で同じ条件を計算すると、SaaSとの差は月300件で3年約17万円、月3,000件でも約99万円にとどまります。費用だけを理由に自社構築を選ぶ場面は少なく、予約や会員データの照会、音声認識の組み込みといった機能の要件があるときに開発へ回すのが筋です。
IVRの費用を構成する5項目:初期費用・月額・着信通話料・転送料・オプション
IVRの見積もりに出てくる項目は、製品が違っても5つに収まります。金額の大きい順に並べると、転送料、着信通話料、月額基本料、オプション、初期費用です。
初期費用と月額基本料の実額:クラウドIVRは初期0円・月3千円台から始まる
中小規模の窓口向けのクラウドIVRは、初期費用を取らない製品が中心です。2026年10月時点の公式料金(いずれも税抜)を並べると次のとおりです。
| 製品・プラン | 初期費用 | 月額基本料 | 転送 |
|---|---|---|---|
| fondesk IVR | なし | 2,980円(番号付き) | 可(従量) |
| IVRy フリー | なし | 0円(30着電まで) | 不可 |
| IVRy スターター | なし | 3,980円〜 | 不可 |
| IVRy スタンダード | なし | 6,480円〜 | 可 |
| IVRy アドバンス | なし | 10,480円〜 | 可 |
出典はfondesk IVRの料金ページとIVRyの料金ページです。IVRyはスターターまで電話の発信・転送ができず、担当者へつなぐ使い方ならスタンダード以上が前提になります。またIVRyは基本料のほかに電話番号維持費と従量利用料金が別にかかると明記しているため、比較するときは基本料だけでなく従量の単価表まで取り寄せてください。
着信通話料と転送料の単価差:着信3円/分に対し固定電話への転送は13円/分
fondesk IVRの従量単価は、着信通話が1分3円、固定電話への転送が1分13円、携帯電話への転送が1分28円です。転送の単価は着信の4倍から9倍あり、担当者の携帯電話へ流す設計にすると単価が一気に上がります。
この差は、通話の経路から生まれます。着信はIVRの番号に電話がかかってくるだけですが、転送はIVRの側から担当者の電話へ新しく発信し、2本の通話をつなぎ続けます。発信側の料金がIVR事業者の負担になるため、転送先が携帯電話か固定電話かで単価が変わるのです。
録音・AI応答・SMSのオプション単価と、下位プランで使えない機能
オプションは使った分だけ従量でかかるものが多く、fondesk IVRでは録音が1分3円、ショートメッセージが1通13円、AIオペレーターとの通話が1分22円です。AIが用件を聞き取る通話は、プッシュ操作で振り分ける着信の約7倍の単価になります。
全通話を録音すると、着信料と同じ分数だけ録音料が加わり、着信関連の従量料金はほぼ2倍です。録音が必要なのが転送後の会話だけなら、その区間に限って録音する設定にできるかを確認してください。IVRyのように、CSVの書き出しや分析画面が月額の追加オプション(CSVエクスポート月1,000円、ダッシュボード月10,000円)になっている製品もあります。
IVRの費用が増える仕組み:席数ではなく着信件数と通話分数で請求額が決まる
コールセンター向けのCTIは席ごとの月額で費用が決まりますが、IVRは席を持ちません。請求は通話の件数と長さに比例するため、窓口の設計が費用に直結します。席数で課金するCTIとの違いはCTIの費用:初期・月額・通話料の内訳と3年総額の試算で扱っています。
転送した通話は着信と転送の両方に課金される:1件4分で約51円になる計算
転送した通話では、かけてきた相手とIVRの間の着信が、担当者と話している間も続きます。そのため1件の料金は、着信の全分数と転送の分数の合計です。IVRで1分案内し、固定電話へ転送して3分話した場合、fondesk IVRの単価では次のようになります。
- 着信通話料:4分×3円=12円
- 転送料(固定電話):3分×13円=39円
- 合計:51円(転送先が携帯電話なら12円+3分×28円=96円)
