Microsoft 365 Copilot Chatは、Microsoft 365 Business StandardやE3などの対象プランを契約していれば、追加料金なしで社員に配れるAIチャットです。ただし無料で届く社内データは、本人が手渡したファイルとOutlookの中の情報までが参照範囲です。本記事では、無料版と有償版のMicrosoft Copilotで何が変わるのか、ライセンスなしでエージェントを使ったときにどこから課金が始まるのかを、Microsoft Learnと公式価格ページの記載(2026年10月2日時点)で整理します。あわせて、情シスが全社展開の前に管理センターで決めておく設定と、有償版へ切り替える判断条件まで示します。
まとめ:無料のCopilot Chatで足りる業務と有償版へ切り替える判断の結論
文章の下書き、Web調査の要約、手元のファイルの要約や翻訳が中心なら、無料のCopilot Chatで足ります。プロンプトと応答にはエンタープライズデータ保護が掛かり、基盤モデルの学習にも使われないため、個人契約の生成AIを業務で黙認している状態よりは統制が効きます。
有償版が必要になるのは、メール・会議・Teamsチャット・SharePointの文書を横断して答えさせたい場合と、WordやExcelの中で直接編集させたい場合です。この2つは無料版では届きません。
中間の選択肢として、ライセンスを買わずに社内データを参照するエージェントだけを従量課金で使う方法があります。利用者が限られ、使う業務も決まっているならこちらが安く収まります。全社展開の前に決めるべきは、ピン留めとアクセス制限の範囲、Web検索の可否、個人アカウントの締め出し、そしてエージェント課金の上限の4点です。
Microsoft 365 Copilot Chatの対象ライセンスと改称
Microsoft Copilot Chatへの改称と対象ライセンスを確認し、まず「誰が、どこで、何という名前の製品を使うのか」をそろえます。社内で問い合わせが割れる原因の多くは、名称とラベルの混同にあります。
追加料金なしで使える対象プランとEntra IDでサインインする条件
Microsoft LearnのCopilot Chat管理ページによると、Copilot ChatはMicrosoft Entraの職場または学校アカウントでサインインし、対象のサブスクリプションを持つユーザーなら追加料金なしで利用できます。対象はMicrosoft 365 E7・E5・E3、F3・F1、Business Premium・Standard・Basic、Office 365 E5・E3・E1、Teams Enterprise・Teams Essentialsなどで、「Teamsなし」版も含まれます。
条件の要は「職場アカウントでのサインイン」です。同じCopilotアプリでも、個人のMicrosoftアカウントで入ると個人向けのMicrosoft Copilotとして動き、企業向けの保護は掛かりません。社員に配る手順書では、サインインするアカウントの確認を最初に置いてください。
改称に伴う主要URLのcopilot.cloud.microsoftへの移行と許可リスト
2026年9月更新の同じ管理ページには、Microsoft 365 CopilotがMicrosoft Copilotへ、Microsoft 365 Copilot ChatがMicrosoft Copilot Chatへ改称されたと明記されています。あわせて、更新されたCopilotアプリの主要URLがcopilot.cloud.microsoftになる旨が記載されています。
検索ではいまも旧名の「Microsoft 365 Copilot Chat」が使われており、移行期間中は製品内の表記も新旧が混在します。実務で効いてくるのはURLの変更のほうです。プロキシやURLフィルタで許可リストを運用している組織は、*.cloud.microsoftを許可に加えていないと、ある日から社員がCopilotにつながらなくなります。
Copilot Chat(基本)とCopilot(プレミアム)のラベルで見分ける方法
社員が自分の環境で何が使えるのかは、アプリに出るラベルで判別できます。Copilot Chatの概要ページでは、ラベルの意味が次のように定義されています。
- Copilot Chat(基本):アドオンライセンスなし。Word・Excel・PowerPoint・OneNoteの中のCopilotチャットは使えない
- Microsoft 365 Copilot(基本):アドオンライセンスなし。ただしそれらのアプリでも標準アクセスでCopilotを使える
- Microsoft 365 Copilot(Premium/Pro):アドオンライセンスあり。アプリ内の完全なエクスペリエンスと優先アクセス
どのラベルになるかはライセンスだけでなくテナント構成でも変わります。ヘルプデスクには「ラベルの画面写真を添えて問い合わせる」という運用を決めておくと、切り分けが早くなります。
