AWS Snowballは、AWSから届く頑丈なストレージ機器にデータを書き込み、AWSへ送り返してAmazon S3に取り込む「物理搬送型」のデータ移行サービスです。回線では数週間〜数か月かかるテラバイト級のデータを、配送の日数で運べるのが特徴でした。ただしSnowballは終わりつつあるサービスです。新規のお客様への提供は2025年11月7日に止まり、2026年12月31日には全商用リージョンでサポートが終了します。この記事では、終了で何が使えなくなるのか、既存の利用者が年内に何を終えるべきか、東京リージョンの料金、そしてこれから移行する場合の代替手段の選び方を順に説明します。
まとめ:AWS Snowballの現状と選ぶべき移行手段
- 2026年12月31日にサポート終了:Snowball Edge Storage OptimizedとCompute Optimizedの両方が対象で、翌日以降はSnowコンソールとSnowballのリソースにアクセスできません。GovCloudとADCリージョンで稼働中のジョブは対象外です。
- 新規は2025年11月7日から申し込めない:使えるのは既存のお客様だけです。Snowconeと旧3モデルは2024年11月12日に先に終わっています。
- 料金(東京):Storage Optimized 210TBのジョブ手数料は100TBまで1,800 USD、101〜210TBで3,200 USD(15日分込み、超過は1日250 USD)。S3へのインポートのデータ転送料は0 USD/GBです。
- これからの移行:回線が使えるならAWS DataSync(東京で0.0125 USD/GB〜)、回線が細いなら2026年2月に東京拠点ができたAWS Data Transfer Terminal(現時点ではEnterprise Support契約者向け)、エッジでの演算ならAWS Outpostsへ移ります。
- 判断の目安:実効80%の1Gbps回線で100TBは約11.6日です。移行期限に間に合うかを先に計算し、間に合わない量だけ物理搬送に回します。
既存利用者は終了前にジョブを完了できるか、新規利用者は回線転送と持ち込み転送のどちらが期限に間に合うかを確認してください。
AWS Snowballの意味と仕組み
英語のsnowballは「雪玉」の意味で、AWSでは物理デバイスでデータを運ぶサービスの名前です。日本語では「AWSスノーボール」と読みます。仕組みは単純で、AWSコンソールでジョブを作るとAWSからSnowball Edgeデバイスが届き、社内ネットワークにつないでデータをコピーし、送り返すとAWS側でS3へ取り込まれます。
回線を使わないので、帯域が細い拠点やネットワークにつながっていない現場から大量のデータを出すときに使われてきました。データセンターの閉鎖に伴う一括移行や、映像・センサーデータのアーカイブ移行が典型です。古い解説記事に出てくる80TBや100TBの機種は、すでに提供を終えた世代です。現在の機種は後述の2つだけです。
2026年12月31日のサポート終了と提供終了の経緯
Snowballの終了は一度に来たのではなく、2024年から3段階で進みました。最後の段階が2026年12月31日のサポート終了です。
2026年12月31日のサポート終了対象とアクセス停止範囲
AWSは英語版のAWS Snowball製品ページに「End of support notice」を出し、2026年12月31日に全商用リージョンでSnowballデバイスのサポートを終えると告知しています。対象はSnowball Edge Storage OptimizedとCompute Optimizedの両方です。2026年12月31日を過ぎると、AWS Snow ConsoleにもSnowballのリソースにもアクセスできなくなります。例外は、GovCloudとADCリージョンで現時点でアクティブなSnowジョブを持つお客様です。
注意したいのは、2026年10月26日時点で日本語版の製品ページにはこの告知が載っていないことです。日本語のページだけを見て「既存顧客ならまだ使える」と判断すると、終了日を見落とします。年内に計画を立てるなら、英語版のページを基準にしてください。
提供終了の3段階と日付
| 日付 | 変更 | 対象 |
|---|---|---|
| 2024年11月12日 | 提供終了 | Snowcone(SSD/HDD)と旧3モデル |
| 2025年11月7日 | 新規のお客様への提供終了 | Snowball Edge全体 |
| 2025年11月12日 | 旧モデルの既存サポート終了 | 旧3モデル |
| 2026年12月31日 | サポート終了・コンソール停止 | Storage Optimized/Compute Optimized |
旧3モデルは、Storage Optimized 80TB、Compute Optimized 52 vCPU、GPU付きのCompute Optimizedです。Snowconeの後始末と移し先はAWS Snowconeとは:サービス終了後の現状とDataSync・Greengrassへの移行手順【2026年版】で扱っています。
