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なぜなぜ分析とは?やり方5ステップと記入例・事例、トヨタの原典と向かない場面

なぜなぜ分析とは?やり方5ステップと記入例・事例、トヨタの原典と向かない場面

なぜなぜ分析は、起きた問題に「なぜ」を重ねて原因をさかのぼり、再発を止める打ち手が打てる地点まで掘り下げる手法です。英語圏では5 Whys(5回のなぜ)と呼ばれ、トヨタ生産方式を築いた大野耐一が部下に説いた「Ask ‘why’ five times about every matter.(何事にも5回なぜを問え)」が出発点として知られています。この記事では、トヨタの公式記事に載った5段の例、そのまま使える記入フォーマット、「確認不足」で止めないための判定基準、そして医療安全の研究者による批判と、VTA(バリエーションツリー分析)や特性要因図と組み合わせる場面までを、一次資料に当たって整理します。

まとめ:なぜなぜ分析のやり方と使いどころの要点

  • 手順は「問題を事実で1文にする→現場と記録で事実を集める→なぜを重ねて分岐させる→逆読みで因果を確かめ止める地点を決める→真因ごとに対策・期限・効果確認を決める」の5段です。
  • 5回は目安です。トヨタの公式記事の例でも、止めた地点は「ポンプにフィルターが付いていない」という、設備に手を入れれば再発を断てる原因でした。
  • 「確認不足」「注意不足」「意識が低い」で止めた分析は未完成です。人の注意に頼らない対策が打てる原因まで掘ります。
  • 主語を人にした問い(なぜあなたは間違えたのか)は吊るし上げになり、事実が集まらなくなります。問うのは手順・設備・情報の流れです。
  • 原因が何本も絡む問題、時間の流れの中で判断が積み重なった事故には単独で使いません。特性要因図で洗い出す、VTAで時系列の逸脱を拾う、といった前処理と組み合わせます。
  • ISO 9001(JIS Q 9001:2015)の10.2.1が求めるのは「不適合の原因を明確にする」ことで、なぜなぜ分析という手法を指定してはいません。規格対応のためだけに形式をそろえる必要はありません。

なぜなぜ分析の意味とトヨタ生産方式での原典

なぜなぜ分析は、目の前の不具合を直す処置(修正)で終わらせず、同じ不具合を生んだ仕組みのほうを特定するために使います。「直したのにまた起きる」を断つのが目的です。

なぜなぜ分析の原典として挙げられるのは、大野耐一『トヨタ生産方式 脱規模の経営をめざして』(ダイヤモンド社、1978年5月、248頁、ISBN 978-4-478-46001-6)です。トヨタ自動車自身も、グローバルサイトの2006年3月の記事でこの教えを紹介し、大野が部下に「Observe the production floor without preconceptions(先入観を持たずに現場を観察せよ)」「Ask ‘why’ five times about every matter.」と助言していたと書いています(Toyota Global Site「Ask ‘why’ five times about every matter.」2006年3月、ウェブアーカイブ)。

トヨタ公式記事に載った5段の例:ロボットの停止からフィルターまで

同じ記事は、停止したロボットを題材に次の5段を示しています。訳は筆者によるものです。

段 問い 答え
1 なぜロボットは止まったか 回路が過負荷になりヒューズが切れた
2 なぜ過負荷になったか 軸受の潤滑が足りず固着した
3 なぜ潤滑が足りなかったか オイルポンプが十分に油を循環させていない
4 なぜ循環していないか ポンプの吸い込み口が金属の削りくずで詰まった
5 なぜ削りくずで詰まったか ポンプにフィルターが付いていない

この表から読み取れる要点は2つあります。1つ目は、1段目の「ヒューズ交換」や4段目の「詰まりの清掃」でも機械は動くものの、それだけでは削りくずが再び入り込む条件が残るということです。この例では、その条件に対処する案としてフィルターの設置が考えられます。2つ目は、5段目の答えが設備の構造そのもので、対策(フィルターを付ける)が人の注意に依存しないことです。止める地点の良し悪しは回数ではなく、この性質で決まります。同じ記事には大野の言葉として「The root cause of any problem is the key to a lasting solution(どんな問題も根本原因こそが長続きする解決の鍵だ)」も載っています。

「5回」は目安:回数より「行動に移せる文」

5という数字に決まりはありません。3段で設備の欠陥に行き着くこともあれば、組織の仕組みまで7段、8段とかかることもあります。NHSのハンドブックは、止める地点を「行動に移せる文(actionable statement)」と呼び、5回より前に着くことも、もう少しかかることもあると書いています。行動に移せる文にたどり着けないときは、適切な人が参加していない可能性があるとも指摘しています。「景気が悪い」「人手不足だから」のように、自分たちでは動かせない原因で止めると対策が書けません。逆に、打てる対策が見つかったのに「まだ3回だから」と掘り続けると、因果のこじつけが始まります。止めてよいかの確認は、後述の4つの問いで行います。

