同じ「Shopifyでストアを作りたい」という依頼に、30万円の見積もりと500万円の見積もりが並ぶことがあります。差を生むのは作業量ではなく、設定・テーマ・アプリ・コードのどの層まで手を入れたかという一点です。この記事では、Shopify構築で実際に作るものを4つの層に分け、要件整理から公開までの6工程、プラン別の月額と決済手数料、外注範囲の線引き、そしてShopifyでは触れない領域から採用可否を決める手順までを整理します。制作会社を選ぶ前に、自社がどの層まで踏み込むのかを先に決められる状態を目指します。
まとめ:Shopify構築の判断と、外注範囲を決める順序
Shopify構築はゼロからシステムを作る仕事ではありません。決済・カート・在庫・注文管理はプラットフォーム側に用意されており、発注者が決めるのは「テーマ設定で済ませるか、アプリで足すか、コードを書くか」の3択です。費用の桁が変わるのはコードを書き始めた瞬間で、デザインの好みではありません。
順序としては、まず売り方の要件を洗い出し、それがチェックアウト(購入手続き画面)に掛かるかどうかを確認します。掛かるなら要件を作り替えるか、Shopify以外の方式へ切り替える判断が必要です。掛からないなら、テーマとアプリで組めるところまで自社で組み、残りだけを外注に渡すのが最も安く済みます。
もう一点、初期費用と同時に決めておくべきものがあります。Shopifyの管理画面用APIは四半期ごとに新バージョンが出て、各版のサポートは最低12か月。連携やカスタムアプリを作った時点で、年1回の追随改修が構造的に発生します。この保守費を見積もりに含めずに発注すると、2年目に想定外の請求が来ます。
Shopify構築で作るものの正体、設定とテーマとアプリとコードの4層
設定・テーマ・アプリ・コードの4層と、費用の桁が変わる境界線
Shopifyの構築作業は、下から順に4つの層で捉えると見積もりの構造が見えます。第1層は管理画面の設定で、プラン契約・独自ドメイン・決済・配送料・税・通知メールの文面まで含みます。第2層はテーマで、公式テーマストアの無料テーマや有料テーマを選び、セクションの並べ替えや色・フォント・画像を管理画面から変更する範囲。第3層はアプリで、レビュー・定期購入・ポイント・CSV連携などを月額で足していきます。第4層がコードで、Liquidテンプレートの改造、Shopify Functionsによるロジック追加、カスタムアプリによる外部システム連携が入ります。
| 層 | 主な作業 | 外注の要否 | 費用の性質 |
|---|---|---|---|
| 設定 | プラン・決済・配送・税 | 自社で可能 | 月額のみ |
| テーマ | テーマ選定・色や画像の差替 | 自社で可能 | テーマ購入費 |
| アプリ | 機能追加・外部SaaS接続 | 選定だけ相談 | 月額が積み上がる |
| コード | Liquid改造・独自ロジック | 外注が現実的 | 初期+年次保守 |
境界は第3層と第4層の間にあります。設定とテーマとアプリだけで完結するなら、外注しても数十万円台に収まります。コード層に入った瞬間、要件定義・実装・テスト・改修の工数が乗り、桁がひとつ上がる。発注前に「うちはコード層に入るのか」を判断できていれば、見積もりのばらつきに振り回されずに済みます。
ECサイト構築一般との違い、Shopifyが自社に残す運用の範囲
パッケージやフルスクラッチでECを作る場合、カート・決済・在庫・受注管理の仕様を自分たちで決め、サーバーの面倒も見ます。Shopifyではこれらがサービス側に固定されており、決められるのはテーマの見た目とアプリの組み合わせまでです。制約と引き換えに、サーバー障害対応・SSL更新・PCI DSSへの対応・カート機能のアップデートが手元から消えます。
一方で自社に残るものもあります。商品データの整備、写真の撮影と加工、配送料テーブルの設計、税区分の設定、返品ポリシーと特定商取引法に基づく表記の文面。これらは外注しても結局は自社の判断が要る作業で、丸投げすると差し戻しで工期が延びます。プラットフォームごとの向き不向きから比べたい場合は、ECサイト構築の5つの方法と費用相場を先に読むと、Shopifyを選ぶ前提が固まります。
