Azure AI Speechの料金は、無料のF0と従量課金のS0(Standard)の2段構えです。音声認識は音声1時間あたり、音声合成は100万文字あたりで課金されます。この記事の単価は、Azureが公開している料金API(Retail Prices API)から2026年10月18日に取得した東日本リージョン(japaneast)の実額です。米ドル額と、APIが返す円建ての参考額を並べて載せています。製品名は旧称の「Azure Speech Service」「Cognitive Services Speech」から変わり、現在のMicrosoftのドキュメントでは「Azure Speech in Foundry Tools」と表記されています。名前が違っても同じサービスで、料金体系も同じです。
まとめ|Azure AI Speechの料金の要点(2026年10月時点)
- 無料枠(F0):リアルタイム文字起こしが月5時間、ニューラル音声合成が月50万文字、音声翻訳が月5時間。バッチ文字起こしはF0では使えません。
- 音声認識(S0):リアルタイム$1.00/時(157.55円)、高速文字起こし$0.36/時、バッチ$0.18/時。録音済みの音声ならバッチにするだけで82%安くなります。
- 音声合成(S0):ニューラル音声$15/100万文字(2,363.25円)。日本語の漢字は1字を2文字として数えるため、原稿の文字数より課金文字数が多くなります。
- 国内リージョンの制約:HD音声($22/100万文字)、LLM Speech、MAI-Transcribe-2は東日本・西日本では提供されていません。
- コミットメント階層:音声認識は月1,600時間、音声合成は月6,400万文字を下回るなら従量課金のほうが安くなります。単一サービスのSpeechリソースでしか購入できず、返金もできません。
Azure AI Speechの料金体系と無料枠(F0)
1つのSpeechリソースに、F0かS0のどちらかの価格レベルを割り当てて使います。F0は毎月一定量まで無料で、S0は使った分だけの従量課金です。F0の無料量はAzure Speechの料金ページに、F0とS0で変わる処理上限はクォータと制限のドキュメントに分かれて載っています。
F0で無料になる量と使えない機能
料金ページの注記には「Free audio hours for speech to text is shared between Standard and Custom, Batch is not supported.」とあります。月5時間の無料枠は標準モデルとCustom Speechで共有され、バッチ文字起こしは対象外という意味です。カスタムモデルのエンドポイントも1つまで無料ですが、使われていないモデルは7日で自動的に削除されます。
| 機能 | F0の無料量(月あたり) | F0での主な制限 |
|---|---|---|
| リアルタイム文字起こし | 5時間(標準・カスタム合算) | 同時接続1 |
| カスタムモデルのホスティング | 1モデル | 未使用7日で削除 |
| ニューラル音声合成 | 50万文字 | 60秒あたり20トランザクション |
| 音声翻訳 | 5時間 | 同時接続1 |
| バッチ文字起こし・バッチ合成 | 対象外 | S0のみ |
F0の上限は申請しても引き上げられません。S0ではリアルタイム文字起こしの同時接続が既定で100あり、引き上げ申請もできます。F0のまま負荷試験をすると、同時接続が1しかないため本番と同じ挙動になりません。F0は機能と精度の確認用と割り切り、性能の検証はS0で行ってください。F0からS0に切り替えた場合、クォータの反映には数時間かかることがあります。
S0の課金単位は秒単位の音声時間と文字数
音声認識と音声翻訳の時間は、サービスに送った音声の長さで測り、1秒単位で課金されます。10分の音声なら10分ぶんだけで、時間単位への切り上げはありません。音声合成は、リクエストに含まれる文字数で課金されます。課金対象には文字・数字・空白・句読点に加えて、SSMLのマークアップも含まれます(除外されるのは <speak> と <voice> タグだけです)。音声を生成できなかったリクエストも、正常に処理されていれば課金されます。指定した音声の言語と入力テキストの言語が合わない場合が典型です。
漢字を2文字と数える日本語の課金換算
見積もりで最も外しやすいのがこの規則です。音声合成の課金文字数の説明には「Each Chinese character is counted as two characters for billing, including kanji used in Japanese」とあり、日本語の漢字は1字が2文字として数えられます。ひらがな・カタカナは1字1文字です。漢字が35%の原稿100万字なら、課金されるのは135万文字です。ニューラル音声の$15/100万文字で計算すると、$15ではなく$20.25になります。この例では、実際の料金は単純計算した見積もりより35%高く、見積もりは実際の料金より約26%低くなります。
音声認識(Speech to Text)の料金
音声認識は処理方式で単価が5倍以上変わります。下の表は料金APIから取得した東日本リージョンの値です。円建て額は、料金APIの currencyCode='JPY' が返す参考額です。実際の請求額は、契約している課金アカウントの通貨と為替の扱いで決まります。
| 方式 | 米ドル(1時間) | 円建て参考額(1時間) |
|---|---|---|
| リアルタイム(標準) | $1.00 | 157.55円 |
| 高速文字起こし(標準) | $0.36 | 56.718円 |
