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LSIキーワードとは?Googleの否定発言と本来の仕組み・関連語の調べ方

LSIキーワードとは?Googleの否定発言と本来の仕組み・関連語の調べ方

「LSIキーワードを入れると順位が上がる」という説明は、SEOの解説でいまも見かけます。一方で、GoogleのJohn Mueller氏は2019年7月30日に「LSIキーワードというものは存在しない」と投稿しました。Google検索セントラルのランキング システム ガイドにも、LSIという名前のシステムは載っていません。

この記事では、呼び名の出どころである1988年出願の文書検索技術LSIを小さな計算例で再現し、Googleが公式に説明している語の扱い方、共起語・再検索キーワードとの違い、関連語調査を記事制作に組み込む手順までを整理します。

まとめ:LSIキーワードの正体と実務で代わりにやること

  • LSI(Latent Semantic Indexing、潜在的意味インデックス)は、Bell Communications Research(Bellcore)が1988年に米国特許を出願した文書検索の技術です。Googleの特許ではなく、権利はすでに満了しています。
  • 「LSIキーワード」はSEO業界の通称で、指す中身はツールごとに違います。ラッコキーワードは「他の人はこちらも検索」に出る語を、LSIGraphは自社開発の意味分析で提案する語をこう呼んでいます。
  • 本来のLSIが出す語の近さは、使う文書集合と圧縮する次元数で変わります。後述の計算例では、次元数を2から3に変えただけで「車」と「自動車」の類似度が0.70から-0.02に下がりました。
  • Googleは語とコンセプトの関係をRankBrain・BERT・ニューラル マッチングで扱っていると公式ガイドで説明しています。関連語の一覧を本文に足しても、これらの仕組みに合わせたことにはなりません。
  • 実務では、語を集めて散りばめるより、読者が次に抱く疑問を章や段落として答えるほうが、公開後にSearch Consoleで効果を確かめやすくなります。

以下、LSIの元の意味から順に根拠を示します。

LSIキーワードの意味と元になった文書検索技術LSI

1988年出願のBellcore特許と1990年の論文に残るLSIの出どころ

LSIは、米国特許4,839,853「Computer information retrieval using latent semantic structure」として、Bell Communications Researchが1988年9月15日に出願し、1989年6月13日に登録された技術です。発明者にはScott C. Deerwester、Susan T. Dumais、George W. Furnasら7名が名を連ねています。権利はその後Telcordia Technologies、SAICを経てContent Analyst Co LLCへ移り、Google Patentsでは法的状態が「Expired(期間満了)」、満了予定日が2008年9月15日と表示されています。

学術論文としては、Deerwesterらが1990年にJournal of the American Society for Information Science 41巻6号(391〜407ページ)へ発表した「Indexing by latent semantic analysis」が引かれます。SEOの解説には「Googleが特許として登録している技術」と書くものもありますが、出願人はGoogleではありません。出願はGoogleの創業(1998年)より10年早い時期です。

SEOで「LSIキーワード」と呼ばれる語の出どころとツールごとの違い

SEOの文脈でいう「LSIキーワード」は、元の技術とは別の意味で使われています。同じ名前でも、語をどこから取ってくるかはツールや解説によって異なります。

呼び名の使われ方 語の出どころ 確認した資料
ラッコキーワード 検索結果の「他の人はこちらも検索」 公式マニュアル
LSIGraph(現SurgeGraph) 独自の意味分析による候補語 公式サイト
共起語ツール 上位ページに一緒に出る語の頻度 各ツールの説明
本来のLSI 文書集合の語×文書行列を圧縮した空間 1988年特許・1990年論文

ラッコキーワードのマニュアルは「LSI(Latent Semantic Indexing)キーワードは、他の人はこちらも検索(関連性の高い検索)に表示されるキーワードを指します」と定義しています。これは検索結果に出る表示要素そのもので、文書集合から計算する本来のLSIとは作り方が違います。LSIGraphの公式サイトは、候補語を自社開発の意味分析(semantic analysis)で出し、その価値を独自の指標「Latent Semantic Value(LSV)」で示すと説明しており、トップページには「LSIGraph is now SurgeGraph」と表示されています。

「LSIキーワード」という言葉を見たら、まずどこから取った語なのかを確かめてください。出どころが違えば、同じテーマでも出てくる語は変わります。なお、半導体の大規模集積回路(Large Scale Integration)も同じくLSIと略されますが、この記事で扱うのは検索技術のLSIです。