Shopify構築の進め方、要件整理から公開までの6工程と担当の分け方
工程1から3、目的整理とプラン選定と情報設計で決める具体項目
最初の3工程は、コードを一行も書かずに終わります。ここを飛ばして制作会社に相談すると、要件が固まらないまま見積もりだけが膨らみます。
- 売り方の要件を書き出す。単品通販か定期購入か、BtoBの掛売りがあるか、実店舗の在庫と連動させるか、越境販売と多通貨が必要か。
- 要件からプランを決める。スタッフアカウント数の上限(Basicは追加不可、Growは最大5件、Advancedは最大15件・2026年8月時点)と、外部決済を使うかどうかが分岐点になる。
- 商品分類と情報設計を決める。コレクション(商品グループ)の切り方、商品オプションの持たせ方、SKUの命名規則。
特に3番目を後回しにすると、公開後の商品追加のたびに手作業が増えます。商品数が数百を超える見込みなら、この段階でCSVの列構成まで詰めておくと移行が楽になります。
工程4から6、デザイン適用とデータ移行と公開前テストの詰まり所
工程4はテーマの適用です。公式テーマストアのテーマを購入し、セクションを並べて自社のブランドに寄せます。ここで「テーマにない配置を実現したい」と言い出した瞬間、コード層に入ります。工程5がデータ移行で、商品・顧客・過去注文のインポート、旧サイトからのURLリダイレクト設定を行う段階。工程6が公開前テストで、テスト決済、配送料の組み合わせ確認、注文通知メールの文面確認、スマートフォンでの表示確認まで進めます。
詰まりやすいのはデータ移行です。旧サイトのURL構造とShopifyのURL構造は一致しないため、リダイレクトを設定しないと既存の検索流入を落とします。商品ページだけでなくカテゴリページと特集ページも対象に含めてください。移行元の会員パスワードは移行できない仕様なので、既存顧客への再設定案内をリリース計画に組み込んでおく必要があります。
Shopify構築の費用構造、プラン月額と決済手数料と外注費の内訳
プラン別の月額と決済手数料、外部決済を足したときの上乗せ幅の差
Shopifyの費用は月額プランと決済手数料の2階建てです。2026年8月時点の日本向け公式料金ページでは、以下の水準になっています。
| プラン | 年払い月額 | 月払い月額 | カード手数料 | 外部決済 |
|---|---|---|---|---|
| Basic | 3,650円 | 4,850円 | 3.55% | 2% |
| Grow | 10,100円 | 13,500円 | 3.4% | 1% |
| Advanced | 44,000円 | 58,500円 | 3.25% | 0.6% |
| Plus | 要問い合わせ | 368,000円から | 個別条件 | 0.2% |
読み違えやすいのが右端の外部決済です。Shopify Paymentsで受けられない決済手段を外部サービスで足すと、カード手数料とは別にこの率が売上に上乗せされます。月商500万円でBasicのまま外部決済を使えば、上乗せだけで月10万円。プラン間の月額差より、この上乗せのほうが先に効いてきます。決済手段の要件が多い事業ほど、上位プランのほうが総額で安くなる構造です。プラン別の総額計算と、月額の差を手数料の差で回収する売上水準はShopifyの料金プランと手数料を総額で比べた記事にまとめています。
外注費のレンジと、見積もりが3倍変わる3つの変数の組み合わせ
制作会社が公開している料金表を横に並べると、テーマをそのまま使う構築で30万円から100万円、オリジナルデザインと機能追加を伴う構築で100万円から300万円、独自業務や多店舗を含むフルカスタムで300万円以上というレンジが目立ちます。同じ「Shopify構築」でこれだけ開くのは、次の3変数の組み合わせが違うからです。
- デザイン:既存テーマそのまま/部分カスタム/フルオリジナル。フルオリジナルはテーマ開発と同義になる。
- アプリと独自機能:既製アプリで足りるか、Shopify Functionsやカスタムアプリを書くか。
- 外部システム連携:決済のみ/在庫や受注の同期/基幹システムとの双方向連携。