既存顧客が年内にジョブを終えるための逆算
AWSは最終注文日を示していません。ただし、年内に終えなければならない作業から逆算すると、余裕はあまりありません。Snowball FAQは、ジョブのためのデバイスの準備に最大4週間かかる場合があり、その期間は転送の所要時間に含まれないと書いています。料金に含まれるオンサイト利用は15日です。
- 準備:最大4週間(AWS側)
- 配送:往路と復路の各数日(配送日は15日に数えない)
- コピー:回線ではなくLAN内の転送速度とファイル数で決まる
- 取り込み:返送後にAWS側でS3へインポートし、完了をコンソールで確かめる
2026年10月26日から12月31日までは66日です。準備に4週間かかれば、残りは約38日です。そこから配送、コピー、取り込みを差し引くと、新しいインポートジョブを今から始めるのは危険です。判断ははっきりしています。まだ注文していない移行は、DataSyncかData Transfer Terminalで計画し直してください。すでにデバイスが手元にあるジョブは、11月中にコピーを終えて返送するのを目標にし、取り込み完了の見込みをAWSに確認します。11月中という期限はAWSの公表値ではなく、取り込みと確認の日数を残すための本記事の目安です。Compute Optimizedをエッジの演算基盤として月額や1年契約で使っている場合は、ワークロードをOutpostsなどへ移す計画を直ちに立て、サポート終了前に移行と動作確認を完了させる必要があります。
もう一つの期限が360日ルールです。原則として、ジョブはデバイスの準備から360日以内に完了させます。長期利用には証明書更新などの手続きが必要で、未対応のまま360日を過ぎるとロックされます。ただし、この手続きで2026年12月31日のサポート終了が延長されるわけではありません。インポート中にロックされても、デバイス上のデータはS3へ取り込まれます。
Snowball Edgeの現行2機種のスペック
既存顧客が使えるのは次の2機種です。数値はAWS Snowball Edgeのハードウェア情報によります。
| 項目 | Storage Optimized 210TB | Compute Optimized |
|---|---|---|
| 主な用途 | 大容量のデータ移行 | エッジでの演算 |
| ストレージ | 210TB(NVMe) | 28TB(NVMe) |
| CPU | AMD Rome 64コア | AMD Rome 64コア |
| vCPU/メモリ | 104/416GB | 104/416GB |
| ネットワーク | 10G RJ45/25G SFP28/100G QSFP28 | 同左 |
| 重量 | 22.54kg | 22.54kg |
2機種は筐体が共通で、違いはストレージと演算のどちらに振ったかです。RJ45の10Gポートは2つありますが使えるのは1つです。動作温度は0〜30℃、平均68デシベルで、オフィスにも置ける設計です。旧世代にあったHDD構成とGPU付き構成はなくなりました。
AWS Snowballの料金(東京リージョン)
AWS Snowballの料金ページによると、オンデマンドはジョブごとの手数料、15日を超えた分の日額、配送料で構成されます。東京リージョンの値は次のとおりで、他の多くのリージョンと同額です。
| 料金項目 | 金額(USD) |
|---|---|
| Storage Optimized ジョブ手数料(100TBまで・15日込み) | 1,800 |
| Storage Optimized ジョブ手数料(101〜210TB・15日込み) | 3,200 |
| 15日超過の日額 | 250/日 |
| Storage Optimized 月額プラン | 9,885/月 |
| Storage Optimized 1年前払い | 97,268 |
| Compute Optimized 月額プラン | 5,038/月 |
| Compute Optimized 1年前払い | 37,960 |
| S3へのデータ転送(イン) | 0.00/GB |
たとえば100TBを東京リージョンへインポートし、15日以内に返送すれば、Snowball分の費用は1,800 USDと配送料です。これとは別にS3のストレージ料金とPUTリクエスト料金がかかります。1MB以下の小さなファイルが数百万個あるとPUTの料金が膨らむと料金ページが注意しているので、個別ファイルをS3オブジェクトとして直接参照する必要がない場合は、tarなどにまとめてオブジェクト数を減らす方法を検討できます。個別参照が必要なら、展開処理とその費用も見積もってください。S3からのエクスポートは、リージョンごとのデータ転送(アウト)料金が加わります。
回線帯域別の転送日数と物理搬送への切り替え基準
Snowballを使うか回線で送るかは、データ量と実効帯域で決まります。次のPythonで、回線の実効率を80%と置いた日数を計算しました。