LSIが語の近さを計算する仕組みを7文書の例で再現した結果

語×文書の行列を特異値分解で少数の次元に圧縮する手順

LSIは、文書集合から「どの語がどの文書に何回出たか」を表す行列を作り、特異値分解(SVD)で少数の次元に圧縮します。圧縮後の空間では、同じ文書に並んだことがない語どうしでも、文書集合全体の出現傾向によって近い位置に置かれることがあります。出現回数から語の重みを決める考え方はTF-IDFによる単語の重み付けとコサイン類似度の記事でも扱っています。

次のコードは、車の話題4件、料理の話題2件、両方にまたがるキャンプの話題1件の計7文書で行列を作り、2次元と3次元に圧縮したときの語どうしのコサイン類似度を比べるものです。Python 3.9.6とNumPy 2.0.2で実行しました。

import numpy as np

terms = ["車", "自動車", "エンジン", "燃費", "タイヤ", "整備",
         "料理", "レシピ", "包丁", "味付け", "キャンプ"]
docs = [
    ["車", "エンジン", "燃費"],
    ["車", "タイヤ", "燃費"],
    ["自動車", "エンジン", "整備"],
    ["自動車", "タイヤ", "整備"],
    ["料理", "レシピ", "味付け"],
    ["料理", "包丁", "味付け"],
    ["キャンプ", "料理", "車"],
]

# 語×文書の出現行列(行=語、列=文書)
A = np.array([[d.count(t) for d in docs] for t in terms], dtype=float)
U, s, Vt = np.linalg.svd(A, full_matrices=False)
idx = {t: n for n, t in enumerate(terms)}

def cos(x, y):
    return x @ y / (np.linalg.norm(x) * np.linalg.norm(y))

def term_sim(a, b, k=None):
    if k is None:
        return cos(A[idx[a]], A[idx[b]])
    T = U[:, :k] * s[:k]
    return cos(T[idx[a]], T[idx[b]])

print("車と自動車が同じ文書に出る回数:", int(A[idx["車"]] @ A[idx["自動車"]]))
for a, b in [("車", "自動車"), ("車", "料理"), ("燃費", "整備")]:
    print("%s-%s  元の行列 %.2f  k=2 %.2f  k=3 %.2f"
          % (a, b, term_sim(a, b), term_sim(a, b, 2), term_sim(a, b, 3)))

同じ文書に一度も並ばない「車」と「自動車」の類似度の変化

実行結果は次のとおりです。

車と自動車が同じ文書に出る回数: 0
車-自動車  元の行列 0.00  k=2 0.70  k=3 -0.02
車-料理  元の行列 0.33  k=2 0.53  k=3 0.31
燃費-整備  元の行列 0.00  k=2 0.88  k=3 0.05

「車」と「自動車」は同じ文書に一度も出てこないため、元の行列での類似度は0.00です。2次元に圧縮すると、どちらも「エンジン」「タイヤ」と一緒に使われている点が効き、0.70まで近づきます。「燃費」と「整備」も0.00から0.88に上がりました。

3次元にすると結果は逆転します。「車」と「自動車」は-0.02、「燃費」と「整備」は0.05です。3つ目の次元では「車・燃費」を含む2文書と「自動車・整備」を含む2文書が反対の符号を取り、別のまとまりとして分かれました。2次元では「車」と「料理」も0.53まで近づいており、キャンプの文書1件が車と料理の話題を結び付けています。

計算例から分かる「LSIキーワード一覧」が固定できない理由

この例が示すのは、LSIの出す「近い語」は、どの文書集合を使い、何次元に圧縮するかを決めて初めて定まるという点です。7文書のまま次元数を1つ変えただけで、「自動車」が「車」の近い語から外れました。文書集合も次元数も示されていない「LSIキーワード一覧」は、本来のLSIによる計算結果かどうかを第三者が検証できません。

数値そのものはこの小さな文書集合に固有のもので、検索エンジンの挙動を再現したものではありません。語の意味の近さで文書を探す仕組みを実装面から知りたい場合は、ベクトル検索とセマンティック検索の違いの記事が参考になります。

GoogleがLSIキーワードを否定した発言と関連語を扱う公式の仕組み

John Mueller氏の2019年7月30日の投稿が否定した範囲

GoogleのJohn Mueller氏は2019年7月30日(米国時間)、X(当時のTwitter)に、LSIキーワードというものは存在せず、そうでないと言う人は間違っている、という趣旨を英語で投稿しました。原文と投稿日時はJohn Mueller氏の投稿で確認できます。この投稿は翌31日にSearch Engine RoundtableがGoogle Says There Is No Such Thing As LSI Keywordsとして原文ごと紹介しています。