転送せずにIVRだけで用件が終わる通話は、1分なら3円です。同じ1件でも、転送するかどうかで17倍の差がつきます。なお、着信料が転送中も続くかどうかは製品の課金方式によるため、契約前に「転送中の着信側の分数も課金対象か」を確認しておくと、見積もりのずれを防げます。
フリーダイヤルで受けると着信単価は市内番号の約18倍に上がる
番号の種類も単価を動かします。Twilioの日本向け音声料金では、市内番号の着信が1分0.0100米ドルに対し、トールフリー番号の着信は1分0.1854米ドルで、約18倍です。番号の月額も、国内番号の4.75米ドルに対してトールフリー番号は25米ドルかかります。
フリーダイヤルは通話料を受け手が払う仕組みのため、IVRの案内が長いほど受け手の負担が増えます。顧客に通話料を負担させない方針の窓口でフリーダイヤルを使うなら、着信単価が高い前提で案内の長さとメニューの段数を設計してください。電話番号そのものの選び方はクラウドPBXとは?仕組み・料金相場と従来PBXとの違いで整理しています。
案内の秒数を削っても下がる額は小さく、効くのは転送先と転送率の設計
案内の冒頭を20秒短くすると、月300件の窓口では着信の分数が月100分減ります。fondesk IVRの単価なら月300円です。応答品質のためには短くすべきですが、費用の削減幅としては小さい部類に入ります。
費用に効くのは転送のほうです。転送率を7割から5割に下げると、月300件・転送後3分の条件で転送分が月180分減り、転送料と着信料を合わせて月約2,900円下がります。営業時間や受付状況のようにIVRだけで答えられる用件を切り出す、転送先を携帯電話から固定電話に替える、という2つの手が請求額をもっとも大きく動かします。IVRだけで答えられる用件の見分け方はIVRとは?自動音声応答の仕組み・種類と構築形態の選び方で解説しました。
IVRの3年総額を試算する:月300件と月3,000件でSaaSと自社構築を比べる
ここでは、公表されている単価だけで3年総額を計算し、SaaSと自社構築の差がどの規模でどれだけ開くかを確かめます。
試算の前提条件:IVR滞在1分・7割を固定電話へ転送・転送後の通話3分
試算の条件は次のとおりです。
- 着信件数:月300件(小規模の代表番号)と月3,000件(部署単位の受付窓口)の2通り
- IVRでの案内と入力:1件あたり1分
- 転送:着信の7割を固定電話へ転送し、転送後の会話は3分
- SaaS:fondesk IVRの税抜単価(基本料2,980円・着信3円/分・固定転送13円/分)
- 自社構築:Twilioの日本向け単価(国内番号4.75米ドル/月・着信0.0100米ドル/分・国内発信0.0746米ドル/分)、1米ドル=150円で換算
録音、SMS、AI応答は含めていません。自社構築の側は通話の基盤料金だけで、開発費と保守費は別に考えます。
月300件の窓口:SaaSは3年約50万円、自社構築との差は約17万円
月300件のうち210件を転送すると、着信の分数は930分(300件×1分+210件×3分)、転送の分数は630分です。
| 項目 | SaaS(fondesk IVR) | 自社構築(Twilio) |
|---|---|---|
| 基本料・番号 | 2,980円 | 約713円 |
| 着信(930分) | 2,790円 | 約1,395円 |
| 転送・発信(630分) | 8,190円 | 約7,050円 |
| 月額合計 | 13,960円 | 約9,160円 |
| 3年総額 | 502,560円 | 約33万円 |
3年の差は約17万円です。自社構築の側はここに開発費と保守費が加わるため、この規模で費用を理由に自社構築を選ぶ余地はありません。SaaSの請求のうち基本料は約2割で、残りの8割が通話の従量です。
月3,000件の窓口:従量単価の差は3年で約99万円、開発費を賄える額か
件数を10倍にすると、SaaSは月112,780円で3年約406万円、Twilioでの自社構築は月約8.5万円で3年約307万円になります。差は約99万円に広がりますが、IVRのフロー設計と電話番号の設定、転送先の切り替え、試験までを外注すれば、この額は開発費の中で消える水準です。