# 回線帯域ごとの転送日数(実効率を掛けた概算)
def days(tb, gbps, efficiency=0.8):
bits = tb * 10**12 * 8 # TB(10進)をビットに
sec = bits / (gbps * 10**9 * efficiency)
return sec / 86400
for tb in (50, 100, 210):
row = [f"{days(tb, g):6.1f}" for g in (0.1, 0.5, 1, 10)]
print(f"{tb:>4}TB 100Mbps={row[0]}日 500Mbps={row[1]}日 1Gbps={row[2]}日 10Gbps={row[3]}日")
実行結果は次の表のとおりです。
| データ量 | 100Mbps | 500Mbps | 1Gbps | 10Gbps |
|---|---|---|---|---|
| 50TB | 57.9日 | 11.6日 | 5.8日 | 0.6日 |
| 100TB | 115.7日 | 23.1日 | 11.6日 | 1.2日 |
| 210TB | 243.1日 | 48.6日 | 24.3日 | 2.4日 |
Snowball側も、配送の往復とデバイスへのコピーに日数がかかり、その前に準備で最大4週間待つ場合があります。1Gbps回線を実効80%で連続利用できる場合、100TBの転送は約11.6日で、Snowballの準備・往復配送・コピー・取り込みの合計がこれを超えるなら回線のほうが早く終わります。物理搬送が勝つのは、100Mbps級の拠点回線しかない場合や、業務時間中に回線を使い切れない場合です。AWSのDataSyncユーザーガイドも、100TB・1Gbps・利用率80%で11.57日という同じ計算例を載せ、実環境の性能の揺れを上乗せするよう求めています。計算の前提にする実効率は、机上の値ではなく、移行元から1TB程度を試験転送して実測した値を使ってください。
Snowballの代替手段と選び方
AWSはSnowball Edgeの提供状況の変更のページで、オンライン転送、物理転送、エッジ演算の3つの移り先を示しています。移行の目標、回線の帯域と信頼性、データ量で選ぶよう求めています。
オンライン転送:AWS DataSync
回線が確保できるなら第一候補です。エージェントがNFS・SMB・HDFS・S3互換ストレージを読み、S3・EFS・FSxへ書き込みます。1タスクで10Gbpsの回線を使い切れる設計で、増分転送と転送中の検証があります。東京リージョンの料金はBasicモードが0.0125 USD/GB、Enhancedモードが0.015 USD/GBと1回の実行ごとに0.55 USDです(AWS DataSyncの料金)。AWSの料金例と同じ1TB=1,024GBで換算すると、100TBのBasicモード利用料は1,280 USDです(前節の日数計算は1TB=10の12乗バイト)。回線が足りないときは、移行期間だけAWS Direct Connectの専用線を借りて組み合わせる方法をAWSが案内しています。2つのモードの違いと設定手順はAWS DataSyncとは?転送の仕組み・EnhancedとBasicの違い・料金と採用判断を実装者目線で解説にまとめています。
物理転送:AWS Data Transfer Terminal
Snowballのように機器が届くのではなく、自社のストレージを拠点へ持ち込んでアップロードする方式です。コンソールで予約し、予約時間に来訪して高速回線でS3やEFSへ転送します。2026年2月11日に東京を含む6拠点が追加され(AWSの発表)、Data Transfer TerminalのFAQは東京の施設をAT Tokyo CC1と案内しています。ただし、ユーザーガイドによると現時点で使えるのはAWS Enterprise Supportの契約者だけで、それ以外はAWSサポートへの問い合わせが必要です。新規の移行で物理転送を考えるなら、まず自社のサポートプランを確かめてください。料金はポート時間単位で、アジアの拠点からアジアのリージョンへは1ポート1時間あたり1,050 USD、アジア以外のリージョンへは1,150 USDです。転送量に応じた料金はありません。AWSの料金例は1ポート1時間で40TBを送る想定です。同じ速度なら100TBは1ポートで3時間、3,150 USDになりますが、実際の時間は持ち込むストレージの読み出し速度で決まります。来訪とストレージの持ち運びが前提なので、地方の拠点から出すデータは移動の手間と輸送中の管理を見込んでください。
パートナー製品とAWS Outposts
Snowballに近い「機器が届く」形が必要なら、AWS MarketplaceにあるSeagateやTsecondなどのパートナーのオフライン転送サービスが候補です。Snowball Edge Compute Optimizedをエッジの演算に使っていた場合の移り先はAWS Outpostsで、2Uのサーバーから42Uのラックまであり、AWSへの接続が切れても最大7日間動作します。詳しくはAWS Outpostsとは?ラックとサーバーの違い・対応サービス・導入判断を実装者目線で解説を参照してください。
