Waymo(ウェイモ)は、Googleの自動運転プロジェクトから2016年に分社したAlphabet傘下の企業で、その自動運転システムの名前が「Waymo Driver」です。運転席に誰も座らないロボタクシーを米国の複数都市で有料運行し、2026年9月時点で週50万回を超える乗車を提供しています。2026年9月15日にはGO・日本交通と、2027年中に東京で完全無人の商用タクシー運行を目指すことで合意しました。
本記事では、Googleとの関係、Waymo Driverのセンサーと処理の仕組み、2026年10月時点で乗れる都市と乗り方、公式の安全データの読み方、東京での計画、テスラなど他社との違いを、Waymoと提携各社の一次情報で整理します。
まとめ:Waymoの現在地(2026年10月時点)
- 正体:Alphabet傘下の自動運転企業。2009年にGoogleの社内プロジェクトとして始まり、2016年12月にWaymoとして分社しました。Alphabetが過半数を出資する非上場企業で、Waymo単体の株は買えません。
- Waymo Driver:カメラ・LiDAR・レーダーを組み合わせたSAEレベル4の自動運転システム。第6世代はカメラ13台・LiDAR 4基・レーダー6基で構成され、2026年2月に社員向けの無人運行、5月に一般乗客への提供が発表されました。
- 乗れる場所:Waymoアプリですぐ乗れるのはフェニックス・サンフランシスコ・ロサンゼルスなど米国12都市で、サンアントニオは順次案内中。オースティンとアトランタはUberアプリ経由です。
- 安全データ:2020年9月〜2026年6月の完全無人走行2億7,130万マイルで、同じ地域の人間ドライバーと比べて重傷以上の事故が95%少ないと公表しています。
- 日本:2025年4月から東京都心7区で走行試験を続け、現在は日本交通の乗務員が同乗した自動走行試験の段階です。2027年中に100台規模の無人タクシー運行を目指します。現時点で一般の人が東京でWaymoに乗る方法はありません。
米国で乗る予定がある人は乗れる都市と乗り方の章を、社内資料で安全性の数字を引用する人は安全データの前提条件を先に確認してください。
WaymoとGoogle(Alphabet)の関係と沿革
WaymoはGoogleの子会社ではなく、Googleと同じくAlphabetの傘下にある兄弟会社です。2009年にGoogleの社内プロジェクトとして自動運転車の開発が始まり、2016年12月13日に「Waymo LLC」として分社しました。本社はカリフォルニア州マウンテンビューにあります。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2009年 | Googleで自動運転プロジェクト開始 |
| 2016年12月 | Waymo LLCとして分社(Alphabet傘下) |
| 2018年12月 | フェニックスで商用サービス「Waymo One」開始 |
| 2024年12月 | GO・日本交通と東京でのテストに合意 |
| 2025年4月 | 東京で日本交通・GOと走行テスト開始 |
| 2026年2月 | 160億ドルを調達・第6世代の無人運行開始 |
| 2026年9月 | GO・日本交通と東京での商用化に合意 |
Waymoには外部投資家も出資しています。2026年2月2日には160億ドルを調達し、調達後の評価額は1,260億ドルになりましたが、このときもAlphabetは過半数を持つ投資家と位置づけられています。
「waymo 株価」で調べる人が多いのですが、Waymoは非上場です。投資家として値動きに連動させたいなら、親会社Alphabet(ティッカーGOOGL/GOOG)の株を買うことになり、Waymoの業績は同社決算の「Other Bets」セグメントに含まれます。Alphabetの株を買うことは、検索広告やクラウドを含む事業全体に投資することを意味します。
Waymo Driverの仕組み:センサー構成と認識・判断の流れ
Waymo Driverは、車両に載せたセンサー群・計算機・ソフトウェアをまとめた呼び名です。車種ではありません。同じWaymo DriverがJaguar I-PACE、専用設計の「Ojai」、Hyundai IONIQ 5といった異なる車両に搭載されます。
第5世代と第6世代のセンサー数の違い
| 項目 | 第5世代 | 第6世代 |
|---|---|---|
| 主な搭載車両 | Jaguar I-PACE | Ojai/Hyundai IONIQ 5 |
| カメラ | 29台 | 13台(17メガピクセル) |
| LiDAR | 公式の個数表記なし | 4基 |
| レーダー | 公式の個数表記なし | 6基 |
| 発表 | 2020年3月 | 2024年8月 |
| 無人運行の開始 | – | 2026年2月(社員向け) |