無料版と有償版の違い:社内データの参照範囲とアプリ統合の境界
無料版と有償版の差は、モデルの賢さではなく「どこまでの社内データを根拠にできるか」にほぼ集約されます。
Webと手渡しのファイルに限られる無料版の参照範囲と有償版との比較表
Microsoftの比較表を要約すると、次のとおりです。
| 機能 | Copilot Chat(無料) | Microsoft Copilot(有償) |
|---|---|---|
| Webベースのチャット・画像生成 | あり | あり |
| エンタープライズデータ保護 | あり | あり |
| ファイルのアップロードと分析 | あり | あり |
| Outlook内の組織データ参照 | Outlookの中だけ | あり |
| Microsoft 365全体の横断推論 | 制限あり | あり |
| Graph・Work IQ・意味索引 | なし | あり |
| 高度なエージェント | 制限あり | あり |
| 優先アクセス | なし | あり |
表の「意味索引」はセマンティックインデックスを指す表記です。無料版で社内データを扱う方法は、プロンプトへの貼り付け、ファイルのアップロード、「/」で開くファイル参照、組織データにつながるエージェントの利用に限られます。アップロードしたファイルは本人のOneDrive for Businessに保存されます。つまり「社員が自分で探して渡した資料」には答えられますが、「先週の会議で誰が何を決めたか」をCopilotに探させることはできません。
Outlookの中だけ広がる組織データ参照と字句インデックスの限界
例外がOutlookです。プライバシーと保護のページによると、Outlook内のCopilot Chatはライセンスがなくても、メール・予定表・会議・チャットに加え、本人のOneDrive、よくアクセスするSharePointサイト、直接共有されたファイルなどに範囲を絞って参照できます。
ただし参照は字句インデックス経由で、セマンティックインデックスによる完全な作業データへのアクセスは有償ライセンスに限られます。キーワードが一致するメールは拾えても、言い回しの違う関連資料までは届きにくい、というのが実務上の差です。「Outlookでは社内のことも答えたのに、Teamsでは答えない」という問い合わせは、この仕様の差で説明できます。
Word・Excel・PowerPointの中で直接編集できるかの境界
有償版のもう1つの価値は、アプリの中で作業そのものを代行させられる点です。Excelの表を見ながら集計列を足す、Wordの草稿を指定のトーンで書き直す、といった操作は有償版の領分です。
無料版でもWord・Excel・PowerPoint用のCopilot Chatエージェントから、開いているファイルについて質問したり、プロンプトからファイルを生成したりはできます。生成したPowerPointはOneDriveに保存され、WordとExcelはダウンロードで受け取ります。開いている1ファイルには触れられても、他の作業データには手を伸ばせない、という線引きです。
標準アクセスと優先アクセスの差が混雑時の業務に表れる場面と判断軸
無料版のファイルアップロード、画像生成、GPT-5などのモデルは「標準アクセス」で提供されます。サービスの容量に左右されるため、混雑時には品質や応答の速さが落ちる場合があると明記されています。
平常時に差を体感する場面は多くありません。月末の締め作業や全社会議の直前など、利用が集中する時間帯に業務を依存させる部署では、優先アクセスの有無が効いてきます。モデルは既定で「自動」になっており、質問に応じて高速な応答と深い推論を切り替えます。
エージェントの従量課金:ライセンスなしで払うCopilotクレジットの内訳
無料版の利用者が社内データに届く唯一の正規ルートがエージェントです。ここだけは無料ではなく、従量課金で費用が発生します。
生成回答2・テナントGraph参照10クレジットという課金単価の読み方
エージェントの使用量はCopilotクレジットで数えます。従量課金メーターのページでは1メッセージあたり0.01ドルとされ、Copilot Studioの請求レートで機能ごとの消費量が決まっています。
| エージェントの動作 | 消費クレジット | 有償ライセンス保有者 |
|---|---|---|
| 従来型の回答(定型応答) | 1 | 無料 |
| 生成回答 | 2 | 無料 |
| エージェントアクション | 5 | 無料 |
| テナントGraphの参照 | 10 | 無料 |
社内文書を検索して答える典型的な1往復は、テナントGraph参照10と生成回答2を合わせて12クレジット、約0.12ドルです。同じエージェントでも、有償ライセンスを持つ社員の利用は課金されず、持たない社員の利用だけがクレジットを消費します。なお、Microsoft 365のエージェントビルダーで作り、テナントGraphを参照しない生成回答は課金対象外と注記されています。
容量パック2万5千クレジットと従量課金ポリシーの組み合わせ3通り
