Azure AI Speech(旧Azure Speech Service)の料金は「無料枠(F0)」と「従量課金(S0)」の2本立てで、音声認識は時間あたり、音声合成は文字数あたりで課金されます。名称が「Bing Speech」「Cognitive Services Speech」「Azure Speech Service」と変わり、2026年時点ではAzure AI Foundry内の「Speech in Foundry Tools」としても提供されるなど再編が続いているため、同じサービスを別名で探して料金がつかめない人が少なくありません。この記事は主要な単価を1か所に集約し、無料枠の範囲・S0の具体額・コストを下げる方法・Google Cloudなど他社との比較までを2026年時点の情報でまとめます。単価は改定されるため、実際の見積もりと円建て金額は必ず公式の料金ページと料金計算ツールで確認してください。
まとめ|Azure AI Speechの料金(結論から)
- 無料枠(F0):音声認識はリアルタイムで月5時間、音声合成はニューラル音声で月50万文字まで無料。検証や小規模PoCはここで足りる。
- 音声認識(S0):リアルタイム文字起こしが約$1/時間。バッチ文字起こしはこれより低単価で、録音済み音声の大量処理はバッチが有利。
- 音声合成(S0):標準ニューラル音声が$16/100万文字、高音質のHD音声が$22/100万文字。
- コスト最適化:使用量が読めるならコミットメント階層で単価を最大5割前後まで下げられる。用途をリアルタイムからバッチへ寄せるだけでも効く。
- 他社比較:単価はGoogle Cloud Speech-to-Textの料金・無料枠と近い水準。既存のAzure環境やEntra ID連携があるかで選ぶのが現実的。
Azure AI Speechの料金体系|無料枠(F0)と従量課金(S0)
Azure AI Speechの課金プランは、無料のF0と従量課金のStandard(S0)の2つです。1つのSpeechリソースに対して片方のプランを割り当てて使います。まずは無料枠と課金単位、金額の確認方法を押さえておくと、以降の単価が読みやすくなります。
無料枠(F0)で無料になる範囲と制限
F0は毎月一定量まで無料で、期限や事前チャージはありません。目安は音声認識(リアルタイム)が月5時間、音声合成(ニューラル音声)が月50万文字です。ただしバッチ文字起こしはF0の対象外で、カスタムモデルのホスティングなど一部機能も無料枠では使えません。1サブスクリプションにつきF0リソースは1つまでという制限もあるため、無料枠は「本番前の検証用」と割り切るのが実態に合います。
| 機能 | F0の無料枠(月あたり) |
|---|---|
| 音声認識(リアルタイム) | 5時間 |
| 音声合成(ニューラル音声) | 50万文字 |
| バッチ文字起こし | 対象外(S0のみ) |
従量課金(S0)の課金単位は「時間」と「文字数」
S0は使った分だけ支払う従量課金です。課金単位は機能で分かれ、音声認識は音声の長さ(時間)、音声合成は生成した文字数で計算します。音声翻訳は音声認識と同じく時間ベース、話者認識や発音評価はトランザクションや時間ベースです。リアルタイム合成の同時接続数など、機能ごとのクォータ上限もプランで変わるため、大量処理を想定するなら公式のクォータ一覧で上限も併せて確認します。
料金を確認・見積もる方法(円建て額の確認手順)
正確な金額は、Azureポータルの料金計算ツール(Pricing Calculator)と公式の料金ページで確認します。本記事の単価は米ドル建ての目安です。実際の請求額は契約している課金アカウントの通貨で決まり(日本円建て契約なら円で請求)、為替や税の扱いで金額が変わります。円建ての正確な額は料金計算ツールで確認してください。管理画面のSpeech Studioでは実際にモデルを試せるので、想定する音声の長さ・文字数を入れて月額を試算してから本番プランを決めると、想定外の請求を避けられます。
音声認識(Speech to Text)の料金