第6世代は2024年8月に構成が公表され、2026年2月12日のWaymoのブログで、Ojaiでの無人運行に移り、まず社員とそのゲストを乗せると報告されました。一般乗客への提供は2026年5月28日に発表されています。第5世代のカメラ29台はWaymo Driverの公式ページの記載です。センサーの数を減らしながら、17メガピクセルの新しいイメージャーで解像度を上げているのが特徴です。Waymoはこのブログで、カメラの台数を半分以下にしても第5世代を上回る性能が出ると説明し、雨や雪の中での性能向上と、厳しい冬のある地域への展開を目的に挙げました。台数の削減は1台あたりのコストを下げ、車両を増やすための設計判断です。LiDARの原理についてはLiDARの仕組みとToF方式の解説で詳しく扱っています。
LiDAR・カメラ・レーダーを併用する理由
3種のセンサーは、得意な条件の違いを補い合いつつ、視野を重ねて同じ対象を複数の方式で捉えるように配置されています。LiDARはレーザーで周囲までの距離を点群として測り、夜間でも物体の形と位置を正確に捉えます。カメラは信号の色、標識の文字、工事現場の作業員の手振りなど、色と文字の情報を読み取ります。レーダーは電波で相手の速度を直接測れ、霧や大雨のように光が届きにくい条件でも働きます。どれか1つの視界が落ちても、残りのセンサーで認識を続けられるのがこの構成の要点です。
認識・予測・経路計画の処理と高精度地図の役割
Waymo Driverはセンサーの情報から「周りに何があるか」を認識し、歩行者や他の車が数秒後にどう動くかを予測し、そのうえで自車の進路と速度を計画します。自己位置の推定には、事前に作った高精度の3D地図と、走行中のセンサー情報との照合を使います。この地図と照合する考え方はSLAM(自己位置推定と地図作成)と同じ系統の技術です。
走行の学習には、実際の公道走行データに加えてシミュレーションが使われます。WaymoはGoogle DeepMindの世界モデル「Genie 3」をもとにした走行シミュレーション基盤を発表しており、その中身はGenie 3とWaymoの次世代シミュレーション基盤で解説しています。
自動運転レベル4とODD(運行設計領域)
Waymo Driverは、米SAEの定義でいうレベル4にあたります。決められた条件の範囲(ODD:Operational Design Domain)の中では、運転操作も周囲の監視も、システムが人間の介入を前提とせずに行います。ODDの代表例は地域です。Waymoは都市ごとに走行可能なエリアを地図で区切っており、その外へは出ません。
車の運転支援(ADAS、レベル2)との違いはここにあります。レベル2ではシステムが操作を補助しても、周囲の監視と運転の主体は常に人間です。レベル4は、ODDの中では運転席に人がいない状態を前提に設計されています。どこでも走れるレベル5は、Waymoを含めてまだどの会社も実現していません。
Waymoに乗れる都市と乗り方(2026年10月時点)
Waymoアプリで乗れる12都市とUber経由の2都市
Waymo公式FAQによると、Waymoアプリからすぐに呼べる都市は次の12都市です。
- フェニックス、サンフランシスコ、ロサンゼルス、サンディエゴ、ラスベガス
- ダラス、ヒューストン、デンバー
- マイアミ、オーランド、タンパ、ナッシュビル
テキサス州サンアントニオも一般の乗客を受け入れ始めていますが、アプリ登録者を順に案内する段階です。これとは別に、テキサス州オースティンとジョージア州アトランタではUberと提携しており、WaymoアプリではなくUberアプリで配車を頼むとWaymo車が割り当てられる仕組みです。対応都市は月単位で増えているので、渡航前に公式FAQの都市一覧を確認してください。ロンドンは2026年中の開始を予告していますが、10月4日時点で公式FAQの乗車可能都市には入っていません。
アプリの登録と乗車条件
乗車にはスマートフォンにWaymoアプリを入れてアカウントを作ります。アプリは日本のApp Store・Google Playからも入手できるので、渡航前に準備できます。上記の12都市では、公式FAQのとおりアプリを入れればすぐ乗れます(サンアントニオは順次案内)。17歳以下は、アカウントを持つ大人の同乗者として乗ります。8歳未満の子どもを乗せるときはチャイルドシートかブースターシートの持参が必要です。フェニックスでは、保護者の許可があれば14〜17歳が単独で乗れる「teen account」も用意されています。
運賃は最短ルートを基準に計算され、予約を確定する前にアプリに表示されます。途中で迂回しても運賃は変わりませんが、夜間や週末など混み合う時間帯は高くなることがあると公式FAQに書かれています。Uberとどちらが安いかは都市・時間帯で変わるため、同じ区間を両方のアプリで見積もって比べるのが確実です。
Waymoの安全性データ:2.7億マイルと人間ドライバー比の読み方
Waymoは公式サイトの「Safety Impact」で、完全無人走行の事故件数を、同じ地域を走る人間ドライバーの事故率と比べて公表しています。2026年6月までのデータは次のとおりです(出典:Waymo Safety Impact)。