なぜなぜ分析のやり方5ステップ

ここでは会議でも1人でも同じ順に進められるよう、作業単位で書きます。英国のNHS Englandが改善ハブで公開している学習ハンドブック「Five whys」は、1回のセッションの所要時間を45分から1時間とし、参加者を現場で直接関わった人にするよう勧めています。

ステップ1:日時・場所・現象・数量による問題の具体化

出発点の1文が曖昧だと、その後のなぜが全部ぼやけます。「品質が悪い」ではなく「10月14日の2直、3号ラインで成形品の外観キズが42個発生し、うち5個が出荷検査を通過した」と書きます。数と場所が入ると、次の「なぜ」が現物に向かいます。発生と流出が両方あるときは、この時点で「なぜキズが付いたか(発生)」と「なぜ検査で止まらなかったか(流出)」の2本に分けて始めます。

ステップ2:現場・現物・記録による事実収集と推測の区別

大野が説いた「先入観を持たずに現場を観察せよ」はこの段階のことです。設備のログ、作業記録、現物の写真、関係者への聞き取りを先にそろえ、分析シートには事実と推測を区別して書きます(推測には「仮説」と付ける)。前述のNHSのハンドブックも「All answers should be factual and witnessed by the member of the team providing the answers(答えはすべて事実で、答える本人が目撃したものであること)」と求めています。現場に行って確かめる考え方は三現主義として整理されています。

ステップ3:「なぜ」による原因の掘り下げと複数要因の分岐

1段目の答えを主語にして、次の「なぜ」を立てます。1つの問いに答えが2つ出たら、無理に1本に絞らず枝を分けます。トヨタの例は1本の鎖ですが、現実の不具合は「手順書が古い」と「治具が摩耗していた」が同時に効いていることが珍しくありません。原因候補の整理が難しくなったら、なぜなぜ分析を続ける前に特性要因図で要因を整理します。切り替えは枝の本数ではなく、原因の関係を把握できているかで判断します(後述)。

ステップ4:逆読みと証拠による因果関係の確認・分析終了の判断

最下段から上へ「〜だから、〜になった」と読み上げます。トヨタの例なら「フィルターが付いていない、だから削りくずが吸い込み口に詰まった、だから油が循環しない…」と逆読みして論理の飛躍を探します。ただし、自然につながるだけでは因果関係の証明にならず、各段を記録・現物・検証結果で裏づける必要があります。どこかで「だから」が言えない段は、論理が飛んでいるか、事実の確認が足りていません。つながりを確かめたら、後述の「止めてよい原因かを確かめる4つの問い」で止める地点を決めます。

ステップ5:原因別の対策・担当・期限・効果確認の設定と標準への反映

真因1つに対策を1つ以上対応させ、担当者と期限、効果をどう測るか(例:3か月間の対象件数と不良件数)を決めます。Nakagawa・Shibata(2016)は、設備設計・保全、作業手順・技能管理、個人作業の信頼性向上の順に対策を優先する考え方を示しています。ただし、設備変更でも再発防止を保証できるわけではなく、対策後の効果確認が必要です。効果が確認できたら作業標準や設計基準に反映し、似た工程にも同じ対策を広げます(横展開)。紙の記録が追えずに同じ分析を繰り返している現場では、不良や設備停止の記録を生産管理システム開発で一元化しておくと、ステップ2の事実集めにかかる時間が縮みます。

なぜなぜ分析のテンプレート(フォーマット)と記入例

Excelでもホワイトボードでも、項目は次の8つで足ります。横に「なぜ1→なぜ2…」と伸ばす形式と、上から下へ書く形式がありますが、枝分かれを書きやすいのは横に伸ばす形式です。記入例は架空の事務ミスで作りました。

項目 書く内容 記入例(請求書の金額誤り)
問題 いつ・どこで・何が・どれだけ 9月分請求書で取引先A社に単価1,200円を1,020円で請求
なぜ1 問題が起きた直接の理由 見積書から単価を手で転記した際に打ち間違えた
なぜ2 なぜ1が起きた理由 請求システムが見積データと連携しておらず手入力になる
なぜ3 なぜ2が起きた理由 見積はExcel、請求はSaaSで、取引先コードが別体系
流出のなぜ なぜ発行前に止まらなかったか 承認者は合計金額だけを見て単価を照合しない運用
真因 逆読みが成立し対策が打てる原因 取引先コード不統一による手入力/単価照合の手順なし
対策・担当・期限 真因ごとに1つ以上 コード統一とCSV取込(経理B・11月末)/承認時の差分表示
効果確認 対象件数・判定条件・期間 3か月間の対象件数と単価誤り件数を記録