| バッチ(標準) | $0.18 | 28.359円 |
| リアルタイム(Custom Speech) | $1.20 | 189.06円 |
| 高速文字起こし(Custom Speech) | $0.45 | 70.8975円 |
| バッチ(Custom Speech) | $0.225 | 35.4487円 |
リアルタイム・高速・バッチの使い分け
話している最中に文字が要るライブ字幕や通話中の支援だけをリアルタイムにして、それ以外はバッチか高速文字起こしに回すのがコスト面の基本です。バッチは非同期のキュー処理で、すぐには結果が返りません。録音を数分で文字にしたいなら、同期で返る高速文字起こし(Fast Transcription)を使います。単価はバッチの2倍ですが、リアルタイムの36%です。1ファイルの上限は、高速文字起こしが500MB未満・5時間未満、バッチが1GBです(話者分離を付けたバッチは240分まで)。2つのAPIは、1分あたり600リクエストの上限を共有します。バッチの安い単価はSpeech to Text REST API v3.2以降で適用され、高速文字起こしにはREST API 2024-11-15以降が必要です。
Custom Speechの学習費とホスティング費
業界用語や製品名を覚えさせるCustom Speechは、文字起こしの単価が標準より2〜3割上がるほか、学習の計算時間とエンドポイントの稼働時間に応じた費用が発生します。学習費は、2023年10月1日以降に公開されたベースモデルをカスタマイズする場合、計算時間1時間あたり$10(1,575.5円)かかります。エンドポイントのホスティング費は1モデルあたり$0.05375/時です。常時立てておくと月730時間で約$39.2(約6,182円)になります。用語が数十語なら、まず標準モデルのフレーズリストで認識させてみて、それで足りないときだけCustom Speechを作るのが安上がりです。
MAI-Transcribe-2とLLM Speechの料金と国内リージョン非対応
2026年9月に、Microsoft AI製の音声認識モデルMAI-Transcribe-2が高速文字起こしAPIから使えるようになりました。リージョン一覧ではプレビューと表示されている点も、本番採用の前に確認してください。料金APIには「Fast Transcription Promo」として$0.10/時のメーター(2026年9月1日開始)があり、料金ページの脚注では2026年12月31日までの期間限定価格とされています。LLM Speechは高速文字起こしと同じ価格・同じSKUで、$0.36/時です。ただしリージョン一覧のLLM speechタブで対応しているのは、centralindia・eastus・northeurope・southeastasia・westus・westus2の6リージョンだけです。japaneastもjapanwestも入っていません。音声データを国内で処理する要件がある案件では、単価が安くても候補から外れます。
話者分離・言語識別などの追加料金
リアルタイム文字起こしで、連続的な言語識別、話者分離(Diarization)、発音評価のプロソディ評価を使うと、機能ごとに$0.30/時(47.265円)が上乗せされます。話者分離を付けたリアルタイム文字起こしは、$1.00+$0.30で$1.30/時です。発言を話者ごとに区別する必要がある場合は、リアルタイムで要るのか、録音後にバッチで付ければ足りるのかを先に決めておくと見積もりがぶれません。OpenAIの話者分離モデルと比べたい場合はgpt-4o-transcribe-diarizeの解説を参照してください。
音声合成(Text to Speech)の料金
音声合成は100万文字単位の課金です。リアルタイム合成とバッチ合成は同じ単価で、料金APIには旧Long Audioのメーター($100/100万文字)も残っていますが、現在の料金ページには載っていません。
| 音声の種類 | 100万文字あたり | 東日本で利用 |
|---|---|---|
| ニューラル音声(標準) | $15(2,363.25円) | 可 |
| HD音声(DragonHD等) | $22 | 不可 |
| カスタム音声(Professional) | $24(3,781.2円) | 可 |
| カスタム音声HD | $48(7,562.4円) | 可 |
ニューラル音声とHD音声の単価とリージョン
標準のニューラル音声は$15/100万文字で、料金APIの適用開始日は2024年2月1日です。$16と書いている解説記事がありますが、これは改定前の額です。HD音声は2026年3月1日から$22です。ところがリージョン一覧のText to speechタブでは、japaneastのHD音声の列が空欄で、料金APIにも東日本のHD音声メーターがありません。HD音声のメーターがあるのは、eastus・westeurope・southeastasia・australiaeastなど12リージョンです。HD音声を使うなら東南アジアなど国外のリージョンにリソースを作ることになり、データの処理場所が変わります。
カスタム音声(Professional Voice)の学習費とホスティング費