否定されたのは「LSIキーワード」という概念です。Googleが語の意味の近さを扱っていない、という意味ではありません。何を使っているかは、次の公式ドキュメントで確認できます。

RankBrain・BERT・ニューラル マッチングに関するGoogle公式ガイドの記述

Google検索セントラルの「Google 検索のランキング システム ガイド」には、語と意味の関係を扱うシステムとして次の3つが載っています。

  • RankBrain:「単語がコンセプトにどのように関連しているかを理解するための AI システム」で、「検索に使われた単語がすべて正確に含まれていなくても、関連するコンテンツをより適切に表示できるようになります」
  • BERT:「単語の組み合わせによって多様な意味や意図がどのように表現されるかを理解できるようにするもの」
  • ニューラル マッチング:「検索クエリやページで表現されるコンセプトを理解して、それらを相互に関連付けるために Google が使用する AI システム」

1990年の論文は、LSIが主に同義語(synonymy)の問題に対処するよう設計されたもので、多義語(polysemy)の問題には部分的な解決しか与えないと述べています。RankBrainの「単語がすべて正確に含まれていなくても」という説明は、この同義語の問題と同じ方向を向いています。ただし、仕組みの名前はLSIではありません。このガイドは日本語版・英語版ともにLSIという語を含んでいません。

SEOスターターガイドとOffice Hoursにある言い換えとキーワード密度の記述

Googleの「SEO スターター ガイド」は、詳しいユーザーは「シャルキュトリ」、そうでないユーザーは「チーズボード」と検索するかもしれない、という例を挙げたうえで、「すべての検索方法を予測する必要ありません。Google の高度な言語マッチング システムは、ページとさまざまな検索語句との関連性を把握できるため、ページにそのとおりの語句を明示的に使用する必要はありません」と書いています。言い換えの語をすべて本文に並べる必要はない、という公式の説明です。

2023年1月のSEO Office Hoursでは、キーワード密度についての質問に「いいえ。Google には最適なキーワード密度という概念はありません。」と答え、「とはいえ、明確にしておくに越したことはありません。」と続けています。求められているのは語の数を揃えることではなく、ページが何について書かれているかを明確にすることです。密度の数値の扱いはキーワード出現率とは?計算方法と目安の根拠をGoogle公式の記述から整理で詳しく扱っています。

LSIキーワードと共起語・再検索キーワードの違いと記事制作での使い分け

名称 語の作られ方 記事制作での使い道
本来のLSI 文書集合の行列を特異値分解で圧縮 検索システムの研究・実装
共起語 上位ページに一緒に出る語の頻度 論点の抜け漏れの点検
再検索キーワード 次に検索しそうだとGoogleが推測した語 読者が次に知りたいことの把握
SEOでいうLSIキーワード ツールにより上の2つのどちらかに近い 出どころを確認してから判断

同じ「関連語」でも、共起語はページのテキストから、再検索キーワードはGoogleの検索データから作られます。共起語はすでに上位にある記事の語彙を映すため、競合が押さえている論点の確認に向きます。「他の人はこちらも検索」に表示される語は、次に検索したくなる内容をGoogleが推測した候補であり、読者の追加の疑問を考える手がかりになります。

共起語の抽出方法とノイズ語の見分け方は共起語とは?SEOでの調べ方と記事への入れ方・効果が出ない使い方を解説、再検索キーワードの取得手順は再検索キーワードとは?調べ方・無料ツール・SEO活用法を解説で扱っています。

LSIキーワードを詰め込んでも順位が上がらない理由と失敗パターン

関連語の一覧を本文に散らす書き方とスパムポリシーの記述

Googleのスパムに関するポリシーは、キーワードの乱用を「Google 検索結果のランキングを操作する目的で、ウェブページにキーワードや数字を詰め込むこと」と定義し、「不自然にリストやグループの形式を使ったり、関連性のない場所でキーワードが記載されたりする傾向があります」と書いています。

ツールが出した関連語を段落の末尾にまとめて並べる、どの見出しにも同じ関連語を差し込む、といった書き方はこの記述に近づきます。語を足した結果として文章が読みにくくなった時点で、その追加はやめるべきです。乱用の判定基準と手動対策の扱いはキーワードスタッフィングとは?Google公式の定義「キーワードの乱用」と罰則・直し方にまとめています。