音声認識は「リアルタイム」と「バッチ」で単価が分かれ、選び方でコストが大きく変わります。会議の議事録や録音済みコンテンツの文字起こしなど、即時性が不要な用途をリアルタイムで処理するのは割高です。
リアルタイムとバッチの単価差と使い分け
標準のリアルタイム文字起こしは約$1/時間(約$0.0167/分)です。一方、録音済み音声をまとめて処理するバッチ文字起こしはリアルタイムより低単価で、同じ音声量でも安く上がります。ライブ字幕やコールセンターの通話中認識のように「その場で結果が要る」ならリアルタイム、後処理でよい大量の文字起こしはバッチ、と切り分けるのがコスト面の基本です。長尺を素早く処理したい場合は、短時間で一括変換するFast Transcriptionの選択肢もあります。Fast Transcriptionでは2026年9月公開のMAI-Transcribe-2も指定でき、2026年末までは1時間0.10ドルの導入価格です。
カスタム音声モデル(Custom Speech)の料金
業界用語や専門用語に対応させるCustom Speechを使うと標準モデルより単価が上がり、リアルタイムで時間$1.2前後が目安です(最新額は公式で確認)。加えて、学習したカスタムモデルを常時使えるように専用エンドポイントを立てるとホスティング費用が別途かかります。カスタムモデルは認識精度と引き換えに固定費が乗るため、標準モデルで精度が足りるかを先に検証し、必要な語彙だけを追加する運用が費用対効果を保ちやすい判断です。
音声合成(Text to Speech)の料金
音声合成は生成した文字数で課金され、音声の種類で単価が変わります。ナレーションやIVRの読み上げは文字数が積み上がりやすいので、音質のグレード選びがそのまま費用に直結します。
ニューラル音声とHD音声の単価
標準のニューラル音声は$16/100万文字、より自然で感情表現に優れるHD音声は$22/100万文字です(HD音声は2026年3月に$30から改定)。カスタム音声を使う場合は、カスタムニューラル(標準)が$24/100万文字、カスタムニューラルHDが$48/100万文字と、標準ボイスより高くなります。まずは標準ニューラルで品質を確認し、ブランド固有の声が要る場面に限ってHDやカスタムを選ぶと無駄がありません。
| 音声の種類 | 単価(100万文字あたり) |
|---|---|
| ニューラル音声(標準) | $16 |
| HDニューラル音声 | $22 |
| カスタムニューラル(標準) | $24 |
| カスタムニューラル(HD) | $48 |
カスタムニューラルボイスの学習・ホスティング費用
自社専用の声を作るCustom Neural Voiceでは、文字単価に加えて学習と常時ホスティングの固定費が発生します。学習は計算時間あたりの課金(1セッションに上限あり)、作成したモデルのエンドポイント保持は時間課金で、モデルあたり時間$4前後が目安です(いずれも最新額は公式の料金ページで確認)。時間課金のホスティングは月額に直すと相応の額になるため、複数モデルを常時立てっぱなしにせず、使うモデルだけをホストする設計がコストを左右します。
音声翻訳・話者認識・発音評価の料金
Azure AI Speechは文字起こしと合成以外にも料金体系を持ちます。音声翻訳(Speech Translation)は音声認識と同じ時間ベースで、翻訳処理分が上乗せされます。話者認識(Speaker Recognition)や発音評価(Pronunciation Assessment)はトランザクションや時間ベースの課金です。話者を分けて文字起こししたい場合は、OpenAIのgpt-4o-transcribe-diarizeのような話者分離対応モデルと精度・料金を比べたうえで、Azure内の話者分離機能で足りるかを判断すると選択肢を広く取れます。
Azure AI Speechのコストを抑える方法
従量課金は使い方次第で総額が大きく動きます。単価そのものを下げる契約と、使う量を減らす設計の両面で最適化するのが定石です。ここは「とりあえずリアルタイムで全部処理」を避けるだけで効果が出ます。
