ヒューマンエラーとは、意図しない結果を生じる人間の行為のことです。押し間違い、やり忘れ、思い込みによる判断の誤りなど、本人にそのつもりがないのに好ましくない結果につながった行動を指します。厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」は、労働災害の8割に人間の不安全な行動が含まれていると紹介しています。
この記事では、定義を厚生労働省と英国安全衛生庁(HSE)の文書で確認し、スリップ・ラプス・ミステイク・違反の4分類と、建設現場で使われる12分類の出典と使い分けを整理します。そのうえで、エラーを誘発する条件、実際の障害報告を使った分解例、類型ごとに効く対策と効かない対策まで解説します。
まとめ:ヒューマンエラーの意味・種類・対策の要点
- 意味:意図しない結果を生じる人間の行為。故意にルールを破る「違反」は別に扱うのが普通
- 4分類:英国HSEは、実行の誤り(スリップ)、記憶の抜け(ラプス)、判断の誤り(ミステイク)の3種のエラーと、意図的な違反に分ける
- 12分類:労働安全衛生総合研究所の高木元也氏による、建設現場の災害を「なぜ起きたか」で分ける分類。無知・未経験から単調作業による意識低下まで
- 原因:本人の注意力だけでなく、作業環境・作業負荷・組織・個人・設備の5系統の条件がエラーの頻度を上げる
- 対策:スリップとラプスは設計と手順の工夫、ミステイクは情報と訓練、違反はルールそのものの見直しで減らす。「注意しろ」と呼びかけるだけでは、経験豊富な人も起こすスリップに備えられない
以下、定義、分類、原因、事例、対策の順に根拠を示します。
ヒューマンエラーの意味と「違反」との線引き
職場のあんぜんサイトは、ヒューマンエラーを「意図しない結果を生じる人間の行為」と説明したうえで、分かりやすく言えば「やるべきことが決まっている」ときに「やるべきことをしない」あるいは「やってはならないことをする」と後から言われる行動だとしています。「見間違えた」「やり忘れた」のように過去形で語られ、結果が好ましくないときに初めてエラーと呼ばれる、という点が要です。
英国の安全衛生庁(HSE)の指針『Reducing error and influencing behaviour』(HSG48、第2版1999年)は、同じ概念をもう少し厳密に定義しています。ヒューマンエラーとは、次の3条件がそろった行動または判断です。
- 意図したものではなかった
- 受け入れられている基準からの逸脱を含む
- 望ましくない結果を招いた
どちらの文書も、故意にルールや手順から外れる行動は「違反」として区別しています。区別する理由は、対策がまったく違うからです。エラーは意図しない行動や判断の誤りで、違反は規則や手順から意図的に逸脱する行動です。現場では両者が「ヒューマンミス」「人的ミス」とひとくくりにされがちですが、ここを分けないと、次の章で見るように効かない対策を選ぶことになります。
職場のあんぜんサイトは「ヒューマンエラーは原因ではなく結果である」とも述べています。事故報告書の原因欄に「ヒューマンエラー」と書いて終えるのは、結果を原因として扱っていることになり、再発防止にはつながりません。
ヒューマンエラーの種類:スリップ・ラプス・ミステイクと違反
代表的な分類は、心理学者James Reasonの研究を土台にした4分類です。HSG48はこれを人的失敗(human failure)の分類として採用しており、エラーをスリップ・ラプス・ミステイクの3種に、違反を別系統に置いています。
| 種類 | 何が起きるか | HSG48の例 | 主に効く対策 |
|---|---|---|---|
| スリップ | 計画は正しいが実行を誤る | 似たスイッチを押し間違える | 設備・表示の設計 |
| ラプス | 実行すべきことを忘れる | 給油ホースを外し忘れて発車 | 中断の削減・リマインダー |
| ミステイク | 誤った判断を正しいと信じる | 満液警報を誤報と判断 | 情報共有・訓練・手順 |
| 違反 | 意図的に規則から外れる | 機械の安全カバーを外す | ルールの見直し・監視 |
4つのうちどれかを見極めるには、「本人は何をしようとしていたか」と「その計画自体は正しかったか」の2点を確認します。計画が正しく実行だけ外れたならスリップかラプス、計画が誤っていたならミステイク、ルールを知ったうえで外したなら違反です。