原因は表現だけを具体化するのではなく、事実で裏づけます。以下は確認すべき原因候補の例であり、右欄の状況が実際にあったと確認できた場合に記載します。

避けたい表現 言い換えの例
確認不足だった 照合する手順が決まっていなかった
注意が足りなかった 似た数字が並ぶ画面で目視に頼っていた
意識が低い 誤りが起きても誰にも分からない仕組みだった
忙しかった 月末2日間に処理が集中し1件あたり2分で処理していた
ルールを守らなかった ルールが手順書になく口頭で引き継がれていた

なぜなぜ分析の事例:製造の品質不良・事務・IT障害

現場ごとに、止める地点の見つけ方が少しずつ違います。ここでは3つの典型を、架空の事例で示します。

製造業の品質不良:発生原因と流出原因の並行分析

ステップ1の外観キズの例では、発生側が「なぜキズが付いた→取り出し時に金型と接触→取り出しロボットの位置が0.5mmずれていた→位置の点検項目が日常点検表にない」、流出側が「なぜ検査で止まらなかった→照明が暗く浅いキズが見えない→検査台の照度基準がない」と進みます。発生側だけを直すと、次に別の原因でキズが出たときにまた流出します。品質不良では、発生と流出の2本をそろえて初めて再発防止が閉じます。検査工程そのものの設計は製造業の品質管理の記事で扱っています。

事務・間接部門のミス:個人の不注意から入力の仕組みへ

前節の請求書の例では、単価1,200円を1,020円で入力した事実から出発し、「担当者が間違えた」で止めずに、手入力が必要になった仕組みと単価照合の運用を調べました。事務ミスの分析は、なぜ間違えうる状態だったのか(手入力、似た画面、照合手順なし)へ進めるかどうかで結果が分かれます。人の注意に頼らない対策の作り方はヒューマンエラーの記事に、エラーの種類ごとに整理しています。

IT・ソフトウェア開発の障害:ポストモーテムでの使い方

本番障害の振り返り(ポストモーテム)でも、なぜなぜ分析はよく使われます。例えば「設定ファイルの環境変数を誤ってAPIが30分停止」なら、「なぜ誤った値が入った→手で書き換えた→検証環境と本番で値の持ち方が違う→設定値の妥当性検証がデプロイ工程にない」と進み、対策はCIでの必須項目・型・許容値・環境別設定の検証になります。障害対応の工程全体(検知・切り分け・復旧・振り返り)はインシデント管理の記事を参照してください。

「確認不足」で止めない真因の判定と吊るし上げを防ぐ進め方

進め方の面では、原因を掘り下げる途中で止めることと、責任追及によって事実が集まらなくなることを防ぎます。

止めてよい原因かを確かめる4つの問い

真因の候補が出たら、次の4つを順に確かめます。1つでも「いいえ」なら、もう1段掘るか、事実を集め直します。

  1. 最下段から「だから」で読み上げて、全段がつながるか
  2. その原因を取り除けば、同じ現象が起きないと説明できるか
  3. 対策が、人の注意や意識の向上に頼らずに書けるか
  4. 自部門か、依頼できる相手の手で対策が打てるか

3番目では、対策が注意喚起だけになっていないかを確認します。「確認不足」「注意不足」で止めた分析は、対策が「確認を徹底する」「注意喚起する」になり、同じ人が同じ状況に置かれれば同じミスが起きます。

吊るし上げ・パワハラにしない問い方

「なぜあなたは間違えたのか」と主語を人にした問いを重ねると、答える側は責められていると感じ、事実を隠すようになります。分析の材料である事実が集まらなくなるので、手法として失敗します。問いの主語は手順・設備・情報の流れに置きます。

人を責める問い 仕組みを問う言い換え
なぜあなたは確認しなかったのか なぜ確認しなくても次の工程に進めたのか
なぜ手順を守らなかったのか 当時の作業条件と手順はどこで合わず、どのように判断されたのか
なぜ報告が遅れたのか なぜ異常に気づいてから報告するまで時間がかかる流れなのか

NHSのハンドブックは、進行役が中立・客観・公平を保つこと、安全な場で行い参加者が率直に話せるようにすることを求めています。会議の冒頭で「責任追及の場ではない」と宣言し、当事者には事実の説明役をお願いする形にすると、聞き取りが進みます。事故は1人の失敗ではなく複数の防護の穴が重なって起きる、という見方はスイスチーズモデルの記事で詳しく扱っています。