fondesk IVRは少人数の事務所を想定した料金設計で、月3,000件の規模では、上位の製品や席数課金のコールセンターシステムも見積もりに入れてください。製品を同時着信数やCRM連携などの5つの軸で比べる方法はIVR比較の5軸:同時着信数・シナリオ編集・CRM連携・音声認識・提供形態で選ぶで解説しています。コールセンターシステム全体のどこからIVRを入れるかはコールセンターシステムとは?ACD・IVR・CTIの役割分担と導入順序で整理しています。試算から言えるのは、従量単価の差だけで開発費を回収できるのは、月数千件を大きく超える窓口に限られるという点です。
Amazon ConnectやTwilioで自社構築する際の料金の組み立て方と開発費の範囲
自社構築の費用は、通話の基盤料金と開発費の2層です。基盤料金は公表単価で計算でき、開発費は開発する範囲で決まります。
Amazon Connectは音声1分0.038米ドルに電話通信料が加わる二層の料金
Amazon Connectの料金ページでは、音声は1分0.038米ドルと示され、標準の電話通信料は別にかかると注記されています。料金は地域や通信の種類、事業者によって異なる場合があるとも書かれており、日本の電話番号と通話の単価は見積もり時に個別に確認が要ります。
Amazon Connectの特徴は、オペレーターも同じ基盤の上で電話を受けられる点です。IVRから担当者へつなぐときに外部の電話へ転送せず、Amazon Connectの待ち行列へ流せば、転送料の代わりに音声の分数だけがかかります。月3,000件・1件4分なら12,000分で、音声の利用料は456米ドルです。転送料が請求の大半を占めるSaaSとは、費用の構造が入れ替わります。
Twilioで組む場合の番号月額と発着信単価:国内番号は月4.75米ドル
Twilioの日本向け料金は、番号の月額と1分あたりの発着信単価の組み合わせです。国内番号は月4.75米ドル、ローカル0ABJ番号は月20米ドル、着信は市内番号で1分0.0100米ドル、国内への発信は1分0.0746米ドル、携帯電話への発信は1分0.1850米ドルです。
担当者の携帯電話へ転送する設計にすると、発信単価が固定電話向けの約2.5倍になる点は、SaaSの転送料と同じ構図です。Twilioで音声をAIへ渡す構成と、日本向け料金の扱いはTwilio APIで音声AIを動かす4ルートで比較しています。
開発費が発生する作業範囲:フロー設計・社内データ照会・試験と保守
自社構築の開発費は、IVRに何をさせるかで決まります。見積もりに入る作業は次のとおりです。
- フロー設計:案内文、入力の待ち時間、無入力と誤入力のときの行き先を決める
- 電話番号と転送先の設定:番号の取得、営業時間外の切り替え、転送先の登録
- 社内データとの照会:会員番号や受付番号から予約や配送状況を引くAPI連携
- 音声認識の組み込み:日付や氏名を発話で受け付ける場合の認識と確認の流れ
- 試験と保守:全分岐の通話試験、案内の変更、通信料の監視
1と2だけならSaaSの管理画面で済む範囲で、開発費を払う理由になりません。3と4が入った時点で、IVRは電話の設定ではなくシステム開発になります。社内データと連携するIVRや音声認識の組み込みは、AI音声認識システム開発で要件整理から相談を受けています。
IVRの費用対効果で導入形態を決める:SaaSで済ませる条件と開発に回す条件
試算を踏まえて、判断を言い切ります。IVRの導入形態は、費用の安さではなく、IVRが社内のデータを参照する必要があるかで決めてください。
SaaSで済ませる条件:月数千件までで分岐が固定メニューだけの窓口
分岐の条件が「1を押したら営業、2なら修理」のような固定メニューだけで、着信が月数千件までなら、クラウドIVRのSaaSを選びます。月300件の試算では3年約50万円で、自社構築との差は約17万円しかありません。案内文の変更も管理画面で済み、開発費も保守費もかかりません。