容量パックと従量課金の比較ページによると、支払い方は次の3通りです。
- Copilotクレジットポリシーのみ:月25,000クレジットの前払い容量パックを使う。Azureサブスクリプション不要。使い切ると翌月の補充まで止まる
- クレジットポリシーと従量課金ポリシーの併用:前払い分を先に使い、超過分は接続したAzureサブスクリプションへ自動で課金
- 従量課金ポリシーのみ:前払いなしで、すべての使用をAzureサブスクリプションへ課金
クレジットポリシーはテナントあたり10個まで作れ、セキュリティグループ単位で配分できます。試行段階なら1の前払いのみにして、使い切ったら止まる形で予算の上限を物理的に固定するのが安全です。業務に組み込んだ後は、止まると困るため2へ移します。
100人が毎日使うエージェントの試算と有償ライセンス費の分岐点
Microsoftの請求例では、テナントGraphを参照する営業エージェントを、ライセンスのない社員100人が1日に生成回答4回とGraph参照4回ずつ使うと、1日4,800クレジットになると示されています。1人あたり1日48クレジット、月20営業日なら960クレジットで9.6ドルです。
比較対象は、公式価格ページのCopilot Businessアドオンです。年払いの通常価格は1ユーザー月3,148円(2026年10月時点のプロモーション価格は2,698円)、月払いは3,778円で、Businessプランの対象人数は300ユーザーまでとなっています。300人を超える組織向けのMicrosoft 365 Copilotは年払いで4,497円(税抜)です。
1ドル150円と仮定すると、3,148円は約21ドル、約2,100クレジットに相当します。社内文書を引く問い合わせ(12クレジット)を1人が1日9回前後より多く使うなら、その社員についてはライセンスを買ったほうが費用を抑えられる計算です。逆にそれ未満の利用者には、ライセンスを配らずエージェント課金で済ませる、という人単位の切り分けが成り立ちます。
情シスが全社展開前に決める範囲:管理センターで固める設定4項目
Copilot Chatは対象プランなら最初から多くの社員の画面に出ています。「導入する」より先に「既に出ているものをどう統制するか」を決める製品です。
ピン留め・アクセス制限・ブロックの使い分けとカスタムURLの用意
管理ページが示す制御は段階的で、効き方が違います。
- ピン留めを外す:OutlookやTeamsの既定表示から消えるだけで、Copilotアプリなど他の入口からは使える
- 特定のユーザーやグループに限定する:管理センターのアプリ管理で、選んだ社員だけに提供する
- アクセスをブロックする:Copilotアプリ・Outlook・Teams・Webのすべてで使えなくなる。ナビゲーションには残り、選ぶとポリシーで無効化されている旨が表示される
ピン留めを外せば止まると誤解している組織は少なくありません。止めたいならブロックです。ブロックした画面には、管理センターの「Copilot」から「設定」を開き「ブロックされたMicrosoft Copilotアプリのカスタムリンク」で社内規程へのURLを表示できます。利用申請の窓口へ誘導するページを先に用意しておくと、問い合わせが減ります。
Web検索を許可するポリシーとBingへ送られる検索クエリの中身
Copilot Chatは回答の精度を上げるため、プロンプトから数語の検索クエリを生成してBingへ送ります。送られるのはプロンプト全文でもアップロードしたファイルでもなく、ユーザー名やテナントIDも含まれません。ただしBing側は独立したデータ管理者として扱われ、EUデータ境界の対象外です。
この挙動は「Copilotでの Web 検索を許可する」ポリシーで、テナント単位やグループ単位に切れます。オフにするとBingへのクエリは止まり、モデルの知識だけで答えるようになります。取引先名や案件名が検索語に混ざることを社内規程が許さない部署だけを対象に、グループ単位でオフにする運用が現実的です。
エンタープライズデータ保護の範囲とプロンプト監査ログの保存先
Copilot Chatのプロンプトと応答はMicrosoft 365のサービス境界内で処理され、基盤モデルの学習には使われません。画面上部の新しいチャットボタンの横に緑色のシールドが出ていれば、エンタープライズデータ保護が掛かっている状態です。
やり取りは監査と電子情報開示のためにテナント内のExchangeへ記録され、有償版と同じアイテム保持ポリシーを適用できます。言い換えると、社員がCopilotに入力した内容は、後から組織による調査が可能です。この点を利用規程に明記して周知しておくと、機密情報の安易な貼り付けへの抑止として働きます。
個人アカウントでのサインインをテナント制限v2で塞ぐ理由と保護の範囲
Copilotアプリには職場アカウントと個人アカウントの両方でサインインでき、チャットやファイルはアカウントごとに分離されます。問題は、社員が個人アカウントのまま業務資料を貼り付けた場合で、そのやり取りには企業向けの保護も監査ログも掛かりません。