なぜなぜ分析が向かない場面と特性要因図・FTA・VTAとの使い分け

なぜなぜ分析は、1つの現象から原因を1本ずつたどるのが得意な手法です。裏を返すと、原因が多数絡む問題や、時間の流れの中で判断が積み重なった事故には単独で使わないほうが安全です。

手法 向く問題 出発点 なぜなぜ分析との関係
なぜなぜ分析 原因を1本ずつ深く掘る 1つの現象 本体
特性要因図 要因を広く洗い出す 1つの結果(特性) 先に広げ、有力な要因を掘る
FTA 複数要因の組み合わせ 望ましくない事象 AND・ORの論理で網羅を確かめる
VTA 人の判断が絡む事故 事故までの時系列 逸脱した点をなぜなぜの起点にする
ロジックツリー 課題の分解・打ち手の検討 目的や課題 原因分析より解決策の分解向き

特性要因図はQC7つ道具の1つで、品質管理の基本手法の中での位置づけは品質管理と品質保証の違いの記事で、ロジックツリーの作り方はロジックツリーの例題で解説しています。相関と因果を取り違えない注意点は因果分析の記事にまとめました。

医療安全からの批判:Card(2017)が挙げた3つの問題

5 Whysに対する代表的な批判が、Alan J. Cardによる論説「The problem with ‘5 whys’」(BMJ Quality & Safety 2017年26巻8号671〜677頁)です。Cardは、5 Whysが問題の探索を大きく単純化しすぎるとして、次の3点を挙げています。

  • どの問題でも、利用者を1本の分析経路に押し込む
  • 対策の的を1つの根本原因に絞らせる
  • 因果の鎖の最も遠い端(5番目のなぜ)が、介入する場所として本質的に最も有効だと決めつける

論文では、患者取り違えによる投薬ミスの例で「リストバンドを確認しなかった→リストバンドが無かった→病棟のプリンターが壊れていた→ラベルが詰まった→製品設計が悪い」という鎖を示し、別のチームなら全く異なる、同じくらい妥当な5つのなぜを出せると指摘しています。教室での教材としては深く掘る必要性を示す力があると認めながら、結論は「As a tool for conducting RCAs, however, especially in the area of patient safety, the use of ‘5 whys’ should be abandoned.(根本原因分析の道具としては、特に患者安全の領域では、5 Whysの使用をやめるべきだ)」です。

ここからは本記事の判断です。Cardの結論は医療の事故調査についてのものなので、製造設備の分析までやめる根拠にはなりませんが、3つの問題はどの業種でも起こります。原因が物理的に1本につながると現物で確かめられる問題では、トヨタの例のとおり有効に働きます。一方、多職種が関わる医療事故や、複数のシステムが絡む大規模障害では、なぜなぜ分析だけで報告書を書くと「たまたま選んだ1本の鎖」が結論になります。原因候補の広がりを整理するなら特性要因図、判断や出来事の順序を整理するならVTAを先に使い、その後に検証する原因を掘り下げる、という使い分けを本記事では勧めます。

VTAとの併用手順:時系列の逸脱点の特定と原因の掘り下げ

VTA(Variation Tree Analysis、バリエーションツリー分析)は、事故に至る経過を時系列の図にし、通常の状態から外れた状況・作業・判断・行動を「変動要因」として拾い出す手法です。図は下から上へ時間が進み、頂点に事故が置かれます。三菱ケミカルと三菱総合研究所の研究者による論文(Nakagawa M., Shibata T., Chemical Engineering Transactions 48巻、2016年、781〜786頁)は、同社がヒューマンファクターによる事故の調査で、まずVTAで事故の要所を特定し、その変動要因を起点になぜなぜ分析で原因を掘る、という2段構えを使っていると報告しています。

同じ論文は、社内調査で分かった課題として、分析に時間がかかる、根本原因を特定しにくい、ときに見当違いの対策につながる、なぜなぜ分析が個人の技量に左右されやすい、の4点を挙げ、次の改善を示しています。

  • なぜなぜ分析の起点を、VTA上で最初に通常から外れた点(最初の逸脱ノード)に絞る。全部の逸脱を掘ると工数がかかり、重要な問題が埋もれるため
  • 起点の種類に合わせた7種類のテンプレート(異常現象、操作の失敗、判断の誤り、スリップ、ラプス、違反、コミュニケーションエラー)を用意し、分析者による差を減らす
  • 人のエラーは避けられない前提に立ち、対策は製造プロセスの設計と保全の改善を最優先に、次に作業手順と技能の管理、最後に個人の作業の信頼性向上の順で検討する

