DMCA(デジタルミレニアム著作権法)は、インターネット上の著作権侵害コンテンツを「権利者が通知し、サービス事業者が削除する」手続きを定めた米国の法律です。Google、YouTube、Xといった米国のプラットフォームは日本語のコンテンツにもこの手続きを使うため、日本のサイト運営者にとっては、盗用された記事を検索結果から外す手段であり、同時に虚偽の申請で自社ページを消される入口でもあります。この記事では、条文の要件、Googleへの申請手順、罰則の金額、悪用されたときの対処を、SEO担当者が判断に使える粒度で整理します。
まとめ:DMCAの要点
- DMCAは1998年10月28日に成立した米国の著作権法です。実務で使うのは、通知と削除の手続きを定めた第512条と、コピーガードの回避を禁じる第1201条の2つです。
- 削除申請は無料で、Googleなら法的な削除申請の窓口から、条文が求める6項目を入力して送ります。受理されると検索結果から該当URLが消え、代わりにLumenで公開された通知へのリンクが表示されます。
- 削除された側はカウンターノーティス(反論通知)を出せます。YouTubeのように投稿を預かるサービスでは、申立人が訴訟を起こさなければ受領から10〜14営業日で元に戻ります。Google検索の掲載は、反論通知を受けて復帰させることがあるという扱いです。
- 罰則は条文ごとに違います。第1201条違反は民事で1件200〜2,500ドルの法定損害賠償、営利目的の故意なら初回50万ドル以下の罰金か5年以下の拘禁、またはその両方です。虚偽の削除通知は第512条(f)で損害賠償責任を負います。
- SEOの面では、有効な削除通知が大量に届いたサイトは残りのページの順位も下げられるとGoogleが公表しています。盗用対策で申請する価値と、虚偽申請で狙われるリスクの両方がここにあります。
DMCA(デジタルミレニアム著作権法)の意味と2つの柱
DMCAは Digital Millennium Copyright Act の略で、1998年10月28日に成立した米国の連邦法です(Pub. L. 105-304)。デジタル環境に合わせて米国著作権法(合衆国法典第17編)に条文を追加しました。「dcma」と綴りを取り違えることがありますが、正しくは D-M-C-A です。
第512条のセーフハーバーと通知・削除の手続き
合衆国法典第17編第512条は、ユーザーの投稿が著作権を侵害していても、権利者から通知を受けて速やかに削除したサービス事業者は損害賠償責任を負わない、と定めています。この免責を「セーフハーバー」、通知を受けて削除する流れを「ノーティス・アンド・テイクダウン」と呼びます。免責を受ける条件には、侵害を繰り返す利用者のアカウントを停止する方針を持つこと(第512条(i))も含まれます。YouTubeの「3回でチャンネル停止」は、この条件に対応する仕組みです。Googleも、侵害行為を繰り返すユーザーのアカウントを状況に応じて削除すると明記しています。
第1201条の回避規制とコピーガードの関係
第1201条は、DRMやコピーガードといった技術的保護手段を回避する行為と、回避のための道具の提供を禁じています。コピーガードは複製を防ぐ技術そのもの、DMCAはその技術を破る行為を規制する法律で、両者は別物です。例外は米国議会図書館長が著作権局長の勧告を受けて3年ごとの規則制定で定め、2026年10月時点で第10回の手続きが進行中です。更新された例外は2027年10月から2030年10月まで有効になります。
削除通知とカウンターノーティスの要件
DMCAの手続きは、権利者の削除通知で始まり、削除された側の反論通知で元に戻り得る、双方向の設計です。どちらも条文が記載事項を決めており、欠けていると有効な通知として扱われません。
削除通知(テイクダウン)に必要な6項目
第512条(c)(3)が求める記載事項は次のとおりです。Googleの申請フォームもこの6項目を入力させる作りになっています。
| 条文 | 項目 | 書く内容 |
|---|---|---|
| (i) | 署名 | 権利者か代理人の署名(電子署名可) |
| (ii) | 著作物の特定 | 侵害されたとする自社の作品やURL |
| (iii) | 侵害物の特定 | 削除してほしいページのURL |
| (iv) | 連絡先 | 住所・電話番号・メールアドレス |
| (v) | 善意の陳述 | 無許諾の利用だと信じている旨 |
| (vi) | 正確性と権限の陳述 | 正確な旨と偽証罪の罰則下で権限がある旨 |
(vi)の「偽証罪の罰則の下で」という文言が、虚偽申請への抑止として働きます。ただし偽証罪の罰則がかかるのは権限の陳述だけで、侵害かどうかの判断の誤りは後述の512条(f)で問われます。ソースコードのように誰に権利があるかが争点になりやすい著作物では、申請の前に帰属を確かめてください。考え方はソースコードの著作権は誰のもの?どこまで守られるかと譲渡契約・判例・AI生成コードの扱いで整理しています。