慣れた作業で起きるスリップとラプス
HSG48によると、スリップとラプスは意識的な注意をあまり必要としない、慣れた作業(スキルベースの作業)で起きます。注意が一瞬それるだけで起き、最も経験があり、よく訓練され、意欲の高い人でも起こすエラーだと明記されています。スリップの例として、部品の混ざった箱から違う部品を取る、数字を写すときに桁を入れ替える、ボルトを締めすぎる、つまみを逆に回す、が挙げられています。
ラプスは、動作をし忘れる、作業のどこまで進んだか分からなくなるといった記憶の抜けです。HSG48の事例では、タンクローリーの運転手が積み込みの終盤に鳴った電話に出て、戻ったあとホースをつないだまま発車し、配管が破断して約1トンの液体が漏れました。中断が入るとラプスが起きやすいという典型です。
判断を誤るミステイク(ルールベース・知識ベース)
ミステイクは、間違ったことを正しいと信じて行うエラーで、計画を立てる、情報を評価する、結果を予測するといった頭の中の処理で起きます。HSG48はこれをさらに2つに分けています。
ルールベースのミステイクは、覚えている手順や慣れた解決策を、合わない場面に当てはめてしまうものです。HSG48の例では、タンクの充填に約30分かかると知っていた運転員が、配管の口径が太くなって充填が速くなっていたことを知らず、「こんなに早く満杯になるはずがない」と高液位警報を無視してあふれさせました。知識ベースのミステイクは、前例のない状況で一から推論したときの診断や計算の誤りです。経験者の判断でも、慣れた規則の適用なのか、未知の状況での意識的な推論なのかによって分類は変わります。
こうした段階の区別は、Jens Rasmussenが1983年に学術誌IEEE Transactions on Systems, Man, and Cyberneticsで示した、スキル・ルール・知識の3段階で人の行動を表すモデル(SRKモデル)に基づいています。職場のあんぜんサイトも、安全分野でよく紹介される分類としてSRKモデルを挙げています。
違反の3区分:日常的・状況的・例外的
HSG48は、違反の多くは仕事を片付けたいという動機から起き、故意の妨害はごくまれだとしたうえで、3つに分けています。
- 日常的違反:規則を破ることが職場の普通のやり方になっている状態。近道したい、規則が厳しすぎる、規則がもう当てはまらないと思っている、取り締まりがない、新人が悪習をそのまま覚える、が背景
- 状況的違反:時間の圧力、人手不足、適切な道具がないといった、その場の事情で規則を守れない状態
- 例外的違反:トラブルが起きた場面で、問題を解くために規則を破るしかないと感じて起きる、まれな違反
HSG48は日常的違反の例として、オランダ国鉄の調査で従業員の80%が「規則は主に責任を負わせるためのもの」と考え、95%が「規則をすべて守ると仕事が時間内に終わらない」と考えていた結果を紹介しています。違反を個人のモラルの問題として片付けると、この構造が見えなくなります。
ヒューマンエラーの12分類と使い分け
「ヒューマンエラーの12分類」は、労働安全衛生総合研究所の高木元也氏による分類です。一般財団法人中小建設業特別教育協会の解説ページは、高木氏によればヒューマンエラーの原因は12に分けられるとして、建設現場の災害事例とともに紹介しています(参考文献は2007年刊行の共著『安全活動にカツを入れる本』)。同研究所の業績一覧にも、高木氏の2018年の記事「建設現場の労働災害を引き起こす人間の12の特性」(『戦略経営者』Vol.33 No.4)が載っています。
| No. | 分類 | 中身 |
|---|---|---|
| 1 | 無知、未経験、不慣れ | 作業の危険がどこにあるか分からない |
| 2 | 危険軽視、慣れ | 危険と分かっていて不安全な行動をとる |
| 3 | 不注意 | 作業に集中し、ほかに注意が向かない |
| 4 | 連絡不足 | 安全指示が正しく伝わらない |
| 5 | 集団欠陥 | 「工期第一、安全第二」の雰囲気 |
| 6 | 近道・省略行動本能 | 面倒な手順を省いて効率を優先する |
| 7 | 場面行動本能 | 注意が一点に集中し周りを見ずに動く |
| 8 | パニック | 驚き・慌てで適切な行動がとれない |
| 9 | 錯覚 | 見間違い・聞き間違い・思い込み |
| 10 | 中高年の機能低下 | 身体能力の低下を自覚せずに作業する |