VTAの源流は、J. LeplatとJens Rasmussenの論文(Accident Analysis & Prevention 16巻2号、1984年、77〜88頁)で、労働災害の経過を「variation tree」で説明する方法として示されました。日本の医療安全では、時系列の図から始める分析手法として、河野龍太郎(ImSAFER研究会 会長)が提案したImSAFERがあり、時系列事象関連図の作成、問題点の抽出、背後要因の探索から対策の評価までの7手順で進めます。時系列で事実を並べてから原因を掘るという順序は、VTAとなぜなぜ分析の併用と同じです。

ISO 9001:2015の是正処置:原因分析の要求と手法選択の自由度

品質マネジメントシステムの日本産業規格JIS Q 9001:2015(ISO 9001:2015の翻訳)は、10.2.1 b)で不適合の再発を防ぐために「その不適合をレビューし,分析する」「その不適合の原因を明確にする」「類似の不適合の有無,又はそれが発生する可能性を明確にする」ことを求めています。本文に「なぜなぜ分析」や「根本原因」という語は出てきません。どの手法で原因を明確にするかは組織に任されています。なお、ISO 9001は2026年版へ改訂されており、認証機関LRQAは発行日を2026年9月16日、移行期間を約3年と案内しています。ここでは日本語の本文を確認できる2015年版の文言で示しました。

同じ箇条には「是正処置は,検出された不適合のもつ影響に応じたものでなければならない」とも書かれています。軽微な不適合すべてに長いなぜなぜ分析を課すのは規格の要求ではありません。不適合ごとに原因と類似事象を確認して是正処置の必要性を評価し、その影響に応じて分析の深さを決めます。認証審査での不適合と是正処置報告書の書き方はISMSの不適合の記事で扱っています。

よくある質問

なぜなぜ分析と5 Whys(5why)は同じものですか?

同じ手法を指します。トヨタの大野耐一の「Ask ‘why’ five times」が英語圏に伝わって5 Whys(Five Whys)と呼ばれ、日本では「なぜなぜ分析」「なぜを5回」と呼ばれています。書籍や研修によっては、日本で独自に体系化した手順(発生と流出を分ける、記入シートを使う等)までを含めて「なぜなぜ分析」と呼ぶことがあり、英語のFive Whysより手順が細かい場合があります。考え方の核である「原因を重ねて問い、再発防止の打ち手が打てる地点まで掘る」は共通です。

なぜなぜ分析に使えるツールはありますか?

専用ツールは必須ではありません。1件ずつならExcelやGoogleスプレッドシートに本文のテンプレートの8項目を列として作れば十分で、枝分かれが多いときはホワイトボードやオンラインホワイトボードに付箋で横に伸ばすほうが書きやすくなります。件数が増えて過去の分析を検索したい、同じ設備の不具合を横断して見たいという段階になったら、不具合記録と一緒に分析結果を残せる品質管理や設備保全の仕組みに載せるのが向いています。

日常生活の事例でなぜなぜ分析を練習できますか?

できます。例えば「朝の電車に乗り遅れた」なら、なぜ→家を出るのが5分遅れた、なぜ→鍵を探していた、なぜ→鍵の置き場所が決まっていない、で止まり、対策は「玄関に鍵の定位置を作る」です。「寝坊した→だらしないから」と自分の性格で止めず、置き場所や段取りのような変えられる仕組みにたどり着く練習になります。止める地点の4つの問いをそのまま当てはめてみてください。

なぜなぜ分析が難しいと言われるのはなぜですか?

止める地点の判断と、事実の確認の2つに経験が要るためです。浅すぎると「確認不足」で止まり、深すぎると「会社の方針」「景気」など手の届かない原因に行き着きます。答えを推測で埋めると、もっともらしいのに事実と違う鎖ができあがります。三菱ケミカルの研究者も個人の技量に左右されやすいと報告しており、同社はテンプレートを7種類用意して差を減らしています。

VTAとなぜなぜ分析はどう違いますか?

VTAは事故に至るまでの経過を時系列で図にし、通常から外れた判断や行動を拾い出す手法で、なぜなぜ分析はその1点を起点に原因を深く掘る手法です。時系列の整理と原因の掘り下げがどちらも必要な場合に、併用が選択肢になります。化学プラントの事故調査では、VTAで最初の逸脱点を特定し、そこからなぜなぜ分析を始める2段構えが報告されています。人の判断や出来事の順序が関わる事故ではVTAとの併用を検討します。

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