| 指標 | 人間ドライバー比 |
|---|---|
| 重傷以上の事故 | 95%少ない |
| エアバッグが開いた事故 | 82%少ない |
| 負傷者が出た事故 | 82%少ない |
| 歩行者が負傷した事故 | 93%少ない |
| 自転車が関わる負傷事故 | 86%少ない |
| バイクが関わる負傷事故 | 82%少ない |
集計対象は2020年9月〜2026年6月の完全無人走行2億7,130万マイル(約4億3,700万km)です。内訳はフェニックス9,212万マイル、サンフランシスコ・ベイエリア8,242万マイル、ロサンゼルス6,710万マイル、オースティン2,106万マイル、アトランタ862万マイルで、この5地域に限られます。
安全データを引用するときの前提条件
この比較を「自動運転は人間より95%安全」とそのまま引用すると誤解を生みます。少なくとも次の前提を添えて引用してください。
- 地域と道路が限られる:数値は上記5地域の、Waymoが走るエリア内の一般道(surface streets)での比較です。ダラスやマイアミなど5地域以外の都市と、高速道路の走行はこの比較に入っていません。
- 比較相手は推計値:人間ドライバー側の事故率は、警察に届けられた事故データなどから推計したベンチマークです。軽い事故の届出漏れなどを補正したうえでの比較で、補正の方法が結果を左右します。
- 事故の責任とは別の指標:件数はWaymo車が関わった事故の数で、どちらに過失があったかは問いません。
それでも、走行距離が数億マイル規模になり、重傷事故のように件数の少ない指標でも信頼区間つきで差を論じられる段階に入っています。Waymoは集計方法と元データを公開しているので、第三者が同じデータで検証できます。
日本でのWaymo:東京7区のテストから2027年の商用化計画へ
Waymoは2024年12月17日にGO・日本交通との戦略的パートナーシップを発表し、2025年4月から東京の公道で走行テストを続けています。走行エリアは港区・新宿区・渋谷区・千代田区・中央区・品川区・江東区の7区です。当初は日本交通の乗務員が手動で運転して地図データを作り、2026年9月のGOの発表時点では「日本交通の乗務員が同乗した自動走行試験」の段階に進んでいます。左側通行や狭い道、歩行者の多い交差点といった東京の道路環境に、Waymo Driverを合わせ込んでいる段階です。
2026年9月の合意内容と3社の役割分担
2026年9月15日、3社は「2027年中に東京で、段階的に100台規模の自動運転タクシーを運行することを目指す」とGOのプレスリリースで発表しました。GOの発表では、これを国内初の自動運転レベル4・完全無人走行による商用タクシー運行と位置づけています。
| 会社 | 役割 |
|---|---|
| Waymo | 自動運転技術・Waymoアプリでの提供 |
| GO | GOアプリでの提供・全体設計 |
| 日本交通 | 運行管理・営業所運営・顧客サポート |
利用者はWaymoアプリとGOアプリのどちらからでも呼べる形が想定されています。現場の運行管理と営業所の運営は日本交通が担い、米国でのUberとの提携と同じく、Waymoは技術の提供に集中する分担です。
車両の面では、トヨタとWaymoが2025年4月30日に戦略的パートナーシップの基本合意を発表し、新しい自動運転車両プラットフォームの開発と、トヨタの将来の市販車への技術活用を検討するとしています。東京の商用運行にどの車両を使うかは、2026年10月時点で公表されていません。
日本で無人運行に必要な許可
日本では2023年4月1日施行の改正道路交通法で、レベル4の自動運転を「特定自動運行」として許可制で認める制度ができました。運行するには都道府県公安委員会の許可が必要で、「特定自動運行主任者」を遠隔監視装置のある場所に置くか車両に乗車させることなどが条件になります。2027年の計画も、この許可と、旅客を運ぶ事業としての国土交通省の手続きを経ることが前提です。2026年10月時点で、東京でWaymoに一般客として乗る方法はありません。
Waymoと他社の違い:Tesla・Cruise・Wayveとの比較
ロボタクシーを巡る競争では、センサーの選び方と事業の進め方が会社ごとに大きく異なります。
| 会社 | センサー方式 | 2026年10月時点の状況 |
|---|---|---|
| Waymo | カメラ+LiDAR+レーダー | 米国15都市で無人運行・週50万回超 |
| Tesla | カメラのみ | テキサス・フロリダ6都市の限定地域 |
| Cruise(GM) | カメラ+LiDAR+レーダー | 2024年12月に資金提供打ち切り |
| Wayve | カメラ中心のE2E | Uberとロンドンで運行(運転手同乗) |