| 11 | 疲労等 | 長時間労働や炎天下の作業で疲れる |
| 12 | 単調作業等による意識低下 | 単調な反復で意識が下がる |
たとえば「場面行動本能」の事例は、脚立の上で手に持ったボードを落とすまいと身を乗り出し、バランスを崩して墜落したケースです。高木氏が2023年2月に労働新聞社から出した『ヒューマンエラー災害に挑む』の目次では、項目名が一部更新され、「連絡不足」が「コミュニケーションエラー」、「中高年の機能低下」が「高年齢者の心身機能低下」、「錯覚」が「錯覚、思い込み」になっています。引用するときは、どちらの版の名称かをそろえてください。
4分類と12分類の使い分け
2つの分類は競合するものではなく、切り口が違います。4分類は「何が起きたか」(実行の誤りか、判断の誤りか、意図的か)を分け、12分類は「なぜその人がそうしたか」という背景の要因を分けています。12分類には、危険軽視や近道・省略行動のように、HSG48なら違反に入るものも含まれています。
実務では、まず4分類で型を決め、次に12分類で背景を探す順番が使いやすい方法です。たとえば足場から墜落した災害で、安全帯の使用規則を知りながら「この高さなら大丈夫」と使わなかったなら、型は違反、背景は危険軽視です。対策は本人への注意ではなく、HSG48が日常的違反に挙げる「規則の理由を説明する」「規則づくりに現場を参加させる」の方向になります。
また中小建設業特別教育協会の解説は、12分類はあくまで直接原因であり、さらに「直接原因を引き起こした原因(潜在原因)」を探すべきだとしています。近道のために切梁の上を渡って墜落した事例なら、安全通路が遠回りだった、工期がなく急いでいた、安全費が少なく通路を十分に設置できなかった、という潜在原因まで掘り下げます。
ヒューマンエラーの原因:エラーを誘発する5系統の条件
エラーの起きやすさは、本人の性格や注意力だけでは決まりません。HSG48は、エラーが起きやすくなる条件として次の5系統を挙げています。
| 条件 | HSG48が挙げる例 |
|---|---|
| 作業環境 | 暑さ・湿気・騒音・振動・暗さ・狭さ |
| 作業負荷 | 高負荷、高い覚醒が必要、単調な反復、中断の多さ |
| 社会・組織 | 人員不足、無理な勤務計画、同僚との対立、同調圧力 |
| 個人 | 訓練・経験不足、疲労、覚醒低下、家庭の問題、体調、飲酒 |
| 設備 | 分かりにくい表示や操作器、不正確な指示書・手順書 |
5系統はどれも職場の側で手を打てます。作業環境や設備だけでなく、「個人」に含まれる訓練不足や疲労にも、教育や勤務計画の見直しで対処できます。原因分析で個人の欄しか埋まっていないときは、残り4つの欄を点検し直してください。
意識レベルの5段階(橋本邦衛)とエラーの起きやすさ
職場のあんぜんサイトは、人間は適度な緊張のときにはエラーが少なく、緊張が過度でも少なすぎてもエラーが増えること、単調な監視業務では30分を超えると緊張が続かないことを指摘しています。この関係を段階で示したのが、日本大学生産工学部教授だった橋本邦衛氏の意識レベルの5段階です。厚生労働省と中央労働災害防止協会の「社会福祉施設における安全衛生対策マニュアル~腰痛対策とKY活動~」は、次の表で紹介しています。
| レベル | 意識の状態 | 生理的状態 | 信頼性 |
|---|---|---|---|
| 0 | 無意識 | 睡眠 | ゼロ |
| I | 意識ボケ | 疲労、眠気 | 0.9以下 |
| II | ノーマル | 定常作業時 | 0.99〜0.99999 |
| III | クリアー | 積極活動時 | 0.999999以上 |
| IV | 過緊張 | 感情パニック | 0.9以下 |
同マニュアルによると、日常の定常作業はほとんどレベルIIで処理されるため、レベルIIでもエラーしないような人間工学的な配慮が必要で、非定常の作業ではレベルIIIに切り替える必要があります。切り替えの手段として挙げられているのが指差し呼称で、1994年(平成6年)に鉄道総合技術研究所が行った実験では、何もしない場合に比べて誤りの発生率が約6分の1以下になったと紹介されています。夜間の監視や長時間の目視検査は、本人の努力とは関係なくレベルIに落ちやすい条件です。
「5つの要因」として語られるSHELモデル