SaaSの中で費用を抑えるなら、転送先は固定電話にまとめ、IVRだけで答えられる用件を増やして転送率を下げることです。基本料の安さで製品を選ぶより、転送と録音の単価を比べたほうが3年総額の差は大きく出ます。
自社構築に回す条件:予約や会員データの照会と音声認識が要件にある窓口
受付番号から配送状況を読み上げる、診察券番号で予約を変える、発話を聞き取って用件を判定する、といった要件があるなら、Amazon ConnectやTwilioを土台にした自社構築を選びます。この場合の開発費は、通話料の節約で回収する性格のものではありません。オペレーターが応対していた照会をIVRで完結させ、人件費を減らすことで回収します。
回収の見込みは、IVRで完結できる件数×1件あたりの応対時間×人件費の単価で見積もってください。照会の件数が月数十件しかないなら、開発費の回収に何年もかかります。音声認識をどこまで任せるかの判断材料はボイスボットとは?仕組み・IVRとの違い・導入判断の基準にまとめました。
見送る場面:用件が1種類で転送率がほぼ10割になる窓口の失敗
用件が1種類しかない窓口にIVRを入れると、ほぼすべての通話が転送され、着信と転送の両方の料金を毎回払うことになります。月300件・全件転送なら、fondesk IVRの単価で基本料込み月18,280円、3年で約66万円を、案内を1分聞かせるためだけに払う計算です。この場合はIVRを入れず、PBXのグループ着信で受けてください。
もう1つの失敗は、夜間や休日の案内のためだけにIVRを契約し、平日も全通話をIVR経由にしてしまう設計です。営業時間内は直接担当者の電話を鳴らし、時間外だけIVRへ切り替えれば、転送料は時間外の折り返し予約分だけに収まります。
よくある質問
IVRの費用について検索で多く調べられている疑問を5つ取り上げ、判断の基準まで含めて答えます。
IVRの費用相場はいくらくらいですか?
中小規模の窓口向けのクラウドIVRは、初期費用0円、月額基本料3千円から1万円程度が公式料金の水準です。ただし請求の大半は従量料金で、fondesk IVRの単価で月300件・7割転送の窓口を計算すると、基本料2,980円に対して従量が約1.1万円、月額合計は約1.4万円になります。相場は基本料ではなく、自社の着信件数と転送率を当てはめた月額で比べてください。
無料で使えるIVRはありますか?
IVRyのフリープランは月30着電まで基本料0円で使えます。ただし電話の発信と転送ができないため、案内と用件の受け付けまでで終わる使い方に限られます。担当者へつなぐ運用にするなら転送が使える有料プランが必要で、IVRyではスタンダード(月6,480円〜・税抜)以上が対象です。電話番号維持費と従量料金が別にかかる点も確認してください。
IVRの通話料を下げる方法はありますか?
効果が大きい順に、転送率を下げること、転送先を携帯電話から固定電話に替えること、フリーダイヤルを使う場合は案内を短くすることです。fondesk IVRでは転送の単価が固定電話13円/分、携帯電話28円/分で、着信の3円/分より大きいため、IVRだけで答えられる用件を増やすと請求額が直接下がります。案内の短縮は、通常の番号では下がる額が小さめです。
オンプレミス型のIVRはクラウド型より安くなりますか?
着信件数が少ない窓口では、オンプレミス型が安くなることはほぼありません。機器の購入と設置、保守契約が固定費として先にかかり、クラウド型なら初期費用0円で始められるためです。既に使っているPBXにIVRの機能が付いている場合は追加費用が小さく済みますが、案内を変えるたびに保守業者の作業費がかかる点を3年の費用に入れて比べてください。
IVRとCTIをまとめて入れる場合の費用はどう考えますか?
IVRは着信件数と通話分数、CTIは席数で費用が決まるため、別々に計算してから合計します。コールセンター向けの製品ではIVRがCTIの機能の一部として含まれ、席の月額に入っている場合もあります。その場合は、IVRを単独のSaaSで契約するより安くなることがあるため、CTIの見積もりにIVRが含まれるかを先に確かめてください。
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