コミットメント階層(Commitment Tier)による単価低減
月間の使用量が読めるなら、事前に一定量をコミットして単価を下げるコミットメント階層が有効です。音声合成では、従量$16/100万文字に対し、階層を上げると実効$12→$9.60→$7.50/100万文字(およそ25%→40%→53%引き)まで下がります。音声認識にも同様の階層があり、大量処理では時間単価が下がります。ただしコミット量に達しない月は割り引き分が無駄になるため、直近の実績量を根拠に階層を選びます。
バッチ活用と不要リソースの停止
コスト削減で最も効くのは、即時性が不要な文字起こしをバッチへ寄せることです。録音済みの議事録やコンテンツをリアルタイムで流すのは割高で、バッチにするだけで単価が下がります。加えて、テスト用エンドポイントやカスタムモデルのホスティングを使わない時間帯に停止する、処理する音声を必要な区間だけに絞る、といった運用でホスティング系の固定費を圧縮できます。コスト監視アラートを設定し、想定超過をその都度検知できる状態にしておきます。
無料・ローカルで済ませたい場合の選択肢
短い読み上げやオフライン処理で足りるなら、クラウドを使わずコストをかけずに済ませる手もあります。Windows端末ならWindows標準のMicrosoft音声API(SAPI)でローカルの音声合成・認識が可能です。精度と多言語対応はクラウドに及びませんが、単純な用途では十分で、Azure側の従量課金を発生させずに済みます。用途の要件(精度・言語・同時数)を先に決め、クラウドが要る部分だけS0に載せる切り分けが無駄を減らします。
他社サービスとの料金比較(Google Cloud・Amazon)
音声認識・合成はAzure以外にも主要クラウドが提供しており、単価は近い水準で並びます。Azureのリアルタイム文字起こし約$1/時間に対し、Google Cloud Speech-to-Textも無料枠と時間課金の料金体系を持ち、Amazon Transcribeも同様の時間課金です。単価だけで優劣は決まりにくく、既存クラウド・認証基盤(Entra ID)・SDKの実装コスト・日本語精度まで含めた総コストで選ぶのが実務的です。複数サービスをまとめて比べたい場合は、文字起こしAPIの料金・日本語対応を横断比較した記事で候補を絞り込めます。自社の要件に合う音声認識を作り込みたい場合は、音声認識システムの開発もご相談いただけます。
よくある質問(FAQ)
Azure AI SpeechとAzure Speech Serviceは料金が違いますか?
同じサービスで料金は同一です。「Azure Speech Service」「Cognitive Services Speech」は現在の「Azure AI Speech」の旧称で、課金プラン(F0/S0)や単価の考え方は変わりません。古い名称で検索して別料金だと誤解しないよう注意してください。
Azure AI Speechは無料で使えますか?
無料枠(F0)があり、音声認識はリアルタイムで月5時間、音声合成はニューラル音声で月50万文字まで無料です。ただしバッチ文字起こしや一部のカスタム機能は無料枠の対象外で、S0(従量課金)が必要です。
音声認識の料金はどのくらいですか?
S0のリアルタイム文字起こしで約$1/時間(約$0.0167/分)が目安です。録音済み音声のバッチ文字起こしはこれより低単価なので、即時性が不要ならバッチのほうが安く済みます。
音声合成の料金はどのくらいですか?
標準ニューラル音声が$16/100万文字、高音質のHD音声が$22/100万文字が目安です。ブランド固有の声を作るカスタムニューラルボイスは、文字単価に加えて学習費とエンドポイントのホスティング費(約$4.04/モデル/時間)がかかります。
料金を安くするにはどうすればよいですか?
使用量が読めるならコミットメント階層で単価を下げ(音声合成で最大5割前後)、即時性が不要な文字起こしはバッチへ寄せます。加えて、不要なカスタムエンドポイントを止め、処理する音声を必要な区間に絞ると固定費を圧縮できます。