自社専用の声を作るProfessional Voiceでは、音声合成の従量料金に加え、学習の計算時間とエンドポイントの稼働時間に応じた費用が発生します。学習費は計算時間1時間あたり$52(8,192.6円)で、上限は96計算時間です。1回の学習で最大$4,992かかります。ドキュメントの目安では、1スタイルの声で20〜40計算時間、複数スタイルで約90計算時間です。ホスティング費は1モデルあたり$4.032/時で、常時稼働させると月730時間で約$2,943(約46万3,700円)になります。ホスティングが合成単価を大きく上回ることもあるので、月の合成量が少ない用途ではカスタム音声を作らないほうが合理的です。なお、カスタム音声は申請・承認が必要なLimited Accessの機能です。
音声翻訳の料金と提供が終わった機能
音声翻訳(Speech Translation)は$2.50/時(393.875円)です。この額には、音声の入出力1つと、標準またはカスタムの音声認識による最大2言語へのテキスト翻訳が含まれます。3言語以上やカスタム翻訳を使う場合は、Translatorの料金が別にかかります。同時通訳型のLive Interpreterは、入力音声$1.00/時、テキスト出力$10/100万文字、標準音声での音声出力$1.50/時(テキスト出力込み)の組み合わせです。
話者認識(Speaker Recognition)と意図認識(Intent Recognition)は、2025年9月30日に提供を終了しました。Speech SDKのリリースノートでも、1.47(2025年11月)で両機能のサポートが削除されています。話者認識の「$10/1,000トランザクション」を載せている料金比較がまだありますが、現在は契約できません。話者ごとに文字起こしを分けたいだけなら、話者分離で代わりになります。声紋で本人確認をする用途には、別の製品が必要です。
Azure AI Speechの月額の試算例
典型的な4つの使い方を、東日本リージョンのS0単価で試算しました。円建ては料金APIの参考額で計算しています。
| 使い方 | 計算 | 月額 |
|---|---|---|
| 通話1,000時間をリアルタイム+話者分離 | 1,000時間×$1.30 | $1,300(約20万4,800円) |
| 会議録音300時間をバッチ | 300時間×$0.18 | $54(約8,500円) |
| 同じ300時間をリアルタイム | 300時間×$1.00 | $300(約4万7,300円) |
| 日本語原稿100万字の読み上げ | 135万文字÷100万文字×$15 | $20.25(約3,190円) |
録音済みの会議300時間は、リアルタイムで流すと$300、バッチなら$54です。差の$246は、処理方式を選ぶだけで出ます。読み上げの行は漢字比率35%を仮定した値で、実際の比率は原稿で数えてください。F0とS0はリソースに設定する価格レベルです。F0からS0へ変更すると、F0の月50万文字の無料枠は適用されません。
コミットメント階層で単価を下げる条件
月の使用量が読めるなら、毎月決まった額を前払いして単価を下げるコミットメント階層があります。対象は音声認識(標準・カスタム)と音声合成(ニューラル)です。
標準音声認識・ニューラル音声合成のコミットメント料金と損益分岐点
| 階層 | 月額 | 超過分の単価 | 従量との差 |
|---|---|---|---|
| 音声認識 2,000時間 | $1,600 | $0.80/時 | 20%減 |
| 音声認識 10,000時間 | $6,500 | $0.65/時 | 35%減 |
| 音声認識 50,000時間 | $25,000 | $0.50/時 | 50%減 |
| 音声認識 100,000時間 | $40,000 | $0.40/時 | 60%減 |
| 音声合成 8,000万文字 | $960 | $12/100万文字 | 20%減 |
| 音声合成 4億文字 | $3,900 | $9.75/100万文字 | 35%減 |
| 音声合成 20億文字 | $15,000 | $7.50/100万文字 | 50%減 |
| 音声合成 40億文字 | $24,000 | $6/100万文字 | 60%減 |
最小の階層でも、元を取るには音声認識で月1,600時間($1,600÷$1)、音声合成で月6,400万文字($960÷$15)が必要です。これを下回る月は従量課金より高くつきます。もう1つの判断材料はバッチの単価です。バッチの$0.18/時は、最上位の階層の超過単価$0.40/時より安くなっています。録音済みの音声が中心なら、コミットメント階層を検討する前に、バッチへ寄せられる量を数えるほうが先です。
コミットメント階層の対象リソース・変更時期・返金条件
コミットメント階層のドキュメントには、購入前に確認すべき制約が3つ書かれています。1つ目に、Foundry ToolsやMicrosoft Foundryのマルチサービスリソースでは買えず、単一サービスのSpeechリソースが必要です。Microsoft Foundryのプロジェクトでマルチサービスリソースを使っている構成なら、Speechリソースを別に作ることになります。2つ目に、契約期間は暦月単位で、当月の階層は途中で変えられません。購入した月は日割りで課金されます。3つ目に、購入後は返金されません。従量課金で2〜3か月の実績を取り、そのうち最も少ない月を基準に階層を選んでください。
料金APIでAzure AI Speechの単価を取得するPythonコード
料金ページは単価をJavaScriptで描画するため、ページを取得しても数字が入っていません。Azure Retail Prices APIなら認証なしでJSONが取れるので、見積もり表を自動で更新できます。次のコードは標準ライブラリだけで動き、東日本リージョンの主な単価を米ドルと円で出力します。
import json
import urllib.parse
import urllib.request