カウンターノーティス(反論通知)と10〜14営業日ルール
誤りや誤認で削除されたと考える投稿者は、第512条(g)に基づいて反論通知を出せます。必要なのは、削除されたコンテンツと元の掲載場所の特定、誤りによる削除だと信じている旨の偽証罪の罰則下の陳述、連絡先、米国の連邦地方裁判所の管轄に同意する旨(住所が米国外なら、事業者の所在するいずれかの地区の管轄)と、申立人からの訴状の送達を受け入れる旨、そして署名です。
利用者の投稿を預かる事業者(第512条(c))は、反論通知を受けると申立人に写しを送り、受領から10営業日以上14営業日以内にコンテンツを戻します。戻らないのは、その間に申立人が利用差し止めを求める訴訟を起こしたと事業者へ通知した場合だけです。YouTubeも申立人が米国のカレンダーで10営業日以内に法的措置の証拠を出さなければ動画を復元すると案内しています。反論通知には実名と住所が要り、申立人に転送される点は出す前に織り込んでおくべきです。
この10〜14営業日の決まりは投稿を預かるサービスのためのもので、Google検索の掲載(第512条(d))には及びません。Googleのヘルプも、異議申し立て通知を受け取った場合は対象のコンテンツを「復帰させることがあります」という書き方にとどめています。
GoogleへのDMCA削除申請の手順
盗用サイトが自社より上位に表示されているとき、SEO担当者が最初に使うのがGoogle検索への削除申請です。申請は無料で、弁護士を通さず権利者本人が出せます。
申請から削除までの5ステップ
- 盗用ページと自社の元ページのURLを控え、公開日がわかる証拠(CMSの公開日時、Internet ArchiveのWayback Machineの保存記録)を手元に残します。
- Googleのデジタル ミレニアム著作権法のヘルプから法的トラブルシューティングへ進み、対象のサービスと申し立ての種類を選びます。
- 表示されたフォームに、上の6項目のうち連絡先・自社の著作物・削除してほしいURLを入力します(陳述と署名は次の手順)。削除してほしいURLは、サイトのトップではなく侵害しているページそのものを指定します。
- 善意の陳述と偽証罪の罰則下の陳述に同意し、氏名で署名して送信します。
- 受理されると、該当URLが検索結果から外れます。Googleが侵害者とされる側に連絡することもあります。
Googleの削除は検索結果から外すだけで、盗用ページそのものは相手のサーバーに残ります。ページ自体を消させたい場合は、相手のホスティング事業者にもDMCA通知を送ります。元記事が正規の転載先と重複している場合は削除申請の対象ではないので、コンテンツシンジケーションとは?意味とSEOで重複を避ける配信法の方法で正規化してください。
削除後の検索結果とLumenでの通知公開
Googleは対処した通知の写しを、ハーバード大学バークマン・クライン・センターが運営する非営利のLumenへ送り、通知はそこで公開されることがあります。Googleの説明では、送信者の電話番号・メールアドレス・住所はLumenが削除したうえで公開されます。ただし氏名や会社名は残り得るので、申請者名が公開される前提で出してください。
検索結果では、削除されたページの代わりに、Lumenで公開された通知へのリンクが表示されます。「DMCAレポート」として調べられているのは多くの場合この表示です。リンク先の公開ページでは、申立人名と対象サイトのドメイン、URLの件数がわかります。URLの全文は伏せられていることがあり、確かめるにはLumenに閲覧を申請します。自サイトが標的になっていないかの確認も、Lumenでのドメイン名検索から。
削除通知が順位に響く「削除ベースの降格」
DMCAが検索順位に関わるのは、個別URLの削除だけではありません。Googleは検索ランキング システムのガイドで、特定のサイトについて有効な著作権侵害の削除通知が大量に届いた場合、その通知を根拠に同じサイトの残りのコンテンツの順位を下げられると明記しています。
ここから言えることは2つあります。1つは、まとめサイトやコピーサイトに対しては、URLを1本ずつ申請し続けることがサイト全体の順位を下げる圧力になること。もう1つは、自社サイトが虚偽の通知を大量に受けて放置すると、同じ仕組みで巻き添えを食う恐れがあることです。Googleがこの降格に使うのは「有効な」通知なので、反論通知で誤りを正しておくことは、順位を守る手段にもなります。順位要因として公表されている他のシステムはランキングファクターとは?Google公式が認める要因と否定する要因の一覧【2026年10月時点】にまとめています。