管理ページでは、個人アカウントでのサインインを管理する手段としてテナント制限v2が案内されています。無料版を全社に解放するなら、この締め出しを同時に入れないと、統制の効く入口と効かない入口が並んだままになります。
有償版へ切り替える判断基準:利用頻度と権限整理の状態で決める条件
ここまでの事実を踏まえ、有償版を買う条件と買わない条件を言い切ります。
Copilot Businessとエージェント従量課金を比べて有償版を選ぶ条件
有償版を選ぶのは、会議・メール・Teamsの情報を横断して答えさせたい職種が明確な場合です。たとえば営業管理職が毎朝「昨日の商談メールと会議メモから要対応を出す」ような使い方をするなら、前章の試算で1日9回の分岐点を簡単に超えます。この層には個別にライセンスを配ります。
一方、総務への規程照会や製品マニュアル検索のように「決まった文書群に、多くの社員が時々聞く」用途は、エージェントを1つ作って従量課金で回すほうが安くなります。エージェントの作り方はCopilot Studioの基本機能と料金の解説が参考になります。全社一律に有償版を配る判断は、利用頻度の実測を1〜2か月取ってからで遅くありません。管理センターの使用状況レポートで、アクティブユーザー数とユーザーあたりのプロンプト数を確認できます。
ライセンスの配り分けやエージェントの設計を社内だけで決めきれない場合は、Microsoft 365・Copilot導入支援で、利用実態の計測から配布範囲の設計まで相談できます。
有償版を見送る場面:共有権限が整理されていない組織の先行購入
SharePointやTeamsの共有設定が「組織内の全員」に広がったまま放置されている組織は、有償版を先に買うべきではありません。有償版は本人がアクセスできる範囲を横断して答えるため、人事評価や見積原価のファイルが全員共有になっていれば、それも回答の根拠に入ります。
無料版はこの横断参照を持たないため、権限整理が終わっていない段階でも比較的安全に配れます。順番は、無料版の展開、権限の棚卸し、対象部署への有償版、の順です。過剰共有の洗い出し方と制限設定の手順はMicrosoft 365 Copilotの情報漏洩対策で詳しく扱っています。製品全体の機能を先に把握したい場合はMicrosoft 365 Copilotとは何かの解説から読むと整理しやすくなります。
Microsoft 365 Copilot Chatの無料版でよく挙がる質問
無料版の範囲と管理について、検索で多く見られる疑問に答えます。
Microsoft 365 Copilotに無料版はありますか?
対象のMicrosoft 365やOffice 365のプランを契約していれば、Copilot Chatが追加料金なしで使えます。これが実質的な無料版です。Web情報をもとにした回答、ファイルのアップロードと要約、画像生成、Outlook内でのメールや予定の参照ができます。会議やTeamsチャット、SharePoint全体を横断した回答と、Word・Excel内での直接編集は、有償のMicrosoft Copilotライセンスが必要です。
Copilot Chatに入力した社内情報はAIの学習に使われますか?
職場アカウントでサインインしていれば、プロンプトと応答はエンタープライズデータ保護の対象となり、基盤モデルの学習には使われません。画面上部の緑色のシールドが目印です。ただし個人のMicrosoftアカウントでサインインした場合はこの保護が掛からないため、業務では必ず職場アカウントを使うよう周知してください。
TeamsやOutlookにCopilot Chatが表示されないのはなぜですか?
管理者がピン留め設定を「ピン留めしない」にしている、特定のグループだけに提供している、またはアクセスをブロックしている可能性があります。ピン留めを外しただけならCopilotアプリやWebの入口からは引き続き利用可能です。ブロックされている場合は、選んだときにポリシーで無効化されている旨が表示されます。いずれも社内の管理者に確認してください。
個人向けのMicrosoft Copilotと何が違いますか?
同じCopilotアプリでも、サインインするアカウントで中身が分かれます。職場アカウントなら企業向けのCopilot Chatとして動き、エンタープライズデータ保護、監査ログ、管理者の統制が掛かります。個人アカウントなら一般消費者向けのMicrosoft Copilotで、これらは掛かりません。チャット履歴やファイルもアカウントごとに分離されます。
無料版でもエージェントは使えますか?
使えます。ただしWeb情報だけで答える範囲を超え、SharePointなど社内データを参照するエージェントは従量課金になり、管理者が課金ポリシーか容量パックを設定していないと利用できません。社内文書を検索して答える1往復は約12クレジットで、1クレジットは0.01ドルです。有償ライセンスを持つ社員の利用は課金されません。
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