「ヒューマンエラーの5つの要因」として紹介されることが多いのが、航空分野で生まれたSHEL(シェル)モデルです。国際民間航空機関(ICAO)の『Human Factors Training Manual』(Doc 9683、1998年初版)によると、SHELはSoftware(手順・記号など)、Hardware(機械)、Environment(環境)、Liveware(人)の頭文字で、1972年にEdwardsが考案し、1975年にHawkinsが図を改良しました。
中心に人(L)を置き、周りの手順(S)・機械(H)・環境(E)・他の人(L)との接点がかみ合っていないところでエラーが起きる、と考えます。真ん中のLと周りの4要素を合わせると5つになるため「5つの要因」と呼ばれます。ICAOのマニュアルは、人は最も重要で最も柔軟な要素である一方、能力のばらつきや限界が大きいので、周りの要素を人に合わせて設計しなければならないと説明しています。原因分析で「本人の不注意」以外の欄を埋める道具として使うのが基本です。
ヒューマンエラーの具体例:GitLab.comのデータベース削除(2017年)
ソフトウェア開発の現場で起きたヒューマンエラーの例として、GitLab社が2017年2月10日に公開した障害報告「Postmortem of database outage of January 31」があります。本人の操作ミスがきっかけでも、被害の大きさを決めたのは別の要因だったことがよく分かる事例です。
2017年1月31日、データベースのレプリケーション(複製)が止まり、エンジニアが復旧作業をしていました。そのエンジニアは副系(secondary)のデータディレクトリを消すつもりで、実際には主系(primary)で削除を実行してしまいます。1〜2秒後に気づいて止めたものの、約300GBのデータが消えていました。4分類でいえば、正しい操作を違う対象に行ったスリップです。
ところが、被害を広げたのはバックアップ側でした。報告書によると、定期バックアップはPostgreSQL 9.2用のツールで9.6のデータベースを取ろうとして失敗していました。失敗の通知メールはメール認証上の問題で受信側に拒否され、バックアップ失敗が把握されていませんでした。ディスクのスナップショットも有効になっておらず、手順を定期的に試験する担当者も決まっていませんでした。結果として、1月31日17時20分から23時30分(UTC)までに作られたデータが失われ、少なくとも5,000件のプロジェクト、5,000件のコメント、約700人のユーザーが影響を受け、復旧には18時間以上かかりました。
報告書は、主系と副系を取り違えた理由だけでなく、手順が自動化も文書化もされていなかったこと、バックアップの責任者がいなかったことまで「なぜ」を重ねています。また、削除したエンジニアの名前が社内文書に載っていたことについて、今後は名前を伏せる方針を示しました。1人の操作ミスが、何層もの防護の穴を抜けて大きな被害に届く構造は、スイスチーズモデルが説明する事故の形そのものです。
ヒューマンエラー対策:類型ごとに効く手と効かない手
職場のあんぜんサイトは、ヒューマンエラーの防止策を次の4つの方向で整理しています。
- 人が間違えないように人を訓練する
- 人が間違えにくい仕組み・やり方にする
- 人が間違えてもすぐ発見できるようにする
- 人が間違えてもその影響を少なくする
同サイトは「どんなに人を訓練しても間違いは避けられません」とも書いています。訓練は4つのうち1つにすぎず、残り3つは仕組みの側の対策です。対策の優先順位は、4分類に加え、背景要因や被害の重大性、既存の防護策を踏まえて決めます。
スリップ・ラプス対策:設備設計と作業手順の改善
HSG48は、スリップとラプスを防ぐために、設備を設計段階で間違えにくくすること、間違えても検出・修正しやすくすることを挙げています。誤った向きには差し込めないコネクター、押し間違えを防ぐスイッチの配置、本番環境だけ画面の色を変える設定などが該当します。こうした設計の考え方はフールプルーフと呼ばれます。
ラプスには、作業の中断を減らすことと、途中まで記入したチェックリストを見える場所に置くといった具体的な手がかりが効く、とHSG48は述べています。前述のタンクローリーの事例では、HSG48はホースをつないだまま発車できない防止装置が付いていなかった点を指摘しています。
ミステイク対策:情報共有と判断訓練