BASE = "https://prices.azure.com/api/retail/prices"
FILTER = "productName eq 'Azure Speech' and armRegionName eq 'japaneast'"
KEYS = [
"S1 Speech To Text",
"S1 Speech to Text Batch",
"Fast Transcription Speech To Text",
"S1 Neural Text To Speech Characters",
]
def fetch(currency):
q = urllib.parse.urlencode({"currencyCode": currency, "$filter": FILTER})
url = f"{BASE}?{q}"
items = []
while url:
with urllib.request.urlopen(url, timeout=30) as r:
d = json.load(r)
items += d["Items"]
url = d.get("NextPageLink")
return {i["meterName"]: i for i in items}
usd, jpy = fetch("USD"), fetch("JPY")
for k in KEYS:
u, j = usd[k], jpy[k]
print(f"{k}: {u['retailPrice']} USD / {j['retailPrice']} JPY per {u['unitOfMeasure']}")
2026年10月18日にPython 3.9で実行した出力は次のとおりです。
S1 Speech To Text: 1.0 USD / 157.55 JPY per 1 Hour
S1 Speech to Text Batch: 0.18 USD / 28.359 JPY per 1 Hour
Fast Transcription Speech To Text: 0.36 USD / 56.718 JPY per 1 Hour
S1 Neural Text To Speech Characters: 15.0 USD / 2363.25 JPY per 1M
メーター名の「S1」は、ポータル上のS0(Standard)に当たります。APIはメーターごとに課金条件を説明しません。漢字を2文字と数える規則や、バッチがF0で使えないことはAPIの値からは分からないので、この記事の説明と合わせて使ってください。armRegionName を eastus などに変えると、HD音声(Neural HD Text to Speech Characters)のように東日本には無いメーターも確認できます。
Google Cloud Speech-to-Textとの単価比較
Google Cloud Speech-to-Textの料金ページでは、V2 APIの標準認識が月50万分まで$0.016/分($0.96/時)、ダイナミックバッチが$0.003/分($0.18/時)です。Azureのリアルタイム$1.00/時、バッチ$0.18/時とほぼ並び、単価だけでは差がつきません。無料枠は、AzureのF0がリアルタイム月5時間、GoogleはV1 APIで月60分です。決め手になるのは単価ではありません。Entra IDやAzureの既存契約に載せられるか、音声を国内リージョンで処理できるか、日本語の認識精度が業務の音声で足りるかです。Googleの料金と無料枠の詳細はGoogle Cloud Speech-to-Textの解説に、OpenAIなどを含む7サービスの比較は文字起こしAPIの比較記事にまとめています。音声認識をコールセンターや会議システムに組み込む場合は、AI音声認識システム開発のページで支援内容を紹介しています。
よくある質問
Azure AI SpeechとAzure Speech Serviceの料金は違いますか?
同じサービスなので料金も同じです。「Azure Speech Service」「Cognitive Services Speech」は旧称で、現在のドキュメントでは「Azure Speech in Foundry Tools」と表記されています。価格レベルはF0とS0の2つで、料金APIのメーター名ではS0が「S1」と表示されます。
Azure AI Speechは無料で使えますか?
F0なら、リアルタイム文字起こし月5時間、ニューラル音声合成月50万文字、音声翻訳月5時間まで無料です。バッチ文字起こしとバッチ合成はF0では使えません。リアルタイム文字起こしと音声翻訳の同時要求上限は1で、音声合成は60秒あたり20トランザクションです。
Azure Speech to Textの料金は1時間いくらですか?
東日本リージョンのS0で、リアルタイムが$1.00(157.55円)、高速文字起こしが$0.36、バッチが$0.18です。1秒単位の課金なので、10分の音声なら1時間単価の6分の1になります。
音声合成の料金は日本語だとどう計算しますか?
ニューラル音声は$15/100万文字ですが、漢字は1字を2文字として数えます。漢字35%の原稿100万字なら課金は135万文字、$20.25です。SSMLのタグも、<speak> と <voice> 以外は課金文字数に入ります。
Azure AI Speechのコミットメント階層はいくらから得になりますか?
最小の階層で、音声認識は月1,600時間、音声合成は月6,400万文字が損益分岐点です。ただし、バッチ文字起こしの$0.18/時は最上位の階層の超過単価より安いので、録音済みの音声はバッチにするほうが効果があります。