YouTube・XでのDMCA申請と著作権侵害の警告
動画やSNSの投稿も、各社の著作権侵害の窓口から同じ6項目で申請します。違いが大きいのは、削除された側のアカウントに何が起きるかです。
YouTubeの著作権侵害の警告(90日以内に3回で停止)
YouTubeでは、削除通知が有効と判断されて動画が消されると、チャンネルに「著作権侵害の警告」が付きます。YouTubeヘルプによると、コピーライト スクールを修了し警告が3回未満なら、警告は90日で期限切れになります。90日以内に3回受けるとチャンネルは停止されます。
注意したいのは、BGMや映像の一致を自動で検出する「著作権の申し立て(Content ID)」とは別物だという点です。YouTubeヘルプは、Content IDの申し立てでは通常、著作権侵害の警告は出ないと説明しています。DMCAの削除通知に当たるのは警告のほうです。身に覚えのない警告には、撤回の依頼か反論通知で対応します。
X(旧Twitter)など他のSNSへの申請
X、Instagram、TikTokなど大手のSNSも、ヘルプセンターに著作権侵害の報告フォームを用意しています。入力項目は第512条(c)(3)の6項目とほぼ同じで、各社とも侵害を繰り返したアカウントを停止の対象にしています。画像の無断転載が多いのはSNSなので、自社のオリジナル画像は元データと公開日時を保管しておくと申請が速くなります。
DMCAの悪用・虚偽申請への対処
「dmca 悪用」「dmca 攻撃」という検索が示すとおり、権利者でない者が虚偽の削除通知を送り、競合や批判的なページを検索結果から消そうとする事例があります。第512条は、通知を受けて速やかに削除した事業者を免責する設計なので、事業者には削除へ傾く動機があり、虚偽の通知でも削除まで進んでしまうことがあります。
虚偽申請によるネガティブSEOの手口
典型的な手口は、標的の記事をコピーして公開日を古く見せたページを用意し、そちらを「元の著作物」として標的のURLを侵害物と申告するものです。標的の記事は検索結果から消え、上の降格の仕組みで同じサイトの他のページにも影響が及び得ます。Lumenで自ドメインを検索して見覚えのない申立人名の通知があれば、全文の閲覧を申請し、「元の著作物」とされたURLの公開日を確かめてください。自社より後に公開されたページが「元」とされていれば、この手口を疑うべきです。
第512条(f)の損害賠償責任とLenz判決
虚偽申請は罰則が無いわけではありません。第512条(f)は、侵害していると故意に重大な虚偽の申告をした者に、相手が被った損害(訴訟費用と弁護士費用を含む)の賠償責任を負わせます。米第9巡回区控訴裁判所のLenz v. Universal事件では、権利者は削除通知を送る前にフェアユース(公正な利用)に当たらないかを検討しなければならないと判断されました。Googleのヘルプには、フェアユースで保護されたコンテンツの削除を求めた企業が、費用と弁護士費用の支払いを命じられ、10万ドルを超える支払いに同意した例も載っています。一方でLenz判決は、申立人が侵害だと主観的に信じていたかで判断する基準を採っており、悪意の立証は簡単ではありません。米国での訴訟は日本の企業には費用も時間もかかるため、512条(f)は最後の手段と考え、先に反論通知で復元を図るのが現実的です。
申請された側がとる3つの対処
- Googleから届いた通知と、Lumenで閲覧を申請した通知の全文で、申立人・対象URL・「元の著作物」とされたURLを確認します。
- 自社が先に公開した証拠(CMSの公開履歴、Wayback Machineの保存日時、制作時のファイル)を集め、反論通知を出します。YouTubeなどでは10〜14営業日で復元され、Google検索では再表示されることがあります。
- 同じ申立人から繰り返し通知が来る場合は、記録をまとめてGoogleとホスティング事業者に報告し、米国の弁護士に512条(f)の請求を相談します。
削除された期間に失った流入は、Search Consoleのページ単位の推移で把握できます。見方はサーチコンソールとは?できること・設定手順とSEO改善への使い方【2026年時点】を参照してください。
日本の企業・サイト運営者への影響
DMCAは米国法で、日本の裁判所を直接縛るものではありません。それでも日本の運営者に関わるのは、GoogleやYouTubeといった米国企業が、世界中のコンテンツにこの手続きを適用しているためです。
日本の情報流通プラットフォーム対処法との違い