3つ目が最も金額を動かします。既存の販売管理や顧客管理と繋ぐ場合、Shopify側のAPIだけでなく、相手側の仕様とデータ整合の設計が要るためです。連携先が業務改善プラットフォームであれば、ShopifyとkintoneのAPI連携で選べる手段とAPI制限のように、実現手段ごとの向き不向きを先に押さえておくと、見積もりの妥当性を判断できます。
外注範囲の線引き、自社で持つ作業と制作会社へ渡す作業の判断基準
自社で持つほうが速い作業と、外注に渡すと高くつく作業の違いを比較
外注費を抑える近道は、値切りではなく範囲の切り出しです。自社で持ったほうが速いのは、商品データの入力、写真の準備、原稿の執筆、配送料と返品ポリシーの決定、通知メールの文面確認。いずれも「自社にしか答えがない情報」で、外注に渡すとヒアリングと確認の往復が発生し、その時間がそのまま費用になります。
逆に外注へ渡すべきは、テーマのコード改修、Shopify Functionsを使ったロジック、外部システム連携、移行時のリダイレクト設計です。ここを内製すると、Liquidの記法とAPI仕様の学習に数週間を溶かしたうえ、後から引き継げないコードが残ります。どこまでを自社で持ち、どこから渡すかの線を引きかねる場合は、ECサイト制作・Shopify構築の支援内容から、要件整理だけを切り出して相談する方法もあります。
制作会社の選定基準と、契約時に決めておく保守の範囲と責任分界
選定で見るべきは、Shopifyパートナーとしての認定の有無だけではありません。自社と近い商材・近い規模の公開実績があるか、テーマ改修の成果物を自社が引き取れる形で納品するか、公開後の運用を誰が見るか。この3点を先に聞くと、価格だけでは見えない差が出ます。
契約時に文面へ落としておきたいのは次の3項目です。第1に、有料アプリの契約名義と請求先。制作会社名義のままだと、解約や乗り換えのたびに依頼が要ります。第2に、テーマとカスタムアプリのソースコードの取り扱い。第3に、APIバージョン更新への追随を保守に含めるか、都度見積もりにするか。3つ目を曖昧にしたまま公開すると、次の章で述べる年1回の期限が来たときに責任の所在で揉めます。
Shopifyで触れない領域から決める、採用の条件と見送るべき場面
チェックアウト領域の制約と、拡張機能で代替できる範囲の線引き
Shopify構築で最初に確認すべきは、できることではなく触れない領域です。購入手続き画面をテンプレートで自由に書き換える方法は、すでに閉じています。情報入力・配送・支払いの各ページを制御していたcheckout.liquidは2024年8月13日が期限とされ、Thank youページと注文状況ページに差し込む追加スクリプトも2025年8月28日で終了しました。現在の手段は、チェックアウトのUI拡張機能と、サーバー側でロジックを差し込むShopify Functionsに限られます。
Functionsで扱える範囲は、割引、支払い方法の出し分け、配送オプションの生成やカスタマイズ、カートとチェックアウトの入力検証、注文のルーティングといった領域です。公式は「個別のAPIページに記載がある場合を除き、どのプランのストアでも利用できる」としつつ、一部の機能はShopify Plusのみと明記しています(2026年8月時点)。つまり決済画面に独自の同意フォームを足す程度なら拡張機能で足りますが、購入手続きの画面遷移そのものを自社仕様に作り替える要件はShopifyでは成立しません。要件がそこに掛かるなら、要件を落とすか、方式を変えるかの二択になります。
APIバージョンの12か月サポートが生む、年1回の改修という前提
もうひとつの制約は時間です。ShopifyのAPIは四半期ごと、各四半期の初めに新しい安定版が公開されます。各安定版のサポート期間は最低12か月で、連続するバージョン間には最低9か月の重複が設けられています。直近の安定版は2026-07系です(2026年8月時点)。