ミステイクは、本人が正しいと信じて行うので、設計だけでは防げません。HSG48は、訓練が実際に機能しているかを確かめること、まれにしか起きない判断の場面のために手順を書いておくこと、経験の浅い人や独立したチェックが必要な作業には監督を付けることを挙げています。充填タンクの事例のように、配管の変更が運転員に伝わっていれば防げたミステイクも多く、変更の連絡や交代時の引き継ぎも対策に含まれます。
違反対策:現場の実態に合うルールへの見直し
日常的違反について、HSG48は管理者がとるべき手として、違反が見つかりやすくする監視のほかに、不要な規則がないかを考える、規則と手順を実際に合ったものにする、規則の理由を説明する、規則づくりに現場を参加させる、を挙げています。窮屈な姿勢を強いる配置、反応の遅いソフトウェア、誤報の多い警報、読みにくく古い手順書は、手抜きを誘う設計要因としてHSG48に例示されています。
注意喚起とダブルチェックが効かない場面
「注意しろ」「気を引き締めろ」という呼びかけだけに頼る対策では、スリップとラプスへの備えは不十分です。HSG48自身が、スリップとラプスは最も経験があり意欲の高い人でも起こすと書いているからです。知識不足には具体的な情報提供や訓練、危険軽視による違反には規則の理由の説明など、背景に応じた対策が必要です。
ダブルチェックでは、相手の確認結果に誘導されず、それぞれが対象を確認する独立性が必要です。同じ資料を使うこと自体は、独立性を否定しません。GitLabの事例では、主系と副系の取り違えに加え、復旧手順の自動化・文書化やバックアップ失敗の検知にも問題がありました。確認を1回増やす前に、確認者が相手の結果に誘導されずに確認できるか、確認資料自体は正しいか、エラーが起きても被害を止める層があるかを点検してください。
事故後の分析:個人の行動を生む設計・手順・組織の検証
HSG48は、事故調査ではスリップやラプスが起こりうることを前提に、エラーの種類ごとの原因を考えるよう求めています。原因欄が「本人の不注意」で終わる報告書は、4分類の型も12分類の背景も特定していない状態です。なぜなぜ分析で「なぜ」を重ねるときも、人の行動で止めずに、設計・手順・組織まで掘り下げます。
報告が集まらなければ分析も始まりません。小さなヒヤリ・ハットを報告しても責められない職場の雰囲気は、心理的安全性の問題でもあります。ヒヤリ・ハットと重大事故の件数の関係については、ハインリッヒの法則とバードの法則の記事で原著の数字を確認できます。
よくある質問
ヒューマンエラーとは簡単に言うとどういう意味ですか?
本人にそのつもりがないのに、好ましくない結果につながってしまった人の行動のことです。職場のあんぜんサイトは「意図しない結果を生じる人間の行為」と説明しています。わざとルールを破る行動は「違反」と呼び、ヒューマンエラーとは分けて考えるのが一般的です。
ヒューマンエラーの4大タイプとは何ですか?
スリップ(実行の誤り)、ラプス(し忘れ)、ミステイク(判断の誤り)、違反(意図的な逸脱)の4つを指すことが多いです。英国HSEの指針HSG48は、前の3つをヒューマンエラー、違反を別系統として扱い、まとめて人的失敗と呼んでいます。
ヒューマンエラーの12分類は誰が考えたものですか?
労働安全衛生総合研究所の高木元也氏による分類として、中小建設業特別教育協会が紹介しています。具体的な項目は、本文の「ヒューマンエラーの12分類と使い分け」の表で確認できます。高木氏は2018年に「建設現場の労働災害を引き起こす人間の12の特性」という記事も書いており、2023年の著書では一部の項目名が更新されています。
ヒューマンエラーの三大要因は何ですか?
決まった「三大要因」の定義はなく、分け方は資料によって異なります。英国HSEのHSG48は、人の行動に影響する側面を仕事・個人・組織の3つで捉えるよう求めたうえで、エラーを起こしやすくする条件として作業環境、作業負荷、社会・組織、個人、設備の5系統を挙げています。原因を考えるときは、本人の注意力だけでなくこの5系統を順に点検するのが確実です。
ヒューマンエラーを起こしやすい人はいますか?
経験の浅さや疲労はエラーを増やす条件ですが、HSG48は、スリップとラプスは最も経験があり、よく訓練され、意欲の高い人でも起こすと明記しています。「起こしやすい人」を探して配置を変えるより、誰がやってもエラーが起きにくく、起きても被害が広がらない作業の設計を優先してください。