テスラはカメラだけで認識から操作までを1つのニューラルネットワークで学習させる方式を取り、2025年6月にテキサス州オースティンでロボタクシーの運行を始めました。2026年10月時点の公式サポートページでは、オースティン・ダラス・ヒューストン・マイアミ・オーランド・タンパの限定地域で提供中とされています。テスラの専用車Cybercabの量産状況と日本導入の見通しはCybercab(サイバーキャブ)の解説記事にまとめています。
GM傘下のCruiseは、2023年10月にサンフランシスコで歩行者を巻き込む事故を起こしてカリフォルニア州の運行許可を停止され、GMは2024年12月10日にCruiseのロボタクシー開発への資金提供を打ち切り、技術チームをGMに統合すると発表しました。英国のWayveは2026年9月3日、Uberとロンドンでロボタクシーの運行を始めましたが、当初は運転席に安全担当のドライバーが座る形です。Wayveは走行全体を1つのモデルで学習するエンドツーエンド方式と世界モデルを軸に開発しており、その技術はWayve GAIA-3の解説で扱っています。
技術方式の優劣より大きな違いは、Waymoが「限られた地域で無人運行を先に成立させ、都市を1つずつ増やす」順番で進めてきた点です。米国で、運転席に誰もいない車で一般客を週50万回以上運んでいる事業者はWaymoです。中国ではBaiduのApollo Goが2025年第4四半期に340万回の完全無人乗車を提供しており、無人ロボタクシーの規模で競っているのはこの2社です。
Waymo Via(トラック物流)の後ろ倒しと配車サービスへの集中
旧来の解説記事では、Waymoの用途としてロボタクシーと並んで「Waymo Via」による自動運転トラックの物流が紹介されていることがあります。しかしWaymoは2023年7月26日、共同CEOの連名ブログで「配車サービスに取り組みと投資を集中する」と表明し、トラックの商用化と運用の計画を後ろ倒しにしました。Daimler Truck North Americaとの車両プラットフォームの技術開発は続けるとしたものの、2026年10月時点でWaymoが一般向けに提供しているサービスはロボタクシーです。
ブログが挙げた理由は、配車サービスで見えていた大きな勢いと商機です。トラックとロボタクシーの両方に開発・運用の資源を割くのではなく、すでに有料運行が伸びていた配車サービスに投資を寄せる判断で、商用化だけでなくトラックの技術開発の大部分も先送りの対象に含めました。日本でWaymoを物流の担い手として期待する根拠は、現時点ではありません。
よくある質問
WaymoとGoogleはどういう関係ですか?
WaymoはGoogleの社内プロジェクトとして2009年に始まり、2016年12月に分社した会社です。現在はGoogleの子会社ではなく、Googleと同じく持株会社Alphabetの傘下にあります。開発ではGoogle DeepMindの研究成果も取り入れていますが、事業としてはGoogleとは別会社として運営されています。
Waymoはどこで乗れますか?日本では乗れますか?
2026年10月時点で、Waymoアプリからすぐ乗れるのはフェニックス、サンフランシスコ、ロサンゼルス、マイアミなど米国12都市で、サンアントニオは登録者を順次案内しています。オースティンとアトランタはUberアプリ経由で乗れます。日本では東京都心7区で、日本交通の乗務員が同乗した自動走行試験を行っている段階で、一般の人は乗れません。無人の商用運行は2027年中の開始が目標です。
Waymoの株は買えますか?
Waymoは上場していないため、Waymo単体の株は買えません。Waymoに間接的に投資するには、親会社であるAlphabet(GOOGL/GOOG)の株を買うことになります。ただしWaymoの業績はAlphabetの決算で「Other Bets」セグメントにまとめて開示されるため、Waymo単体の数字を株価の材料として切り出すことはできません。
WaymoとTeslaの自動運転は何が違いますか?
最大の違いはセンサーと事業の段階です。WaymoはLiDAR・レーダー・カメラを併用し、決められたエリアで運転席に誰もいない有料運行を米国15都市で行っています。テスラはカメラだけで走る方式で、オースティンなどで限定的に運行している段階です。テスラの個人向け車のFSDは運転者が常に監視する必要があるレベル2の運転支援で、ODD内の操作と監視をシステムが担うWaymoのレベル4とは役割分担が異なります。
Waymo Driverは何台のセンサーを使っていますか?
第6世代Waymo Driverは、カメラ13台、LiDAR 4基、レーダー6基に加え、外部の音を拾う受信機で構成されます。2024年8月に構成が公表され、2026年2月に社員向けの無人運行を始めました。第5世代のJaguar I-PACEではカメラが29台あり、第6世代は17メガピクセルの高解像度カメラを使うことで台数を半分以下に減らしました。第6世代は専用車両のOjaiとHyundai IONIQ 5に搭載されます(Ojaiの一般乗客への提供は2026年5月28日に発表)。
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