この仕様が意味するのは、カスタムアプリや外部連携を作った時点で、年1回はバージョン追随の改修が必要になるということ。テーマ設定とアプリだけで組んだストアなら、この保守は発生しません。逆にヘッドレス構成でフロントを自前で持つ場合、APIの期限がそのままフロント側の改修期限になります。構成ごとの制約はmicroCMSとShopifyのヘッドレス構成と費用に整理してあります。見積もりを取る段階で、初期費用と年次の追随保守費を分けて出してもらってください。
Shopifyを採用する条件と、独自開発へ切り替えるべき場面
ここは言い切ります。次の条件に当てはまるならShopifyを採用してよい。標準的なBtoC通販で、購入手続きの流れが一般的なカート型で足り、商品数が数万点以下、基幹連携が在庫と受注の同期程度に収まり、越境や多通貨を将来使う可能性がある場合です。この範囲なら、月額数千円から始めて、必要になった層だけを外注で足していけます。
採用を見送るべき場面も条件で示します。第1に、購入手続きの画面構成や遷移そのものが商売の差別化要素になっている場合。前述のとおり、その領域は拡張機能の枠内でしか触れません。第2に、取引先ごとに単価と与信と締め請求が変わるBtoB取引が売上の中心で、その処理をEC側で完結させたい場合。アプリで無理に寄せると月額と改修費が積み上がり、パッケージ導入のほうが安く収まります。第3に、社内に運用担当を置けず、商品登録も外注する前提の場合。Shopifyの安さは自社運用を前提にした安さで、全工程を外注すれば方式を問わず費用は変わりません。
よくある質問
Shopify構築の相談で実際に多い質問を、判断に必要な順で5つ挙げます。
Shopify構築にはどれくらいの期間がかかりますか?
テーマをそのまま使い、商品数が数十点で連携もない構成なら、社内作業だけで2週間から1か月が目安です。オリジナルデザインを当てる場合はデザイン制作と実装で1.5か月から3か月、外部システム連携を含むと3か月から半年に伸びます。期間を左右するのは実装よりも、商品データの整備と原稿の準備という自社側の作業。ここを構築期間の前倒しで進めておくと、公開日は確実に近づきます。
Shopify構築は自社だけでできますか?
設定・テーマ・アプリの3層で完結する要件なら、コードを書かずに自社だけで公開できます。テーマの色や画像の差し替え、配送料テーブルの設定、決済の有効化は管理画面から行えるためです。判断が要るのは、テーマにない配置や独自ロジックが欲しくなった時点。そこから先はLiquidの記法とAPI仕様の理解が要るため、部分的にでも外注へ切り出したほうが、結果として早く安く終わります。
Shopifyの制作会社に依頼する費用の相場はいくらですか?
公開されている料金表を見る限り、テーマ流用型で30万円から100万円、セミカスタムで100万円から300万円、フルカスタムで300万円以上というレンジが中心です。ただし相場そのものより、見積書がどの層の作業を含むかを確認してください。同じ150万円でも、デザインに寄せた見積もりと連携に寄せた見積もりでは、公開後にかかる保守費がまったく違います。年次のAPI追随を含むかどうかは必ず質問しましょう。
Shopifyでコンビニ決済や代引きは使えますか?
Shopify Paymentsで扱えない決済手段は、外部の決済サービスをアプリ経由で追加する形になります。この場合、公式料金ページの外部決済手数料が売上に上乗せされます。率はBasicで2%、Growで1%、Advancedで0.6%、Plusで0.2%(2026年8月時点)。決済手段を増やすほど上乗せの影響が出るため、対応する決済の一覧を決めてからプランを選ぶ順序が正しく、逆にすると総額で損をします。
既存のECサイトからShopifyへ移行するときは何に注意しますか?
注意点は3つです。第1にURLのリダイレクトで、商品ページとカテゴリページを含めて旧URLから新URLへ転送しないと、既存の検索流入を落とします。第2に会員データで、パスワードは移行できない仕様のため、既存顧客に再設定を案内する必要があります。第3に定期購入や会員ランクなどの継続的な取引情報。これらはアプリ側のデータ構造に依存するため、移行可否をアプリ選定より前に確認してください。
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