日本で同じ役割を担うのは、旧プロバイダ責任制限法です。2025年4月に改正法(令和6年法律第25号)が施行され、正式名称が「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」(通称:情報流通プラットフォーム対処法)に変わりました。大規模なプラットフォーム事業者に、削除申出への対応の迅速化と運用状況の透明化を義務づける法律で、2025年4月にはGoogle LLC、LINEヤフー、Meta Platforms、TikTok Pte. Ltd.、X Corp.の5社が対象の事業者に指定されています。つまりGoogleやXには、DMCAの窓口とは別に日本の法律に基づく削除申出の窓口もあります。プラットフォーム側の削除判断の仕組みはコンテンツモデレーターとは?コンテンツモデレーションの仕事内容とAI判定・法規制で扱っています。
大きな違いは、DMCAが著作権に限った「通知すれば原則削除」の手続きであるのに対し、日本の法律は誹謗中傷なども含む権利侵害全般を対象に、事業者の責任の範囲と発信者情報の開示を定めている点です。日本のサーバーにある盗用サイトには、DMCA通知ではなく、日本の法律に基づく送信防止措置の依頼や発信者情報開示請求を使います。Google検索から外すだけならDMCA申請、相手のサイトそのものを止めたいなら国内の手続き、と使い分けます。
米国向けサービスを運営するなら指定代理人の登録
日本企業でも、米国のユーザーが投稿できるサービスを運営していれば、自社が削除通知を受ける側になります。セーフハーバーを受けるには、通知の受付窓口(指定代理人)を米国著作権局のDMCA指定代理人ディレクトリに登録しておく必要があります。著作権局のFAQによると、登録や修正には6ドルの手数料がかかり、3年ごとに更新しないと登録が切れます。投稿機能のあるアプリやSaaSを海外に出すときの確認項目に入れておくべきです。
DMCA申請を使うべきでない場面
DMCA申請は手軽な分、出してはいけない場面がはっきりしています。批評や報道のための引用、パロディなどフェアユースに当たり得る利用、自社に権利があるか不確かな素材(外注先が作った画像、ライセンスの範囲が曖昧なフリー素材)、社名や商品名を使われただけの商標の問題です。フェアユースや引用に当たり得る利用では、(v)の「無許諾の利用だと信じている」という陳述が成り立ちません。権利の帰属が不確かな素材や商標の問題では、(vi)の権限の陳述が偽りになりかねません。外注先が作った素材は、譲渡の条項がなければ権利が制作者側に残っているため、申請前に契約書を確かめます。受託制作の権利の帰属はWebデザインに著作権はある?判例で見る模倣の線引きと制作契約・ポートフォリオ掲載で整理しています。どちらも反論通知で覆されたうえに、512条(f)で責任を問われる恐れがあります。盗用対策を含むSEO全体の進め方を見直したい場合は、SEO内部施策・キーワード設計の支援もご相談いただけます。
よくある質問
DMCAの罰金はいくらですか?
条文によって違います。第1201条(コピーガードの回避)の違反は、民事では1件あたり200〜2,500ドルの法定損害賠償です(第1203条)。営利目的の故意の違反は、初回で50万ドル以下の罰金か5年以下の拘禁またはその両方、2回目以降は100万ドル以下か10年以下またはその両方です(第1204条)。虚偽の削除通知には罰金の定めは無く、第512条(f)の損害賠償責任を負います。無断転載そのものの賠償は、DMCAではなく米国著作権法の第504条などで決まります。
DMCAサービス(DMCA.com)とは何ですか?
DMCA.comは法律でも政府機関でもなく、コンテンツ保護サービスを販売する民間企業です。サイトに「DMCA Protected」のバッジを表示する保護サービスや、削除申請の代行を提供しています。Google・YouTube・Xへの削除申請は、こうしたサービスを使わなくても権利者が無料で直接出せます。
DMCAレポートとは何ですか?
削除された検索結果の代わりに表示される、Lumenで公開された削除通知のことを指す場合がほとんどです。公開ページには申立人名と対象ドメイン、URLの件数が載り、自サイト宛ての通知があるかもLumenで調べられます。
DMCA申請に費用はかかりますか?
Google・YouTube・Xへの削除申請と反論通知は無料です。費用がかかるのは、代行サービスや弁護士に依頼する場合と、米国でサービスを運営して指定代理人を登録する場合(6ドル・3年ごとに更新)です。
DMCA侵害・違反になるのはどんな行為ですか?
著作物を無許諾でアップロード・転載して削除通知の対象になる行為と、第1201条が禁じるコピーガードの回避や回避ツールの提供が代表例です。画像のクレジットや透かしといった著作権管理情報を消したり書き換えたりする行為も第1202条違反で、1件2,500〜25,000ドルの法定損害賠償の対象です。引用の要件を満たさない転載や、他人のソースコードの無断利用も通知の対象になり得ます。