代替手段の比較と選定の失敗例
| 手段 | 100TBの転送料金の目安 | 向く条件 |
|---|---|---|
| AWS DataSync(Basic) | 1,280 USD | 1Gbps以上が安定して出る |
| AWS DataSync(Enhanced) | 1,536.55 USD | ファイル数が多い・S3間 |
| Data Transfer Terminal(東京) | 3,150 USD(40TB/時で3時間) | 回線が細い・Enterprise Support契約 |
| Snowball(既存顧客のみ) | 1,800 USD+配送料 | 終了前の取り込み完了を見込める |
表は各サービスの利用料の目安です。DataSyncは1TB=1,024GB換算、Enhancedは1回の実行を想定し、Terminalは料金例の40TB/時を仮定した予約例です。S3の保存・リクエスト料金、回線費、機器・輸送・来訪費を加えた総額と、移行期限への適合性を比較してください。想定される失敗は、帯域を測らずにDataSyncを選び、業務通信との帯域競合によって転送が計画より長引くことです。もう一つは、Snowballの経験があるからと物理搬送を前提に計画し、2026年に入ってから新規で申し込めないと気づくパターンです。まず試験転送で実効帯域を測り、上の表で期限に間に合わない分だけData Transfer Terminalに回すのが安全な順序です。移行全体の段取りはクラウドデータ移行の手順とは?移行ツール・整合性検証・大容量転送の実務を実装者向けに解説、オンプレミスのファイルサーバーを段階的に移すならAWS Storage Gatewayとは?3種のゲートウェイの使い分けとオンプレ段階移行の構成を実装者目線で解説が参考になります。移行先の設計から任せたい場合は、一創のAWS・Google Cloud・Azureのインフラ構築支援でも相談を受けています。
既存ジョブの流れとセキュリティ
既存顧客がジョブを回す流れは、コンソールでジョブ作成、デバイス受け取り、ロック解除、コピー、返送、S3への取り込みの順です。デバイスの管理はGUIのAWS OpsHubか、Snowball Edgeクライアントで行います。返送先はE Inkの配送ラベルが自動で切り替わり、配送状況はAmazon SNSの通知とコンソールで追えます。
データは256ビットの暗号化で保存され、鍵はAWS KMSで管理されてデバイスには保存されません。筐体は耐タンパー設計で、TPM(Trusted Platform Module)がハードウェアやファームウェアの改ざんを検知します。AWSは返却されたデバイスを目視と暗号的な検査で確認し、取り込み後のデータはNISTの基準で消去します。一方で、NFSインターフェイス経由の転送は転送中に暗号化されないので、NFSでコピーする場合はCIDRでアクセス元を絞り、閉じたネットワークで作業してください。輸送中に紛失しても鍵がないため中身は読めませんが、年内に終える計画と取り込み完了の確認だけは自社で管理する必要があります。
よくある質問
AWS Snowballは今も使えますか?
既存のお客様は2026年12月31日まで使えます。新規のお客様は2025年11月7日以降申し込めません。2026年12月31日を過ぎるとSnowコンソールとSnowballのリソースにアクセスできなくなります(GovCloudとADCリージョンで稼働中のジョブは対象外)。
AWS Snowballの後継は何ですか?
単一の後継サービスはありません。AWSはオンライン転送にAWS DataSync、物理転送にAWS Data Transfer Terminalとパートナー製品、エッジの演算にAWS Outpostsを案内しています。Data Transfer Terminalは現時点ではAWS Enterprise Supportの契約者向けです。
Snowballの費用はいくらですか?
東京リージョンのStorage Optimized 210TBは、100TBまでのジョブ手数料が1,800 USD、101〜210TBで3,200 USDです。15日分の利用が含まれ、超過すると1日250 USDかかります。ほかに配送料とS3の料金がかかります。
Snowball EdgeとSnowballの違いは何ですか?
現在「Snowball」として提供されている機器はSnowball Edgeです。無印のSnowballや80TB・52 vCPUの旧モデルは提供が終わり、残っているのはStorage Optimized 210TBとCompute Optimizedの2機種です。
Snowconeは使えますか?
使えません。Snowconeは2024年11月12日に提供を終え、新規・既存とも注文できません。