関連語のカバー率を目標値にした場合に起こる品質の低下

「ツールが出した関連語20語のうち18語を含める」のような目標は置かないほうがよい、というのがこの記事の結論です。理由は2つあります。ひとつは、前述のとおり語の出どころがツールによって違い、ツールを替えるだけで分母の語が入れ替わることです。もうひとつは、カバー率を上げる最短の方法が、読者の疑問に答えることではなく語を差し込むことになってしまう点です。

記事の網羅度を測りたいなら、語の数ではなく「読者の疑問にいくつ答えたか」で数えます。次の章の手順は、その数え方に沿っています。

LSIキーワードの代わりに行う関連語調査の手順と見送ってよい記事

  1. 既存記事なら、Search Consoleの検索パフォーマンスでそのページが表示されているクエリを書き出し、表示回数の多い順に意図のまとまりへ分けます。
  2. 主要なクエリで実際に検索し、「他の人はこちらも検索」と「他の人はこちらも質問」に出る語と質問を集めます。
  3. 上位5ページ程度の見出しを並べ、共起語ツールの出力とも照らして、自分の記事にない論点を探します。
  4. 見つかった論点は語として本文に足さず、答える章・段落・FAQとして書きます。
  5. 公開から数週間後にSearch Consoleで新しく表示され始めたクエリを確認し、狙った論点で表示されているかを見ます。

作業の中心は2と4です。「他の人はこちらも質問」に出る質問文は、そのままFAQや見出しの候補になります。語の一覧を集める作業で止めず、答える文章に変えるところまでを1つの工程として扱います。

関連語調査を見送ってよい記事もあります。製品の設定手順やエラーの対処法のように、読者の疑問が1つに定まっている記事では、関連語を広げるより手順の正確さを優先してください。どのキーワードで記事を書くかの決め方はキーワード選定のやり方とは?3つの評価軸と実践手順・失敗例を解説、クエリの意図の分類は検索意図の種類とは?Know・Go・Do・Buyの4分類を解説で扱っています。

よくある質問

LSIとは何の略ですか?

SEOの文脈でのLSIは、Latent Semantic Indexingの略で、潜在的意味インデックスと訳されます。1988年にBell Communications Researchが米国特許を出願した文書検索の技術で、語と文書の出現行列を特異値分解で圧縮し、同じ語を含まない文書どうしの関係も扱えるようにするものです。半導体の分野では大規模集積回路(Large Scale Integration)もLSIと略されるため、検索するときは「LSI SEO」のように分野の語を付けると目的の情報に届きやすくなります。

LSIキーワードはSEOに効果がありますか?

「LSIキーワード」という語のリストを入れること自体に効果がある、という根拠はありません。GoogleのJohn Mueller氏は2019年7月30日にLSIキーワードの存在を否定しており、Googleのランキング システム ガイドにもLSIという名前のシステムは載っていません。一方で、Googleは語とコンセプトの関係をRankBrainやBERTなどで扱っていると説明しています。読者の疑問に答える過程で関連する語が自然に入るのは問題ありませんが、語を足すこと自体を目的にしないでください。

LSIキーワードと共起語は同じものですか?

同じではありません。共起語は、検索上位のページに主要なキーワードと一緒に出てくる語を頻度で拾ったものです。本来のLSIは、文書集合全体の語と文書の関係を特異値分解で圧縮して語の近さを計算するもので、同じ文書に一度も並ばない語どうしが近いと判定されることもあります。ただし、ラッコキーワードのように「他の人はこちらも検索」の語を「LSIキーワード」と呼ぶツールもあるため、ツールごとに出どころを確認する必要があります。

LSIキーワードを調べるツールはありますか?

「LSI」を名前や機能名に含むツールとして、ラッコキーワードの「潜在的な検索キーワード/質問(LSI/PAA)」や、現在はSurgeGraphに移行したLSIGraphがあります。ラッコキーワードのこの機能は、Google検索の「他の人はこちらも検索」と「他の人はこちらも質問」を取得するものです。「LSI」という機能名だけでは1990年の論文と同じ計算方法かどうかを判断できないため、出てきた語を本文に入れる候補ではなく、読者の疑問を探す材料として扱うのが安全です。

潜在的意味解析(LSA)とLSIは違うものですか?

計算の中身は同じ特異値分解による次元圧縮で、呼び方が違うと考えて差し支えありません。1990年のDeerwesterらの論文は題名が「Indexing by latent semantic analysis」で、潜在的意味解析(LSA)という手法を文書の索引づけ(インデックス)に使うという構成になっています。検索への応用を指すときはLSI、自然言語処理で語や文書の意味関係を分析する手法全般を指すときはLSAと呼ばれることが多い名前です。

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